
RSST(反復唾液嚥下テスト)とは
RSST(反復唾液嚥下テスト)は30秒間に何回空嚥下できるかを甲状軟骨触知でカウントする嚥下スクリーニング。3回未満で誤嚥疑い。手順・判定基準・MWST/FTとの違いを看護師・介護職向けに解説。
この記事のポイント
RSST(反復唾液嚥下テスト:Repetitive Saliva Swallowing Test)は、患者の甲状軟骨を触知しながら30秒間に何回空嚥下(唾液を飲み込む動作)ができるかを計測する、嚥下機能のスクリーニングテストです。30秒間で3回未満なら誤嚥のリスクありと判定し、感度0.98・特異度0.66と簡便ながら見逃しの少ない検査として、急性期病院から特養・老健、在宅まで幅広く使われています。
目次
RSSTの概要と臨床的意義
RSST(反復唾液嚥下テスト)は、小口和代らが1990年代に開発した嚥下機能のスクリーニング法で、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「摂食嚥下障害の評価 2019」にも標準的なスクリーニングテストとして掲載されています。水やゼリーなど物質を口に入れることなく、本人の唾液だけで実施できるため、誤嚥のリスクを最小化したまま嚥下反射の起こりやすさを評価できる点が最大の特長です。
嚥下障害が疑われる患者では、口腔・咽頭の感覚低下や舌骨上筋群の筋力低下によって嚥下反射そのものが惹起されにくくなります。RSSTは「30秒間に何回唾を飲み込めるか」という単純な指標を通じて、この嚥下反射の起こしやすさ(嚥下惹起性)を間接的に評価する検査です。
介護現場では、看護師・言語聴覚士(ST)が中心となって実施しますが、誤嚥のリスクが低く道具もストップウォッチ1つで済むことから、施設入所時のベースライン評価、肺炎後の食事再開判断、家族向けの嚥下教育など、ケア計画のさまざまな場面で活用されています。
RSSTの実施手順
日本摂食嚥下リハビリテーション学会のマニュアルに準拠した標準的な手順は次のとおりです。
- 事前準備:座位(ファウラー位30度以上が望ましい)で患者を安定させる。口腔内が乾燥していると嚥下が起こりにくいため、必要に応じて口腔ケアやスポンジブラシで口腔粘膜を湿らせる。
- 触知:検者は患者の正面または側方に立ち、利き手の人差し指で舌骨を、中指で甲状軟骨(喉頭隆起)を軽く触れる。指で押さえつけず、皮膚の上から動きを感じ取る程度にする。
- 教示:「これから30秒間、できるだけ多くつばを飲み込んでください」と声をかけ、ストップウォッチで計測を開始する。
- カウント:嚥下のたびに甲状軟骨が指の腹を一度乗り越え、再び戻る動きが確認できた回数のみを1回として数える。中途半端な動き・空振りはカウントしない。
- 終了・記録:30秒経過時点で計測を止め、嚥下回数・実施姿勢・口腔状態を看護記録/介護記録に残す。複数回行う場合は数分間隔を空ける。
急性期から在宅まで共通の手順であり、聴診器を喉に当てて嚥下音を確認すると判定の精度がさらに上がります。
判定基準と検査の限界
判定はシンプルですが、検査特性を理解せずに使うと過大評価・過小評価を招きます。
- 3回以上:陰性(正常範囲)。嚥下反射は十分に起こせていると判断し、次段階のMWST(改訂水飲みテスト)やフードテストへ進める目安になる。
- 2回以下:陽性(嚥下機能低下の疑い)。誤嚥や不顕性誤嚥のリスクが高いと判断し、ST・医師への報告と精査(VE:嚥下内視鏡検査、VF:嚥下造影検査)を検討する。
- 感度0.98/特異度0.66:3回以上できれば誤嚥の可能性は低いと言える一方、3回未満の人が必ず誤嚥するわけではなく、追加評価が必須。
RSSTの限界として、以下の3点を必ず押さえてください。
- 認知機能・指示理解が保たれていないと正確に測れない。重度認知症やレベル低下時は教示が伝わらず偽陽性になりやすい。
- 口腔乾燥があると唾液量そのものが不足し、嚥下回数が減って偽陽性になる。Sjögren症候群・抗コリン薬服用中・経鼻酸素投与下では事前評価が必要。
- RSSTは嚥下反射の惹起性を評価する検査であり、咽頭残留や食塊形成の問題は検出できない。物性別の評価にはMWST・フードテストの併用が前提。
MWST・フードテストとの使い分け
RSST・MWST・フードテスト(FT)の使い分け
嚥下スクリーニングには「物質を入れない検査」と「物質を入れる検査」があり、リスクの低いものから順に組み合わせて精度を高めるのが原則です。
| 検査 | 使用するもの | 判定 | 主な評価対象 | 誤嚥リスク |
|---|---|---|---|---|
| RSST(反復唾液嚥下テスト) | 唾液のみ | 30秒で3回未満が陽性 | 嚥下反射の惹起性 | 極めて低い |
| MWST(改訂水飲みテスト) | 冷水3mL | 5段階評価で4点以上が陰性 | 水のような液体での咽頭期障害 | 低〜中 |
| FT(フードテスト) | プリンなど約4g | 5段階評価で4点以上が陰性。口腔残留も評価 | 食塊形成・口腔通過・咽頭残留 | 中 |
実務では、まずRSSTで反射が3回以上保たれていることを確認し、陰性ならMWSTで液体の安全性を、最後にFTで固形物に近い食物の処理能力を順に評価する流れが一般的です。RSSTで陽性が出た場合は、いきなり食物を入れずに、まずSTや医師に相談して嚥下内視鏡検査(VE)・嚥下造影検査(VF)の適応を判断します。
よくある質問
RSSTに関するよくある質問
Q1. 介護職員(無資格・介護福祉士)が単独でRSSTを実施してもよいですか?
RSST自体は侵襲がなく医療行為に該当しないため、介護職員が観察として実施することは禁じられていません。ただし、嚥下障害の診断・評価としてカルテに記録し方針決定に使う場合は、医師・看護師・言語聴覚士(ST)の指示下で実施するのが原則です。施設では「看護師・STが評価者、介護職員が補助と観察記録」という分担が現実的です。
Q2. どのタイミングで実施すべきですか?
典型的には、(1)施設入所時のベースライン評価、(2)肺炎・脱水・入院後の食事再開判断時、(3)食事中のむせが続くなど嚥下機能低下が疑われたとき、(4)半年〜1年ごとの定期再評価、の4場面です。食直後は嚥下回数が減るため、食前または食後1時間以上空けて実施します。
Q3. 記録はどう書けばよいですか?
「RSST:30秒間で○回(陽性/陰性)、姿勢:ファウラー位30度、口腔状態:湿潤、実施者:看護師○○」のように、回数・姿勢・口腔条件・実施者を必ずセットで残します。回数だけだと条件差で再現性が落ち、ケアカンファレンスで活用できなくなります。
Q4. 認知症で指示が入りにくい人にはどうしますか?
RSSTは指示理解が前提のため、重度認知症では信頼性が下がります。その場合は強引に実施せず、食事観察・頸部聴診・MWST(少量水)など、本人が反応しやすい他の評価に切り替えるのが安全です。
参考資料
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まとめ
RSST(反復唾液嚥下テスト)は、30秒間に何回空嚥下できるかを甲状軟骨の触知でカウントするだけの、極めて簡便かつ低侵襲な嚥下スクリーニングです。「3回未満で陽性」というシンプルな基準と高い感度(0.98)から、看護師・STだけでなく介護現場全体が共有すべき評価指標として定着しています。
一方で、認知機能や口腔乾燥に影響を受けやすく、嚥下反射の惹起性以外(咽頭残留・食塊形成など)は評価できません。MWST(改訂水飲みテスト)やフードテスト(FT)と組み合わせ、必要に応じてVE・VFへつなぐ多段階アセスメントの最初の一歩として位置づけるのが、誤嚥性肺炎の予防と利用者のQOL維持につながる使い方です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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