
PEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)とは
PEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)の定義・適応・カテーテル種類・合併症・自己抜去対応・介護職の関わり方を看護師・介護福祉士向けに解説。
PEGとは(直接回答)
PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy/経皮内視鏡的胃ろう造設術)とは、内視鏡を用いて腹壁と胃壁にカテーテルを留置し、長期の経腸栄養を可能にする手術およびそのカテーテルそのものを指します。手技は5〜10分・全身麻酔不要で実施でき、経鼻胃管に比べて違和感が少なく在宅・施設介護を続けやすいのが特徴です。介護現場では喀痰吸引等研修(第1〜3号)を修了した介護職員のみ栄養剤注入や薬剤投与の補助が可能です。
目次
PEGの位置づけと法令
PEGの位置づけ|経腸栄養と医療的ケアの基礎
PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)は、口から十分な栄養を摂取できないが消化管は機能している人に対して、内視鏡を用いて腹壁と胃壁に瘻孔(ろうこう)を造り、その経路から栄養剤・水分・薬剤を投与する経腸栄養法です。手術自体を指す場合と、留置されたカテーテル(胃ろうカテーテル)を指す場合の両方があり、現場では「PEG=胃ろう」とほぼ同義で扱われます。
1979年に米国で報告されて以来、開腹手術を要する従来の胃瘻造設に比べて低侵襲で施行できることから世界中に普及しました。日本では2000年代以降、高齢者ケアの中で急速に件数が増え、現在も認知症・脳卒中後遺症・神経難病・誤嚥性肺炎反復例に対する標準的な選択肢のひとつとなっています。
介護保険サービスの観点では、PEG管理は医療行為に分類されます。原則として医師・看護師が栄養剤注入・カテーテル交換・瘻孔管理を担当しますが、社会福祉士及び介護福祉士法の改正(2012年施行)により、喀痰吸引等研修を修了した介護職員も一定の条件下で「経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)」を実施できるようになりました。具体的には第1号研修(不特定多数の者対象)または第3号研修(特定の利用者対象)を修了し、登録特定行為事業者として認定された事業所に所属していることが必要です。
家族介護者の場合は資格制限なく実施できますが、医師・訪問看護師から個別指導を受けたうえで、トラブル時の連絡経路と緊急対応フローを必ず確認してから始める必要があります。
PEGカテーテルの種類
PEGカテーテルの4タイプ|体外×体内固定の組み合わせ
PEGカテーテルは「胃内固定(体内側)」と「体外固定」の組み合わせで4タイプに分類されます。介護現場で扱うときは「自分が見ているのはどの型か」を必ず把握し、交換時期・抜去リスクをチームで共有する必要があります。
- バルーン型(胃内固定):胃内側に水で膨らませた風船で固定する方式。交換は約1か月に1回、看護師でも実施可能。バルーンの破裂・虚脱による事故抜去リスクがあるため、定期的なバルーン水量チェック(通常5〜10ml)が必要。
- バンパー型(胃内固定):胃内側がドーム状の硬い構造物で抜けにくい。交換は約4〜6か月に1回と頻度が低い反面、交換時に内視鏡または特殊器具が必要で、外来通院または医師の訪問診療で行う。
- ボタン型(体外固定):体外側が皮膚にフィットするボタン状で、衣服に引っかかりにくく自己抜去リスクが低い。注入時のみ専用チューブを接続する。在宅・施設介護で第一選択になりやすい。
- チューブ型(体外固定):体外側に常時チューブが出ている方式。注入や薬剤投与の接続は容易だが、自己抜去・引っかけ事故のリスクがボタン型より高い。認知症で抜去リスクが高い利用者には不向き。
実際の現場では「バルーン・ボタン型」「バンパー・ボタン型」「バルーン・チューブ型」「バンパー・チューブ型」の4種類が処方されます。利用者ごとにどの型かを介護記録に明記し、カテーテル交換予定日・前回交換日・バルーン水量を必ずチームで共有しましょう。
PEG造設の手技と適応・禁忌
主な造設手技
PEG造設は内視鏡室で局所麻酔下に行われ、所要時間は5〜10分程度。代表的な手技は次の2つです。
- プル法・プッシュ法:内視鏡で胃を観察しながら腹壁から穿刺し、口腔咽頭を経由してカテーテルを留置する方法。標準的だが咽頭通過に伴う感染リスクがある。
- イントロデューサー法(ダイレクト法):腹壁側から直接カテーテルを胃内に挿入する方式。咽頭通過がないため食道狭窄例や頭頸部癌術後にも適応でき、創部感染リスクも低い。
主な適応
- 脳卒中後遺症で嚥下障害があり経口摂取が困難
- 認知症終末期で経口摂取量が著しく低下している
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)・パーキンソン病など神経難病
- 頭頸部癌・食道癌の周術期栄養管理
- 誤嚥性肺炎を反復する(経鼻胃管より誤嚥リスクが低いとされる)
- 長期の経鼻胃管留置から離脱したい場合
禁忌(絶対的・相対的)
- 絶対禁忌:補正不能な出血傾向、胃前壁を腹壁に近接できない解剖学的問題(巨大肝左葉・横行結腸介在など)、消化管通過障害、大量腹水。
- 相対禁忌:胃切除術後、門脈圧亢進症、腹膜透析中、予後が極端に短いと予測される終末期(造設利益が乏しいケース)。
2012年に日本老年医学会が「人工的水分・栄養補給の導入に関する意思決定プロセスのガイドライン」を公表して以降、認知症終末期へのPEG造設は「本人・家族の意思」を尊重した慎重な判断が求められるようになっています。介護職もACP(人生会議)の場面に同席し、本人の価値観を引き出す役割が期待されます。
PEGの合併症と自己抜去対応
PEGの合併症と自己抜去への緊急対応
主な合併症
- 早期合併症(造設後2週間以内):腹膜炎、創部感染、出血、胃壁・腹壁分離による瘻孔形成不全、誤穿刺による腸管損傷。造設後2週間は瘻孔が完成しておらず、最も合併症リスクの高い時期。
- 後期合併症:スキントラブル(発赤・びらん・肉芽形成)、バンパー埋没症候群(カテーテルが胃壁にめり込む)、瘻孔狭窄、栄養剤の逆流による誤嚥性肺炎、下痢・便秘。
自己抜去・事故抜去時の対応
カテーテルが抜けてしまった場合、瘻孔は2〜3時間で収縮し始め、24時間でほぼ閉塞します。抜けた状態で放置すると再造設が必要になるため、発見時の初動が最も重要です。
- 瘻孔確保:清潔なネラトンカテーテル・吸引カテーテル等を瘻孔に軽く挿入し、抜けたままの状態にしない。深く押し込んだり力を入れたりしない。
- 医師・訪問看護師に連絡:抜去時刻、カテーテルの状態(バルーン破裂の有無)、利用者の全身状態を伝える。
- 注入は絶対に再開しない:再挿入したカテーテルが胃内に正しく入っているかを医療者が確認するまで、栄養剤・水分・薬剤は一切注入してはいけません(腹腔内誤注入による腹膜炎の致死リスク)。
- 夜間・休日体制の事前準備:自己抜去は夜間・休日に多発します。施設・在宅とも「抜けたら誰に何時までに連絡するか」のフローを事前に文書化し、研修で全員に周知しておく。
日々の観察項目
- 瘻孔周囲皮膚の色調・滲出液・においの変化
- カテーテル固定具と皮膚の隙間(指1〜2本分の余裕があるか)
- バルーン型なら定期的なバルーン内水量の点検(通常5〜10ml)
- 注入時の逆流・腹部膨満・嘔吐の有無
- 体温・呼吸状態(誤嚥性肺炎の早期発見)
介護職・看護師の役割
介護職・看護師がPEG利用者を支える実務ポイント
看護師の役割
- 栄養剤・薬剤の準備と投与速度の管理(通常200ml/時程度、嘔吐・下痢時は調整)
- バルーン型カテーテルの交換(医師指示下)、瘻孔周囲のスキンケア
- 合併症の早期発見と医師への報告判断
- 家族・介護職への手技指導と緊急対応マニュアル整備
- 多職種カンファレンスでの栄養評価(BMI・血清アルブミン・体重変化)共有
介護職(喀痰吸引等研修修了者)の役割
- 第1号研修・第3号研修修了者は、医師の指示書と看護師との連携のもとで栄養剤注入を実施可能
- 注入前の姿勢調整(30度以上のセミファーラー位)、注入後30〜60分はそのままの姿勢を保つ
- 口腔ケアの徹底(経口摂取がなくても誤嚥性肺炎リスクは残る)
- カテーテル固定状態・皮膚状態の観察記録
- 本人の表情・体動から「合っていないサイン」を読み取る
転職・キャリア視点
PEG・喀痰吸引などの医療的ケアに対応できる事業所は登録特定行為事業者として認定される必要があります。喀痰吸引等研修第1号を持つ介護福祉士は処遇改善加算の特定加算(経験・技能のある介護職員)の対象にもなりやすく、特養・有料老人ホーム・訪問介護事業所で資格手当5,000〜15,000円が付くケースが一般的です。看護師の場合、特定行為研修「在宅・慢性期領域」の修了で胃ろう関連の医師指示プロトコルに沿った判断ができ、訪問看護ステーションの管理者候補として年収アップが見込めます。
PEGに関するFAQ
よくある質問
Q1. PEGと経鼻胃管はどう違う?
経鼻胃管は鼻からチューブを胃まで挿入する方式で、咽頭部の違和感や自己抜去の頻度が高く、誤嚥性肺炎リスクも比較的高いとされます。PEGは腹部からの留置で違和感が少なく、長期管理に向きます。一方で造設手技自体は侵襲があり、終末期では「造設の利益」を慎重に判断する必要があります。
Q2. PEGを造設したら口から食べられない?
原則として「口から食べてはいけない」わけではありません。嚥下機能評価(RSST・改訂水飲みテストなど)の結果と医師の判断によりますが、嚥下リハビリと並行して少量の経口摂取を続けるケースもあります。逆に経口摂取量が増えればPEG抜去(オンデマンド離脱)も可能です。
Q3. PEGがある人を受け入れてくれる介護施設は?
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・看護小規模多機能型居宅介護・住宅型有料老人ホーム(訪問看護連携あり)など、看護師配置がある施設が中心です。看護体制加算の手厚い施設や、登録特定行為事業者として認定された事業所は対応可能件数が多くなっています。
Q4. PEG管理の介護費用は月いくらかかる?
栄養剤代として月2〜3.5万円、訪問診療・訪問看護の自己負担分、カテーテル交換時の処置料が加わります。バルーン型は約1か月毎、バンパー型は4〜6か月毎の交換が必要で、医療保険の自己負担割合に応じて1回1,000円〜数千円程度。介護保険サービス費とは別建てになる点に注意が必要です。
Q5. 家族が在宅でPEG管理をするには?
退院前カンファレンスで医師・病棟看護師・訪問看護師から手技指導を受け、注入の手順・トラブル時連絡先・必要物品の調達経路を文書で受け取ります。訪問看護導入を強く推奨します。週1〜2回の訪問看護でカテーテル状態・皮膚・栄養状態を継続観察してもらえる体制を確保しましょう。
参考文献・公的資料
まとめ
まとめ|PEGは「医療的ケアの設計」と「自己抜去への備え」が両輪
PEGは経鼻胃管に比べて低侵襲・長期管理しやすく、誤嚥性肺炎リスクを下げる利点がある一方、造設後2週間は瘻孔形成中で合併症リスクが高く、自己抜去時は24時間で瘻孔閉塞するため初動対応が成果を左右します。介護現場では「カテーテルの型と前回交換日の共有」「注入時の姿勢と速度」「夜間・休日の緊急対応フロー」の3点を必ず標準化しましょう。医療的ケアに対応できる施設・訪問看護ステーションは資格手当やキャリアアップの面でも価値が高く、喀痰吸引等研修・特定行為研修と組み合わせることで専門性を伸ばしていけます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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