雇用保険とは

雇用保険とは

雇用保険とは、労働者が失業したり雇用の継続が難しくなったときに給付を行う公的保険です。週20時間以上などの加入要件、基本手当・育児休業給付・介護休業給付といった給付の全体像を、介護施設の実務目線で整理します。

ポイント

この記事のポイント

雇用保険とは、労働者が失業したときや、育児・介護・高年齢などの理由で雇用の継続が難しくなったときに必要な給付を行う、政府が管掌する公的な保険制度です(雇用保険法第1条・第2条)。労働者を雇用する事業は原則としてすべて適用事業となり、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある人は、正社員かパートかを問わず被保険者になります(2026年8月時点)。

目次

雇用保険の目的と法的根拠

雇用保険は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)にもとづく強制加入の保険制度です。同法第1条は、失業した場合の給付に加えて、雇用の継続が困難となる事由が生じた場合の給付、自ら職業に関する教育訓練を受けた場合の給付、子を養育するために休業したり所定労働時間を短縮して働いた場合の給付を行うことを目的として掲げています。運営主体は政府で、窓口はハローワーク(公共職業安定所)です。

同法第5条は「労働者が雇用される事業を適用事業とする」と定めており、法人・個人、営利・非営利を問わず、介護施設や訪問介護事業所も当然に適用事業になります。第4条は「適用事業に雇用される労働者であつて、第6条各号に掲げる者以外のもの」を被保険者と定義しています。つまり、加入するかどうかは労使が選べるものではなく、要件を満たせば法律上当然に被保険者になる、という建て付けです。

実務上は、労災保険とあわせて「労働保険」と呼ばれ、保険料の申告・納付も一体で行います。ただし、労災保険料が全額事業主負担であるのに対し、雇用保険料は事業主と労働者が分担して負担する点が大きく異なります。

雇用保険に加入する人・しない人

被保険者になるかどうかは、雇用保険法第6条の「適用除外」に当たらないかで判断します。2026年8月時点の主な線引きは次のとおりです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること。20時間未満の人は適用除外です(第6条第1号)。
  • 同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあること。見込みがない人は適用除外です(第6条第2号)。当初は短期の予定でも、契約更新で31日以上になった時点から加入対象になります。
  • 昼間学生は原則として対象外です(第6条第4号)。ただし卒業後も引き続き働くことが決まっている人などは例外があります。
  • 季節的に雇用される人の一部、一定の漁船に乗り組む船員も適用除外です(第6条第3号・第5号)。
  • 65歳以上の人も加入対象です。2017年1月以降、65歳以上で新たに雇われた人も「高年齢被保険者」として適用対象になりました。定年後の再雇用や、シニア層の入職が多い介護現場では見落とされやすい点です。
  • 掛け持ち勤務は原則として1つの雇用関係のみ。複数の事業主のもとで要件を満たす場合、主たる賃金を受ける一方の雇用関係についてだけ被保険者になるのが現行の取り扱いです。

週の所定労働時間は、就業規則や雇用契約書で判断します。シフト制で週ごとに労働時間が変動する介護現場では、契約上の所定労働時間がどう定められているかを確認したうえで、実態と大きくずれていないかを点検しておく必要があります。

雇用保険の保険料率と給付の全体像

保険料率は毎年度見直されます。令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の料率は次のとおりで、介護事業は「一般の事業」に該当します。

区分労働者負担事業主負担合計
一般の事業(介護事業を含む)5/1,0008.5/1,00013.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業6/1,0009.5/1,00015.5/1,000
建設の事業6/1,00010.5/1,00016.5/1,000

事業主負担が労働者負担より重いのは、失業等給付・育児休業給付の保険料(労使折半)に加えて、雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の保険料3.5/1,000を事業主だけが負担するためです。なお令和7年度の一般の事業は14.5/1,000だったため、令和8年度は労使ともに引き下げられています。

給付は大きく次のように分かれます。

区分主な給付使う場面
求職者給付基本手当(いわゆる失業手当)ほか離職して求職活動をするとき
就職促進給付再就職手当ほか早期に再就職したとき
教育訓練給付教育訓練給付金ほか資格取得などの訓練を受けたとき
雇用継続給付高年齢雇用継続給付、介護休業給付60歳以降の賃金低下、家族の介護
育児休業等給付育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金子の養育のための休業・時短

介護職にとって身近なのは、家族の介護で休むときの介護休業給付金とは|支給額の計算式・申請方法・2025年改正をやさしく解説と、子の養育に関する育児休業等給付です。いずれも雇用保険の被保険者であることが大前提になります。

2028年10月に加入要件が週10時間以上へ広がる

雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)により、被保険者の範囲が大きく広がります。厚生労働省の施行通達は、施行日を2028年(令和10年)10月1日としています。

  • 加入要件の下限が週20時間以上から週10時間以上に引き下げられます。適用除外となるのは「1週間の所定労働時間が10時間未満の者」に改められます。企業規模による例外はありません。
  • 被保険者期間の算定基準も緩和されます。1か月としてカウントするための基準が、賃金の支払の基礎となった日数11日以上または労働時間数80時間以上から、6日以上または40時間以上に変わります。
  • 失業認定の基準も、1日の労働時間4時間から2時間に見直されます。
  • 賃金日額の法定下限額や最低賃金日額も、週10時間を基礎とした水準に改められます。

週10時間台の短時間パートを多く抱える介護事業所ほど、対象者の洗い出し、保険料の事業主負担分の見積もり、資格取得届の提出といった実務負担が増えます。施行までに、雇用契約書上の所定労働時間を実態に合わせて整理しておくことが準備の第一歩になります。短時間勤務の働き方については介護パートとは|介護職のパート勤務の働き方・時給相場・社会保険もあわせて確認してください。

雇用保険まわりで労務担当が押さえる実務ポイント

介護施設の労務担当が実務で迷いやすいのは、次のような場面です。

  • 資格取得届の提出期限。被保険者となった日の属する月の翌月10日までにハローワークへ提出します。入職が月末に集中する介護現場では、提出漏れが起きやすいところです。
  • 所定労働時間が週単位で定まらない場合。変形労働時間制やシフト制では、一定期間を単位として週平均の労働時間を計算します。契約書に「週◯時間程度」としか書いていないと、加入の要否を判断できません。
  • 離職票の離職理由。基本手当の給付日数や給付制限の有無に直結します。事実と異なる理由を記載すると、後日の争いにつながります。
  • 給付制限期間の短縮。2025年4月1日から、自己都合で離職した人の給付制限は原則1か月に短縮されました。離職者への案内内容を更新しておく必要があります。
  • 65歳以上の職員。定年後に再雇用した人も、要件を満たせば高年齢被保険者として加入手続きが必要です。

労働時間や休憩、年次有給休暇といった労働条件の最低ラインについては介護職の労働基準法ガイド|労働時間・休憩・残業・年休・解雇の最低ライン【2026年版】で整理しています。

雇用保険のよくある質問

Qパートやアルバイトでも雇用保険に加入できますか。

週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがあれば、雇用形態にかかわらず被保険者になります(2026年8月時点)。加入は労使が選べるものではなく、要件を満たせば法律上当然に被保険者になります。2028年10月からは、週10時間以上の人にも対象が広がります。

Q65歳を過ぎても雇用保険に加入できますか。

できます。2017年1月以降、65歳以上で新たに雇われた人も高年齢被保険者として適用対象になりました。定年後の再雇用でシニア職員が多い介護現場では、加入手続きの漏れがないか確認しておきましょう。

Q複数の事業所を掛け持ちしている場合はどうなりますか。

現行の取り扱いでは、複数の事業主との間で加入要件を満たす場合でも、主たる賃金を受ける一つの雇用関係についてのみ被保険者になります。2028年10月の適用拡大にあわせて、どちらを主たる事業所とみなすかの考え方が明確化される予定です。

Q雇用保険料は毎月いくら引かれますか。

令和8年度の一般の事業では、労働者負担は賃金の5/1,000です。月給が20万円なら1,000円が目安になります。料率は年度ごとに見直されるため、最新の率は厚生労働省の案内で確認してください。

Q雇用保険に入っていないと介護休業給付金はもらえませんか。

介護休業給付も育児休業給付も雇用保険からの給付なので、被保険者であることが前提です。加えて、休業開始前の一定期間に被保険者であった期間が必要です。詳しい要件はハローワークの案内で確認してください。

雇用保険の参考資料

雇用保険のまとめ

雇用保険は、失業したときの基本手当だけの制度ではありません。教育訓練給付、高年齢雇用継続給付、介護休業給付、育児休業等給付まで含めた、働き続けることを支える給付の束です。2026年8月時点の加入要件は週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで、令和8年度の保険料率は一般の事業で13.5/1,000(労働者負担は5/1,000)です。

そして2028年10月には、加入要件が週10時間以上へ引き下げられます。短時間パートに支えられている介護現場にとっては、対象者が一気に増える改正です。制度は毎年のように動くため、給付率や料率を扱うときは必ず厚生労働省とハローワークの最新の案内で時点を確かめてください。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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