床ずれ防止用具とは

床ずれ防止用具とは

床ずれ防止用具は介護保険の福祉用具貸与13品目の一つ。エアマット・ウレタン・体圧分散クッションの違い、要介護2以上の対象基準、レンタル料金の目安、選定の現場判断を整理。

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この記事のポイント

床ずれ防止用具とは、エアセル(空気の筒)の膨張収縮や弾性素材によって体圧を分散し、褥瘡(じょくそう)の発生・悪化を防ぐマットレス・クッション類の総称です。介護保険の福祉用具貸与13品目の一つに位置づけられ、原則として要介護2以上が対象。エアマット・ウレタンマット・ハイブリッド型などタイプ別に向く利用者が異なるため、OHスケール等のリスク評価をもとに選定します。

目次

床ずれ防止用具の福祉用具貸与上の位置づけ

床ずれ防止用具は、介護保険法に基づく福祉用具貸与の対象種目として告示で定められた13品目の一つです。厚生労働省の定義では「複数の空気の筒(エアセル)などを膨張・収縮させて体を支持する面を変化させたり、より広い面で身体を支えたりすることで局所への外力を分散させ、床ずれを防止する用具」とされます。

対象は原則として要介護2〜5の認定者です。要支援1・2、要介護1の利用者は給付の例外給付要件(日常的に寝返りが困難など)を満たし、医師・ケアマネジャーが必要性を判断した場合に限り保険給付の対象となります。これは「軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付」として厚生労働省通知に明記されています。

レンタル契約はケアプランに位置づけられ、福祉用具専門相談員が利用者の身体状況・住環境を踏まえてフィッティングと使用方法説明を行います。利用者負担は原則1割(一定所得以上は2〜3割)で、月額レンタル料は静止型マットレスで実費4,000〜7,000円台、圧切替型エアマットで8,000〜11,000円台が相場です。福祉用具貸与は購入と異なり故障時の交換・定期メンテナンスがサービスに含まれる点が特徴で、状態変化に応じた切り替えにも柔軟に対応できます。

種類別の特徴(エアマット・ウレタン・ハイブリッド)

床ずれ防止用具は素材と機構によって大きく以下に分類されます。

  • 圧切替型エアマットレス:複数のエアセルを交互に膨張収縮させ、体圧がかかる部位を時間的に変化させる。日本褥瘡学会の予防ガイドラインで「自力体位変換ができない人」への使用が推奨度Bで勧告されている。多層式(二層・三層式)はDU期以降の高リスク利用者にも対応可能。
  • 静止型ウレタンマットレス:低反発・高反発ウレタンの広い面で体を沈み込ませ、局所圧を分散する。電源不要・静音・体動に対する追従性が高い。ステージⅠ〜Ⅱの予防目的や、自力体動が残っている利用者に向く。
  • ハイブリッド型(エア+ウレタン):上層をエア、下層をウレタンとして停電時の機能維持と沈み込みのバランスを両立。在宅で停電リスクを考慮する場合や、施設での標準採用が増えている。
  • ゲル・ウォーター型:粘弾性ゲルや水で接触面の温度上昇とずれ力を抑える。座位での車いすクッションに多く採用される。
  • 体圧分散クッション:車いす座面・背もたれ用。離床時間が長い利用者の坐骨部・尾骨部の褥瘡予防に必須。エア・ウレタン・ゲルそれぞれのタイプがある。

厚生労働省告示の貸与種目では、これらすべてが「床ずれ防止用具」と「体位変換器」のいずれかに分類されますが、メーカー仕様や用途で細分化されている点を押さえておきます。

OHスケール・K式評価との対応

用具選定は経験や見た目だけでなく、褥瘡発生リスクのスコアリングを起点にします。日本褥瘡学会は、対象者のリスク・好み・ケア環境を考慮した上で体圧分散寝具を選定するよう提示しており、現場では主に以下の評価ツールが使われます。

  • OHスケール:大浦・堀田スコア。自力体位変換・病的骨突出・浮腫・関節拘縮の4項目を点数化(0〜10点)。軽度(1〜3点)→静止型ウレタン、中等度(4〜6点)→圧切替型エアマット、高度(7〜10点)→多層式エアマットがおおむねの選定対応となる。日本褥瘡学会が在宅・施設で簡便に使えるよう設計したスケールで、福祉用具選定根拠の記録にも使いやすい。
  • ブレーデンスケール:海外で広く使われる6項目(知覚・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれ)の合計点。17点以下で予防介入が必要とされる。病院・急性期の連携時に共通言語になる。
  • K式スケール:日本の急性期病院向けに開発されたスコア。前段階要因(自力体位変換不可・骨突出・栄養状態低下)と引き金要因(湿潤・浮腫・ずれ)から発生予測を行う。

看護師・理学療法士・福祉用具専門相談員が連携してこれらの評価を共有することで、過剰スペック(高額エアマットを軽度者に貸与)と過小スペック(高リスクに静止型)の両方を避けられます。退院時カンファレンスで病院側が使用していた用具と評価スケールを引き継ぐと、在宅移行後の悪化を防ぎやすくなります。

介護保険レンタルの手順

床ずれ防止用具を保険給付でレンタルするまでの流れは、以下の7ステップが基本です。

  1. 要介護認定の取得:市区町村窓口で申請。要介護2以上が原則対象。
  2. ケアマネジャー・地域包括支援センターへの相談:褥瘡リスクや皮膚状態を伝え、福祉用具の必要性を共有する。
  3. ケアプランへの位置づけ:「床ずれ防止用具の貸与」を居宅サービス計画書に明記。サービス担当者会議で必要性を確認する。
  4. 福祉用具貸与事業者の選定:複数製品を比較できる事業者を選ぶ。サービス情報公表システムで指定事業者を確認できる。
  5. 福祉用具専門相談員によるアセスメント:身体機能・体格・寝室環境(電源確保・搬入経路)を評価し、機種を絞り込む。OHスケール等の評価記録があれば共有する。
  6. 契約・搬入・初期設定:契約書・重要事項説明書を交わし、自宅または施設に搬入。エアマットの場合は体重設定・自動モード設定の確認まで行う。
  7. モニタリング:原則6か月ごと、状態変化時は随時。皮膚状態・利用者の感覚(沈み込み過多による起き上がり困難など)をチェックし、必要に応じて機種変更する。

軽度者(要介護1以下)が例外給付を申請する場合は、主治医意見書・サービス担当者会議録・市区町村への申請書類が追加で必要です。手続きの煩雑さで導入が遅れ褥瘡が進行するケースもあり、ケアマネと福祉用具相談員が早期に動くことが肝心です。

ベッドマット選定の現場判断

Q1. 軽度の利用者(要介護1)でも床ずれ防止用具をレンタルできますか?

A. 原則は要介護2以上ですが、「日常的に寝返りが困難」「医師の診断で褥瘡発生リスクが高い」と判断された場合は例外給付として認められます。主治医意見書、サービス担当者会議での合意、市区町村への申請が必要です。

Q2. エアマットは「沈み込みすぎて起き上がれない」と聞きますが、対策はありますか?

A. 多くの圧切替型エアマットには「起き上がりモード」「ファウラー位対応モード」が搭載されています。離床動作時に内圧を一時的に高めて支持性を上げる機能で、製品ごとに操作方法が異なります。導入時に福祉用具専門相談員に必ず説明を受け、夜勤者・家族にも共有しましょう。

Q3. 静止型ウレタンとエアマット、迷ったらどちらを選びますか?

A. OHスケールで4点未満かつ自力体位変換が部分的にでも可能な利用者は、まず静止型ウレタンから開始するのが原則です。皮膚状態の悪化や体動の低下が見られた段階で圧切替型エアマットへ切り替えます。最初から高機能エアマットを入れると、残存機能の低下を招くことがあります。

Q4. 看護師として褥瘡管理を担う場合、福祉用具選定にどう関わるべきですか?

A. NPUAP/EPUAP分類のステージ評価と皮膚観察記録を福祉用具専門相談員に提供し、用具のスペックが現状に合っているかを定期的に確認します。状態悪化時はサービス担当者会議の臨時開催を提案し、機種変更や栄養介入を同時並行で進めるのが効果的です。

Q5. 在宅で停電したらエアマットはどうなりますか?

A. 多くの製品はバッテリーを内蔵せず、電源喪失時は自然吸排気で静止型マットレスに近い状態になります(CPR弁付き製品など)。停電が長引くリスクのある地域では、ハイブリッド型(下層ウレタン)や予備マットの併用を検討します。災害時の備えとして、ケアプラン上に避難先での体圧分散手段も記載しておきます。

まとめ

床ずれ防止用具は介護保険の福祉用具貸与13品目の一つで、エアマット・ウレタン・ハイブリッドなどタイプ別に向く利用者が異なります。OHスケールやブレーデンスケールで褥瘡リスクを評価したうえで、福祉用具専門相談員・看護師・ケアマネが連携して機種を選定するのが原則。要介護2以上が対象ですが、軽度者でも医師判断による例外給付が認められる場合があります。状態変化時は機種切り替えを含めた再アセスメントを早めに行うことで、褥瘡の発生・悪化を防ぎ、利用者のADLと尊厳を守ることにつながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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