
改訂水飲みテスト(MWST)とは
改訂水飲みテスト(MWST)は3mlの冷水を口腔底に注いで嚥下を観察する5段階スクリーニング。日本摂食嚥下リハ学会の評価指針に基づく手順・点数の意味・RSSTやフードテストとの使い分けまでを看護師向けに解説。
この記事のポイント
改訂水飲みテスト(MWST:Modified Water Swallowing Test)は、3mlの冷水をシリンジで口腔底に注ぎ、嚥下動作と発声を観察して5段階で評価する嚥下スクリーニングです。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の評価指針に位置づけられ、ベッドサイドで誤嚥リスクを把握するための標準的な手技として広く用いられています。
目次
MWSTの概要
MWSTの概要と位置づけ
改訂水飲みテスト(MWST)は、もともと30mlの水を一気に飲ませて評価する「水飲みテスト(窪田法)」を、安全性に配慮して水量を3mlに減らした改訂版として標準化された嚥下スクリーニングです。冷水を用いるのは、温度刺激によって嚥下反射が誘発されやすくなるためで、わずかな水量と冷温の組み合わせにより、誤嚥が起きても被害を最小限に抑えつつ咽頭期障害の有無を判定できる設計になっています。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会が公表する『摂食嚥下障害の評価【簡易版】2015』では、ベッドサイドで実施可能なスクリーニングとして反復唾液嚥下テスト(RSST)、MWST、フードテスト(FT)の3つを並列に挙げており、MWSTはこのうち「液体での咽頭期反応」を評価する代表手技として位置づけられています。介護施設や訪問看護の現場では、誤嚥性肺炎の再発予防や食事形態の見直し判断、経口摂取再開の可否判定の入口として用いられることが多い検査です。
MWSTの実施手順
MWSTは「冷水を口腔底に注ぐ → 嚥下を観察 → 発声で湿性嗄声を確認」の3ステップで進めます。手順を踏み外すと水が直接咽頭に流れ込み、誤嚥事故の原因になるため、各工程の意味を理解して実施することが重要です。
- 姿勢調整:原則として座位または30度以上のギャッチアップ。頸部はやや前屈位とし、顎を引いて咽頭への直接流入を防ぐ。
- 3mlの冷水を準備:シリンジで冷水を3ml正確に吸い上げる。常温水ではなく冷水を用いるのは、温度刺激で嚥下反射を誘発しやすくするため。
- 口腔底に注入:シリンジの先端を舌の下(口腔底)に置き、ゆっくり注入する。舌背に置くと水が咽頭へ落下し誤嚥を招くため、必ず口腔底に入れる。
- 嚥下指示:「飲み込んでください」と声かけし、嚥下運動・呼吸変化・むせの有無を観察する。
- 発声確認:嚥下後に「あー」と発声してもらい、湿性嗄声(ガラガラ声)がないか確認する。湿性嗄声は咽頭残留・喉頭侵入の兆候。
- 反復嚥下:4点以上の場合のみ、30秒以内に空嚥下(唾液嚥下)が2回以上可能かを観察する。
- 2回まで再施行:4点以上の場合は最大2回まで繰り返し、悪い方の点数を採用する。1〜3点の判定が出た時点で再施行はせず終了する。
5段階評点と判定基準
MWSTは1〜5点の5段階で評価します。3点以下が「嚥下障害あり」、4点以上が「正常範囲」と判定するのが一般的なカットオフです。各点数の意味を正確に理解することが、食事形態の選択や次の精密検査(VF・VE)への橋渡しにつながります。
- 1点:嚥下なし、むせる、かつ/または呼吸切迫がある。明らかな嚥下障害で、経口摂取は中止すべき水準。
- 2点:嚥下あり、しかし呼吸切迫が認められる。誤嚥または喉頭侵入が強く疑われる。
- 3点:嚥下あり、呼吸は良好だが、むせるか湿性嗄声がある。咽頭残留や微少誤嚥の可能性。
- 4点:嚥下あり、呼吸良好、むせなし、湿性嗄声なし。臨床的に安全とみなせる水準。
- 5点:4点に加え、反復嚥下(空嚥下)が30秒以内に2回以上可能。咽頭クリアランスが保たれている。
3点以下の場合は、嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)といった精密検査の適応を医師に報告するのが定石です。4点でも油断は禁物で、不顕性誤嚥の可能性を排除するためにフードテスト(FT)や頸部聴診を併用する判断が求められます。
RSST・フードテストとの使い分け
RSST・フードテスト(FT)との使い分け
日本摂食嚥下リハ学会が標準化しているベッドサイド・スクリーニングは、RSST・MWST・FTの3種類です。それぞれ評価する嚥下の側面が異なるため、組み合わせて実施することで精度が高まると報告されています。
- RSST(反復唾液嚥下テスト):30秒間に空嚥下が何回できるかを甲状軟骨の触診で数える検査。道具不要・侵襲ゼロで、嚥下反射の起こりやすさをスクリーニングする。3回未満で異常。ただし意識障害や認知症で指示理解が難しい利用者には実施困難。
- MWST(改訂水飲みテスト):3mlの冷水を用い、液体嚥下時の咽頭期障害を評価する。RSSTで異常がなくても、実際の液体で誤嚥するケースを拾えるのが強み。
- フードテスト(FT):茶さじ1杯(約4g)のプリンやゼリーを嚥下させ、MWSTと同じ5段階で評価したうえで口腔内残留の有無を観察する。半固形物の処理能力(口腔期)を評価でき、食事形態の決定に直結する情報が得られる。
実務的な流れとしては、まずRSSTで嚥下反射の総体像を見て、続いてMWSTで液体の安全性を確認、最後にFTで実際の食事形態に近い性状での処理能力を判定する、という順序が定着しています。3つを通しで実施することで、誤嚥リスクの全体像が立体的に把握できます。
MWSTに関するよくある質問
Q1. MWSTは看護師が単独で実施してもよいですか?
はい、MWSTは医師の指示のもとで看護師・言語聴覚士・歯科衛生士などが実施できるスクリーニングです。介護施設や訪問看護ステーションでは、誤嚥性肺炎の既往がある利用者や食事中のむせが頻発する利用者に対し、看護師が初期評価として実施することが一般的です。ただし3点以下や全身状態の悪化があれば、速やかに医師・言語聴覚士に報告し精密検査に繋げます。
Q2. 結果はどのように記録すればよいですか?
看護記録には「実施日時/姿勢/点数(1〜5点)/むせ・湿性嗄声・呼吸変化の有無/再施行の回数と最低点」を残します。経時的に同条件で測定することで、嚥下機能の変化を客観的に追跡でき、食事形態変更やリハビリ計画の根拠資料になります。LIFEへの提出が必要な経口維持加算・口腔機能向上加算の算定根拠としても有用です。
Q3. 誤嚥のリスクを最小限にするコツは?
第一に姿勢調整(座位もしくは30度以上のギャッチアップ・頸部前屈)を徹底し、シリンジは口腔底に入れ舌背に置かないこと。第二に冷水を「ゆっくり」注入すること。第三に1点・2点・3点と判定された時点で再施行せず終了し、それ以降は経口で水分を与えないこと。誤嚥が起きた場合はすぐ吸引できるよう吸引器を手元に準備しておきます。
Q4. 認知症が進んだ利用者でも実施できますか?
指示理解が困難な場合は誤嚥リスクが高くなるため、安易な実施は避けます。日本摂食嚥下リハ学会も意識障害や重度認知症ではスクリーニングの判定が困難であると示しており、まずは口腔ケアや姿勢調整など環境面の介入から始め、必要に応じて医師と相談のうえ嚥下内視鏡検査(VE)など精密検査を選択します。
参考資料
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まとめ
改訂水飲みテスト(MWST)は、3mlの冷水で液体嚥下の安全性を5段階評価する標準スクリーニングです。座位調整・口腔底注入・湿性嗄声確認の3工程を正確に行い、3点以下なら経口摂取を中止し精密検査につなぐのが安全な運用の基本。RSSTやフードテストと組み合わせることで誤嚥リスクの全体像が把握でき、介護施設・訪問看護の現場で誤嚥性肺炎の予防と食事形態の最適化に直結する重要な手技です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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