
階段昇降機とは
階段昇降機とは、階段の昇り降りを補助する機器。いす式・車いす式や据置/レール式の種類、費用相場、介護保険の扱い(固定式は対象外・可搬型は貸与対象)と自治体助成、設置条件をやさしく解説。
階段昇降機の定義(答え)
階段昇降機とは、階段の手すり側にレールを取り付け、いすや車いす台を電動で移動させて昇り降りを補助する機器です。住宅に固定する「いす式・車いす式」と、工事不要で持ち運べる「可搬型」に大別されます。固定式の本体・工事費は介護保険の対象外ですが、可搬型は移動用リフトとして貸与対象になる場合があり、自治体独自の助成を使える地域もあります。
目次
階段昇降機の概要と仕組み
階段昇降機とは何か
階段昇降機(かいだんしょうこうき)は、加齢や病気、けがなどで階段の昇り降りが難しくなった人が、安全に上下階を移動できるよう補助する機器です。多くは階段の片側にレール(ガイドレール)を設置し、その上をいすや車いす台が電動でゆっくり移動します。座ったまま、あるいは車いすに乗ったまま移動できるため、転落・転倒の予防と、介助する家族の身体的負担の軽減につながります。
動力は家庭用の100Vコンセントから給電する方式か、充電したバッテリーで動く方式が一般的です。停電時にもバッテリーで一定回数は動くタイプが多く、レール終端では自動で停止します。使わないときは座面・足台・ひじかけを折りたためる製品が主流で、ほかの人の通行を妨げにくい設計になっています。
住宅だけでなく、病院・福祉施設・店舗などへの設置も増えています。なお、階段に沿って斜めに移動する階段昇降機に対し、床面がそのまま垂直に上下する「段差解消機(昇降機)」は別の機器です。違いは後述します。
階段昇降機の種類(いす式・車いす式・据置/レール式)
階段昇降機の主な種類
階段昇降機は「何に乗って移動するか」と「どう設置するか」で分類できます。
乗る部分による分類
- いす式階段昇降機:いすに座って移動するタイプ。自分で立ち座りができ、座位を保てる人向け。住宅用で最も普及しており、価格も比較的抑えられます。
- 車いす式(車いす用)階段昇降機:車いすに乗ったまま専用のステージ(台)に乗り込んで移動するタイプ。乗り移りが不要なため負担が少ない一方、広いスペースと大きな工事が必要で、費用も高額になります。
設置方法による分類
- レール式(固定式):階段の段板や壁にレールを固定して取り付ける据置・常設タイプ。直線階段用の既製レールと、曲がり階段・踊り場に合わせてオーダー製作する曲線用レールがあります。常時使う住宅に向きます。
- 可搬型(移動式):レールを設置せず、キャスターやクローラー(ゴムのキャタピラ)で階段を昇降する持ち運び可能なタイプ。工事不要ですが、操作には講習を受けた介助者が必須で、利用者本人だけでの移動はできません。
直線階段か曲線(L字・コの字・踊り場あり)かで、設置できる機種と費用が大きく変わります。
階段昇降機の対象者と設置条件
どんな人に向き、どんな設置条件が必要か
主な対象者
- 加齢や病気、けがで階段昇降が不安・困難になった高齢者
- 下肢に障害があり、自力での昇り降りが難しい人
- 2階の寝室や浴室を使い続けたいが、転落リスクが心配な人
- 介助者の身体的負担(抱え上げ等)を減らしたい家庭
主な設置条件・確認ポイント
- 階段の有効幅:いすや人がレール上を通っても安全に通行できる幅が必要です。狭い階段では設置できない場合があります。
- 昇降口のスペース:いすを折りたたんでも乗降のために35cm程度の余裕が望ましいとされます。足りない場合はレールを延長し、階段から少し離れた位置で停止させる方法もあります。
- 電源(コンセント):給電式・バッテリー式とも階段付近に100Vの電源が必要です。近くにない場合は電源工事が発生します。
- 階段の形状:直線か曲線(踊り場・折り返し)かでレールの種類・費用が変わります。
- 屋外設置:レールやいすを敷地内に収め、公道へはみ出さないよう配慮し、防水仕様の電源が求められることが多いです。
多くの販売・施工事業者が無料の現地調査・採寸を行っているため、設置可否は事前の現地確認で判断するのが確実です。
階段昇降機の費用相場とランニングコスト
費用相場の目安
費用は「いす式か車いす式か」「直線階段か曲線階段か」で大きく変わります。下表は本体+設置工事費の一般的な目安です(製品・階段形状・地域により変動します)。
| タイプ | 直線階段 | 曲線・折り返し階段 |
|---|---|---|
| いす式 | 約50万〜100万円 | 約150万〜200万円 |
| 車いす式 | 約500万円前後 | 約800万円前後 |
曲線・折り返しのある階段はレールを一本ずつオーダーで曲げ加工するため高額になります。施工期間はいす式で半日〜1日程度、車いす式で数日が目安です。
ランニングコスト
- 電気代:月あたり約200円程度
- メンテナンス・保守:年間保守契約で約3万円前後(事業者により異なる)
金額はあくまで目安です。正確な費用は現地調査後の見積もりで確認してください。
階段昇降機と介護保険・自治体助成の扱い
介護保険は使える?自治体助成は?
固定式(いす式・車いす式)は介護保険の対象外
住宅に固定するいす式・車いす式(レール式)の階段昇降機は、本体の購入費・設置工事費とも介護保険の給付対象に含まれません。介護保険の福祉用具(貸与・特定福祉用具販売)にも、住宅改修にも該当しないためです。住宅改修費の支給対象は「手すりの取付け」「段差の解消」「床材の変更」「引き戸等への扉の取替え」「洋式便器等への取替え」などに限られ、厚生労働大臣の告示で「取付けに住宅の改修を伴うもの」は除くとされています。固定式の階段昇降機はこの除外規定に当たると整理されています。
可搬型は「移動用リフト」として貸与対象になる場合がある
一方、工事を伴わない可搬型(移動式)の階段昇降機は、介護保険の福祉用具貸与の種目である「移動用リフト(つり具の部分を除く)」に該当するものがあり、レンタルできる場合があります。福祉用具貸与は原則として要介護2以上が対象です(軽度者は例外給付の要件を満たす場合に限られます)。利用にはケアマネジャー・福祉用具専門相談員への相談が必要です。
自治体独自の助成・補助が使える地域もある
介護保険とは別に、市区町村が独自に「高齢者住宅設備改修給付」「住宅設備改善費の給付」などの名称で、いす式階段昇降機の設置費を助成している地域があります。給付額・対象者・所得制限・要介護度の要件は自治体によって大きく異なるため、設置前に必ずお住まいの市区町村の介護保険担当課・障害福祉担当課へ確認してください。障害者向けの設備設置助成の枠で対象になるケースもあります。
制度は年度や地域で変わります。本ページの内容は一般的な整理であり、実際の適用可否は必ず最新の公的情報と窓口で確認してください。
階段昇降機と可搬型・段差解消機の違い
可搬型・段差解消機との違い
混同されやすい3つの機器を整理します。
| 項目 | 固定式 階段昇降機(いす式・車いす式) | 可搬型 階段昇降機 | 段差解消機 |
|---|---|---|---|
| 動き方 | レールに沿って階段を斜めに移動 | クローラー等で階段を昇降(運搬) | 床面が垂直に上下する(斜めには動かない) |
| 設置工事 | 必要(レールを段板・壁に固定) | 不要(持ち運び可能) | 必要(設置・据付) |
| 操作 | 本人が操作して移動できる | 講習を受けた介助者が必須 | 本人または介助者 |
| 介護保険 | 対象外(本体・工事費) | 移動用リフトとして貸与対象になる場合あり | 移動用リフトとして貸与対象になる場合あり |
| 主な用途 | 住宅の階段を常時昇降 | 外出時・一時的な階段移動 | 玄関の上がりかまち等の段差越え |
ポイントは、可搬型は持ち運べてレンタルしやすい反面、介助者の操作講習が必要なこと、段差解消機は「階段」ではなく「段差」を越える別カテゴリの機器であることです。
階段昇降機を選ぶときの実務的なポイント
導入前に押さえたいポイント
- まず現地調査を依頼する:階段の幅・形状・電源の有無で設置可否と費用が決まります。多くの事業者が無料で採寸・見積もりを行っています。
- 本人の身体状況に合わせて機種を選ぶ:立ち座りと座位保持ができればいす式、車いすからの乗り移りが難しければ車いす式や可搬型を検討します。
- 保守・アフター体制を確認する:長く使う機器なので、定期点検と故障時対応がある事業者を選ぶと安心です。
- 制度はダブルで確認する:可搬型のレンタル可否はケアマネジャーへ、固定式の助成は市区町村の窓口へ、それぞれ確認します。
- 一時利用ならレンタルも検討:退院後の短期間など、常設が不要なら可搬型のレンタルが費用面で有利な場合があります。
階段昇降機のよくある質問
よくある質問
Q. いす式階段昇降機に介護保険は使えますか?
A. 住宅に固定するいす式・車いす式の本体購入費・設置工事費は、介護保険の対象外です。福祉用具にも住宅改修にも該当しないためです。ただし自治体独自の助成が使える地域があります。
Q. 工事をしないで使える階段昇降機はありますか?
A. 可搬型(移動式)はレールの設置工事が不要で、クローラーなどで階段を昇降します。介護保険の「移動用リフト」としてレンタルできる場合がありますが、操作には講習を受けた介助者が必要です。
Q. 曲がった階段にも設置できますか?
A. 設置できます。ただし曲線・折り返し階段は階段形状に合わせてレールをオーダー製作するため、直線階段より費用が高くなります(いす式で約150万〜200万円が目安)。
Q. 賃貸住宅でも設置できますか?
A. レールを段板や壁に固定するため、賃貸では原則として所有者(大家・管理会社)の承諾が必要です。撤去は可能ですが、段板にネジ穴の跡が残る場合があります。工事不要の可搬型を検討する選択肢もあります。
Q. 段差解消機とは何が違うのですか?
A. 階段昇降機は階段に沿って斜めに移動する機器、段差解消機は床面が垂直に上下して玄関などの段差を越える機器です。用途が異なります。
階段昇降機の参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
階段昇降機のまとめ
まとめ
階段昇降機は、階段の昇り降りを補助して転落・転倒を防ぎ、本人と介助者双方の負担を軽くする機器です。住宅に固定するいす式・車いす式(レール式)と、工事不要の可搬型があり、直線か曲線かで費用が大きく変わります。固定式の本体・工事費は介護保険の対象外ですが、可搬型は移動用リフトとして貸与できる場合があり、自治体独自の助成が使える地域もあります。設置可否は現地調査で、制度の適用可否はケアマネジャーや市区町村の窓口で、それぞれ事前に確認しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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