
作業療法士(OT)とは
作業療法士(OT)は応用動作能力と社会的適応能力の回復を担う国家資格。業務範囲・養成課程・PT/STとの違い・介護施設や精神科での役割をやさしく解説します。
この記事のポイント
作業療法士(OT=Occupational Therapist)は、身体または精神に障害がある人や障害発生が予測される人に対し、食事・更衣・入浴・調理など日常生活の「応用動作能力」と社会的適応能力の回復を目的に、作業活動を治療手段として用いる国家資格です。理学療法士及び作業療法士法(1965年)に基づき、医師の指示のもと業務を行います。
目次
作業療法士の業務範囲と法的位置づけ
作業療法士(OT)は、理学療法士及び作業療法士法第2条で「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせる」と定義されています。PTが「立つ・歩く」など基本動作の専門家なのに対し、OTは「服を着る・調理する・仕事をする」など生活全体や役割活動に関わる動作の専門家です。手工芸・園芸・調理・園内活動・職業前訓練などを治療手段に用いるのが特徴で、身体障害領域だけでなく精神科領域・発達障害領域・老年期領域も担当できる点がPTとの大きな違いです。
厚生労働省「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の現状について」によれば、OT免許登録者数は2024年時点で約11万人で、毎年5,000人前後の新規合格者が誕生しています。介護現場では老健・通所リハ・訪問リハ・特定施設・グループホームなどに配置され、認知症ケアと相性が良いリハ職として注目されています。介護報酬の「個別機能訓練加算(II)」「ADL維持等加算」「認知症専門ケア加算」などの算定にOTの関与が要件・推奨となるケースもあります。
作業療法士の3つの治療領域
- 身体障害領域:脳血管疾患・骨折・リウマチなどによる上肢機能障害や日常生活動作(ADL)の改善。手指のリハや自助具の選定が中心。
- 精神科領域:統合失調症・うつ病・依存症などの患者に対する作業活動を通じた社会復帰支援。OTがPTと最も大きく異なる領域。
- 老年期・認知症領域:認知症の進行抑制・BPSD緩和・回想法・園芸療法など、生活の中の役割活動を活かしたアプローチ。介護施設で最も活用されている。
- 発達領域:児童発達支援センター・特別支援学校等で、脳性まひや発達障害児の感覚統合・学校生活適応を支援。
作業療法士になるルート
作業療法士になるには、文部科学大臣指定の養成校(4年制大学・3年制短大・3〜4年制専門学校)で3年以上学び、解剖学・生理学・運動学・精神医学・作業学などのカリキュラム計101単位以上を修めて国家試験合格資格を得ます。実習時間はPTと同等で、身体障害・精神科・地域・発達など複数領域での臨床実習が必須です。
国家試験は毎年2月にPTと同時実施され、厚生労働省「第59回作業療法士国家試験(令和6年)」では受験者5,736人・合格者4,822人で合格率は84.1%でした。合格後は厚生労働大臣免許の登録を受けて業務に従事します。介護施設での勤務はPTと同様、機能訓練指導員・リハ部門責任者・通所リハ管理者などの役職に就けます。
介護現場でOTが特に活きる場面
OTは「生活そのものをリハビリにする」発想を持つため、介護現場で次のような場面で重宝されます。
- 認知症対応型グループホーム:BPSD(行動・心理症状)への非薬物的アプローチとして、回想法・園芸・料理活動を主導。
- 通所リハ・通所介護:ADL(食事・排泄・更衣)からIADL(買い物・掃除・服薬管理)までを評価し、自宅生活継続のための個別プログラムを設計。
- 訪問リハ:自宅環境(手すり位置・浴槽形状・キッチン高さ)を評価し、福祉用具・住宅改修の助言を行う。
- 特養・老健の認知症専門棟:認知症ケアチームの一員として、生活リハビリと役割活動の創出を担当。
よくある質問
- Q. PTとOTの違いをひと言で言うと?
- A. PTは「動作の専門家(立つ・歩く)」、OTは「生活と作業の専門家(食べる・着る・働く)」。同じ患者でもPTは下肢、OTは上肢や認知面を中心にアプローチすることが多いです。
- Q. OTは精神科でも働けるのですか?
- A. はい。精神科病院・精神科デイケア・就労移行支援事業所などで、OTは作業活動を通じた社会復帰支援を行います。診療報酬「精神科作業療法料」の算定要件にOTの配置が含まれます。
- Q. OTの平均年収は?
- A. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」では、OT・PT・STの平均年収は約430万円。介護分野ではやや低めですが、認知症ケアの専門性を持つOTは重宝され、専門加算配置で手当が付くケースもあります。
まとめ
作業療法士(OT)は応用動作と社会的適応能力の専門家として、身体障害・精神科・老年期・発達の4領域で活躍する国家資格です。介護現場では生活リハビリ・認知症ケア・住環境整備の中核を担い、PT・STと役割分担しながら利用者のADL/IADLを支えます。「生活全体をリハビリの場にする」OTの視点は、在宅復帰や認知症対応で大きな強みです。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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