
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の定義・4機能(通い・泊まり・訪問介護・訪問看護)・小多機との違い・月額包括報酬・人員基準・利用方法を厚労省データで整理。
この記事のポイント
看護小規模多機能型居宅介護(看多機・複合型サービス)とは、「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」の4機能をひとつの事業所が組み合わせて提供する地域密着型サービスです。2012年の介護報酬改定で創設され、医療依存度の高い要介護者や退院直後で状態が不安定な人、看取り期の人が住み慣れた自宅で暮らし続けることを支えます。月額包括報酬で要介護度別に料金が決まり、登録定員は29人以下、看護師は常勤換算2.5人以上配置されます。
目次
看護小規模多機能型居宅介護の制度位置づけ
看護小規模多機能型居宅介護(略称:看多機/かんたき)は、介護保険法上の地域密着型サービスに位置づけられる在宅サービスです。2012年(平成24年)の介護報酬改定で「複合型サービス」として創設され、2015年に現在の名称へと変更されました。
従来の在宅介護では、訪問介護・訪問看護・通所介護・短期入所をそれぞれ別事業所と個別契約する必要があり、要介護度が重くなるほど契約・連絡調整の負担が利用者と家族に集中していました。看多機は「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」の4機能をひとつの事業所で一体的に提供することで、医療依存度の高い在宅生活者でも顔なじみのスタッフによる切れ目のないケアを実現します。
地域密着型サービスのため、利用できるのは原則として事業所が所在する市町村の住民のみです。指定権者も都道府県ではなく市町村が担っています。対象者は要介護1〜5の認定を受けた人に限られ、要支援1・2の人は利用できません(このうち要支援は小規模多機能型居宅介護の「介護予防」枠で対応されます)。
看多機は主治医・訪問診療医との連携を前提に運営され、医療依存度の高い人や退院直後で容態が安定しない人、最期を自宅で迎えたい看取り期の人にとって有力な選択肢となります。事業所のケアマネジャー(看多機ケアマネ)が利用者ごとの計画を作成・管理するため、利用開始にあたってはこれまで担当だった居宅介護支援事業所との契約はいったん解除し、看多機ケアマネに引き継ぐことが必要です。
4機能の内容と月額包括報酬(2024年度改定単価)
提供される4機能
- 通い(デイサービス機能):日中、事業所に通って入浴・食事・機能訓練・レクリエーションを受ける。利用日数や時間はケアプランで柔軟に組み合わせ可能。
- 泊まり(ショートステイ機能):事業所に宿泊して夜間ケアを受ける。家族のレスパイト、急な体調変化、退院直後の見守りに対応。
- 訪問介護:スタッフが自宅を訪問し、身体介護(入浴・排泄)や生活援助(調理・掃除)を提供。
- 訪問看護:看護師が主治医の指示書に基づき医療処置(喀痰吸引・経管栄養・点滴・褥瘡管理など)を実施。24時間対応が原則。
月額包括報酬(要介護度別・1単位=原則10円、地域区分により増減)
看多機の介護報酬は日割りや回数別ではなく月額包括制です。1か月にどれだけ通い・泊まり・訪問を利用しても、要介護度別の月額単位数が上限となります(自己負担は1〜3割)。
| 要介護度 | 同一建物以外(月額) | 同一建物居住者(月額) |
|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 11,214単位 |
| 要介護2 | 17,415単位 | 15,691単位 |
| 要介護3 | 24,481単位 | 22,057単位 |
| 要介護4 | 27,766単位 | 25,017単位 |
| 要介護5 | 31,408単位 | 28,298単位 |
※ 算定月における提供回数が週平均1回未満、または登録者1人あたり平均回数が週4回未満の場合は所定単位数の70%に減算されます(2024年度改定)。
※ 上記の介護報酬以外に、食費・宿泊費・おむつ代等は実費負担になります。
事業所の定員
- 登録定員:29人以下(1事業所あたりの上限)
- 通い定員:登録定員の半数〜18人以下
- 宿泊定員:通い定員の3分の1〜9人以下
- 訪問定員:制限なし(登録者全員に対して必要時に提供)
人員配置基準(主なもの)
- 看護職員:常勤換算で2.5人以上(うち1人以上は常勤の保健師または看護師)
- 介護職員:日中は通い利用者3人につき1人以上、訪問はサービス提供に必要な数
- 夜間:宿泊・夜間の訪問対応のため夜勤1人+宿直1人が必要
- ケアマネジャー:専従1人以上(兼務・非常勤可)
- 管理者:常勤専従1人(特養・老健等の介護経験3年以上+認知症ケアの研修修了等の要件あり)
小規模多機能型居宅介護・定期巡回サービスとの違い
看多機は名称が似た在宅サービスと混同されやすいですが、「看護機能の有無」と「医療依存度の高い人への対応力」が決定的な違いです。
看多機 vs 小多機(小規模多機能型居宅介護)
| 比較項目 | 看多機(看護小規模多機能) | 小多機(小規模多機能) |
|---|---|---|
| 提供サービス | 通い・泊まり・訪問介護・訪問看護の4機能 | 通い・泊まり・訪問介護の3機能(訪問看護なし) |
| 対象者 | 要介護1〜5のみ(要支援は対象外) | 要支援1・2、要介護1〜5 |
| 看護師配置 | 常勤換算2.5人以上(1人は常勤必須) | 常勤換算1人以上(時間帯による配置で可) |
| 医療処置対応 | 喀痰吸引・経管栄養・点滴・看取り等に対応 | 原則として医療処置は外部の訪問看護に依頼 |
| 創設年 | 2012年(複合型サービスとして) | 2006年 |
| 1か月の費用感(要介護3・自己負担1割) | 約24,500円+食費等 | 約22,300円+食費等 |
選び方の目安:胃ろう・気管切開・在宅酸素・終末期など医療ケアが日常的に必要なら看多機。日常生活支援が中心で医療処置が少ないなら小多機が候補になります。
看多機 vs 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は24時間「訪問」を組み合わせるサービスであり、通いや泊まりの機能はありません。日中も自宅で過ごす生活が成り立っている人で、夜間や緊急時の訪問ニーズが高いケースに向きます。一方、看多機は通い・泊まりも含めて生活全体を組み立てるサービスで、独居や認知症で日中の見守りが必要な人、家族介護者の負担軽減を必要とする世帯に向きます。
看多機の利用までの流れ
看多機は既存の居宅介護支援事業所や訪問サービスとの契約解除を伴う「乗り換え型」のサービスです。利用までの典型的なステップは次のとおりです。
- 要介護認定の取得:未取得の場合は市町村窓口で申請。要介護1〜5の判定が前提となります。
- 市町村の事業所一覧で探す:地域密着型のため、原則として居住市町村内の事業所のみ利用可能。地域包括支援センターやWAM NETで検索します。
- 事業所の見学・相談:通いの雰囲気、宿泊スペース、医療連携体制(主治医との情報共有方法、24時間対応の実態)を確認します。
- 主治医・現ケアマネとの調整:これまで利用していた居宅介護支援事業所・訪問介護・訪問看護・デイサービス等との契約を一旦解除する必要があります。
- 看多機との契約・看多機ケアマネによる計画作成:事業所所属のケアマネジャーが新たに居宅サービス計画と看多機計画を作成します。
- サービス開始:通い・泊まり・訪問のスケジュールはケアプランに沿って柔軟に組み替え可能。月途中の調整も電話1本で完結します。
注意点:看多機の利用中は、原則として他事業所の訪問介護・訪問看護・通所介護・短期入所を併用できません(外部の訪問看護は主治医が必要と判断した場合のみ例外的に併用可)。福祉用具貸与・住宅改修・訪問リハビリ・訪問入浴は併用できます。
看多機を選ぶときのチェックポイント
メリット
- 顔なじみのスタッフが医療・介護を一体提供。事業所内で情報共有が完結するため、申し送りミスが起きにくい。
- 月額定額のため利用回数を増やしても追加負担なし(食費・宿泊費等の実費は別)。容態悪化時に通い・泊まり・訪問を一気に増やせる安心感がある。
- 退院直後・看取り期に強い。主治医・訪問診療と連携した24時間体制で、状態変化に即応できる。
- 家族のレスパイト(休息)に泊まりを柔軟活用できる。事前予約だけでなく緊急の宿泊にも対応可能な事業所が多い。
デメリット・注意点
- 既存の訪問看護・デイサービス・ケアマネとの契約解除が必須。長年の信頼関係をリセットする心理的負担が大きい。
- 軽度者ほど月額負担が割高に感じることがある。要介護1〜2で利用頻度が少ない人は、個別契約のほうが安く済むケースも。
- 事業所数がまだ少ない。WAM NETの集計で全国に約1,000か所程度(2024年時点)と地域偏在がある。
- 外部の訪問看護・デイ等を併用できない。長年の主治医や顔なじみの訪問看護師を残したい場合は不向き。
事業所選びで確認したい質問
- 夜間の宿泊と訪問の両方を1人の夜勤者で回している時間帯はあるか(緊急時の対応力)
- 主治医・訪問診療医との情報共有方法(連絡ノート・MCS・LINE WORKS等)
- 看取りの実績件数と看取り加算の算定状況
- 緊急時の宿泊空きをどの程度確保しているか
よくある質問
Q. 看多機と訪問看護を併用できますか?
A. 原則として併用できません。看多機の月額包括報酬には訪問看護が含まれているためです。ただし、主治医が「専門的な処置のため別の訪問看護ステーションの介入が必要」と判断した場合(特別訪問看護指示書発行時など)は例外的に併用可能です。
Q. 要支援1・2でも看多機を利用できますか?
A. 利用できません。看多機の対象は要介護1〜5に限定されています。要支援の方は小規模多機能型居宅介護の「介護予防」枠を検討してください。
Q. 住んでいる市町村以外の看多機は利用できますか?
A. 地域密着型サービスのため、原則として事業所が所在する市町村の住民のみ利用できます。隣接市町村の事業所を使いたい場合は、両市町村の協議による特例利用が認められるケースがあります。
Q. 看多機の費用は月額いくらくらいになりますか?
A. 要介護3で同一建物以外居住・1割負担なら、介護報酬部分は月額約24,500円です(地域区分により10〜20%増減)。これに食費・宿泊費・おむつ代等の実費が加算されます。要介護5なら介護報酬部分は約31,400円が目安です。
Q. 看取り期にも対応してくれますか?
A. 看多機の多くは在宅看取りに対応しており、ターミナルケア加算も算定されます。事業所選びの際は看取り実績の有無、主治医・訪問診療との連携体制、家族への精神的サポート方針を必ず確認してください。
参考資料
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まとめ
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通い・泊まり・訪問介護・訪問看護の4機能を1事業所に集約した地域密着型サービスです。医療依存度の高い人や退院直後、看取り期の在宅生活を、月額包括報酬と顔なじみのスタッフによる24時間体制で支えます。要介護1〜5限定、登録定員29人以下、看護師は常勤換算2.5人以上といった基本要件を踏まえ、既存の居宅サービスから乗り換える価値があるかをケアマネ・主治医と相談しながら判断するとよいでしょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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