SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは

SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは

SAS(睡眠時無呼吸症候群)は睡眠中に10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上起こる病態です。AHI重症度分類、閉塞性OSAS・中枢性CSAS、CPAP治療、高齢者特有の症状と介護現場の観察ポイントを解説します。

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この記事のポイント

SAS(Sleep Apnea Syndrome=睡眠時無呼吸症候群)は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止または低呼吸が1時間あたり5回以上起こる病態で、AHI(無呼吸低呼吸指数)で重症度を分類します。約95%が気道閉塞による閉塞性(OSAS)、約5%が呼吸中枢の異常による中枢性(CSAS)です。AHI20以上の中等症以上ではCPAP(持続陽圧呼吸療法)が標準治療で、高齢者では心不全合併によりCSASが増えやすい点に注意が必要です。

目次

SASとは|診断基準と病態の全体像

SAS(睡眠時無呼吸症候群)は、日本呼吸器学会の定義では「睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、さまざまな合併症を起こす病気」とされ、診断基準は 10秒以上の呼吸停止(無呼吸)または換気量50%以上の低下(低呼吸)が1時間あたり5回以上(AHI≧5)かつ自覚症状を伴うことです。

日中の強い眠気、起床時の頭痛、集中力低下、夜間頻尿、大きないびきといった症状が現れ、慢性的に低酸素状態が続くことで高血圧・心不全・脳卒中・糖尿病・認知症など、循環器・代謝・神経系の合併症リスクが大きく上がります。

とくに高齢者では症状が自覚されにくく、家族や介護職員の客観的な観察によって発見されるケースが多いのが特徴です。CPAP治療によって動脈硬化の進展や血管性認知症の発症を抑える可能性が示唆されており、早期発見・早期治療がきわめて重要な疾患です。

AHIによる重症度分類

AHI(Apnea Hypopnea Index、無呼吸低呼吸指数)は、睡眠ポリグラフ検査(PSG)や簡易検査で計測される1時間あたりの無呼吸+低呼吸の合計回数です。日本呼吸器学会のガイドラインで以下のように重症度が区分されます。

重症度AHI(回/時間)主な対応
正常5未満経過観察
軽症5〜15生活習慣改善・口腔内装具
中等症15〜30口腔内装具またはCPAP
重症30以上CPAPが第一選択(保険適用)

保険適用ラインはCPAPで「AHI20以上かつ日中の眠気などの症状あり」が基準です。AHI40を超える場合は、夜間に40回/時間以上、つまり1〜2分に1回呼吸が止まっている計算になり、命に関わるレベルです。

OSASとCSASの違い・CPAPとNPPVの関係

閉塞性(OSAS)と中枢性(CSAS)

SASは原因によって2つに大別され、合計の約95%が閉塞性、約5%が中枢性とされます。両者が混在する「混合型」もあります。

項目閉塞性(OSAS)中枢性(CSAS)
原因上気道の物理的閉塞呼吸中枢からの指令低下
頻度約95%約5%
いびき大きい(特徴的)少ない・無音
呼吸努力あり(胸郭は動く)なし(胸郭も止まる)
合併しやすい疾患肥満・顎が小さい・扁桃肥大心不全・脳卒中後遺症
高齢者での特徴軟口蓋萎縮でいびきが減少することも心不全合併例で増加

CPAPとNPPVの関係

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)は、鼻マスクから一定の陽圧をかけて気道を広げる治療法で、NPPV(非侵襲的陽圧換気)の一形態に分類されます。NPPVが「吸気時と呼気時で圧を変える二相性」も含む包括的な概念であるのに対し、CPAPは「一定圧をかけ続けるシンプルな1モード」と整理できます。重症心不全合併CSASでは、二相性のASV(適応補助換気)が選択されることもあります。

介護現場でのSAS観察ポイント

高齢者は眠気や倦怠感を「年齢のせい」と片付けて受診につながらないケースが多く、夜勤帯の介護職員や訪問看護師による観察がSAS発見の入り口になります。次のサインが複数当てはまる場合、医療職への報告と相談を検討してください。

  • 大いびきと突然の無音:いびきが10秒以上途切れ、再開時に大きな「ガッ」という呼吸再開音が出る。
  • 夜間の中途覚醒・体動:呼吸停止からの覚醒で寝返り・布団めくり・トイレ起きが頻回になる。
  • 日中の強い眠気:食事中・レクリエーション中の居眠り、声かけに対する反応低下。
  • 起床時の頭痛・口渇:夜間の低酸素と口呼吸で朝に頭痛・喉の乾燥を訴える。
  • 血圧変動:早朝高血圧、夜間〜早朝の血圧サージ。
  • 心不全の悪化兆候:下肢浮腫の増悪、夜間呼吸困難の自覚。CSASを伴うことがあるため要注意。
  • 高齢で「いびきは小さいけれど無呼吸あり」:軟口蓋の萎縮でいびきが減るため、無音の呼吸停止を見逃さないこと。

CPAP使用中の利用者では、マスクのフィット感、加湿器の水量、AHIや使用時間の機器ログを月1回ペースで確認すると、効果不十分の早期発見につながります。

SASに関するよくある質問

Q1. 高齢者でいびきが小さくなったら、SASの心配はないのですか?

いいえ、注意が必要です。加齢で軟口蓋が萎縮するといびき音が小さくなりますが、上気道閉塞そのものは続いており、無音の無呼吸として進行することがあります。日中の眠気・夜間覚醒・血圧変動などの他のサインで判断します。

Q2. CPAPはどれくらい使えば効果が出ますか?

1晩あたり4時間以上、月の70%以上使用することが保険継続の目安です。継続使用により日中の眠気は数日〜数週間で改善し、血圧低下や認知機能改善も数ヶ月単位で報告されています。

Q3. 横向き寝だけでSASは治りますか?

軽症のOSASでは仰臥位より側臥位(横向き)でAHIが下がることがあり、姿勢療法が有効な場合があります。ただし中等症〜重症では補助的位置づけで、根本治療にはなりません。AHIで判断します。

Q4. 心不全の人がSASになりやすいのはなぜ?

心不全では心拍出量低下と肺うっ血で呼吸中枢の調節が乱れ、CSAS(中枢性無呼吸)が出現しやすくなります。チェーン・ストークス呼吸(漸増漸減型呼吸)が見られる場合は典型的なサインです。心不全の悪化兆候とあわせて観察します。

Q5. SASを放置するとどんなリスクがありますか?

高血圧2倍、心筋梗塞2〜4倍、脳卒中3〜4倍、糖尿病1.5倍程度のリスク上昇が報告されています。アルツハイマー型認知症の発症リスクも高まる可能性が示唆されており、高齢者ほど早期治療の意義が大きい疾患です。

参考資料

  • 日本呼吸器学会「I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
  • 国立長寿医療研究センター「睡眠時無呼吸症候群と認知症」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/081.html
  • 日本睡眠学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
  • 厚生労働省「在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)に関する保険適用基準」
  • 日本循環器学会「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」

まとめ

SAS(睡眠時無呼吸症候群)は、AHIで重症度を測る睡眠障害で、約95%が閉塞性(OSAS)、約5%が中枢性(CSAS)です。AHI20以上ではCPAP治療が保険適用となり、CPAPはNPPVの一形態に位置づけられます。高齢者ではいびきが減少して気づきにくいうえ、心不全合併でCSASが増えやすいため、介護現場での日中の眠気・夜間覚醒・血圧変動・呼吸停止音の観察がきわめて重要です。気になるサインがあれば、まず医療職へ報告し睡眠ポリグラフ検査につなげましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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