
身上監護とは
身上監護(身上保護)とは、成年後見制度で後見人等が本人に代わり生活・医療・介護・住まいの契約や手続きを行い暮らしを守る職務。財産管理との違いやできないことも解説。
身上監護の定義(answer_capsule)
身上監護(しんじょうかんご、現在は「身上保護」とも呼ばれます)とは、成年後見制度において、後見人・保佐人・補助人が本人に代わって、生活・医療・介護・住まいに関する契約や手続きを行い、本人の暮らしを守る職務のことです。預貯金や不動産を扱う「財産管理」と並ぶ、後見人の二大職務の一つに位置づけられています。
目次
身上監護の概要(what_is)
身上監護とは何か
身上監護とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない人(本人)について、成年後見制度で選任された後見人等が、本人の生活・療養看護に関する事務を本人に代わって行うことをいいます。民法では後見人の職務を「本人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務」と定めており、このうち「生活、療養看護」にあたる部分が身上監護です。
2000年に始まった成年後見制度は、判断能力が不十分な人の財産と権利を守るための仕組みです。家庭裁判所が選任した後見人等が、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮しながら(身上配慮義務)、必要な契約や手続きを代わって行います。近年は「監護」という言葉が管理的な印象を与えるとして、厚生労働省の資料などでは「身上保護」という表現が用いられることも増えていますが、意味するところは同じです。
重要なのは、身上監護はあくまで契約や手続きといった「法律行為」を本人に代わって行うものであり、後見人自身が実際に介護や身の回りの世話をする「事実行為」は含まれない、という点です。
身上監護の具体例(point_list)
身上監護の具体例
後見人等が身上監護として行う代表的な事務には、次のようなものがあります。
- 介護・福祉サービスの契約:訪問介護やデイサービスなど、介護保険サービスの利用契約を本人に代わって結び、ケアプランの内容を確認します。
- 施設入所・入院の契約:特別養護老人ホームや有料老人ホームへの入所契約、病院への入院手続きを行います。
- 医療に関する手続き:診療や検査を受けるための契約、入院に伴う事務手続きを進めます。
- 住まいの確保:自宅の賃貸借契約の更新や、住み替えに伴う契約など、住居に関する手続きを行います。
- 生活状況の見守り:定期的に本人を訪問し、サービスが適切に提供されているか、生活に困りごとがないかを確認します(履行状況の確認)。
身上監護と財産管理の違い(comparison)
身上監護と財産管理の違い
後見人の職務は「身上監護(身上保護)」と「財産管理」の2つに大きく分かれます。両者の違いを整理します。
| 項目 | 身上監護(身上保護) | 財産管理 |
|---|---|---|
| 目的 | 本人の生活・療養看護を支え、暮らしを守る | 本人の財産を適切に管理・保全する |
| 主な内容 | 介護・医療・施設・住まいに関する契約や手続き、生活状況の見守り | 預貯金の入出金管理、不動産の管理、収支の記録、遺産分割協議など |
| 関係 | 財産管理は身上監護のための手段でもあり、両者は本人の利益のために一体で行われる | |
財産管理は金銭や資産を扱う業務で目に見えやすい一方、身上監護は本人の生活そのものに関わる事務です。財産管理は、本人が必要なサービスを受け生活を維持するための手段という側面があり、後見人は両者を本人の利益のために連携させながら担います。
身上監護でできないこと(point_list)
身上監護でできないこと
身上監護は契約や手続きといった法律行為に限られ、次のような行為は後見人の職務に含まれません。
- 実際の介護・身の回りの世話:食事や入浴の介助、掃除や買い物といった事実行為は身上監護に含まれません。これらは介護サービス事業者などが担い、後見人はその利用契約を整える立場です。
- 医療行為への同意:手術や延命治療など、医療行為そのものに同意する権限は後見人にはないとされています。同意の取り扱いは家族や医療機関との相談によります。
- 本人に代わる婚姻・離婚・養子縁組などの身分行為:本人の意思に強く関わる身分行為は代理できません。
- 遺言・本人の一身専属的な意思決定:遺言の作成など、本人本人にしかできない行為は代行できません。
身上監護は本人の暮らしを支える広い役割を持ちますが、こうした限界があることを理解しておくことが大切です。
身上監護と成年後見・任意後見の関係(what_is)
成年後見・任意後見との関係
身上監護は、成年後見制度の枠組みのなかで行われる職務です。成年後見制度には、すでに判断能力が低下した人を支える「法定後見」と、判断能力があるうちに将来に備えて契約しておく「任意後見」があります。
法定後見では、家庭裁判所が本人の判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助のいずれかを開始し、選任された後見人等が財産管理と身上監護を担います。任意後見では、本人が元気なうちに信頼できる人と契約を結び、判断能力が低下した後に、任意後見人が契約で定めた範囲で身上監護や財産管理を行います。
いずれの場合も、身上監護で重視されるのは本人の自己決定の尊重です。後見人等は本人の意思をできる限り尊重し、その人らしい暮らしを守ることが求められます。
身上監護のよくある質問(faq)
よくある質問
- 身上監護と身上保護は違うものですか。
- 同じ職務を指す言葉です。従来は「身上監護」と呼ばれてきましたが、「監護」が管理的な印象を与えるため、近年は厚生労働省の資料などで「身上保護」という表現が用いられることが増えています。意味する内容は同じです。
- 後見人は本人の介護もしてくれるのですか。
- いいえ。後見人が行うのは介護サービスの利用契約や手続きであり、実際の食事・入浴などの介助は身上監護に含まれません。介護そのものは介護サービス事業者などが担います。
- 後見人は手術への同意ができますか。
- 医療行為そのものへの同意権は後見人にはないと考えられています。手術などの医療行為の同意は、家族や医療機関との相談によって判断されるのが一般的です。
- 身上監護は誰が担いますか。
- 家庭裁判所が選任した成年後見人・保佐人・補助人、または任意後見人が担います。親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職や、市民後見人が選ばれることもあります。
身上監護の参考資料(references)
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
身上監護のまとめ(conclusion)
まとめ
身上監護(身上保護)は、成年後見制度において後見人等が本人に代わり、生活・医療・介護・住まいに関する契約や手続きを行い、本人の暮らしを守る職務です。財産管理と並ぶ後見人の二大職務であり、実際の介護や医療同意などは含まれないという限界もあります。本人の自己決定を尊重し、その人らしい生活を支えることが身上監護の目的です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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