
車いすのフィッティングとは
車いすのフィッティングとは、利用者の身体寸法6箇所を計測し、座面幅・奥行・背もたれ高さ等を調整して褥瘡や腰痛・ずり落ちを防ぐ作業。採寸方法と5ステップの調整手順を解説します。
この記事のポイント
車いすのフィッティングとは、利用者の身体寸法6箇所(座幅・座奥行・下腿長・前腕長・座位肘頭高・座高)を計測し、座面・背もたれ・アームレスト・フットレストの寸法と角度を体格と姿勢に合わせて調整する作業を指します。サイズが合わない車いすを使い続けると褥瘡・ずり落ち姿勢・腰痛・拘縮の原因となるため、作業療法士や福祉用具専門相談員によるフィッティングが推奨されます。
目次
車いすフィッティングの定義と必要性
車いすフィッティングは、車いすを単に「貸し出す・購入する」のではなく、利用者一人ひとりの身体寸法・残存機能・生活動作に合わせて座位姿勢を最適化する一連のプロセスです。日本車椅子シーティング協会(JAWS)や日本シーティング・コンサルタント協会では、評価結果から座位姿勢の目標を立て、その姿勢で身体寸法を計測したうえで車いす各部の寸法を合わせることを「適合の基本」と位置づけています。
サイズが合わない車いすを長時間使用すると、坐骨・尾骨部の褥瘡、骨盤後傾による「ずり落ち姿勢」、頸部の屈曲による誤嚥リスクの増大、足底接地不良による下肢浮腫、腰痛・肩こりといった二次障害が発生します。とくに高齢者・要介護者は自力で姿勢修正ができないため、不適合車いすが長時間続くと数日で褥瘡が発生することもあります。
フィッティングは「身体採寸」「車いす本体の寸法調整」「クッション・バックレストの選定」「姿勢保持具(パッド・ベルト・ヘッドレスト)の調整」「乗車後の姿勢評価」という多段階の作業であり、作業療法士・理学療法士・福祉用具専門相談員・福祉用具プランナーが連携して行うのが標準です。介護保険のレンタル品でもモジュラー型車いすであれば座幅・座奥行・背もたれ高さの調整が可能で、購入を伴わなくても適合度を高められます。
身体採寸6箇所と車いす寸法の対応
車いすフィッティングで最低限計測すべき身体寸法は次の6箇所です。いずれもメジャー一本で計測でき、寸法と車いす各部の対応関係を理解しておくことで、不適合の判定と調整の方向性が明確になります。
フィッティングの5ステップ
事前評価から定期見直しまでの標準プロセスを5ステップで示します。介護保険レンタル品でも、福祉用具専門相談員に依頼すれば同じプロセスを依頼可能です。
フィッティング精度を高める実務のコツ
- 採寸は必ず「ベッド・マット上の座位」で行う:ソファや既存の合わない車いすで採寸すると骨盤後傾の影響が残り、座奥行が短く計測されます。プラットフォームで骨盤を立てた状態を再現してから測ります。
- クッション圧縮分を必ず差し引く:下腿長から座面高さを決める際、クッションが沈み込む厚み(一般に圧縮後で2〜4cm)を差し引いて設定します。差し引きを忘れると足底が浮きます。
- 「3点支持」を意識する:坐骨・大腿後面・足底の3点で体重を支える設計にすると、坐骨圧が分散され褥瘡リスクが下がります。フットレストの長さ調整が最重要です。
- 車いす上での「30分テスト」:試乗30分後にずり落ち・発赤・疲労を再確認。短時間では現れない不適合が顕在化します。
- 骨盤ベルトは「腰」ではなく「骨盤」に:腸骨稜の下を通すことで骨盤後傾を防止できます。腰位置のベルトは押し下げ効果が弱く、ずり落ちを抑制できません。
- 体重変動・術後・脳卒中後は再評価必須:体重5kg以上の増減、麻痺の出現、関節拘縮の進行があった場合は、それまでのフィッティングが不適合化している可能性が高いです。
よくある質問
Qフィッティングは誰に依頼すればよいですか?
病院・施設では作業療法士・理学療法士が、在宅では福祉用具専門相談員や福祉用具プランナーが担当します。介護保険レンタル時はケアマネジャー経由で福祉用具貸与事業所へ依頼すれば、追加費用なしで採寸・調整を受けられます。複雑なケース(重度側弯・褥瘡既往)は日本シーティング・コンサルタント協会の認定資格者への相談が確実です。
Q介護保険レンタルの車いすでもフィッティングできますか?
モジュラー型車いす(座幅・奥行・背もたれ高さが調整可能なタイプ)であれば、レンタル後も寸法調整が可能です。標準型でもクッション・バックレスト・フットレスト長は調整できます。ただし、重度の身体変形がある場合は購入(補装具費支給制度)でオーダーメイドする方が適合度は高くなります。
Qずり落ち姿勢はなぜ起こりますか?
最大の原因は「座奥行が深すぎる」「フットレストが低すぎる」「骨盤が後傾している」の3つです。座奥行が長いと骨盤が前方に滑り、フットレストが低いと大腿後面が浮いて坐骨が前方移動し、骨盤後傾が連鎖して仙骨で座る姿勢になります。フィッティングで座奥行とフットレスト高さを修正すれば多くは改善します。
Qクッションだけ良いものに変えれば褥瘡は防げますか?
クッションは重要ですが、それだけでは不十分です。座面寸法(幅・奥行)と下腿長が合っていないと、どんな高性能クッションを使っても坐骨に圧が集中します。まずは身体採寸と寸法調整を優先し、そのうえで体圧分散性能の高いクッション(ジェル・エア式)を選ぶ順序が正しい対応です。
Qフィッティングはどのくらいの頻度で見直しが必要ですか?
一般的には3〜6か月ごとの定期見直しが推奨されます。体重変動が5kg以上、術後、脳卒中後、関節拘縮の進行、座位耐久時間の低下があれば、その都度再評価が必要です。また施設では入所時・状態変化時・年1回の定期評価をルーチン化している事業所が増えています。
参考資料・出典
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まとめ
車いすのフィッティングは、座幅・座奥行・下腿長・前腕長・座位肘頭高・座高の6箇所を計測し、車いす各部の寸法と姿勢保持具を体格と生活動作に合わせて調整する作業です。不適合の車いすは数日で褥瘡やずり落ち姿勢を引き起こすため、ケアマネジャー経由で福祉用具専門相談員や作業療法士に依頼し、3〜6か月ごとの定期見直しを行うことが安全な座位生活の前提となります。種類選び(モジュラー型・標準型・電動)と組み合わせることで、はじめて車いすが「移動手段」ではなく「生活姿勢を支える基盤」として機能します。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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