
誤嚥・窒息時の緊急対応|背部叩打法・ハイムリック法と119番までの初動を介護職向けに解説
介護現場で利用者が食事中に窒息したときの初動を、チョークサインの認識、意識と咳の有無での分岐、背部叩打法・腹部突き上げ法の手順、吸引・119番の判断、心肺蘇生への移行、事故報告・再発防止まで、日本医師会・消費者庁・厚労省の一次資料に基づき介護職向けに解説します。
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この記事のポイント
食事中の窒息は数分で命に関わります。まず大声で応援を呼び、意識と咳の有無を確認します。強くせき込めているなら咳を続けさせ、声が出ず咳もできない完全閉塞なら、背部叩打法を先に、効かなければ腹部突き上げ法(ハイムリック法)を異物が出るか反応がなくなるまで交互に行います。反応がなくなったら直ちに119番と心肺蘇生に切り替えます。やみくもに指を入れて探らないことが鉄則です。
目次
食事介助の最中、利用者が急に黙り込み、苦しそうに喉を押さえる。介護の現場で、これほど一瞬で生死が分かれる場面はそう多くありません。気道が完全にふさがると、わずか3分から4分で顔色が変わり、5分から6分で呼吸が止まります。救急車の到着を待つだけでは間に合わず、その場にいる介護職が最初の数分でどう動けるかが、利用者の生死を左右します。
この記事は、誤嚥や窒息が「起きてしまった瞬間」の初動に絞って解説します。予防の話ではなく、サインに気づいてから、背部叩打法や腹部突き上げ法(ハイムリック法)といった応急手当、吸引や119番の判断、意識がなくなったときの心肺蘇生への移行、そして事故後の報告と再発防止までを、日本医師会・消費者庁・厚生労働省の一次資料に沿って、介護職が現場で迷わないフローとして整理します。手順を間違えると危険なため、表現はあえて公的ガイドラインに忠実にそろえています。
データで見る高齢者の窒息事故の深刻さ
窒息は、介護現場で起こりうる事故のなかでも特に致死率が高い緊急事態です。公的統計はその深刻さをはっきり示しています。
- 令和5年の1年間に「不慮の窒息」で亡くなった65歳以上の高齢者は7,779人。そのうち、気道閉塞を生じた食物の誤嚥による死亡は4,215人と、5割以上を占めます(消費者庁/厚生労働省「人口動態統計」令和5年)。
- 続く令和6年でも、気道閉塞を生じた食物の誤嚥による死亡は4,383人にのぼり、このうち65歳以上が3,992人(約91%)を占めました(消費者庁/厚生労働省「人口動態統計」令和6年)。
- 窒息事故は冬場、特に1月に集中します。餅による窒息死のおよそ半数が1月に発生しており、正月三が日の多さが目立つと分析されています(消費者庁)。
高齢者は加齢に伴い、かむ力や飲み込む力、唾液量が低下し、食べ物を喉に詰まらせやすくなります。さらに見逃せないのが、高齢者は窒息していても助けを求められないことが多いという点です。後述するチョークサイン(喉に手を当てる仕草)を取らず、身動きせずに黙って座っているだけのことも珍しくありません。だからこそ、介護職が「いつもと違う」に気づく観察眼と、気づいた直後の正しい初動が決定的に重要になります。
まず気づく|窒息のサインと「むせ」との違い
初動の出発点は、窒息が起きていることに早く気づくことです。気道がふさがってから対応までの時間が、そのまま救命率に直結します。
チョークサイン(窒息のサイン)
異物が完全に気道をふさぐと声が出せなくなり、多くの人は無意識に親指と人差し指で喉をつかむ仕草をします。これは世界共通の「窒息のサイン(チョークサイン)」と呼ばれます(日本医師会 救急蘇生法サイト)。ただし高齢者の場合、このサインを出さず、ただ黙って動かなくなるだけのことが多い点に注意が必要です。
そのほかの窒息のサイン
- 急に黙り込む、声を出さずにもがいている
- 苦しそうな表情、顔色が悪い、唇や手足が青黒くなる(チアノーゼ)
- 呼吸のたびにゴロゴロ・ヒューヒューと音がする、または呼吸音がしない
- 食事中に突然うつむいて動かなくなる
「誤嚥」と「窒息」、「むせ」の違い
誤嚥は、食べ物や唾液が本来の食道ではなく、気管など空気の通り道に入ってしまうことを指します。そのうち、異物が気道をふさいで呼吸ができなくなった状態が窒息です。
判断の分かれ目は「強くせき込めているかどうか」です。激しくむせて咳ができている間は、気道が完全にはふさがっていない不完全閉塞の状態で、咳そのものが最も効果的な異物排出の手段になります。逆に、声が出せず咳もできない、あるいは咳が弱くなってきた場合は、完全閉塞が疑われ、ただちに応急手当に移る必要があります。むせているからと安心せず、咳が弱まる変化を見逃さないことが大切です。
初動の判断フロー|意識・咳・反応で枝分かれする
窒息対応で最も大切なのは、手技そのものより「いま何をすべきか」を瞬時に判断する分岐です。以下のフローを頭に入れておくと、慌てずに動けます。
ステップ1|気づいて応援を呼ぶ
異変に気づいたら、まず大声で他の職員を呼びます。窒息対応は1人ではこなせません。「○○さん窒息、応援とAED、吸引器お願いします」と具体的に叫び、利用者のそばを離れないことが原則です。誰が119番通報し、誰が応急手当をし、誰が他の利用者を見守り家族に連絡するか、役割を即座に分担します。
ステップ2|意識と咳の有無を確認する
「○○さん、大丈夫ですか。詰まっていますか」と声をかけ、反応と呼吸を確認します。ここで枝が分かれます。
- 反応があり、強くせき込めている → 咳を続けるよう励ます(ステップ3へ)
- 反応はあるが、声が出ず咳もできない/咳が弱い → 完全閉塞。背部叩打法・腹部突き上げ法へ(ステップ4へ)
- 反応がない(ぐったりしている) → 直ちに119番と心肺蘇生へ(ステップ5へ)
ステップ3|咳ができるなら咳を促す
強い咳が出ている間は、気道が完全にはふさがっていません。下手に手技を加えるより、咳を続けてもらうのが最も効果的です。「もっと咳をしてください」と励ましながら、咳が弱まらないか注意深く見守ります。咳が弱くなったり止まったりしたら、ステップ4へ移ります。
ステップ4|異物を出す(応急手当)
口の中に見えている異物があれば取り除き、背部叩打法を先に、効果がなければ腹部突き上げ法を、異物が出るか反応がなくなるまで交互に繰り返します。施設に吸引器があり訓練された職員がいれば、吸引も併用します。具体的な手順は次のセクションで詳述します。
ステップ5|反応がなくなったら心肺蘇生へ
手当の途中で反応がなくなった場合は、ためらわず119番通報し、心肺蘇生(胸骨圧迫とAED)に切り替えます。窒息の解除に固執して救急要請を遅らせないことが、この場面で最も重要な判断です。
背部叩打法の手順|まずこちらを優先する
完全閉塞が疑われるとき、日本医師会の救急蘇生法では「まず背部叩打法を試み、効果がなければ腹部突き上げ法を試みる」とされています。つまり背部叩打法が第一選択です。背部叩打法は妊婦や乳児にも行え、後述の禁忌がない点でも先に試しやすい手技です。
座位・立位でできる場合
- 利用者の横または後ろに立ち、片手で胸や下あごを支え、上半身をできるだけ前かがみ(頭が胸より低くなる姿勢)にします。前かがみにすることで、取れた異物が口側へ出やすくなります。
- もう一方の手のひらの付け根(手根部)で、左右の肩甲骨の中間あたりを、力強く何度も連続して叩きます。
- 叩くたびに、口から異物が出てきていないかを確認します。
ベッドで臥床している場合
立ち上がれない、座位が保てない利用者の場合は、介助者側に向けて側臥位(横向き)にし、同じく手根部で肩甲骨の間を力強く叩きます。横向きにすることで、取れた異物が口から外へ出やすくなります。
うまく叩くためのコツ
- 「やさしく」では効果がありません。利用者の体格に合わせつつ、しっかりと衝撃が伝わる強さで叩きます。
- 1回ごとに様子をうかがうのではなく、連続して叩き、その合間に異物の排出を確認します。
- 異物が出るか、利用者の反応がなくなるまで続けます。効果がなければ腹部突き上げ法に切り替えます。
腹部突き上げ法(ハイムリック法)の手順と禁忌
背部叩打法で異物が出てこないとき、次に行うのが腹部突き上げ法(ハイムリック法)です。肺に残った空気を一気に押し出し、その圧力で異物を吐き出させる手技です。
手順
- 利用者の後ろに回り、両腕を脇の下から前に通して腹部に回します。
- 片方の手で握りこぶしを作り、親指側を利用者の体に向け、へそより上・みぞおち(剣状突起)より十分に下の位置に当てます。
- もう一方の手でそのこぶしを包み込みます。
- こぶしを手前上方(自分側かつ斜め上)に向けて、すばやく強く突き上げます。
- 異物が出るか、反応がなくなるまで繰り返します。背部叩打法と交互に行っても構いません。
行ってはいけない相手(禁忌)
腹部突き上げ法は、次の人には行いません。これらの場合は背部叩打法のみを行います。
- 妊婦(腹部を強く圧迫できないため)
- 乳児(成人とは別に、背部叩打法と胸部突き上げ法を行う)
- 高度肥満の人(腹部に腕が回らず有効な圧迫が難しい)
実施後は必ず医療につなぐ
腹部突き上げ法は腹部の内臓を傷つける可能性があります。異物が取れて症状が落ち着いたように見えても、この手技を行った場合は救急隊にその旨を必ず伝え、医師の診察を受けさせてください(消費者庁・日本医師会)。「取れたから大丈夫」と自己判断で済ませないことが、後からの内臓損傷や再発を防ぎます。
吸引と119番|いつ救急要請するかの判断
吸引はどこまで介護職ができるか
施設に吸引器があり、口腔内・咽頭の吸引について必要な研修を受け、医師や看護師の指示・連携体制が整っている職員であれば、見えている範囲の異物・分泌物の吸引を行えます。一方、たんの吸引等の医療的ケアには資格・研修の要件があるため、自施設の体制と各自の研修状況に応じて、できる範囲を事前に確認しておくことが大切です。手技に不安がある場合は無理をせず、背部叩打法・腹部突き上げ法を優先し、看護職と連携します。
指でかき出してよいか
口の中に異物がはっきり見えていて、安全に取り出せる場合のみ取り除きます。見えない異物を、やみくもに指を入れて探るのは禁物です。かえって異物を奥へ押し込み、気道を完全にふさいでしまう危険があります(日本医師会)。指拭法を行う際は、噛まれないよう注意し、正面からではなく横から行うなど、押し込まない配慮が必要です。
119番はいつ呼ぶか
窒息が疑われた時点で、応援を呼ぶのと同時に119番通報を頼むのが原則です。応急手当で異物が出れば結果的に救急車が不要になることもありますが、「呼ぶのが早すぎた」より「呼ぶのが遅れた」ほうがはるかに危険です。次のいずれかに当てはまれば、迷わず救急要請します。
- 声が出せず咳もできない(完全閉塞が疑われる)
- 応急手当を行っても異物が出てこない
- 顔色が悪くなる、唇や指先が青黒くなる(チアノーゼ)
- 反応が鈍くなる、ぐったりする
通報は、可能な限り利用者のそばから固定電話の子機や携帯電話で行うと、通信指令員からの口頭指導(応急手当の指示)を受けながら対応できます。施設の住所・建物名・電話番号、「いつ・誰が・どうなったか」、いま行っている応急手当の内容を簡潔に伝えます。判断に迷う段階では、救急安心センター事業「♯7119」も相談先になります。
反応がなくなったら|心肺蘇生(CPR)への移行
応急手当の途中で利用者がぐったりして反応がなくなった場合は、窒息の解除から心肺蘇生の手順へ切り替えます。ここで救急要請に固執して時間を失わないことが、救命の分かれ目です。
移行の手順
- 反応がないことを確認したら、まだ119番通報していなければ直ちに通報し、AEDを手配します。救助者が1人しかいない場合は、まず119番通報をしてからAEDを取りに行き、心肺蘇生を始めます。
- 利用者を硬い床面など平らな場所にあお向けに寝かせます。
- 胸骨圧迫を開始します。胸の真ん中を、胸が約5cm沈む強さで、1分間に100〜120回のテンポで絶え間なく圧迫します。
- AEDが届いたら電源を入れ、音声ガイダンスに従って装着・使用します。
異物の扱い
心肺蘇生を行う途中で口の中に異物が見えた場合は、それを取り除きます。見えない場合は、やみくもに指を入れて探らないでください。また、異物を探すために胸骨圧迫を中断してはいけません(日本医師会)。胸骨圧迫そのものが胸腔内の圧を高め、異物を押し出す効果も期待できるためです。
DNAR(蘇生処置を望まない意思表示)の確認
施設によっては、利用者や家族があらかじめ蘇生処置を望まない意思(DNAR)を示している場合があります。ただし、その判断は事前にかかりつけ医や協力病院と取り決め、記録として整備されていることが前提です。意思表示の有無や内容を現場で即座に確認できるよう、施設として情報を整理しておくことが求められます。
事故後の対応|記録・自治体報告・再発防止
異物が取れて利用者が落ち着いても、介護職の対応は終わりません。窒息は重大事故であり、その後の記録・報告・再発防止までが一連の業務です。ここは多くの応急手当の解説が踏み込まない部分ですが、現場では避けて通れません。
家族への連絡と状況の記録
介護保険施設等は、サービス提供中に事故が発生した場合、速やかに市町村と利用者の家族等に連絡し、必要な措置を講じることが運営基準で定められています。あわせて、事故の状況と採った処置を記録しなければなりません。いつ・何を食べていて・どんなサインが出て・誰が何分にどの手当を行い・救急要請は何時だったか。時系列を具体的に残すことが、後の原因分析と説明責任の土台になります。
自治体への事故報告
厚生労働省の通知では、次の事故は原則すべて市町村へ報告するとされています。
- 死亡に至った事故
- 医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置等何らかの治療が必要となった事故
窒息で医師の処置を要したケースは、この報告対象に該当します。報告の第1報は、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出します。原因分析や再発防止策は、まとまり次第あらためて報告します。報告様式は令和6年11月29日付の通知で、電子的な報告を想定した標準様式へ改訂されています。一方、自力で飲み下せて職員の処置が不要だった「むせ込み」などは、自治体の取扱いによってはヒヤリハットとして整理されます。自施設の保険者がどこまでを報告対象としているかを、平時に確認しておきましょう。
救急要請を遅らせない|裁判例が示す教訓
過去の裁判例は、救急要請の遅れが法的責任に直結しうることを示しています。デイサービス利用者が飴玉を喉に詰まらせ、職員が背部叩打法・ハイムリック法・吸引を行ったものの異物が取れず、顔色が悪くなってから救急要請までに10分を要した事案で、裁判所は「遅くとも顔色が不良となった時点で救急車を要請すべき義務があった」として安全配慮義務違反を認めました(広島地裁福山支部 平成23年)。応急手当に全力を尽くすことと、救急要請のタイミングを逃さないことは両立させなければなりません。手技に専念するあまり通報が後回しになる、という落とし穴を、役割分担であらかじめ防いでおく必要があります。
再発防止につなげる
事故後は、原因を職員個人の責任に帰すのではなく、改善のきっかけとして扱うことが定着しています。食事形態は適切だったか、姿勢や見守り体制に課題はなかったか、緊急時の役割分担と動線は機能したか。事故防止のための委員会や研修の場で振り返り、同じ事故を繰り返さない仕組みづくりにつなげます。安全管理体制の整備は運営基準上の義務でもあり、未実施の場合は減算の対象にもなります。
現場でやりがちな失敗と、避けるための備え
窒息対応は知識があっても、いざその場になると判断が鈍ります。実際の事故やマニュアルで繰り返し指摘される「やりがちな失敗」を知っておくと、本番で立ち止まらずに済みます。
1. むせているのを見て安心してしまう
強い咳は良い兆候ですが、咳が弱まったり止まったりした瞬間に完全閉塞へ移行することがあります。「むせているから大丈夫」と離れず、そばで咳の強さの変化を観察し続けることが必要です。
2. 1人で抱え込み、応援要請が遅れる
異変に気づいた職員が、自分でなんとかしようと手当に没頭し、応援や119番が後手に回るのは典型的な失敗です。「気づいたらまず叫ぶ」を習慣づけ、誰が通報・手当・見守りを担うかを即座に分担します。
3. 救急要請をためらう
前述の裁判例が示すとおり、救急要請の遅れは命にも法的責任にも直結します。「もう少し自分たちで」と粘りすぎないこと。完全閉塞や顔色不良の兆候が出たら、手当と並行して通報するのが正解です。
4. 見えない異物を指で探る
焦って口の奥に指を入れると、異物を押し込んで状況を悪化させます。見える異物だけを取り、見えなければ手技と心肺蘇生に徹します。
備えとして平時にやっておくこと
- AED・吸引器・救急バッグの設置場所を全職員が即答できるようにする
- 夜間・休日の少人数体制での動き方をシミュレーションしておく
- 消防署の救命講習や施設内研修で、背部叩打法・腹部突き上げ法・心肺蘇生を実際に体を動かして練習する
- 利用者ごとの食形態・嚥下リスク・DNARの意思を、緊急時にすぐ確認できる形で共有しておく
手順を「知っている」状態から「体が動く」状態へ引き上げておくことが、最初の数分で利用者の命を守る最大の備えです。
よくある質問(FAQ)
Q. 背部叩打法とハイムリック法、どちらを先にやるべきですか?
日本医師会の救急蘇生法では、まず背部叩打法を試み、効果がなければ腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行うとされています。背部叩打法が第一選択で、妊婦や乳児にも行える点でも先に試しやすい手技です。どちらか一方に絞らず、効果がなければ交互に繰り返すのが基本です。
Q. むせているだけのときも、すぐに背中を叩いたほうがいいですか?
強くせき込めている間は、咳が最も効果的な異物排出手段です。下手に手技を加えるより、咳を続けるよう励まし、咳が弱まらないか見守ります。咳が弱くなる・止まる・声が出なくなるといった変化が出たら、応急手当に切り替えます。
Q. 指で異物をかき出してもいいですか?
口の中に見えていて安全に取り出せる異物だけを取り除きます。見えない異物をやみくもに指で探るのは、奥へ押し込む危険があるため禁物です。指拭法を行う際も、噛まれないよう横から行うなど、押し込まない配慮が必要です。
Q. 異物が取れたら、もう受診しなくても大丈夫ですか?
特に腹部突き上げ法を行った場合は、内臓を傷つけている可能性があるため、必ず医師の診察を受けさせてください。救急隊が来たら、その手技を行ったことを伝えます。落ち着いて見えても、誤嚥性肺炎などの合併症が後から現れることもあります。
Q. 夜勤帯で職員が少ないときはどうすればいいですか?
少人数でも役割は変わりません。1人なら、まず119番通報をしてから心肺蘇生やAEDに移るのが原則です。平時から、夜間の少人数体制での動き方、AED・吸引器の設置場所、応援要請の手順を確認し、訓練しておくことが、いざというときの差になります。
Q. 事故が起きたら必ず自治体に報告が必要ですか?
死亡に至った事故と、医師の診断を受け投薬・処置等の治療が必要となった事故は、原則すべて市町村への報告対象です。窒息で医師の処置を要した場合は該当します。第1報は遅くとも5日以内が目安です。報告基準の細部は保険者によって異なるため、自施設の取扱いを確認してください。
参考文献・出典
- [1]
- [2]コラムVol.12 高齢者の事故 ― 冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意- 消費者庁
令和5年の不慮の窒息死7,779人・食物の誤嚥4,215人、チョークサイン、背部叩打法・腹部突き上げ法の手当方法と禁忌
- [3]
- [4]介護保険最新情報 Vol.1332 介護保険施設等における事故の報告様式等について- 厚生労働省(WAM NET掲載)
報告対象(死亡事故・治療を要した事故)、第1報5日以内、令和6年11月29日の標準様式改訂
- [5]
- [6]
まとめ|最初の数分を、迷わず動けるように
誤嚥・窒息は、介護現場で最も時間との勝負になる緊急事態です。覚えておきたい初動を、もう一度整理します。
- 気づく:高齢者はチョークサインを出さず黙り込むことが多い。食事中の「いつもと違う」を見逃さない。
- 分岐する:強くせき込めるなら咳を促す。声も咳も出ない完全閉塞なら応急手当。反応がなければ119番と心肺蘇生。
- 手当する:背部叩打法を先に、効かなければ腹部突き上げ法を交互に。妊婦・乳児・高度肥満には腹部突き上げ法を行わない。
- つなぐ:見えない異物を指で探らない。腹部突き上げ法を行ったら必ず受診。救急要請を遅らせない。
- 後始末する:記録し、家族と自治体へ報告(治療を要した事故は5日以内目安)、再発防止につなげる。
これらは知識として知っているだけでは、いざというときに体が動きません。施設の研修や消防署の救命講習で繰り返し練習し、役割分担や動線を平時に確認しておくことが、利用者の命を守る最大の備えになります。最初の数分を迷わず動けるよう、チームで手順を共有しておきましょう。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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