
基本チェックリストとは
基本チェックリストは、介護予防・日常生活支援総合事業の対象者を判定する25項目の質問票。IADL・運動・栄養・口腔・閉じこもり・認知・うつの7領域を測定し、要介護認定を経ずにサービス利用へつなげます。判定基準と活用ルートを解説。
この記事のポイント
基本チェックリストは、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の対象者を判定するために厚生労働省が定めた25項目の質問票です。IADL・運動機能・栄養・口腔機能・閉じこもり・認知機能・うつ傾向の7領域を「はい/いいえ」で回答し、領域ごとの基準を満たすと「事業対象者」として、要介護認定を経ずに介護予防サービスを利用できます。地域包括支援センターの初期相談で活用される簡略化された判定ツールです。
目次
基本チェックリストの位置づけと役割
基本チェックリストは、2015年の介護保険制度改正で本格的に導入された「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の入口となる判定ツールです。厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」に様式が定められており、全国の市町村が共通フォーマットで運用しています。
従来、介護予防サービスを利用するには市町村に介護保険の要支援認定を申請し、訪問調査・主治医意見書・介護認定審査会という長い手続きを経る必要がありました。総合事業では、生活機能の低下が疑われる高齢者について基本チェックリストで判定し、基準を満たせば「事業対象者」として認定し、要支援認定を待たずに訪問型・通所型サービスを開始できます。
主に活用されるのは 地域包括支援センター や市町村窓口で、相談に訪れた高齢者本人・家族・ケアマネジャーが面談形式で記入します。所要時間は10〜15分程度で、家族や支援者が代わりに回答することもできますが、本人の生活実態を反映することが原則です。判定結果は事業対象者の認定だけでなく、フレイル(虚弱)の早期発見や、本人への生活機能改善の動機づけにも使われます。
25項目の構成(7領域)
基本チェックリストは以下の7つの生活機能領域を、合計25項目で測定します。質問番号と項目数の対応関係を理解することで、どの領域でリスクが高いかを把握しやすくなります。
- No.1〜5:IADL(手段的日常生活動作・5項目) — バス・電車での外出、日用品の買い物、預貯金の出し入れ、友人宅への訪問、家族や友人の相談に乗ること
- No.6〜10:運動機能(5項目) — 階段の昇降、椅子からの立ち上がり、15分連続歩行、過去1年の転倒経験、転倒への不安
- No.11〜12:栄養状態(2項目) — 過去6か月の2〜3kg以上の体重減少、BMI 18.5未満(身長・体重から算出)
- No.13〜15:口腔機能(3項目) — 半年前と比べて固いものが食べにくい、お茶や汁物でむせる、口の渇きが気になる
- No.16〜17:閉じこもり(2項目) — 週1回以上の外出の有無、昨年と比べて外出回数が減少しているか
- No.18〜20:認知機能(3項目) — 周囲から物忘れを指摘される、自分で電話番号を調べて電話をかける、今日が何月何日かわからない時がある
- No.21〜25:うつ傾向(5項目) — 充実感がない、楽しみが減った、以前は楽にできたことが面倒、自分が役立つ人間と思えない、わけもなく疲れたような感じがする(いずれも「ここ2週間継続」かを基準に判定)
回答形式は項目によって「はい/いいえ」もしくは「0/1」の2択で、リスクのある回答に1点をカウントします。No.11の体重減少とNo.12のBMIはセットで栄養領域を判定するため、両方該当の場合に加点します。
事業対象者の判定基準
厚生労働省ガイドラインに基づく事業対象者の判定基準は、領域ごとに以下のいずれか1つでも該当すれば対象となります。総合点ではなく「領域別の該当」で判断するのが特徴です。
| 領域 | 対象項目 | 事業対象者の該当基準 |
|---|---|---|
| 生活機能全般 | No.1〜20(20項目) | 10項目以上に該当 |
| 運動機能 | No.6〜10(5項目) | 3項目以上に該当 |
| 栄養状態 | No.11・12(2項目) | 2項目すべてに該当(体重減少+BMI低値) |
| 口腔機能 | No.13〜15(3項目) | 2項目以上に該当 |
| 閉じこもり | No.16・17 | No.16に該当(週1回以上外出していない) |
| 認知機能 | No.18〜20(3項目) | 1項目以上に該当 |
| うつ傾向 | No.21〜25(5項目) | 2項目以上に該当(2週間継続が条件) |
例えば、運動機能だけで3項目該当した場合も、認知機能で1項目該当した場合も、それぞれ単独で事業対象者となります。複数領域に該当する人ほど包括的な支援計画が必要と判断されます。
うつ傾向のNo.21〜25については、その場限りの気分の落ち込みではなく「ここ2週間継続している」ことを判定時に必ず確認します。一時的な体調不良や環境変化による回答ぶれを排除し、医療的な介入を要するうつ病スクリーニングと連動させる設計です。
要支援認定との違い
基本チェックリストと要支援認定(要介護認定)は、どちらも介護予防サービス利用の入口になりますが、目的・手続き・利用できるサービス範囲が異なります。
| 比較項目 | 基本チェックリスト | 要支援認定 |
|---|---|---|
| 判定主体 | 地域包括支援センター・市町村窓口 | 市町村の介護認定審査会 |
| 必要書類 | チェックリスト1枚(10〜15分) | 申請書・主治医意見書・訪問調査 |
| 所要期間 | 即日〜数日 | 原則30日(実態は1〜2か月) |
| 判定区分 | 事業対象者/非該当 | 要支援1〜2/要介護1〜5/非該当 |
| 利用できるサービス | 総合事業(訪問型・通所型・一般介護予防) | 介護予防給付+総合事業+介護給付 |
| 有効期限 | 原則なし(自治体により再判定運用あり) | 3〜36か月(更新制) |
| 適合する高齢者像 | 生活機能低下が軽度・予防重視 | 明確な介助が必要・福祉用具や訪問看護も必要 |
基本チェックリストは「短時間で総合事業の入口を判断する」スクリーニング機能を、要支援認定は「給付対象としての公的認定」を担います。福祉用具貸与・訪問看護・短期入所など介護予防給付のサービスが必要な人は、基本チェックリストでは利用できないため、要支援認定の申請が必須です。一方で「掃除や買い物の支援」「通所型のデイサービス」だけで十分な人は、基本チェックリストで素早く事業対象者になり、サービス開始までの待機期間を短縮できます。
基本チェックリストを使った申請ルート
地域包括支援センターでの相談から、事業対象者としてサービスを利用するまでの流れは次の通りです。要支援認定ルートと比べて、簡略化されたフローになっています。
- 地域包括支援センター・市町村窓口へ相談
本人・家族・近隣住民・民生委員などからの相談を受け付け。電話や訪問でも対応可能。 - 初期アセスメントと意向確認
センター職員(保健師・社会福祉士・主任ケアマネ)が生活状況をヒアリングし、希望するサービス内容を確認。福祉用具や訪問看護を希望する場合は要支援認定申請へ案内。 - 基本チェックリスト記入
25項目に回答。本人が回答に困る場合は家族同席や代筆も可能。 - 判定(事業対象者・非該当)
領域別基準に基づき即時判定。事業対象者と判断されればその場で対象者登録、介護保険被保険者証に「事業対象者」と記載される自治体も多い。 - 介護予防ケアマネジメント(ケアプラン作成)
地域包括支援センターが第1号介護予防支援事業として、利用者の希望と判定結果を踏まえてケアプランを作成。 - サービス開始
訪問型サービス(掃除・洗濯・買い物等)、通所型サービス(運動・口腔ケア・栄養改善等)、一般介護予防事業(住民主体の通いの場)から利用開始。 - 定期的なモニタリングと再判定
3か月〜6か月ごとにケアマネジメントで状態を確認。状態悪化があれば要支援認定申請に切り替える。
要支援認定の場合は、申請から認定通知まで原則30日(実態1〜2か月)を要しますが、基本チェックリスト経由なら相談当日〜数日でサービス開始が可能です。一方、認知症の進行が明確な人、医療連携が必須の人は、最初から要支援・要介護認定申請に進む方が適切なケースもあります。
地域包括支援センター・現場での活用ポイント
基本チェックリストは事業対象者の判定だけでなく、地域における高齢者支援の実務で多面的に活用されます。
- フレイル早期発見のスクリーニング
運動機能・栄養・口腔の3領域は「フレイル(虚弱)」を構成する身体的要素と重なるため、地域住民健診や介護予防教室の参加者全員に実施し、要介護化リスクの早期把握に使う自治体が増えている。 - 住民主体の通いの場の参加候補抽出
事業対象者には届かないが該当項目が複数ある「予備群」を、一般介護予防事業の体操教室・サロンに誘う材料になる。 - 本人への気づき・行動変容のきっかけ
「閉じこもり」や「口腔機能」など本人が自覚しにくい領域の問題を可視化し、生活改善への動機づけになる。回答結果を本人に見せながら助言する地域包括支援センターも多い。 - ケアマネジャー・サービス事業所との情報共有
判定結果はケアプラン作成の客観的根拠になる。介護予防ケアマネジメントの「課題分析」項目に紐づけて活用すると、目標設定が具体化しやすい。 - 多職種連携でのリスク評価
口腔機能で該当が多い場合は歯科衛生士、栄養で該当が多い場合は管理栄養士の関与を検討するなど、専門職へのつなぎ役にもなる。
注意点として、基本チェックリストは「主観的回答」に依存するため、本人の自己評価が実態より楽観的・悲観的にぶれることがあります。面談時の観察所見(歩行状態・会話・身だしなみ等)と組み合わせて総合判断するのが現場の運用です。
よくある質問
Q1. 基本チェックリストはどこで受けられますか?
お住まいの地域を担当する地域包括支援センター、または市町村の介護保険窓口で受けられます。電話で相談予約をすると、職員が訪問して実施してくれる自治体もあります。費用は無料です。
Q2. 家族が代わりに回答してもいいですか?
本人が認知症などで回答が困難な場合は、同居家族や日常の様子をよく知る人が代理回答できます。ただし本人の生活実態を正確に反映することが原則で、本人の同席が望ましいとされています。
Q3. 基本チェックリストで非該当だった場合は?
事業対象者にはなりませんが、住民主体の通いの場や一般介護予防事業(誰でも参加できる体操教室・サロン)は引き続き利用できます。状態が変化したら再度チェックリストを受けたり、要支援認定を申請することも可能です。
Q4. 事業対象者になった後、要支援認定に切り替えられますか?
切り替え可能です。福祉用具貸与や訪問看護など総合事業の範囲外サービスが必要になった時点で、市町村窓口に要支援認定を申請します。事業対象者の判定経験は要支援認定の審査結果には直接影響しません。
Q5. 基本チェックリストに有効期限はありますか?
厚労省ガイドラインには明確な有効期限の定めはありませんが、自治体によっては6か月〜1年ごとの再判定を運用しています。状態が変化した場合は随時再判定が可能です。
Q6. 事業対象者になると介護保険料は上がりますか?
変わりません。基本チェックリスト経由の認定は介護保険の要支援・要介護認定ではなく、総合事業利用のための判定なので、保険料区分への影響はありません。
参考資料
- 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」(基本チェックリスト様式を含む)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000192992.pdf - 厚生労働省「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1c_0001.pdf - 厚生労働省「基本チェックリスト様式(表4)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1f_0005.pdf - 八王子市「基本チェックリスト運用マニュアル 令和2年3月改訂版」(自治体運用例)
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/001/sogojigyo_kihoncheck_d/fil/checklist_manual.pdf - いわき市「基本チェックリスト運用マニュアル」(自治体運用例)
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1477975526354/simple/tyekkurisutomanyuaru.pdf - 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「基本チェックリストとは」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-shien/kihonchekkurisuto.html
まとめ
基本チェックリストは、25項目の質問で7つの生活機能領域を評価し、介護予防・日常生活支援総合事業の事業対象者を判定する厚労省標準ツールです。要支援認定より短時間で総合事業のサービス利用へつなげられ、地域包括支援センターの初期相談、フレイル早期発見、本人への生活改善動機づけといった多面的な役割を担っています。
サービス利用を検討している高齢者本人・家族にとっては、まず地域包括支援センターに相談し、基本チェックリストで判定を受けるのが最短ルートです。介護現場で働く専門職にとっては、対象者の生活機能リスクを領域別に把握し、ケアプランや多職種連携の根拠資料として活用できる重要なツールといえます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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