
NST(栄養サポートチーム)とは
NST(栄養サポートチーム)は医師・看護師・管理栄養士・薬剤師などが連携し低栄養を予防・改善する多職種チーム。役割やGLIM基準・ミールラウンドとの関係、介護職が渡す情報を解説します。
NST(栄養サポートチーム)の定義
NST(栄養サポートチーム、Nutrition Support Team)とは、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師に、言語聴覚士や歯科衛生士などを加えた多職種が連携し、低栄養の予防と改善を図るチームのことです。それぞれの専門職が栄養状態を評価し、最適な栄養補給の方法を提案・実施・再評価することで、合併症の予防や生活の質(QOL)の向上を目指します。病院だけでなく介護施設でも導入が広がっています。
目次
NST(栄養サポートチーム)の概要と成り立ち
NST(栄養サポートチーム)とは何か
NSTは「Nutrition Support Team」の頭文字で、日本語では栄養サポートチームと訳します。栄養障害(低栄養)の状態にある人や、適切な栄養管理をしなければ低栄養になることが見込まれる人に対して、複数の専門職がそれぞれの知識と技術を持ち寄り、栄養療法を提供する仕組みです。
その起源は1970年に米国シカゴで、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などが集まり栄養療法を討議したことにあるとされ、日本では2000年前後から広く知られるようになりました。2010年度の診療報酬改定で入院患者を対象とした「栄養サポートチーム加算」が新設されたことを契機に、病院でのNST設置が一気に進みました。
栄養状態は、感染症への抵抗力や傷の治りやすさ、リハビリテーションの効果、要介護度の進行などに直結します。とくに高齢者は食欲や口腔・嚥下機能の低下から低栄養に陥りやすく、厚生労働省の令和5年「国民健康・栄養調査」では、65歳以上で低栄養傾向(BMI20kg/㎡以下)の人の割合は男性12.2%・女性22.4%で、男女とも85歳以上で高くなると報告されています。こうした背景から、栄養を一職種だけで抱えず、多職種で支える発想としてNSTの考え方が重視されています。
NSTが担う一連の流れは、栄養スクリーニングで低栄養のリスクがある人を抽出し、栄養アセスメントで状態を評価し、栄養ケア計画を立て、実施・モニタリング・再評価を繰り返すというものです。この過程を、それぞれの専門職が役割分担しながら回していきます。
NST(栄養サポートチーム)を構成する職種と役割
NSTを構成する職種とそれぞれの役割
NSTの構成は施設によって異なりますが、中心となるのは次の職種です。それぞれが専門性を生かして役割を分担します。
- 医師:チームの責任者として方向性を示し、栄養療法の方針や問題点を提示する。
- 管理栄養士:食事摂取量や検査データから栄養状態を評価・分析し、栄養ケア計画を立案する。栄養補助食品や経腸栄養剤の情報提供も担う。
- 看護師:患者・利用者にもっとも近い立場として、食事量・嚥下状態・体重・消化器症状などの情報を把握し、チームへ共有する。現場の調整役にもなる。
- 薬剤師:栄養剤の選択や適正使用を提言し、薬剤と栄養剤・食品の相互作用を確認する。
- 言語聴覚士(ST):摂食・嚥下機能を評価し、安全に食べられる訓練や姿勢の提案を行う。
- 歯科衛生士・歯科医師:口腔内を観察・清掃し、口腔環境を整えて食事摂取を支える。
- 臨床検査技師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士:検査値の解析、体力づくり、食事動作の訓練、退所後の生活支援などで連携する。
介護現場では、これらに加えて介護職員や生活相談員、ケアマネジャーが情報の出し手・受け手として加わることが多く、日々の生活を見ている職種ほど重要な観察情報を持っています。
NST(栄養サポートチーム)と介護施設のミールラウンドの違い
病院のNSTと介護施設のミールラウンドの違い
「NST」という言葉は主に病院(医療)の文脈で使われ、介護報酬には「NST加算」という項目はありません。混同しやすいので、対応関係を整理します。
病院でのNST(栄養サポートチーム加算 A233-2)は、入院患者を対象とした診療報酬の加算です。週1回200点(特定地域は100点)で、GLIM基準で低栄養と判定された人などを対象に、週1回程度のカンファレンスと回診を行います。1チームが診る患者は1日おおむね30人以内とされ、歯科医師が参加すると歯科医師連携加算50点が加わります。
介護施設での相当する仕組みは「ミールラウンド」です。介護報酬では栄養マネジメント強化加算(入所系)などの中で、医師・管理栄養士・看護師等が共同して作成した栄養ケア計画にもとづき、低栄養リスクの高い入所者へ食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上行うことが要件とされています。つまり、病院のNST回診が「週1回の専門チーム回診」であるのに対し、介護施設のミールラウンドは「日常の食事場面を多職種で継続的に観察する」点に重心があります。
どちらも、多職種で低栄養を見つけて手を打つという目的は共通です。介護施設では病院型のNSTを独自に立ち上げる事例も増えていますが、制度上の用語としては「NST加算」と「ミールラウンド(栄養マネジメント強化加算等)」を分けて理解しておくと混乱しません。
NST(栄養サポートチーム)に介護職が渡す情報と低栄養評価の関係
介護職がNSTに渡すべき情報
NSTやミールラウンドが機能するかどうかは、現場の観察情報の質に大きく左右されます。利用者の生活にもっとも近い介護職は、専門職が見落としがちな変化に最初に気づける立場です。次のような情報を具体的に共有すると、チームの判断材料になります。
- 食事摂取量:主食・副菜をそれぞれ何割食べたか。完食か、半分残したかを毎食記録する。
- むせ・咳き込み:いつ、どの食形態で、どの程度むせたか。水分でむせるのか固形物でむせるのか。
- 体重変化:定期的な体重測定の数値と、増減のスピード。
- 食欲・意欲の変化:「最近食べたがらない」「途中で手が止まる」などの様子。
- 口腔内の状態:義歯が合っているか、口内炎や乾燥がないか。
NSTやミールラウンドでの低栄養の判定には、客観的な評価ツールが使われます。代表的なものが、現症3項目と病因2項目で判定するGLIM基準や、高齢者向けに6項目で素早くスクリーニングするMNA-SFです。介護職が日々記録する食事量・体重・むせの情報は、これらの評価の精度を高める土台になります。数値や様子を「なんとなく」ではなく具体的に伝えることが、低栄養(PEM)の早期発見と改善につながります。
NST(栄養サポートチーム)のよくある質問
NST(栄養サポートチーム)に関するよくある質問
NSTに参加するのに資格は必要ですか。
参加そのものに必須の資格はありません。医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などの国家資格を持っていればメンバーとして活動できます。専門性を示す資格として、一般社団法人日本栄養治療学会(JSPEN)が認定する「NST専門療法士」があり、取得するとチーム内での信頼度が高まります。
介護職でもNSTに関われますか。
関われます。介護施設では介護職員がミールラウンドや栄養ケアの一員として、食事摂取量・むせ・体重変化などの観察情報を提供します。利用者の生活にもっとも近い職種として、現場の変化を最初に伝える重要な役割を担います。
NST加算と栄養マネジメント強化加算は同じですか。
別の制度です。NST(栄養サポートチーム)加算は病院の入院患者を対象とした診療報酬の加算で、栄養マネジメント強化加算は介護保険施設を対象とした介護報酬の加算です。介護施設には「NST加算」という項目はなく、ミールラウンドなどを通じて多職種で栄養を支えます。
低栄養はどのように判定しますか。
体重減少や食事摂取量の低下などのスクリーニングを行ったうえで、GLIM基準(現症3項目と病因2項目)やMNA-SFといった客観的な評価ツールで判定するのが一般的です。介護現場の日々の記録が、この判定の基礎データになります。
NST(栄養サポートチーム)の参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
NST(栄養サポートチーム)のまとめ
まとめ
NST(栄養サポートチーム)は、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師などの多職種が連携し、低栄養の予防と改善を図る仕組みです。病院では栄養サポートチーム加算として制度化され、介護施設ではミールラウンドを中心に同じ目的が追求されています。介護職は、食事摂取量・むせ・体重変化といった日々の観察情報をチームへ正確に伝えることで、低栄養の早期発見と改善に大きく貢献できます。
この用語に関連する記事

起居動作の介助|寝返り・起き上がり・端座位の手順とコツ【介護職向け】
起居動作の介助を、寝返り・起き上がり・端座位保持の手順とコツで解説。自立を促す介助、片麻痺の人の起き上がり、介護者の腰を守るボディメカニクス、端座位のずり落ち防止、次の移乗への連結まで介護職目線でまとめます。

介護職のバイタル測定|体温・脈拍・血圧・呼吸・SpO2の正しい測り方と正常値・異常の見極め
介護職が日々行うバイタル測定の手技と判断を一次ソースで解説。体温・脈拍・血圧・呼吸・SpO2の高齢者の正常値と異常値、パルスオキシメーターの注意(冷え・マニキュア)、医行為でない測定の範囲、看護師へのSBAR報告まで。

歩行介助・移動介助の方法|片麻痺・杖・見守りのポイントを介護職向けに解説
介護職向けに歩行介助・移動介助の方法を実践的に解説。健側/患側の立ち位置、片麻痺の介助、杖の三動作/二動作歩行、見守りレベルの判断、階段・段差、転倒予防の声かけ、歩行器の連携まで手順でわかる。

誤嚥・窒息時の緊急対応|背部叩打法・ハイムリック法と119番までの初動を介護職向けに解説
介護現場で利用者が食事中に窒息したときの初動を、チョークサインの認識、意識と咳の有無での分岐、背部叩打法・腹部突き上げ法の手順、吸引・119番の判断、心肺蘇生への移行、事故報告・再発防止まで、日本医師会・消費者庁・厚労省の一次資料に基づき介護職向けに解説します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。