回復期リハビリテーション病棟とは

回復期リハビリテーション病棟とは

脳卒中・大腿骨頸部骨折などの急性期治療後、最長150〜180日の入院で1日3単位以上の集中リハビリを行い在宅復帰を目指す病棟。入院料1〜5の段階別評価、対象疾患、介護現場との連携ポイントを解説。

ポイント

この記事のポイント

回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの急性期治療を終えた患者に対し、ADL(日常生活動作)の向上と在宅・施設復帰を目的として1日最大3時間(9単位)の集中的なリハビリテーションを提供する入院病棟です。対象疾患ごとに60〜180日の入院期間が定められ、診療報酬上は入院料1〜5の5段階で評価されます。

目次

制度上の位置づけと役割

回復期リハビリテーション病棟の制度上の位置づけ

回復期リハビリテーション病棟は、2000年(平成12年)の診療報酬改定で新設された病棟類型で、健康保険法に基づく入院医療提供施設です。厚生労働省告示「基本診療料の施設基準等」(A308 回復期リハビリテーション病棟入院料)において、「脳血管疾患又は大腿骨頸部骨折等の患者に対して、ADLの向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための病棟」と定義されています。

医療提供体制の中で病棟は大きく「急性期」「回復期」「慢性期(療養)」の3区分に整理されており、回復期リハビリ病棟はこの「回復期」を担う中核施設です。命を救う急性期病院での治療後、麻痺・骨折後遺症・廃用症候群などが残った患者を引き継ぎ、PT・OT・STなど多職種チームによる集中的な機能回復訓練を行います。

地域包括ケア病棟との違い

同じ「回復期」を担う病棟に地域包括ケア病棟がありますが、両者は役割が異なります。回復期リハビリ病棟は1日最大9単位(3時間)の集中リハを提供する重装備の病棟で、対象疾患も限定されます。一方、地域包括ケア病棟は急性期からの受け入れ・在宅復帰支援・在宅患者の緊急受け入れなどを幅広く担い、リハビリは1日2単位以上が要件です。介護職にとっては、利用者がどちらの病棟に入院しているかで退院後のADL回復見込みやサービス調整の難易度が変わります。

介護現場との接点

回復期リハビリ病棟を退院した患者の多くは、その後の生活支援を介護保険サービスに引き継ぎます。在宅復帰する場合は訪問介護・通所介護・福祉用具貸与など、在宅復帰が困難な場合は介護老人保健施設(老健)・特養・有料老人ホームへの入所が選択肢となります。ケアマネジャーは入院中から退院前カンファレンスに参加し、リハ職や医療ソーシャルワーカー(MSW)と連携してケアプランを設計するのが標準的な流れです。

対象疾患と入院期間(厚労省告示)

対象疾患別の入院期間と1日あたりリハビリ単位数

回復期リハビリ病棟に入院できる患者は、厚生労働省告示で定められた「回復期リハビリテーションを要する状態」に該当する者に限られます。疾患ごとに算定上限日数が異なるため、退院時期の見立てに影響します。

対象疾患・状態入院期間(算定上限)
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後・手術後、義肢装着訓練を要する状態150日
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷180日
大腿骨・骨盤・脊椎・股関節・膝関節の骨折、または2肢以上の多発骨折の発症後・手術後90日
外科手術または肺炎等の治療時の安静による廃用症候群90日
大腿骨・骨盤・脊椎・股関節・膝関節の神経・筋・靱帯損傷後60日
股関節または膝関節の置換術後90日
急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患または手術後90日

1日あたり提供単位数

  • 1単位=20分のリハビリテーション
  • 1日最大9単位(3時間)まで算定可能
  • 運動器リハについては令和6年度改定で、1日6単位を超える実施に伴うADL改善が限定的との分析を踏まえ、算定単位数上限緩和の対象患者が見直された
  • 入院料1では脳血管系疾患が多く、入院料の上位では平均6単位/日以上のリハが提供されている(一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会 2020年実態調査)

老健・地域包括ケア病棟との違い

回復期リハビリ病棟・老健・地域包括ケア病棟の比較

退院後または急性期後の患者を受け入れる施設は複数あり、それぞれ機能と保険制度上の位置づけが異なります。介護職・ケアマネとして利用者の進路選択に関わる際の整理として押さえておきたいポイントです。

項目回復期リハビリ病棟地域包括ケア病棟介護老人保健施設(老健)
保険制度医療保険(診療報酬)医療保険(診療報酬)介護保険
主目的集中リハで在宅復帰急性期後の調整・在宅復帰在宅復帰・在宅生活継続支援
対象脳血管・骨折等の特定疾患幅広い疾患・状態要介護1〜5の認定者
入院・入所期間60〜180日(疾患別)原則60日以内3〜6か月目安(更新可)
1日リハ量最大9単位(3時間)2単位以上個別リハは週2〜3回程度が中心
必置リハ職PT・OT・ST(入院料1は専従3名以上)専従1名以上PT・OT・ST いずれか1名以上
医療処置の幅広い(医師常駐)広い限定的(投薬は包括)

使い分けの目安

  • 明確な急性期疾患(脳卒中・骨折等)でADL改善余地が大きい → 回復期リハビリ病棟
  • 急性期治療は終わったが在宅調整に時間が必要・短期間で帰せそう → 地域包括ケア病棟
  • 医療必要度は落ち着いたが在宅復帰には介護環境整備とリハ継続が必要 → 老健

回復期リハビリ病棟で算定上限日数に達した後も在宅復帰が難しい場合、老健へ移行して継続的にリハビリと生活支援を受けるという段階的な移行が現場では一般的です。

入院料1〜5の段階別評価

回復期リハビリ病棟入院料1〜5の段階別評価(令和6年度改定)

令和6年度(2024年)診療報酬改定で、従来の入院料6が廃止され、現在は入院料1〜5の5段階体系で評価されています。上位入院料ほどリハビリ実績指数(FIM運動項目の改善実績)・重症者割合・在宅復帰率などの要件が厳しく、診療報酬点数が高く設定されています。

区分入院料(点/日)主な施設基準
入院料12,229点専従の社会福祉士配置、専従医師、PT3名・OT2名・ST1名以上、重症者割合4割以上、在宅復帰率7割以上、リハ実績指数40以上、FIM研修年1回、GLIM基準による栄養評価
入院料22,166点専従の社会福祉士配置、重症者割合4割以上、在宅復帰率7割以上、リハ実績指数35以上
入院料31,917点重症者割合3割以上、在宅復帰率7割以上、FIM研修年1回
入院料41,859点重症者割合3割以上、在宅復帰率7割以上
入院料51,696点新規届出から2年間の経過措置区分

リハビリテーション実績指数とは

FIM運動項目の入棟時から退棟時までの得点改善幅を、入院期間で除した値です。「2回連続で27を下回る」と入院料1または2の施設基準を満たさなくなります(基準値は入院料ごとに異なる)。実績指数の計算式は次のとおりです。

  • 分子: Σ(退棟時FIM運動項目−入棟時FIM運動項目)
  • 分母: Σ(入棟から退棟までの日数÷疾患別算定上限日数)

FIM測定の義務化(令和6年度改定)

令和6年度改定で、すべての回復期リハビリ病棟入院料について2週間に1回以上のFIM測定と診療録記載が要件化されました。入院料1と3では、FIM測定に関わる職員向けの研修会を年1回以上開催することも求められます。

口腔ケアと栄養管理の要件化

入院料1・2では、口腔状態に課題を認めた場合の歯科医療機関への受診促進と、GLIM基準による低栄養診断が要件化されました。リハビリ・栄養・口腔の三位一体ケアを意識した制度設計です。

入院から在宅復帰までの流れ

急性期から在宅復帰までの流れ

  1. 急性期病院での治療(発症〜2週間程度): 脳卒中の血栓溶解療法・手術、骨折の観血的整復固定術など、命にかかわる治療を実施。バイタル安定後、早期離床を兼ねた急性期リハビリが始まる。
  2. 転院判定・受け入れ調整(治療後1〜3週間): 急性期病院のMSWが患者・家族と転院先を相談し、回復期リハビリ病棟への申し込みを行う。回復期側で診療情報提供書・看護サマリー・リハサマリーをもとに受け入れ可否を判断。
  3. 回復期リハビリ病棟入院(最長180日): 入棟当日からFIM測定・ADL評価を実施し、医師・PT・OT・ST・看護師・MSW・管理栄養士・薬剤師がリハビリテーション総合計画書を作成。1日最大9単位の集中的なリハビリを土日含めて365日体制で提供。
  4. 定期カンファレンス(2週間に1回以上): 多職種でADL改善状況・退院後の生活像・必要なサービスを共有。退院目処の概ね1か月前には退院前カンファレンスを開催。
  5. 退院前カンファレンス・家屋調査: 在宅予定の場合は地域のケアマネ・訪問看護・福祉用具業者を交えて退院前カンファレンスを実施。療法士が家屋を訪問して手すり位置・段差解消を提案する。
  6. 退院・在宅生活再開: 退院日に居宅サービス計画が始動。訪問リハビリ・通所リハビリ・通所介護などで機能維持を継続。
  7. 在宅復帰困難な場合の選択肢: 老健への入所、特養待機中の暫定的な施設利用、有料老人ホーム入居など。回復期リハビリ病棟から老健への直接転入も多い。

介護職としての連携ポイント

介護職・ケアマネとして押さえたい連携ポイント

1. 退院前情報の収集ポイント

  • FIM運動項目の入退棟時得点: ADL改善度を客観評価できる。在宅サービス調整時に「自立」「監視」「介助」の判断材料となる。
  • リハビリテーション総合実施計画書: 病棟で達成した目標と退院後の継続課題が記載されている。ケアプランの短期目標に直結。
  • 退院時情報提供書(看護サマリー・リハサマリー): 内服薬・処置・転倒リスク・嚥下状態など、急性期から回復期、回復期から在宅・施設に情報を引き継ぐ核となる書類。

2. 退院前カンファレンスでの介護職の役割

ケアマネは退院前1〜2週間の退院前カンファレンスに必ず参加し、自宅環境・家族介護力・経済状況を病院側に伝える役割を担います。訪問介護・通所介護の事業所からはサービス提供責任者や生活相談員が参加し、入院中のADL状態を見て初回サービス計画を組みます。

3. 老健への移行ケースの調整

在宅復帰が難しいと判断された場合、回復期リハビリ病棟から老健への移行が選択肢となります。老健は介護保険施設のため、要介護認定(必要に応じて区分変更申請)を済ませておく必要があります。回復期入院中に認定調査を実施するケースも多く、ケアマネの早めの介入が肝心です。

4. 在宅復帰後のリハ継続

退院後はリハビリ提供量が大幅に減るため、機能維持のための訪問リハビリ・通所リハビリの早期導入が重要です。介護保険のリハビリは医療保険時代と比較して頻度・時間ともに制限があるため、退院時の体力・ADLレベルを家族と共有して期待値調整することがトラブル予防になります。

5. リハビリ職との情報共有のコツ

PT・OT・STは「動作分析の専門家」「生活行為向上の専門家」「コミュニケーション・嚥下の専門家」と役割が異なります。介護職から「歩行が不安定」「食事中にむせる」「指示が伝わらない」と具体的場面を伝えると、それぞれの専門職に合った継続支援につながります。

よくある質問

Q1. 回復期リハビリ病棟はどんな人が対象ですか?

厚生労働省告示で定められた「回復期リハビリテーションを要する状態」に該当する患者です。代表例は脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血等)、大腿骨頸部骨折などの整形外科疾患、廃用症候群、急性心筋梗塞などです。原則として急性期治療を終え、機能回復の見込みがあり、集中的なリハビリに耐えられる全身状態であることが前提となります。

Q2. 入院期間はどれくらいですか?

対象疾患により60〜180日と定められています。脳血管疾患は150日(高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害は180日)、大腿骨骨折・廃用症候群・心大血管疾患は90日、神経・筋・靱帯損傷は60日、関節置換術後は90日です。実際の入院期間は患者ごとのADL改善状況により短くなることもあります。

Q3. 1日にどれくらいリハビリを受けられますか?

1単位20分換算で最大9単位、つまり1日最大3時間のリハビリが算定可能です。理学療法(PT)・作業療法(OT)・言語聴覚療法(ST)の組み合わせで提供されます。土日祝日もリハビリが行われる365日体制が入院料1の特徴で、上位入院料ほどリハ提供量も多い傾向にあります。

Q4. 老健と何が違いますか?

制度の根拠が異なります。回復期リハビリ病棟は医療保険下の入院施設で、医師が常駐し1日最大3時間のリハビリを提供します。老健介護保険下の入所施設で、要介護認定が必要、リハビリは週2〜3回が標準です。急性期直後で機能回復余地が大きい時期は回復期、生活継続支援の段階では老健、と段階的に使い分けるのが基本です。

Q5. 在宅復帰できなかった場合はどうなりますか?

算定上限日数に達した時点で、在宅復帰・施設入所・転院のいずれかを選択します。在宅復帰が難しい場合は老健への移行、特養待機、有料老人ホーム入居、介護医療院などが選択肢です。回復期リハビリ病棟の在宅復帰率は7割以上が施設基準で求められていますが、家族介護力や住宅環境により施設入所となるケースも一定数あります。

参考文献

参考文献・出典

  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(入院Ⅲ:回復期)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251537.pdf
  • 厚生労働省 地方厚生局「A308 回復期リハビリテーション病棟入院料」施設基準通知
  • 厚生労働省「基本診療料の施設基準等」告示・別表第九(回復期リハビリテーションを要する状態及び算定上限日数)
  • 厚生労働省「個別事項(その5:リハビリテーション)」中央社会保険医療協議会資料
  • 一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会「回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する病棟の実態と課題に関する調査報告書」
  • 日本リハビリテーション医学会 公式サイト

まとめ

回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患・骨折・廃用症候群など特定の急性期疾患を経た患者に対し、最長180日の入院期間で1日最大3時間の集中的なリハビリを提供する医療保険下の入院病棟です。診療報酬上は入院料1〜5の5段階で評価され、FIM運動項目の改善実績(リハビリテーション実績指数)、重症者割合、在宅復帰率などが要件となります。

介護現場では、退院後の生活支援を引き継ぐパートナーとして回復期リハビリ病棟と連携する場面が多く、ケアマネは入院中から退院前カンファレンスに参加してリハ職・MSWと協働します。在宅復帰が困難な場合は老健への段階的移行を選択するなど、医療保険と介護保険を横断した支援設計が求められる領域です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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