
歩行介助・移動介助の方法|片麻痺・杖・見守りのポイントを介護職向けに解説
介護職向けに歩行介助・移動介助の方法を実践的に解説。健側/患側の立ち位置、片麻痺の介助、杖の三動作/二動作歩行、見守りレベルの判断、階段・段差、転倒予防の声かけ、歩行器の連携まで手順でわかる。
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この記事のポイント
歩行介助・移動介助の基本は「立ち位置」と「足の出す順番」です。片麻痺がある方の平地歩行では、介助者は患側(麻痺側)のやや後方に立ち、足は杖→患側→健側の順に出します。階段は昇りが杖→健側→患側、降りが杖→患側→健側と逆になります。杖は健側の手で持ち、介助点は脇と肘、または腰背部。利用者の残存機能に合わせて見守り・寄り添い・手引きを使い分け、転倒を防ぎながら自立を引き出すことが介護職の役割です。
目次
歩行介助・移動介助は、介護職が毎日のように行うケアでありながら、利用者の身体状況によって正しい手順がまったく変わる、奥の深い介助です。とくに脳卒中後の片麻痺がある方では、立ち位置を間違えたり足を出す順番を取り違えたりすると、それだけで転倒のリスクが跳ね上がります。
転倒は、介護現場で最も多い事故です。消費者庁から厚生労働省老健局に報告された重大な介護事故276事例(概ね30日以上の入院を伴うもの、平成26〜29年)を分析した調査では、転倒・転落・滑落が181件で全体の65.6%を占め、最多でした(介護労働安定センター調査研究)。さらに高齢者全体で見ても、介護が必要になった主な原因の第4位は「骨折・転倒」で13.0%を占めています(厚生労働省「国民生活基礎調査」令和元年)。歩行介助の質は、利用者がこれからも自分の足で生活できるかどうかを大きく左右します。
注目すべきは、これらの転倒・転落事例の業務詳細を見ると、約46.7%が「見守り中」に発生していたことです。つまり、直接手を添える場面より、見守りという判断が試される場面でこそ事故が起きやすい。歩行介助には、手技だけでなく「どこまで手を出すか」という判断の専門性が求められます。
この記事では、介護職の視点から、見守り・寄り添い・手引きといった介助の種類の使い分け、片麻痺がある方の立ち位置と足の順番、杖の三動作歩行・二動作歩行の介助手技、見守りレベルの判断、階段・段差、声かけ、歩行器やシルバーカーとの連携までを、根拠とともに実践的に整理します。利用者の自立を支えながら、介護職自身の腰痛も防ぐ。その両立を目指した内容です。
歩行介助・移動介助の目的と介護職の役割
歩行介助とは、立位や歩行が不安定な利用者が安全に移動できるよう、介護職がそばで支えたり見守ったりするケアです。単に「転ばせないこと」が目的ではありません。むしろ、できる動作は本人にやってもらい、足りない部分だけを補う「自立支援」の発想が土台になります。
歩行介助の4つの目的
- 転倒事故の防止:ふらつきや膝折れを支え、転倒・骨折を防ぐ。
- 安定した歩行の確保:立位バランスを保ち、四肢体幹の動きを円滑にする。
- 心身の負担軽減:「支えてもらえる」という安心感が緊張をやわらげ、歩く意欲を引き出す。
- 活動範囲の拡大:歩ける範囲が広がることで、食事・排泄・入浴などの生活動作も自分で行いやすくなる。
「歩かせる」ことが廃用予防につながる
歩く機会が減ると、下肢の筋力が落ち、移動・排泄・更衣・入浴などの日常生活動作(ADL)全体が低下します。これが進むと寝たきりにつながります。逆に言えば、適切な歩行介助で歩く機会を維持することは、サルコペニア(加齢性の筋肉減少)やフレイル(虚弱)の予防そのものです。過剰に支えて「車椅子のほうが早いから」と歩く機会を奪うことは、長期的には利用者の機能を奪うことになります。介護職には、安全と自立支援のバランスを見極める専門性が求められます。
歩行介助の種類と立ち位置の使い分け
歩行介助にはいくつかの方法があり、利用者の歩行能力に応じて使い分けます。共通する原則は、介助者は利用者の身体を「つかむ」のではなく下から「支える」こと、そして体重を全部引き受けるのではなく、バランスを取る程度の力加減にすることです。衣類をつかむと、ふらついたときに支えきれず、かえって転倒を招きます。
種類別の方法と立ち位置
| 種類 | 立ち位置 | 介助の内容 | 適する利用者 |
|---|---|---|---|
| 見守り歩行 | 斜め後方 | 触れずに見守り、ふらついたら即支える | 歩行が比較的安定し、身の回りを自力でできる方 |
| 寄り添い歩行 | 横(患側) | 脇の下と肘を支え、バランスを補う | 1人歩行が少し心配、軽い麻痺がある方 |
| 手引き歩行 | 正面(後ろ向き) | 両手を下から支える。短距離向け | 正面で安心感を与えたい方 |
| 杖を使った歩行 | 患側のやや後方 | 脇の下から肘を支える | 下肢筋力低下・ふらつきがある方 |
| 歩行器を使った歩行 | 斜め後方 | 脇の下や腰を支える | 杖より高い安定性が必要な方 |
基本の立ち位置は「斜め後方」、麻痺がある人は「患側」
多くの介助で基本となる立ち位置は利用者の斜め後方です。この位置なら歩行の様子・姿勢の崩れ・表情(疲労や不安)を観察しやすく、バランスを崩したときにすぐ脇や腰を支えられます。ただし片麻痺がある場合は、最もバランスを崩しやすい患側(麻痺側)のやや後方に立つのが原則です。麻痺側に倒れ込もうとする力を支えられる位置に身を置くことが、転倒予防の要になります。
「後ろから」の全介助は最小限に
真後ろから両脇を抱える方法は、利用者が介助に依存しやすく、自分でバランスを取る力が育ちにくくなります。小脳失調などで左右どちらにも倒れやすい方など、限定的な場面にとどめ、できる限り本人の力を引き出す介助を選びます。
片麻痺がある方の歩行介助|健側・患側の考え方と立ち位置
脳卒中後などで片麻痺がある方の歩行介助は、介護現場で最も基本かつ重要な技術です。鍵になるのが「健側(けんそく=動かしやすい側)」と「患側(かんそく=麻痺がある側)」の使い分けです。
立ち位置は「患側のやや後方」
介助者は患側に立ち、腰を軽く支えます。このとき衣類をつかまず、直接身体を支えるのがポイントです。もう一方の手で患側の肘を軽く支えると、利用者がバランスを取りやすくなります。患側は本人がコントロールしにくく、最も倒れやすい方向だからこそ、その側に介助者が位置することで「いざという時に支えられる」状態をつくります。
平地歩行の足の順番は「杖→患側→健側」
杖を使う場合、平地歩行の順番は①杖を前に出す→②患側(麻痺側)の足を出す→③健側の足を出すです。理由を理解しておくと応用が利きます。
- 杖は原則として健側の手で持つ。患側は不安定なため、安定している側で支える。
- もし健側の足を先に出すと、患側の足が後ろに置き去りになり、次に出すとき引きずったり引っかけたりしやすい。
- 杖を突いて支えながら患側の足を先に出すことで、患側を引きずらず安定して歩ける。
歩き出しは「立ち上がり」から連続している
歩行介助は、椅子やベッドからの立ち上がりと地続きです。立ち上がりが不安定なまま歩き出すと、最初の一歩でバランスを崩します。立ち上がったら、すぐ歩かせず一度しっかり立位を安定させ、足が床にきちんとついているか、ふらつきがないかを確認してから歩き出します。立ち上がり直後はとくに血圧変動(起立性低血圧)でふらつきやすいため、「立ったら少し待つ」をひと呼吸はさむと安全です。患側の足に体重が乗りすぎていないか、装具のかかとが浮いていないかもこのタイミングで点検します。
観察のポイント
- 患側の足が床に引っかからないか(つま先が上がりにくい方は要注意)。
- 健側に重心を傾けすぎていないか。傾きすぎると健側へ崩れる。適度に支えてまっすぐ保つ。
- 装具(短下肢装具など)を使っている場合は、装着の緩みやズレがないか。
- 表情・呼吸・疲労度。長距離が難しければ無理をせず、車椅子を併用する判断も大切。
歩行のリズムは利用者に合わせ、介護職が急かさないこと。介助者の歩幅が大きすぎると、利用者が引っ張られて前のめりになります。声をかけながら、利用者が「自分のペースで歩けている」と感じられる介助を心がけます。
杖歩行の介助|三動作歩行・二動作歩行と介助点
杖を使った歩行には、安定性とスピードの異なる三動作歩行と二動作歩行があります。利用者の立位バランスや歩行能力に合わせて選び、能力が上がれば二動作へ移行していきます。介護職は、それぞれの動作の介助点(どこをどう支えるか)を理解しておくことが大切です。
三動作(3点)歩行:「1・2・3」のリズム
もっとも安定した歩き方で、機能レベルがまだ高くない方に向きます。
- 杖を前に出す(このとき両足の2点が地面に接地)
- 患側の足を出す(杖と健側の足の2点で支持)
- 健側の足を出す(杖と患側の足の2点で支持)
常に2点が地面についているため安定性が高い一方、スピードはゆっくりになります。声かけは「杖、患側、健側」または「1・2・3」とリズムをとると動作開始が促せます。
二動作(2点)歩行:「1・2」のリズム
三動作より普通の歩行に近く、スピードが速くなります。バランス能力が高まった方に移行します。
- 杖と患側の足を同時に出す(このとき健側の足1点で支持)
- 健側の足を出す(杖と患側の足の2点で支持)
一瞬、健側の足1点だけで支える局面があるため、三動作よりバランスが不安定になります。移行直後はとくに見守りと声かけを丁寧に行います。
介助点(どこを支えるか)
利用者の能力に応じて、介助が最も少なくてすむ最適な支持点を選びます。代表的な介助点は次の通りです。
- 脇と手:脇の下から肘にかけて、杖を持っていない側を支える。
- 腰背部と脇:腰背部に手を添え、もう一方で脇を支える。
- 上腕と手:歩行が比較的安定している方への軽い支え。
介助者の足の出し方にもコツがあります。利用者が右足を出したら介助者も右足を、左足を出したら左足を同時に出すと、利用者の動きに合わせて自然に付き添えます。方向転換(Uターン)は、杖と足の順番は歩行時と同じで、杖を持っていない方向(患側方向ではなく回りやすい方向)へ小さく足踏みしながら回ると安全です。
階段・段差の歩行介助|昇り降りで順番が逆になる理由
階段や段差は、住宅内の高齢者転倒事故で居室に次いで多く発生する場所です(65歳以上の住宅内事故の18.7%、健康長寿ネット)。平地とは足の順番も立ち位置も変わるため、確実に覚えておきます。
昇り(上る):足は「杖→健側→患側」
階段を上るときは、先に出す足に最も体重がかかります。体重を支える力が強い健側を先に上げて身体を持ち上げ、続いて患側を上げます。介助者は利用者の一段下、斜め後方に立ち、脇や腰を支えて姿勢を保持します。万一後ろに崩れても支えられる位置です。
降り(下る):足は「杖→患側→健側」
下るときは、後に残る足に最も体重がかかります。最後まで体重を支える役を健側に担わせるため、患側を先に下ろし、健側を最後に下ろします。介助者は利用者の一段下、斜め前方に立ち、前方への転落を防げる位置で支えます。
覚え方
- 平地:杖→患側→健側
- 階段を上る:杖→健側→患側(健側から「上げる」)
- 階段を下る:杖→患側→健側(健側を「残す」)
共通して「体重がかかる場面を健側に担わせる」と理解すると、取り違えにくくなります。
段差・敷居の注意点
- 手すりがあれば積極的に使うよう促す。手すりは健側の手で握れる位置が安全。
- 視線は階段の先ではなく足元に向けるよう声をかける。
- 1cm〜2cmのわずかな段差ほどつまずきやすい。事前に足元を声かけで知らせる。
- 階段昇降は体力を消耗するため、体調・疲労を常に確認し、急かさない。介助者自身も安定した姿勢を保ち、共倒れを防ぐ。
見守りレベルの判断|どこまで手を出すかを見極める
歩行介助でベテランと新人の差が出るのが「どこまで手を出すか」の判断です。手を出しすぎれば自立を奪い、手を引きすぎれば転倒させてしまう。介護の自立度の考え方を歩行に当てはめると、おおむね次の4段階で整理できます。介護記録やケアプランで使われる区分とも対応します。
歩行介助の4段階
| レベル | 状態 | 介助者の関わり |
|---|---|---|
| 自立 | 補助具の有無を問わず安全に1人で歩ける | 原則関わらない。環境整備のみ |
| 見守り | 歩行は可能だがふらつき・判断低下のリスクがある | 触れずに斜め後方で見守り、危険時に即介入 |
| 一部介助 | 立位・歩行の一部に支えが必要 | 脇・肘・腰を部分的に支える(寄り添い・杖介助) |
| 全介助 | 自力での立位・歩行が困難 | 身体を大きく支える、または車椅子へ移行を検討 |
レベルを判断する観察ポイント
同じ利用者でも、その日の体調・服薬・時間帯(夜間や起床直後)でレベルは変動します。次の点を観察して、その場で調整します。
- 立位バランス:立ち上がった直後にふらつかないか。閉脚立位を保てるか。
- 下肢の支持性:膝折れ(カクンと膝が抜ける)の兆候がないか。
- 歩行のリズム・歩幅:すり足、小刻み、左右非対称が強まっていないか。
- 覚醒・認知:眠気や混乱がないか。声かけへの反応は適切か。
- 本人の訴え:「ふらつく」「不安」という訴えがあるときは一段上の介助に。
判断に迷ったら「安全側」に
歩行が不安定なときや本人が不安・心配を訴えるときは、見守りから寄り添いへ、寄り添いから一部介助へと、迷ったら一段手厚い側に倒すのが原則です。ただし常に手厚くするのではなく、調子の良い場面では一段引いて自立を引き出す。この上げ下げの判断こそが、歩行介助の専門性です。判断に迷うケースは、理学療法士(PT)や機能訓練指導員と共有し、チームで歩行レベルをすり合わせます。
歩行器・シルバーカーとの連携と転倒予防の声かけ
杖だけでは支えきれない方には、歩行器やシルバーカーといった歩行補助具を組み合わせます。介護職は用具の選定そのものは行いませんが(福祉用具専門相談員やリハ職が担当)、現場で安全に使えるよう介助・観察するのは介護職の役割です。
歩行器を使った歩行介助
- 高さは、肘が軽く曲がり、やや前傾姿勢になる位置に調整する。
- 介助者は利用者の斜め後方に立ち、脇の下や腰を支える。
- 「歩行器→患側→健側」の順で、焦らずゆっくり歩く。
歩行器と体の距離が遠すぎると前へ、近すぎると後ろへ転倒しそうになります。適切な距離を保つよう声をかけます。キャスター(車輪)付きの場合は、利用者が一歩出したら介助者も一歩出し、タイヤがスムーズに動くか・後方へ倒れないかを確認します。
シルバーカーは「歩行器」ではない点に注意
シルバーカーは荷物を載せたり腰かけて休んだりできますが、体重を預けて支える設計ではありません。比較的歩行が安定した方が対象で、体重を強く預けると前へ滑って転倒します。使用前後でブレーキの効きを必ず確認します。
転倒を防ぐ声かけのコツ
- 動作の開始を促す:「杖を前に」「次に右足」など、動作を区切って具体的に。歩き出しが苦手な方ほど有効。
- リズムをつくる:「1・2・3」「1・2」と声に出すと、足が出やすくなる。すくみ足のある方には床の目印やリズムが効果的。
- 先に危険を知らせる:「ここで段差です」「右に曲がります」と、起こることを前もって伝える。
- 急かさない:「ゆっくりで大丈夫ですよ」と安心感を与える。焦りは転倒の最大の引き金。
足元と履物の確認も介護職の仕事
どれだけ介助手技が正しくても、脱げやすいスリッパや滑る靴下、ほどけた靴ひもがあれば転倒します。歩く前に、かかとが固定される脱げにくい履物か、床に障害物やコード・濡れがないかを確認する習慣をつけます。
介護職自身の身体を守る|歩行介助と腰痛・転倒リスク
歩行介助は利用者の安全だけでなく、介護職自身の安全にも直結します。令和6年度介護労働実態調査では、労働条件・仕事の負担についての悩みの第3位が「身体的負担が大きい」(24.6%)でした。介護職員の腰痛有訴率は調査によって6〜8割にのぼるとされ、腰痛は社会福祉施設の業務上疾病の6割以上を占めます(厚生労働省)。
歩行介助で腰を痛めないために
- 利用者を抱え上げない:厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、原則として人力での抱え上げを行わないよう求めています。歩行介助でも、利用者の体重を全部引き受けず、本人の力を活かして「支える」にとどめます。
- 前屈・ひねりを避ける:低い位置を支えようと腰を曲げてひねると、腰部の負担が一気に増します。膝を使って重心を落とし、利用者と正対する向きを保ちます。
- 介助者の足を利用者に合わせて動かす:足を止めたまま上半身だけで支えようとすると腰を痛めます。利用者の歩みに合わせて自分も足を運びます。
- 不安定な利用者は1人で抱えない:膝折れの可能性が高い方は、無理に1人で支えず、二人介助や車椅子併用を選ぶ。これは利用者・職員双方の事故防止になります。
「支えきれない」と感じたら手技より体制を見直す
歩行介助中に「この人を1人で見るのは怖い」と感じたら、それは手技の問題ではなく、人員配置や用具の問題であることが多いものです。介護労働実態調査でも、介護ロボット・ICT機器の導入が業務負担の軽減に効果があったと回答した事業所があります。リフトや見守りセンサーなどの導入、ヒヤリハットの共有を通じて、組織として歩行介助のリスクを下げる視点を持つことが、長く働き続けるうえで欠かせません。
歩行介助・移動介助のよくある質問
Q. 杖はどちらの手で持つのが正しいですか?
A. 原則として健側(麻痺のない側、動かしやすい側)の手で持ちます。患側で杖を持つと不安定になり、支えになりません。杖を健側で持ち、患側を介助者が支えることで左右のバランスが取れます。
Q. 介助者は健側と患側のどちらに立ちますか?
A. 患側(麻痺側)のやや後方に立つのが原則です。患側は本人がコントロールしにくく最も倒れやすい方向なので、その側にいることでいざという時に支えられます。階段では立ち位置が変わり、上りは一段下の斜め後方、下りは一段下の斜め前方に立ちます。
Q. 平地と階段で足の順番が逆になるのはなぜですか?
A. 「体重がかかる場面を、支える力の強い健側に担わせる」ためです。平地は杖→患側→健側ですが、階段を上るときは先に出す足に体重がかかるので健側を先に(杖→健側→患側)、下るときは後に残る足に体重がかかるので健側を最後に(杖→患側→健側)します。
Q. 見守りでいいのか、支えるべきか迷います。
A. 迷ったときは一段手厚い側(見守り→寄り添い→一部介助)に倒すのが安全の原則です。ただし常に手厚くするのではなく、立位バランス・膝折れの兆候・覚醒状態・本人の訴えを観察し、調子の良い場面では一段引いて自立を引き出します。判断に迷うケースはPTや機能訓練指導員と共有しましょう。
Q. 利用者が転倒したら、それは介護職の過失ですか?
A. 必ずしも過失とは限りません。日本老年医学会と全国老人保健施設協会の「介護施設内での転倒に関するステートメント」(2021年)は、転倒予防策を実施していても一定の確率で転倒は発生し、その結果骨折等が生じても必ずしも現場の過失による事故とは位置づけられない、と明言しています。重要なのは、リスクをあらかじめ予見して必要な対策を講じ、本人・家族と認識を共有しておくことです。
Q. すくみ足のある利用者の歩き出しを助けるには?
A. 床に目印の線を引いたり、歩幅の目安になるものを置いたりすると最初の一歩を踏み出しやすくなります。「1・2・3」とリズミカルな声かけや、メトロノーム・音楽でリズムをつくる方法も有効です。小刻みや前傾が強い方には、大きめの歩幅と体をまっすぐ保つ声かけを添えます。
参考文献・出典
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まとめ
歩行介助・移動介助は、立ち位置と足を出す順番という基本を押さえることが出発点です。片麻痺がある方の平地歩行は介助者が患側のやや後方に立ち、足は杖→患側→健側。階段は昇りが杖→健側→患側、降りが杖→患側→健側と逆になります。これは「体重がかかる場面を支える力の強い健側に担わせる」と理解すれば取り違えません。
杖歩行には安定重視の三動作歩行と、速さに移行する二動作歩行があり、利用者の能力に応じて介助点(脇と手、腰背部)を選びます。そして何より、見守り・寄り添い・一部介助・全介助のレベルを、その日の立位バランスや膝折れの兆候、本人の訴えから見極める判断力が、転倒予防の鍵になります。迷ったら一段手厚い側へ、調子が良ければ一段引いて自立を引き出す。この上げ下げが介護職の専門性です。
同時に、利用者を抱え上げず本人の力を活かす介助は、介護職自身の腰痛予防にもつながります。1人で支えきれないと感じたら、それは手技ではなく体制の問題。二人介助や福祉用具、チームでの歩行レベル共有を活用し、利用者と自分の両方の安全を守りながら、長く現場で力を発揮していきましょう。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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