自民党介護委員会、物価高対策の継続的支援を要請|2026年6月骨太の方針への反映を狙う

自民党介護委員会、物価高対策の継続的支援を要請|2026年6月骨太の方針への反映を狙う

自民党社会保障制度調査会の介護委員会が2026年5月12日、物価高対策の継続的・実効的支援を政府に求める決議を採択。田村憲久元厚労相は3年ごと改定サイクルの限界を指摘。6月の骨太の方針反映と2027年改定への影響を読み解く。

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自民党社会保障制度調査会の介護委員会は2026年5月12日、継続する物価上昇への「実効性のある制度的対応」を政府に求める決議をまとめた。会合で挨拶した田村憲久社会保障制度調査会長(元厚生労働相)は、3年ごとの介護報酬改定サイクルでは「毎年上がっていく物価や人件費が想定されていない」と踏み込み、制度の見直しを訴えた。決議は6月にまとめる「骨太の方針」への反映を狙ったもので、2027年度に予定される次期改定議論の前哨戦に位置づけられる。介護現場で働く人にとっては処遇改善の財源確保、利用者・家族にとっては施設・在宅サービス継続の安心材料に直結する動きだ。

目次

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自民党介護委員会物価高対策(kaigonews)

食材費、燃料費、人件費。介護事業者を取り巻くコストは2022年以降ほぼ一本調子で上昇し、2025年の介護事業者の倒産は176件と過去最多を更新した。とりわけ訪問介護は91件と突出し、人手不足にコスト高が重なる構図が鮮明になっている。

こうした状況下、自民党社会保障制度調査会の介護委員会は2026年5月12日、政府に対し「継続的・実効的な物価高対応」を求める決議をまとめた。挨拶した田村憲久社会保障制度調査会長(元厚生労働相)は「3年ごとの改定サイクルでは、毎年上がっていく物価や人件費が想定されていない」と異例の言及をし、制度の根幹を見直す必要性に踏み込んだ。

本稿では、5月12日決議の中身と背景データを整理したうえで、6月に閣議決定が見込まれる「骨太の方針」への反映と2027年度の次期介護報酬改定への影響を、現場で働く介護職と利用者・家族の双方の視点から読み解く。

5月12日決議の中身:継続的・実効的支援を求める

「実効性のある制度的対応」が決議の核

自民党社会保障制度調査会の介護委員会は2026年5月12日、党本部で開いた会合で介護分野の物価高対応に関する決議をまとめた。決議は、エネルギー価格と食材費の上昇基調が長期化していることを踏まえ、継続的な物価上昇を見据えた「実効性のある制度的対応」が欠かせないと指摘。一過性の補助金にとどまらず、制度として恒常的に物価変動を吸収する仕組みを構築するよう政府に強く求める内容となっている。

その上で「公定価格の下で安定的に収益を確保できる環境を構築することが重要だ」と明記した。介護報酬は国が定める公定価格であり、事業者が独自に価格転嫁できない構造的特徴を持つ。一般企業のように原材料費や人件費の上昇を販売価格に反映できないため、収益悪化が直接サービス継続性を脅かす。決議はこの構造的問題に正面から向き合い、抜本的な改善を要求している。

処遇改善の確実な実現も盛り込む

決議には、介護職員の処遇改善を他職種と遜色のない水準で実現することも盛り込まれた。介護職員と全産業平均との賃金格差は依然として月7〜8万円規模で残っており、人材確保の最大のボトルネックとなっている。処遇改善加算の拡充や算定要件の柔軟化を含め、現場に賃金が確実に届く仕組みを整えるよう要請した。

会合で挨拶に立った田村憲久社会保障制度調査会長(元厚生労働相)は、3年ごとの介護報酬改定サイクルの限界に踏み込んだ。「3年ごとの改定では、毎年上がっていく物価や人件費が想定されていない」と指摘し、「制度を見直していかなければならない」と発言。改定サイクルそのものの再設計を視野に入れる必要性を示唆した。

6月「骨太の方針」への反映を明示

介護委員会は、今回の決議内容を政府が6月にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に反映させる方針を打ち出している。骨太の方針は翌年度予算編成の基本方向を定める政府文書であり、ここに明記されれば2027年度予算案の社会保障費の積み上げ作業に直接影響する。

2025年6月に閣議決定された骨太方針2025では、社会保障費について「高齢化による増加分」に加え「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分」を加算する新たな編成方針が示された。今回の決議は、この方針を介護分野で具体化させる動きと位置づけられる。

対象:介護事業者の経営状況「極めて厳しい」現状

2025年の倒産176件は過去最多更新

東京商工リサーチの調査によれば、2025年の老人福祉・介護事業の倒産は176件にのぼり、2年連続で過去最多を更新した。倒産原因の約8割(140件・構成比79.5%)が「販売不振」、すなわち利用者数の確保や報酬単価では運営費を賄えない収支構造に起因している。「人手不足」「物価高」「公定価格の硬直性」という3要素が複合的に作用した結果といえる。

業種別では訪問介護が91件と最も多く、3年連続で過去最多を更新した。ヘルパー不足に加え、ガソリン代・車両維持費の上昇が小規模事業者の資金繰りを直撃している。また認知症グループホームの倒産も増加傾向にあり、施設系・在宅系双方で経営難が広がっている。

厚労省も補助金で対応してきたが「一時しのぎ」の限界

厚生労働省は2026年1月14日、介護保険最新情報Vol.1461で、物価高対策として介護施設向けの補助金支給を発表した。内訳は食材料費等の支援が定員1人あたり1万8000円、災害対策の設備・備品購入費が同6000円で、合計2万4000円。対象は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、ショートステイなどで、実施主体は都道府県とされた。

ただし、こうした補助金は単年度の臨時措置であり、翌年度以降の継続は予算編成のたびに改めて確保しなければならない。事業者にとっては中長期の経営計画が立てにくく、人材投資にも踏み切りにくい。今回の自民党介護委員会の決議は、こうした「一時しのぎ」の構造を制度として乗り越えることを目指している。

食費・居住費の基準額引き上げと並走する論点

政府は2026年8月から、介護保険3施設(特養・老健・介護医療院)の食費・居住費の基準額を引き上げる方針を示している。物価高騰に伴うコスト増を考慮した措置で、居住費は月3000円程度の引き上げが見込まれる。これは利用者負担に直結する論点であり、低所得者向けの補足給付(特定入所者介護サービス費)の運用が同時に問われる。

介護委員会の決議は、こうした個別措置の積み上げに加えて、改定サイクルを超えた制度設計を求めるものだ。次の介護報酬改定は2027年度に予定されており、それまでに政府が骨太の方針でどの程度踏み込めるかが焦点となる。

3年ごと改定サイクルの限界(独自見解)

制度設計とインフレ局面のミスマッチ

田村憲久社会保障制度調査会長が踏み込んだ「3年ごとの改定では、毎年上がっていく物価や人件費が想定されていない」という指摘は、介護報酬制度の最も根本的な論点に触れている。介護保険制度が始まった2000年以降、日本経済はおおむねデフレ基調にあり、3年スパンで物価や賃金水準を見直す設計は理にかなっていた。改定の谷間で物価が動いても、その影響は軽微にとどまったためだ。

ところが2022年以降、エネルギーと食材を中心とする継続的な物価上昇が定着し、人件費も全産業で年3〜5%の賃上げが続いている。3年間で累積すれば1割前後のコスト増となり、改定までの「待ち時間」が事業者の収益を直接圧迫する構造になった。今回の介護委員会の決議は、この構造的なミスマッチを政治の言葉で初めて明確化した点に意義がある。

医療と介護で温度差、診療報酬は毎年改定論も

同じ公定価格制度でも、医療の診療報酬は2年ごとの改定だが、近年は薬価部分を毎年改定する「中間年改定」が定着している。さらに2025年12月には自民党社会保障制度調査会で診療報酬の大幅プラス改定を求める決議が採択され、医療側はインフレ対応で先行している。介護分野で同様の「中間年改定」や暫定的な物価スライド条項を導入できるかが、今後の制度議論の焦点となる。

現場で働く介護職にとって、改定サイクルの見直しは賃上げのテンポに直結する。3年待たないと処遇改善の追加財源が確保されない現状では、他産業との賃金格差は埋まらない。報酬構造に物価・賃金スライドが入れば、賃上げが安定的に積み上がる見通しが立ち、キャリア継続の判断材料になる。

6月骨太の方針への反映と2027年介護報酬改定への影響

骨太2025からの連続性、コストカット型からの転換

政府の骨太の方針2025(2025年6月閣議決定)は、社会保障制度改革について「コストカット型からの転換」を明記した点で大きな転換点となった。医療・介護をはじめとする社会保障の予算については「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案して増額する方針が示され、従来の高齢化分のみの伸びを許容する財政フレームが見直された。

今回の自民党介護委員会の決議は、この骨太2025の方向性を介護分野で具体化する位置づけにある。6月に閣議決定が見込まれる骨太の方針2026に、物価対応の「継続的・実効的な」仕組みや改定サイクル見直しの検討開始が盛り込まれれば、2027年度予算編成と次期介護報酬改定の議論に直接効いてくる。

2027年度改定の論点:プラス幅と物価スライドの導入可否

次期介護報酬改定は2027年度に予定されている。これまでの改定議論では、社会保障審議会・介護給付費分科会の答申を踏まえ、改定率は前年12月に大臣折衝で決まるのが通例だった。今回の決議が骨太の方針に反映されれば、2026年末の大臣折衝で例年以上のプラス幅が議論される可能性が高まる。

同時に注目されるのが、改定率の単発引き上げではなく、物価変動を制度に組み込む仕組みの是非だ。具体的には、介護報酬の中間年改定の導入、人件費・物価指数に連動した報酬調整条項の追加、処遇改善加算の自動更新ルール整備などが論点候補となる。決議が指摘する「制度的対応」とはこうした仕組みを指すと解釈できる。

介護職と利用者・家族、両者にとっての意味

介護現場で働く読者にとって、今回の動きは「賃上げ財源の安定確保」というキャリア基盤に関わる。3年ごとの改定を待たずに処遇改善の財源が継続するなら、転職・キャリア選択の判断軸が変わる。一方、利用者・家族にとっては、事業者の経営安定はサービス継続性に直結する。倒産や事業所閉鎖でケアプランの組み直しを迫られるリスクが減れば、在宅で安心して暮らし続けられる環境が整う。

6月の骨太の方針、そして2026年末の予算編成、2027年度改定議論——いずれも介護を取り巻く制度の方向を決める節目だ。今回の決議をスタート地点として、政府がどこまで踏み込めるかを引き続き注視したい。

まとめ

自民党社会保障制度調査会の介護委員会は2026年5月12日、継続する物価高に対する「実効性のある制度的対応」を政府に求める決議をまとめた。田村憲久社会保障制度調査会長(元厚労相)は、3年ごとの介護報酬改定サイクルの限界に踏み込み、制度自体の見直しの必要性を示唆。決議は6月にまとめる骨太の方針への反映を狙い、2027年度の次期介護報酬改定議論の前哨戦となる。

背景には、2025年に過去最多176件を記録した介護事業者倒産、訪問介護を中心とした人手不足とコスト高、そして公定価格制度のもとで価格転嫁ができない構造的問題がある。一時的な補助金から制度的対応への転換は、現場で働く介護職にとっては賃上げ財源の安定確保、利用者・家族にとってはサービス継続性の担保につながる。今後は6月の骨太閣議決定と、2026年末の予算編成プロセスを注視したい。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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