
在宅酸素濃縮器のオン・オフは医行為|厚労省、介護職員の実施を改めて否認
厚労省は2026年5月15日の規制改革推進会議ワーキング・グループで、在宅酸素濃縮器のオン・オフと流量変更は医師・看護師に限られる医行為であり、介護職員は喀痰吸引等3号研修修了者でも実施できないとの取り扱いを示した。介護現場の実務影響と利用者・家族への影響をやさしく整理する。
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厚生労働省は2026年5月15日、規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキング・グループで、在宅酸素濃縮器のオン・オフと流量変更は医師・看護師しか行えない医行為であり、介護職員は実施できないとの取り扱いを改めて示しました。同会議では介護現場で実施頻度が高い13行為について検討した結果、非医行為として整理されたのは4行為のみで、酸素濃縮器の操作・ボンベ切替え・インスリン注射・摘便など9行為は医行為として残りました。kaigonews読者の介護職にとっては、在宅HOT利用者を受け持つ際の業務範囲と医療職連携の組み立て直しが必要になります。
目次
解説動画
在宅酸素療法(HOT)を利用する高齢者は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎の増加とともに在宅介護の現場で珍しくない存在になっています。利用者宅を訪れた介護職員が、機器のアラーム音や酸素濃縮器の停止に気づいたとき、「自分でスイッチを入れていいのか」「処方された流量に戻していいのか」と判断に迷う場面は少なくありません。
2026年5月15日に開かれた第12回規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」では、まさにこの種のグレーゾーンを解消するため、介護現場で実施頻度の高い13行為について厚生労働省が見解を示しました。そのうち在宅酸素濃縮器のオン・オフと流量変更は「医療従事者以外には困難」と整理され、介護職員は喀痰吸引等3号研修を修了していても実施できないことが明確になりました。
本記事では、第12回ワーキング・グループに提出された厚労省資料と「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」を一次ソースに、通知の主要内容、介護現場の実務影響、介護職ができる支援の範囲、そして在宅HOT利用者の家族介護者が知っておくべき相談先までを整理します。
厚労省ワーキング・グループ報告の主要内容|13行為のうち9行為は医行為のまま
「医療従事者以外は困難」と明言された酸素濃縮器の操作
厚労省はワーキング・グループに対し、在宅酸素濃縮器の電源オン・オフと流量変更について「医師・看護師しか行えない医行為に当たり、介護職員は実施できない」と回答しました。理由として、酸素は治療薬と同じ位置づけであり、流量が不適切だと低酸素血症や二酸化炭素ナルコーシス(CO2貯留による意識障害)など命に関わる急変リスクが直結することが挙げられています。
同会議の議論はYouTubeの規制改革チャンネルで生配信され、議事録は内閣府サイトで後日公開されます。介護職向けに重要なのは、酸素濃縮器の操作については2005年(平成17年)の医行為通知以降一貫した取り扱いが今回再確認された、という整理点です。
13行為のうち非医行為とされたのは4行為のみ
規制改革推進会議は、介護職員が業務上判断に迷う代表的な13行為のリストを厚労省に示し、それぞれが医行為に当たるかどうかの整理を求めていました。検討対象は薬剤・経管栄養・排泄・酸素・血糖測定など多岐にわたります。
結果として、令和7年12月26日付の医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その3)」(医政発1226第12号)で「原則として医行為ではない」と整理されたのは、(1)お薬カレンダーへの一包化医薬品セット、(2)服薬直前のPTPシートからの薬剤取り出し、(3)専門的管理が不要と医師・看護職員が確認した皮膚への経皮吸収型製剤の貼付、(4)医師・看護職員立会いのもとでの蓄尿バッグとカテーテルの接続、の4行為に限られました。
医行為として残った9行為|在宅HOTに直結するもの
残る9行為は引き続き医行為として、介護職員の実施が認められません。具体的には、在宅酸素濃縮器のオン・オフと流量変更、酸素ボンベへの切り替え、インスリン注射、摘便、グリセリン浣腸、経管栄養チューブからの薬物注入、真皮を超える褥瘡処置などです。これらは、判断ミスが利用者の生命に直結することと、判断の前提となる病態評価そのものが医療職の業務領域に踏み込むためです。
喀痰吸引等研修第3号研修(特定の利用者を対象とする9時間研修)を修了した介護職員でも、認められるのは喀痰吸引と経管栄養注入の本体行為に限られ、酸素濃縮器の操作には範囲が及びません。喀痰吸引等3号研修の対象行為については別記事「喀痰吸引等研修 第3号研修とは」で詳述しています。
介護現場の実務影響|介護職にできる支援の範囲
機器に直接触れる操作はすべて医療職へ
厚労省「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」のNo.14・15・17では、在宅酸素療法に関連して介護職員が実施可能な行為が具体的に列挙されています。これと今回のワーキング・グループ報告を併せて読むと、介護職にできるのは大きく4つの範囲に整理できます。
1つ目は機器の使用環境を整える行為で、加湿瓶の蒸留水交換、酸素濃縮器の拭き取り清掃、延長チューブの整理整頓などが含まれます。2つ目は、酸素を流入していない状態での酸素マスクや経鼻カニューレの装着準備、および利用者が酸素から離脱した後の片付けです。
カニューレが外れた時に「戻す」のは条件付きで可
3つ目は、酸素流入中のカニューレがずれてしまい、肢体不自由や睡眠中など自力で戻せない利用者の場合に、元の位置に戻す行為です。これは「酸素流入の開始や停止」ではなく「装着位置を元に戻すだけ」のため、ガイドラインNo.17で介護職員にも認められています。
ただし、機械のスイッチを押す行為や、ダイヤルを回して流量を変える行為はこの範囲に入りません。流量設定そのものを変更する場合は、利用者が酸素マスクを装着していない(=酸素を吸っていない)状態で、あらかじめ医師から指示された数値に合わせる準備作業に限り認められます(ガイドラインNo.14)。
4つ目は観察・記録・医療職への連絡
4つ目はもっとも介護職に求められる役割で、利用者のバイタルサインや呼吸状態の観察、SpO2モニターの数値確認、家族からの聞き取り、そして異変があったときの医療職への連絡です。在宅酸素療法の利用者は容態の変化が急で、息切れ・チアノーゼ・意識レベルの低下に介護職が最初に気づくケースが多いため、観察と即時連絡は文字通り命に直結します。在宅酸素療法そのものの基礎知識は「在宅酸素療法(HOT)とは」を参照してください。
独自見解|「機器に触れない」を業務標準にする運用設計を
線引きは「機器そのもの」と「機器周辺」で分ける
今回の整理が現場に突きつけた本質的なポイントは、「介護職員が安全に介入できる範囲は、機器そのものではなく機器周辺である」という線引きです。kaigonewsとしては、訪問介護事業所や有料老人ホームで在宅HOT利用者を受け持つ際、業務手順書とアセスメントシートを以下の3層で整理し直すことを提案します。
第1層は介護職が主体で行う行為(清掃・整理・観察・記録)、第2層は医療職と連携して行う行為(カニューレを戻す・酸素マスクの装着準備)、第3層は医療職に必ず連絡する行為(電源オン・オフ・流量変更・ボンベ切替え)。この区分を訪問前のサービス担当者会議で全員が共有しておけば、現場で「これは自分が触っていい操作か」を迷わずに済みます。
「やってあげたい」気持ちが事故と責任問題の入口になる
介護職員の側に在宅HOT利用者を担当した経験があると、「電源が落ちている=息苦しいに違いない」と思い込んで反射的にスイッチを入れたくなる場面が想像できます。しかし、流量変更や電源操作は、利用者の病態や直近のSpO2値、医師の指示書を踏まえた医学的判断と一体です。介護職員が善意で操作した結果、過剰な酸素投与によりCO2ナルコーシスを誘発した事例は過去にも報告されており、今回の通知は現場の「やってあげたい」気持ちを安全側に引き戻すための明確な根拠を与えたと位置づけられます。
同時に、操作してしまった場合の責任問題(事業者の管理責任、保険適用、行政処分)の所在を明確にする意味でも、業務範囲を文書で共有しておくことは介護職員自身を守ることにつながります。在宅HOTを担当する事業所は、年に1度はこの区分の周知研修を実施することが望ましいでしょう。
看護職員との連携導線をどう設計するか
現実的には、訪問介護員が利用者宅を訪れたタイミングで機器のトラブルに遭遇した場合、最短で対応できるのは訪問看護ステーションの看護師か、24時間対応のHOT機器メーカーのサポートデスクです。サービス担当者会議の段階で、(1)誰に・(2)どの順序で・(3)どの連絡手段で連絡するかを利用者の状態別にフローチャート化しておくと、現場の判断負荷が劇的に下がります。特定行為研修を修了した看護師がいる訪問看護ステーションを優先的に連携先にする運用も、今後の選択肢として広がっていくと考えられます。
独自見解|家族介護者が知っておくべき相談先と緊急時の備え
家族は機器を操作できるが、過信は禁物
在宅酸素濃縮器の操作は、利用者本人と「指導を受けた家族」については医行為に該当しないとされており、日常的に家族が電源を入れ直したり流量を確認したりすることは可能です。ただし今回の整理を機に家族介護者にも改めて確認していただきたいのは、流量変更は「医師が処方した数値の範囲内」に限られるという点です。
息苦しそうに見えるからとダイヤルを回して流量を上げると、慢性呼吸不全の利用者ではCO2貯留により逆に意識レベルが落ちる恐れがあります。「処方を変えたい」と感じた場合は、まずかかりつけ医か訪問看護ステーションへの連絡を選択肢の筆頭に置いてください。NPPV(非侵襲的陽圧換気)を併用している場合は、機器の設定変更そのものが医療行為になるため、家族判断での調整は避けるのが原則です。
訪問看護を組み合わせる運用が現実解になる
在宅HOT利用者を24時間家族だけで支えるのは現実的に困難です。介護保険サービス(訪問介護・通所介護)に加えて、医療保険または介護保険の訪問看護を週1〜数回組み合わせる運用が、機器管理と容態観察の両面で有効です。訪問看護師は流量変更や酸素ボンベ切替えを実施でき、急変時には医師への連絡判断も担えます。
ケアマネジャーがケアプランを作成する際、HOT利用者については原則として訪問看護を組み込む方向で相談することをお勧めします。費用負担が気になる場合も、医療保険適用の訪問看護は要介護認定区分の支給限度額の対象外で計画可能なため、訪問介護の利用枠を圧迫しません。
緊急時の連絡フローを冷蔵庫に貼る
機器停止や息苦しさ悪化など、いざというときの連絡先は1枚の紙にまとめて利用者宅の冷蔵庫など見やすい場所に貼っておきます。記載すべきは、(1)かかりつけ医と訪問看護ステーションの直通番号、(2)HOT機器メーカーの24時間サポートダイヤル、(3)救急通報の判断目安(チアノーゼ・意識レベル低下・呼吸数の急増など)、(4)夜間休日の対応先、の4項目です。介護職員が訪問する事業所であれば、サービス提供責任者がこの掲示物の最新化を月1回チェックする運用も推奨されます。
参考資料・出典
- [1]在宅酸素濃縮器のオン・オフ、介護職員実施できず 厚労省「医療従事者以外は困難」- CBnewsマネジメント
- [2]第12回 健康・医療・介護ワーキング・グループ 議事次第- 内閣府 規制改革推進会議
- [3]
- [4]原則として医行為ではない行為に関するガイドライン- 厚生労働省
- [5]在宅酸素療法における火気の取扱いについて- 厚生労働省
- [6]在宅呼吸ケア白書 COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者アンケート調査- 日本呼吸器学会
まとめ
厚生労働省は2026年5月15日の規制改革推進会議ワーキング・グループで、在宅酸素濃縮器のオン・オフと流量変更は医師・看護師に限られる医行為であり、介護職員は喀痰吸引等3号研修を修了していても実施できないと改めて明示しました。13行為を検討した結果、非医行為に整理されたのはお薬カレンダーへのセットなど4行為のみで、酸素濃縮器の操作・インスリン注射・摘便など9行為は医行為として残ったことになります。
介護現場としては、機器周辺の清掃・観察・記録・医療職への連絡を業務の主軸に据え、機器の電源や流量に触れる行為は訪問看護や家族と連携して実施する運用設計が求められます。家族介護者の側も、訪問看護を組み合わせる前提でケアプランを組み直すこと、緊急時連絡先を1枚にまとめて掲示することなどが現実的な対応となるでしょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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