
介護報酬1単位の地域区分とは
介護報酬の1単位は基本10円。地域区分(1級地〜7級地+その他の8区分)とサービス種別の人件費割合で10〜11.40円の幅で変動する。級地別単価表・主要都市の区分・令和6〜8年度の最新版を整理。
この記事のポイント
介護報酬の1単位は、介護保険サービスの公定価格を計算するための点数。1単位=10円を基本に、事業所が所在する地域(地域区分の8段階)とサービス種別ごとの人件費割合を組み合わせて、10円〜11.40円の幅で単価が決まります。地域区分は1級地(東京23区・上乗せ20%)から7級地(上乗せ3%)と「その他」(0%)に分かれ、令和6〜8年度版が運用中です。
目次
介護報酬1単位と地域区分の基本
介護保険サービスの公定価格(介護報酬)は、サービスごとに「単位数」が定められています。たとえば「身体介護20分以上30分未満:250単位」といった具合に、行ったサービスを単位に置き換えて集計する仕組みです。この単位数に 1単位あたりの単価 を掛けることで、事業所に支払われる介護報酬の額が決まります。
1単位の単価は全国一律ではなく、事業所が所在する市区町村に応じて変動します。理由は、東京や横浜のような大都市と地方都市・郡部では、介護職員の人件費水準やオフィス賃料・物価が大きく異なるためです。同じサービスを提供しても、人件費の高い地域では実費が膨らみます。これを公的価格に反映させる仕組みが 地域区分 です。
地域区分の根拠は厚生労働省告示で、国家公務員の地域手当(人事院規則) に準拠して定められています。地方公務員の給与水準に合わせる形で、市区町村ごとに1級地〜7級地、または「その他」のいずれかに分類されます。この分類に、サービス種別ごとの「人件費割合」(70%/55%/45%の3区分)を組み合わせて、最終的な1単位の単価が決まります。
計算式はシンプルです。支払額=サービスごとの単位数 × 地域区分・サービス種別ごとの1単位の単価。たとえば訪問介護(人件費割合70%)を1級地(上乗せ20%)の東京23区で250単位提供した場合、250 × 11.40円=2,850円が事業者への支払額となります(うち利用者負担は所得に応じて1〜3割)。地域区分は、介護報酬制度の中で「同じ仕事への対価を地域差で公平にする」役割を担っています。
級地別の上乗せ率と1単位の単価早見表(令和6〜8年度)
地域区分の8段階と、サービス種別の人件費割合(70%/55%/45%)を組み合わせた1単位の単価は次のとおりです。1級地(東京23区)と「その他」(地方郡部など)では、同じ単位数のサービスでも最大14%の支払額差が生まれます。
| 級地 | 上乗せ率 | 人件費70% (訪問介護等) | 人件費55% (通所リハ等) | 人件費45% (特養・通所介護等) |
|---|---|---|---|---|
| 1級地 | 20% | 11.40円 | 11.10円 | 10.90円 |
| 2級地 | 16% | 11.12円 | 10.88円 | 10.72円 |
| 3級地 | 15% | 11.05円 | 10.83円 | 10.68円 |
| 4級地 | 12% | 10.84円 | 10.66円 | 10.54円 |
| 5級地 | 10% | 10.70円 | 10.55円 | 10.45円 |
| 6級地 | 6% | 10.42円 | 10.33円 | 10.27円 |
| 7級地 | 3% | 10.21円 | 10.17円 | 10.14円 |
| その他 | 0% | 10.00円 | 10.00円 | 10.00円 |
サービス種別の人件費割合(3区分)
- 70%(人件費が高い):訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護
- 55%(人件費が中程度):訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護
- 45%(人件費が低め):通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、短期入所生活介護(ショートステイ)
人件費割合が高いほど、地域区分の上乗せが単価に強く反映されます。訪問系サービスは人件費依存度が高いため、都市部の事業者にとって地域区分の有利不利が経営に直結します。
主要市区町村の地域区分一覧
主要市区町村の地域区分一覧(令和6〜8年度)
地域区分は3年ごとに見直され、現行は令和6年4月〜令和9年3月までの区分が運用中です。主要都市の区分例は次のとおりです。
| 級地 | 上乗せ率 | 主な市区町村例 |
|---|---|---|
| 1級地 | 20% | 東京23区(千代田・中央・港・新宿・渋谷ほか) |
| 2級地 | 16% | 横浜市、川崎市、大阪市、調布市、町田市、狛江市、武蔵野市、三鷹市 |
| 3級地 | 15% | さいたま市、千葉市、八王子市、立川市、府中市、名古屋市、西宮市、芦屋市、宝塚市 |
| 4級地 | 12% | 京都市、神戸市、藤沢市、鎌倉市、所沢市、和光市、川口市、戸田市 |
| 5級地 | 10% | 仙台市、福岡市、広島市、北九州市、岡山市、相模原市、つくば市、宇都宮市 |
| 6級地 | 6% | 札幌市、新潟市、静岡市、浜松市、堺市、奈良市、水戸市、高崎市 |
| 7級地 | 3% | 長野市、富山市、金沢市、岐阜市、松山市、長崎市、熊本市、大分市 |
| その他 | 0% | 上記以外の地方都市・郡部全般 |
※ 実際の区分は厚生労働省告示「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」別表で公示されており、上記は代表例です。同じ都道府県内でも市町村ごとに区分が異なるため、必ず最新の告示またはWAM NET掲載の一覧で確認してください。
政令指定都市の区分はばらつきが大きい
政令指定都市20市の地域区分は、2級地(横浜・川崎・大阪)から7級地(熊本など)まで幅広く分布します。これは「政令市だから上位区分」という単純な対応ではなく、人事院の地域手当の指定基準(民間給与の高さ)を機械的に当てはめた結果です。たとえば京都市は4級地、神戸市は4級地、福岡市は5級地、札幌市は6級地と、人口規模に比例しないランクづけになっています。
介護職・事業者が押さえておきたい実務ポイント
転職・移住時に給与水準への影響を試算する
介護報酬の地域区分は、事業所の収益構造を通じて職員給与にも影響します。たとえば訪問介護事業所が「その他」(10円)地域から1級地(11.40円)に移転すると、同じサービス量で売上が14%増えます。逆に1級地の事業所で働いていた職員が「その他」地域の事業所に転職すると、施設の単価収入が下がるため、給与水準も下がりやすくなります。求人を比較する際は、月給額だけでなく 所在地の級地 も合わせて確認しましょう。
同じ都道府県内でも市町村でランクが違う
たとえば神奈川県内では、横浜・川崎は2級地、藤沢・鎌倉は4級地、その他多くの市町村は5〜6級地と、隣接する自治体でも区分が大きく異なります。「県内転職」でも勤務地によって介護報酬の単価が変わる点に注意が必要です。
処遇改善加算は地域区分の影響を受ける
介護職員処遇改善加算は「総単位数×加算率」で算定されるため、地域区分が高い地域ほど加算額の絶対値も大きくなります。たとえば月間100万単位の介護報酬を算定する事業所が、1級地(11.40円)であれば加算原資の母数は1,140万円、「その他」(10円)であれば1,000万円となり、同じ加算率でも14%の差が出ます。
事業所の所在地で判定(利用者の住所ではない)
地域区分は 事業所の所在地 をもとに判定されます。利用者がどこに住んでいるかは関係ありません。たとえば横浜市の事業所が川崎市の利用者にサービスを提供する場合は、横浜市の区分(2級地・16%)が適用されます。同一の利用者でも、利用する事業所が変わると単価が変動します。
地域区分の経過措置に注意
3年ごとの改定で級地が下がる自治体については、激変緩和のための 経過措置 が設けられる場合があります。令和6年度改定では、前回区分より上昇する場合は新区分、下降する場合は2区分上乗せ・現行区分維持・1区分上乗せから事業者・自治体が選択する経過措置が運用されています。
よくある質問
Q1. なぜ1単位の単価が10円とは限らないのですか?
介護報酬は全国一律の「単位数」と、地域・サービス種別ごとの「単価」を掛けて算出する仕組みだからです。基本単価は10円ですが、人件費・物価の高い地域では事業運営コストが膨らむため、地域区分による上乗せ(最大20%)で単価を調整しています。これにより全国どこでも同じ品質のサービスを維持しやすくなっています。
Q2. 自分の住む市町村の級地はどこで確認できますか?
厚生労働省告示「地域区分の適用地域」または独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)で公開されています。検索エンジンで「市区町村名 介護報酬 地域区分」と調べると、自治体の公式ページや業界メディアの最新一覧表が見つかります。事業者は告示の原本で確認するのが確実です。
Q3. 地域区分はいつ見直されますか?
3年に1度の介護報酬改定と同じタイミングで見直されます。現行区分は令和6年4月〜令和9年3月までで、令和9年度(2027年度)改定で次の3年間の区分が告示される予定です。級地が変わる自治体には経過措置が適用されます。
Q4. 訪問介護と特養で単価が違うのはなぜですか?
サービスごとの人件費割合が異なるためです。訪問介護はスタッフの人件費が事業コストの70%を占めるのに対し、特養(介護老人福祉施設)は45%にとどまります(残りは食材費・設備維持費など)。人件費割合が高いサービスほど、地域区分の上乗せが単価に強く反映される設計です。
Q5. 利用者の自己負担額も地域で変わりますか?
はい、変わります。介護報酬総額(単位数×単価)の1〜3割が利用者負担となるため、同じサービス量でも地域区分が高い地域ほど自己負担額も大きくなります。たとえば訪問介護を500単位利用した場合、1割負担の利用者は1級地で約570円、その他地域で500円となります。
Q6. 地域区分は介護職の給与に直接反映されますか?
制度上、地域区分の上乗せ分を給与に反映する義務はありません。ただし事業所収入が増えれば原資が拡大し、結果として給与水準にも反映されやすくなります。実際、東京都・神奈川県の大都市圏は介護職給与が全国平均より高い傾向があり、地域区分の影響と人材市場の需給バランスが両輪で作用しています。
参考資料
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まとめ
介護報酬の1単位は基本10円ですが、事業所所在地の 地域区分(1級地〜7級地+その他の8段階) と サービス種別の人件費割合(70%/55%/45%) で 10〜11.40円 の幅に調整されます。最大1.14倍の差は、都市部の人件費・物価を介護報酬に反映させるための制度設計です。級地区分は人事院の地域手当に準拠し、3年ごとの介護報酬改定で見直されます。介護職にとっては、転職先の所在地で売上単価が変わり、結果として給与水準にも影響する重要なファクターです。求人検討時は月給額に加え、勤務地の級地・人件費割合を併せて確認しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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