求人不受理とは
介護職向け

求人不受理とは

求人不受理とは、労働関係法令に違反した求人者の求人申込みを、ハローワークや職業紹介事業者が一定期間受理しないことができる制度です。職業安定法第5条の6の6類型と、法違反の種類ごとの不受理期間を条文に沿って整理します。

ポイント

求人不受理の定義

求人不受理とは、労働関係法令に違反した求人者などからの求人申込みを、ハローワーク(公共職業安定所)や職業紹介事業者が受け付けないことができる仕組みです。根拠は職業安定法第5条の6第1項で、同項は「求人の申込みは全て受理しなければならない」という全件受理の原則を定めたうえで、6つの例外を但書に並べています。違反の種類に応じて、是正後6か月または送検後1年といった不受理期間が定められています。

目次

求人不受理の全体像と6つの類型

職業安定法第5条の6第1項は、公共職業安定所、特定地方公共団体および職業紹介事業者に対して、求人の申込みを全て受理する義務を課しています。求人の内容が気に入らない、条件が低すぎる、といった理由で窓口が恣意的に求人を断ることはできません。求職者に届く求人の幅を狭めないための原則です。

その一方で、同項の但書は、受理しないことができる求人を6つ挙げています。「しなければならない」ではなく「できる」規定である点が、この制度を理解するうえでの出発点です。

  1. その内容が法令に違反する求人の申込み
  2. 賃金、労働時間その他の労働条件が、通常の労働条件と比べて著しく不適当であると認められる求人の申込み
  3. 政令で定める労働関係法令の規定の違反に関し、法律に基づく処分、公表その他の措置が講じられた者(厚生労働省令で定める場合に限る)からの求人の申込み
  4. 職業安定法第5条の3第2項の規定による労働条件の明示が行われない求人の申込み
  5. 暴力団員、役員に暴力団員がいる法人、暴力団員が事業活動を支配する者からの求人の申込み
  6. 正当な理由なく、次に述べる報告の求めに応じない者からの求人の申込み

労働関係法令違反による不受理(第3号)が制度の中心

実務で「求人不受理」と呼ばれるのは、主に第3号の類型です。どの条文の違反が対象になるかは職業安定法施行令第1条が、どういう状態になったら不受理にできるかは職業安定法施行規則第4条の3が定めています。政令が指定する対象条項には、労働基準法の労働条件明示(第15条第1項・第3項)、賃金(第24条)、割増賃金(第37条第1項・第4項)、労働時間(第32条)、休憩・休日・年次有給休暇(第34条、第35条第1項、第39条)、最低賃金法第4条第1項のほか、労働施策総合推進法のパワーハラスメント防止措置、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の各規定が含まれます。夜勤や変則勤務が多く、有期契約の職員も多い介護の職場にとって、いずれも他人事ではない条文です。

求人者には報告に応じる義務がある

職業安定法第5条の6第2項は、求人の申込みが不受理の要件に当たるかを確認するため必要があると認めるときに、窓口が求人者へ報告を求めることができると定めています。そして第3項は、求人者は正当な理由がない限りその求めに応じなければならないと定めています。この報告に応じないこと自体が、第6号の不受理事由になる構造です。

求人不受理の期間(法違反の種類別)

職業安定法施行規則第4条の3が定める基本の不受理期間は、次のとおりです。いずれの場合も、期間が過ぎれば自動的に解除されるのではなく、是正された状態が続いていることを確認したうえで解除される運用がとられています。

対象となる法律主なケース基本となる不受理期間
労働基準法・最低賃金法1年間に2回以上、同一の対象条項の違反で是正指導を受けた場合法違反の是正後6か月を経過するまで
労働基準法・最低賃金法対象条項の違反により送検され、公表された場合送検された日から1年を経過するまで
職業安定法・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法法違反の是正を求める勧告等に従わず、公表された場合法違反の是正後6か月を経過するまで

送検・公表のケースでは、送検から1年が経過していても、是正から6か月が経っていなければ不受理期間が延長される扱いになります。「1年たてば無条件で出せる」わけではない点に注意が必要です。

求人不受理におけるハローワークと民間紹介会社の違い

職業安定法第5条の6は、ハローワークだけでなく職業紹介事業者も名宛人にしています。ただし、実際に不受理とするかどうかの判断には差があります。

比較軸ハローワーク民間の職業紹介事業者
不受理の根拠職業安定法第5条の6第1項同左(同じ条文が適用される)
違反情報の把握労働局・労働基準監督署の指導監督情報を行政内部で把握できる行政の指導状況は提供されないため、求人者への自己申告で確認する
指針上の求め要件に該当する求人は受理しない運用要件に該当するかを求人者に申告させるべきとされ、該当を知った場合は受理しないことが望ましいとされる

民間の紹介会社は、行政が持つ是正勧告や送検の情報にアクセスできません。そのため、指針では求人者に自己申告させることが求められています。裏を返せば、求人者が事実と異なる申告をした場合、紹介会社側で不受理を判断するのは難しいということでもあります。

求人不受理を求職者・採用担当が実務でどう扱うか

求人不受理は、不受理になった事業所名を公表する制度ではありません。したがって、求職者が「この法人は不受理だったか」を調べる手段は基本的にありません。ただし、労働基準関係法令の違反で送検された事案については、厚生労働省が別途、企業名を含む公表を行っています。求人不受理の有無を追うのではなく、公表情報を確認したうえで、目の前の求人票に法定の明示事項が過不足なく書かれているかを自分の目で点検するほうが現実的です。

採用する側が押さえておきたいこと

不受理の対象条項は、いずれも介護の現場で発生しやすい論点に重なっています。夜勤明けの時間管理、休憩の確保、年次有給休暇の時季指定、割増賃金の計算、そして求人票と実際の労働条件のずれです。是正指導が1年間に2回重なった時点で不受理の要件に触れるため、指導を受けた後の再発防止までが実質的な採用対策になります。

また、第4号の「労働条件の明示が行われない求人」は、法違反の履歴がなくても単独で不受理事由になります。求人を出す段階で明示事項を満たしているかどうかが、そのまま窓口での受理・不受理を分けます。

求人不受理のよくある質問

Q不受理になった事業所の名前は公表されますか

求人不受理そのものを公表する制度はありません。ただし、労働関係法令の違反で送検されたり、是正勧告に従わず公表されたりした場合は、その公表が不受理の要件になっているため、結果として名前が明らかになることがあります。

Q民間の転職エージェントも求人を断れるのですか

職業安定法第5条の6は職業紹介事業者も対象にしているため、法律上は断ることができます。ただし「できる」規定であり、実際に不受理とするかは事業者の判断です。指針では、不受理の要件に当たると知った場合は受理しないことが望ましいとされています。

Q不受理はいつ解除されますか

労働基準法・最低賃金法の是正指導が重なったケースと、勧告に従わず公表されたケースは是正後6か月、送検・公表のケースは送検日から1年が基本です。ただし送検のケースでも、是正から6か月が経っていなければ期間が延長されます。

Q労働条件を明示しないだけで不受理になりますか

なります。職業安定法第5条の6第1項第4号は、同法第5条の3第2項の明示が行われない求人の申込みを、単独の不受理事由として挙げています。

求人不受理の参考資料

求人不受理のまとめ

求人不受理は、職業安定法第5条の6が定める「全件受理の原則」に対する限定的な例外です。労働関係法令の違反、労働条件の不明示、暴力団員等、報告拒否の4系統が柱で、労働関係法令違反については是正後6か月または送検後1年という期間が定められています。不受理そのものは公表されないため、求職者が直接確認することはできませんが、求人票に法定の明示事項が揃っているかどうかは、誰でもその場で点検できます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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