
介護難民とは
介護難民とは、必要な介護サービスや施設を受けられない高齢者のこと。特養待機者や2025・2040年問題、介護人材不足を厚労省データで解説します。
この記事のポイント
介護難民とは、心身の状態から介護を必要としているにもかかわらず、特別養護老人ホームなどの施設に入れない、あるいは在宅で必要な介護サービスを十分に受けられない高齢者を指す言葉です。背景には介護施設の不足、介護人材の不足、家族による支えの限界があり、「2025年問題」「2040年問題」とともに語られます。
目次
介護難民とは何か
「介護難民」は法律で定義された正式な用語ではなく、メディアや書籍で広まった社会問題を表す言葉です。一般には、要介護状態にあるのに、希望する介護施設に入所できなかったり、在宅で必要な介護サービスを受けられなかったりして、適切なケアから取り残される高齢者を指します。
具体的には、次のような状況に置かれた人が「介護難民」と呼ばれます。
- 特別養護老人ホーム(特養)に申し込んでいるが、空きがなく入所できない
- 有料老人ホームなどは費用が高く、経済的に入居できない
- 同居家族が高齢・病気・就労などで在宅介護を担えない(いわゆる「老老介護」「介護離職」)
- 地域に介護サービスの担い手が足りず、訪問介護やデイサービスを十分に利用できない
日本は世界でも例のない速さで高齢化が進んでいます。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は2024(令和6)年10月時点で29.3%に達し、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には65歳以上人口が約3,653万人、65歳以上人口は2043年に約3,953万人でピークを迎えると推計されています。高齢者が増え続ける一方で、それを支える介護のしくみが追いつかなくなることが、介護難民問題の根底にあります。
介護難民の背景にある数字
介護難民がなぜ問題になるのか、公的データで全体像を確認します。
2025年問題・2040年問題と高齢者人口
- 2025年問題:団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護の需要が急増する局面。65歳以上人口は約3,653万人に達すると推計(内閣府・令和7年版高齢社会白書)。
- 2040年問題:団塊ジュニア世代が65歳以上に入り、現役世代(生産年齢人口)が急減する局面。支え手の不足が一段と深刻になります。
特別養護老人ホームの入所待機者
厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」によると、2025(令和7)年4月1日時点で、入所を申し込みながら入所できていない待機者は全体で約22.5万人。原則的な入所対象である要介護3以上は約20.6万人で、前回(2022年度)から4.7万人・18.4%減少しました。ただし依然として20万人規模の待機者が存在し、そのうち約8.6万人は在宅で入所を待っています。都道府県別の要介護3以上の待機者は東京都が18,776人で最多です。
介護人材の不足
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月公表)によると、必要となる介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人と推計されています(2022年度の約215万人比でそれぞれ+約25万人、+約57万人)。一方で介護職員数は2023年度に初めて減少へ転じており、必要数とのギャップ=担い手不足が、介護難民を生む大きな要因になっています。
介護難民が生まれる主な原因
- 介護施設・受け皿の不足:特養は費用が比較的安く人気が高い一方、整備が需要に追いつかず、要介護3以上でも20万人規模の待機者がいます。費用の高い有料老人ホームは経済的に選びにくい人もいます。
- 介護人材の不足:施設や在宅サービスを運営する担い手が足りず、ベッドや事業所はあってもサービスを提供しきれないケースが生じます。2040年度には約272万人の介護職員が必要とされます。
- 家族介護力の低下:核家族化・単身世帯の増加・共働きにより、家庭で介護を担える人が減っています。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」、介護のために仕事を辞める「介護離職」も深刻です。
- 地域差:都市部では施設が不足しがちで待機者が多く、地方では人材・事業所そのものが不足するなど、地域によって課題の現れ方が異なります。
介護難民と医療難民・買い物難民の違い
介護難民と似た言葉の違い
| 言葉 | 意味 | 主な背景 |
|---|---|---|
| 介護難民 | 必要な介護サービス・施設を受けられない高齢者 | 施設・人材不足、家族介護力の低下 |
| 医療難民 | 必要な医療を受けられない人。病院の受け入れ先が見つからない等 | 病床削減、地域の医師・病院不足 |
| 買い物難民(買い物弱者) | 近くに店がなく日常の買い物が困難な人 | 地方の小売店撤退、交通手段の不足 |
いずれも「必要なサービスにアクセスできない」状態を「難民」と表現したものです。介護難民は、このうち介護分野に焦点を当てた言葉だと理解するとわかりやすいでしょう。
介護難民にならないための備え
個人や家族でできる現実的な対策もあります。
- 早めに要介護認定を申請する:認定を受けないと介護保険サービスは使えません。状態が気になり始めたら市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談を。
- 地域包括支援センターを活用する:高齢者の総合相談窓口で、サービスの利用や施設選びの助言を無料で受けられます。
- 特養は複数施設へ早めに申し込む:待機期間が長いため、入所対象(原則要介護3以上)になったら早めに動くことが大切です。
- 在宅サービスを組み合わせる:訪問介護・デイサービス・ショートステイなどを組み合わせ、ケアマネジャーと相談して在宅でも支えられる体制をつくります。
- 介護の担い手を増やす視点:社会全体では、処遇改善や働きやすい職場づくりで介護職を増やすことが、介護難民問題の根本的な解決につながります。
介護難民に関するよくある質問
よくある質問
Q. 介護難民は何人くらいいるのですか?
A. 「介護難民」は公式な統計用語ではないため正確な人数は定まっていません。目安として、厚生労働省の調査では2025年4月時点で特別養護老人ホームの入所待機者が要介護3以上で約20.6万人(全体で約22.5万人)おり、こうした人々が介護難民問題の中心に位置づけられます。
Q. なぜ特養は待機者が多いのですか?
A. 特養は費用が比較的安く人生の最期まで過ごせるため希望者が多い一方、施設整備や人材確保が需要に追いつかないためです。入所は申込順ではなく緊急性の高い人が優先されます。
Q. 2025年問題・2040年問題とは何ですか?
A. 2025年問題は団塊の世代が全員75歳以上となり医療・介護需要が急増する局面、2040年問題は団塊ジュニア世代が高齢期に入り支え手の現役世代が急減する局面を指します。いずれも介護難民を深刻化させる要因です。
Q. 介護難民を防ぐために国は何をしていますか?
A. 国は介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受入環境整備などの人材確保策を進めています(厚生労働省)。
参考資料
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まとめ
介護難民とは、必要な介護を受けられない高齢者を表す言葉で、特養の待機者問題、介護人材の不足、家族介護力の低下が重なって生まれます。厚生労働省の推計では2040年度に約272万人の介護職員が必要とされる一方、人材確保は年々厳しさを増しています。個人としては早めの要介護認定申請や地域包括支援センターの活用が、社会としては介護人材の確保・定着が、介護難民を防ぐ鍵となります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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