退院前カンファレンスとは

退院前カンファレンスとは

退院前カンファレンスは、退院1〜2週間前に病棟・MSW・主治医・在宅医・訪問看護・ケアマネ・家族が集まり療養情報を引き継ぐ多職種会議。算定要件・共有内容・看護師の役割を解説。

ポイント

この記事のポイント

退院前カンファレンスは、入院患者の退院1〜2週間前に、病棟看護師・主治医・MSW(医療ソーシャルワーカー)・在宅医・訪問看護師・ケアマネジャー・本人・家族らが一堂に会し、退院後の療養計画と医療処置を引き継ぐための多職種会議です。医療保険では退院時共同指導料、介護保険では入退院時連携加算などの算定対象となり、医療・介護のシームレスな連携の要になります。

目次

退院前カンファレンスの位置づけ

退院前カンファレンスは、入院医療機関と退院後の在宅・施設サービスを担う事業者が、患者の病状・医療処置・生活状況・本人と家族の希望を直接共有するために開催される多職種合同会議です。退院支援の最終局面に位置づけられ、入院中に積み重ねてきたアセスメントを、地域で支えるチームへ引き渡す「バトンパス」の役割を担います。

厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムでは、医療と介護のシームレスな連携が中核に据えられており、退院前カンファレンスはその実装ツールのひとつです。在宅復帰率の向上、再入院率の低下、家族の介護不安の軽減という3つの効果が期待されており、医療保険・介護保険の双方で経済的インセンティブ(加算)が付与されています。

会議は通常、退院予定日の1〜2週間前に病院の会議室や病棟カンファレンスルームで実施されますが、近年はオンライン(Web会議)での開催も診療報酬上で認められており、訪問看護ステーションやケアマネ事業所が遠隔地にあるケースでも参加しやすくなっています。所要時間は患者1名あたり15〜30分が目安です。

対象となるのは、退院後に医療処置(吸引・経管栄養・在宅酸素・インスリン自己注射など)が継続するケース、ADLが低下し介護サービスの導入が必要なケース、認知症や精神症状で家族の介護負担が重いケースなど、在宅移行に支援を要する患者です。健康な状態に回復して自立帰宅できる患者では開催されません。

参加する主な職種と役割

退院前カンファレンスには病院側・地域側の双方から、患者の状況に応じて以下のような職種が参加します。全職種が必須ではなく、ケースごとに必要なメンバーを選定します。

病院側の参加者

  • 主治医:病状・治療経過・予後の見通し・継続する医療処置の方針を共有
  • 病棟看護師(退院支援看護師):日常生活援助の状況、医療処置の手技、家族指導の到達度を引き継ぐ
  • MSW(医療ソーシャルワーカー):制度活用の調整役、カンファレンスの司会進行を担うことが多い
  • リハビリ職(PT/OT/ST):ADLの現状、自宅環境への適応、動作指導のポイント
  • 薬剤師:処方薬の一覧、相互作用、自己管理可能性、服薬支援の必要性
  • 管理栄養士:食形態、嚥下機能、栄養補助食品の活用方針

地域・在宅側の参加者

  • 在宅主治医(訪問診療医):退院後の医療管理を引き継ぐ
  • 訪問看護師:医療処置・症状観察・家族支援の在宅実施担当
  • ケアマネジャー:介護サービスの計画策定、サービス担当者会議への接続
  • 訪問薬剤師:在宅での服薬管理、訪問頻度の調整
  • 福祉用具事業者・住宅改修担当:必要な福祉用具・改修プランの提示
  • 本人・家族:意思決定の主体。希望や不安を直接表明できる場

共有すべき情報項目

退院前カンファレンスでは、患者を地域で支えるために不可欠な情報を体系的に共有します。経験的に「医療情報」「生活情報」「家族情報」の3軸で整理すると漏れが少なくなります。

医療情報

  • 病名・治療経過:主病名、合併症、入院中の治療内容、急変時の対応方針
  • 処方薬:薬剤名・用量・服薬時刻・自己管理の可否、ジェネリック切替の経緯
  • 医療処置:吸引、経管栄養(胃ろう・経鼻)、在宅酸素、点滴、創傷処置、ストマ管理など
  • 使用医療機器:吸引器、酸素濃縮器、輸液ポンプなどの機種と業者連絡先
  • 感染管理:MRSA・耐性菌などの保菌情報、標準予防策の内容

生活・身体機能情報

  • ADL/IADL:食事・排泄・入浴・移動の自立度(FIM、Barthel Indexの数値があれば共有)
  • 認知機能:HDS-R、MMSEのスコア、BPSDの有無、コミュニケーション能力
  • 嚥下機能:食形態の指示、とろみの濃度、誤嚥リスク
  • 褥瘡・皮膚状態:好発部位、現在のステージ、ケア内容

家族・社会的情報

  • 主介護者の特定:誰が中心的にケアを担うか、就労状況、健康状態
  • 家族の介護力:医療処置の手技習得状況、夜間対応の可否、レスパイトの必要性
  • 住環境:段差、浴室、寝室の配置、福祉用具導入の余地
  • 経済状況:自己負担への懸念、生活保護・公費負担医療の有無
  • 本人・家族の意向:在宅で過ごしたい期間、最期の場所の希望(ACP)

退院時共同指導料と入退院時連携加算の違い

退院前カンファレンスは、医療保険・介護保険の双方から複数の加算で経済的に評価されています。職種・保険制度ごとに名称と要件が異なるため、整理して理解しておくことが重要です。

医療保険(病院・訪問看護ステーション側)

  • 退院時共同指導料1(在宅療養を担う医療機関側):在宅医・訪問看護師等が、退院後の在宅療養について患者・家族と退院時に共同で指導し、文書で情報提供した場合に算定。
  • 退院時共同指導料2(病院側):入院医療機関の医師・看護師等が、在宅医療を担う医師・看護師等と共同で退院後の指導を行った場合に算定。
  • 多機関共同指導加算:医師・看護職員以外の3職種以上(薬剤師、PT/OT/ST、MSW、ケアマネ等)と共同指導した場合に上乗せ。
  • 退院時共同指導加算(訪問看護療養費):訪問看護ステーションの看護師が病院に出向き、退院後の指導を共同で実施した際に算定。気管カニューレ装着など特別管理が必要な場合は1入院につき2回まで算定可能。

介護保険(ケアマネ事業所・訪問看護側)

  • 退院・退所加算(居宅介護支援):ケアマネが入院・入所中の医療機関等を訪問し、必要な情報を取得した上で居宅サービス計画を作成した場合に1回〜3回まで算定。カンファレンス参加時はⅡ・Ⅲの上位区分で評価。
  • 入院時情報連携加算(居宅介護支援):利用者の入院後3日以内(Ⅰ)または7日以内(Ⅱ)にケアマネが医療機関へ情報提供した場合に算定。
  • 退院時共同指導加算(介護保険の訪問看護):訪問看護師が病院等で共同指導を実施した場合、要介護者1人につき入院中1回(特別管理者は2回)算定。

カンファレンスを1回開催することで、参加職種それぞれが各々の保険制度に基づき加算を算定できる構造になっており、医療機関・在宅事業所の双方にとって連携を行う合理的なインセンティブになっています。

退院前カンファレンスの開催フロー

退院前カンファレンスは、入院から退院までの数週間にわたるプロセスの一環として実施されます。標準的な流れは次のとおりです。

  1. 入院直後(入院後3〜7日以内):病棟看護師・MSWによるスクリーニングで、退院支援が必要な患者を抽出。介護保険利用中の患者については、ケアマネに入院連絡し入院時情報連携加算の起点とする。
  2. 退院支援計画の作成:医療チームでアセスメント実施。退院後に必要な医療処置・サービスを見積もり、本人・家族と方向性をすり合わせる。
  3. 退院2〜3週間前:日程調整:MSWまたは退院支援看護師が、在宅医・訪問看護・ケアマネ・本人家族の都合を調整しカンファレンス日時を確定。
  4. 退院1〜2週間前:当日実施:病棟側からプレゼン → 質疑応答 → 在宅側からの確認事項 → 本人家族の意向確認 → 役割分担の合意。15〜30分が標準。
  5. カンファレンス記録の作成・配布:MSWまたは退院支援看護師が議事録を作成し、参加全員に文書で交付。退院時共同指導料の算定要件として文書交付は必須
  6. 退院当日:服薬指導書、看護サマリー、リハサマリー、最新の検査データを取りまとめ家族と在宅チームへ手渡す。
  7. 退院後1週間以内:訪問看護師が初回訪問し、自宅環境での医療処置の実装をフォロー。問題が生じれば在宅医・病院側に逆フィードバック。
  8. 退院後1か月以内:ケアマネがサービス担当者会議を開催し、ケアプラン本実装へ移行。退院前カンファレンスで合意した方向性を地域の実運用に落とし込む。

病院看護師と訪問看護師の引き継ぎポイント

退院前カンファレンスで最も重要な情報の流れは、病棟看護師から訪問看護師への手技・観察ポイントの引き継ぎです。実務的に押さえておきたいポイントを整理します。

病棟看護師が用意すべき情報

  • 看護サマリー(看護要約):入院中の経過、現在のケア内容、家族指導の到達度を1〜2枚に集約。退院当日の手渡しではなくカンファレンス時に提示すると質疑が深まる。
  • 医療処置の動画・写真:吸引部位・経管栄養の固定方法・創傷状態など、文書では伝わりにくい情報は本人同意のもと写真化して共有すると効果的。
  • 家族の手技習得チェックリスト:吸引手技を主介護者が何回実施したか、独力で完遂できる頻度を具体的な回数で示す。
  • 急変時の対応シナリオ:発熱時・呼吸状態悪化時に、どの医療機関へ連絡しどのレベルで再入院判断するかを文書化。

訪問看護師がカンファレンスで確認すべき項目

  • 具体的な物品・薬剤名と納品ルート:吸引チューブのサイズ、栄養剤の銘柄、ガーゼの種類などは、メーカー名まで踏み込んで確認しないと自宅に届かないリスクがある。
  • 家族の生活リズム:処置の時間帯を家族の就労・通院・睡眠時間と擦り合わせ、現実に持続可能か検証する。
  • 主治医との連絡ルート:在宅医に主科を移すか、病院主治医のフォロー外来を継続するかを明確化。指示書の発行元を一本化することが重要。
  • 緊急時の入院受け入れ先:急変時に救急搬送する病院、在宅看取り希望時の対応を事前確認。

カンファレンス記録・要約の保存

カンファレンス記録は、退院時共同指導料・退院・退所加算の算定根拠として診療報酬・介護報酬上で必須の文書です。電子カルテ/介護記録システムに保存し、患者・家族にも要約版を交付することで、本人参加型ケアの基盤になります。記録に含める項目は、参加者一覧・日時・共有内容・合意事項・役割分担・次回までのアクションの6点が基本です。

退院前カンファレンスのよくある質問

Q1. 患者本人や家族は必ず参加するのですか?

必須ではありませんが、原則として本人・家族の参加が望ましいとされています。本人の希望を直接聴取できる場であり、家族にとっては在宅療養への不安を専門職に直接ぶつけられる貴重な機会です。本人の意識レベルや病状で参加が難しい場合でも、家族(主介護者)の参加は強く推奨されます。

Q2. オンライン(Web会議)での開催は加算が算定できますか?

2020年の新型コロナウイルス感染症流行を契機に、診療報酬・介護報酬ともにオンラインカンファレンスでの算定が認められています。実施する場合は、参加者全員の本人確認、会議内容の記録保存、本人・家族へのオンライン参加同意取得などの要件を満たす必要があります。

Q3. サービス担当者会議とは何が違うのですか?

退院前カンファレンスは退院前に病院主導で行う情報共有会議で、医療と在宅をつなぐための会議です。一方、サービス担当者会議は居宅サービス計画の策定・更新時にケアマネ主導で行う会議で、退院後の地域生活におけるサービス調整が目的です。退院前カンファレンスで合意した方向性を、サービス担当者会議で具体的なケアプランに落とし込むという順序関係にあります。

Q4. 病院との連絡が取りにくく、参加調整に苦労します。何が効果的ですか?

退院支援部門(地域連携室)の担当MSWを窓口に固定することが最も効果的です。多くの中規模以上の病院には地域連携室があり、入院連絡を受けた段階でMSWが在宅側との接点になってくれます。事業所側からも患者ごとに「この件は誰々に連絡」というルートを早期に確立しておくと、カンファレンス調整が円滑になります。

Q5. 介護施設(特養・老健)への入所時もカンファレンスを行いますか?

はい、自宅退院ではなく施設入所の場合も退院時カンファレンスは実施されます。施設の生活相談員・介護職員・施設看護師・配置医師が在宅医療スタッフの代わりに参加し、医療処置の継続性とケアプラン作成に必要な情報を共有します。介護報酬上は介護老人保健施設・介護医療院側で入所時情報連携加算等が算定可能です。

参考資料

  • 厚生労働省「地域包括ケアシステム
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定 B004 退院時共同指導料」
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 居宅介護支援・退院退所加算/入院時情報連携加算」
  • 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業
  • 公益社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会「在宅移行の手引き 〜医療・介護の連携に基づいた退院支援に向けて〜」

まとめ

退院前カンファレンスは、入院医療から在宅・施設ケアへ患者を安全に橋渡しするための多職種連携の要です。医療保険の退院時共同指導料、介護保険の退院・退所加算など複数の加算で経済的に評価されており、参加職種それぞれが正当に算定できる構造になっています。

看護師にとっては、病棟での観察知見や医療処置の手技を地域へ正確に引き継ぐ重要な場であり、在宅側にとっては患者の全体像を入院医療チームから直接受け取れる希少な機会です。記録の保存と要約の家族交付を徹底し、退院後のサービス担当者会議へとシームレスにつなげることで、再入院の予防と本人の希望を反映した療養生活の実現につながります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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