
夜間対応型訪問介護とは
夜間対応型訪問介護は2006年創設の地域密着型サービスで、18〜8時の定期巡回と随時通報対応を組み合わせて要介護1〜5の在宅夜間を支える。定期巡回・随時対応型訪問介護看護との違い、料金、オペレーター要件まで解説。
この記事のポイント
夜間対応型訪問介護とは、2006年(平成18年)の介護保険法改正で創設された地域密着型サービスの一つで、おおむね18時〜翌朝8時の夜間帯に、訪問介護員が利用者宅を定期巡回するサービスと、利用者からの通報に応じて訪問・電話相談を行う随時対応サービスを組み合わせて提供する仕組みです。対象は要介護1〜5の認定を受け、事業所と同一市区町村に住む方に限定されます。
目次
夜間対応型訪問介護の位置づけと制度創設の背景
夜間対応型訪問介護は、介護保険法に基づく地域密着型サービスに分類される居宅サービスです。地域密着型サービスは、要介護高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活を継続できるよう、市区町村が事業者の指定・指導監督を行うサービス類型で、2006年の介護保険法改正で新設されました。夜間対応型訪問介護は、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や小規模多機能型居宅介護とともに、創設時から地域密着型サービスのラインアップに含まれています。
制度創設の背景には、在宅介護を担う家族の高齢化(いわゆる老老介護)と、夜間帯の介護ニーズの顕在化があります。日中はデイサービスや訪問介護で対応できても、深夜のトイレ介助やおむつ交換、急変時の対応が家族の負担に集中していました。夜間対応型訪問介護は、こうした夜間帯の負担を地域の事業者が引き受ける仕組みとして設計されています。
事業所はオペレーションセンターを設置し、訪問介護員とオペレーターを配置します。オペレーターは利用者からの通報を24時間受け付け、状況に応じて訪問の指示・電話相談・救急要請のいずれかを判断します。2018年の運営基準改正で、オペレーターの実務経験要件は介護福祉士・看護師等で「3年以上」から「1年以上」に緩和されました。
提供される2種類のサービス内容
夜間対応型訪問介護は、性質の異なる2系統のサービスを組み合わせて提供します。
1. 定期巡回サービス
- あらかじめ作成したケアプランに沿って、夜間に複数回訪問する定時サービス
- 主な内容:おむつ交換、トイレ誘導・排泄介助、体位変換、安否確認、就寝・起床介助
- 1回あたりの滞在時間は短時間(おおむね10〜30分程度)
2. 随時対応サービス(オペレーションセンター対応)
- 利用者が貸与されたケアコール端末などでオペレーターに通報すると、状況を聞き取り対応を判断
- 対応の選択肢は、(1) 電話による相談・助言、(2) 随時訪問の手配、(3) 救急車要請
- 急な体調不良、転倒、不安感、おむつの交換希望、急な発熱への対応など
定期巡回と随時対応を組み合わせることで、家族が在宅していても夜間だけは介護負担を外部化でき、独居高齢者の場合は夜間に「呼べる相手」が確保されます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護との違い
名称が似ているため混同されやすい定期巡回・随時対応型訪問介護看護(2012年創設、地域密着型サービス)とは、対応時間帯と看護職員の有無が決定的に異なります。
| 項目 | 夜間対応型訪問介護 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
|---|---|---|
| 対応時間 | 夜間帯のみ(おおむね18時〜翌8時) | 24時間365日 |
| 創設年 | 2006年 | 2012年 |
| 看護サービス | 含まれない(介護のみ) | 訪問看護を一体的に提供 |
| 対象者 | 要介護1〜5 | 要介護1〜5(医療ニーズ含む方も対象) |
| 料金 | 夜間限定の月額包括+出来高 | 24時間カバーで月額包括(介護のみ/介護+看護で別単価) |
| 位置づけ | 夜間帯の負担軽減に特化 | 重度者の在宅生活継続を支える中核サービス |
「日中は家族介護で乗り切れるが、夜間だけ介護を委ねたい」「医療的ケアは必要ない」というケースは夜間対応型訪問介護が適合します。一方、医療処置を伴う方や日中も支援が必要な方は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のほうが包括的に支えられます。
料金体系と利用者負担の目安
夜間対応型訪問介護の介護報酬は、オペレーションセンターの有無で2つのモデルに分かれます(数値は1割負担・基本部分・地域単価により実額は変動)。
オペレーションセンターを設置する場合(包括+出来高)
- 基本夜間対応型訪問介護費(Ⅰ):月額の基本費(1割負担で1,013円前後)
- 定期巡回サービス費:1回ごとに加算(1割負担で379円前後/回)
- 随時訪問サービス費:1回ごとに加算(1人訪問578円前後/2人訪問778円前後)
オペレーションセンターを設置しない場合(月額包括)
- 基本夜間対応型訪問介護費(Ⅱ):1割負担で月額2,751円前後の包括料金
- 定期巡回・随時対応の回数にかかわらず月額固定
2割・3割負担に該当する方は上記の2倍・3倍となります。これらに加えて、緊急時訪問加算・24時間通報対応加算等の各種加算、介護職員処遇改善加算が上乗せされます。区分支給限度額の対象となるため、他の居宅サービスとの利用量調整が必要です。
事業所が少ない理由と利用前に確認したいこと
夜間対応型訪問介護は、介護保険サービスの中でも事業所数が極端に少ないサービスとして知られます。厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」では、全国の事業所数は長年100〜200か所前後で推移しており、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(1,000か所超)と比較しても普及が進んでいません。背景には、(1) 夜間専従の人員確保の難しさ、(2) 利用者規模が小さく経営的に成立しにくい、(3) 後発の定期巡回・随時対応型サービスにシフトした事業者が多い、といった構造要因があります。
そのため、住んでいる市区町村に夜間対応型訪問介護の事業所がないケースも珍しくありません。利用を検討する場合は次の順序で確認するのが現実的です。
- まず居宅介護支援事業所のケアマネジャーに夜間ニーズを伝え、地域の選択肢を確認する
- 市区町村の地域包括支援センターまたは介護保険担当窓口で、夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護の指定事業所一覧を取り寄せる
- 事業所がない場合、代替として定期巡回・随時対応型訪問介護看護、または通常の訪問介護に夜間・早朝加算を組み合わせる方法を検討する
夜間対応型訪問介護に「呼べる相手」を確保しておくことは、夜中の転倒や急変への安心感に直結し、施設入所のタイミングを後ろ倒しにできる可能性があります。
よくある質問
Q. 要支援1・2でも利用できますか?
A. 利用できません。夜間対応型訪問介護の対象は要介護1〜5に限られ、介護予防版のサービス区分が設けられていないため、要支援者は対象外です。
Q. 別の市区町村にある事業所と契約できますか?
A. 原則できません。地域密着型サービスは、事業所と同一市区町村に住民票がある方のみ利用可能です。隣接市町村の事業所を使いたい場合は、両市町村の同意が必要となる場合があります。
Q. ケアコール端末は必ず使うのですか?
A. 通報手段として一般的ですが、固定電話や携帯電話による通報も認められています。事業所の方針と利用者の心身状況に応じて選択します。
Q. オペレーターはどんな資格を持っていますか?
A. 介護福祉士、看護師、保健師、社会福祉士、医師、准看護師、または介護支援専門員のいずれかで、運営基準上は1年以上の在宅・訪問介護分野の従事経験が必要とされます。
Q. 訪問看護も受けたい場合はどうすればよいですか?
A. 夜間対応型訪問介護に看護サービスは含まれません。訪問看護が必要な方は、訪問看護ステーションと別途契約するか、看護と介護が一体となった定期巡回・随時対応型訪問介護看護を選ぶ方が適しています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム:夜間対応型訪問介護」(サービス内容・利用者負担の公式説明)
- 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会 第179回資料3 夜間対応型訪問介護」(2020年7月)
- 厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況」(事業所数の最新統計)
- 公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット:夜間対応型訪問介護」(料金体系・オペレーター要件)
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」(地域密着型サービスの位置づけ)
この用語に関連する記事

要介護者の単身化が加速、3人に1人が独居|厚労省調査で単独世帯33.2%・75歳以上の老老介護は37.1%に
厚生労働省が2026年7月15日に公表した2025年国民生活基礎調査で、在宅の要介護者等がいる世帯の33.2%が単独世帯となった。75歳以上同士の老老介護も37.1%に上昇。数値の読み解きと、介護職・ケアマネの実務への影響を解説する。

米ファンド、在宅介護大手ツクイ系を2000億円で買収|アドベント日本再進出の初弾案件
米プライベート・エクイティのアドベント・インターナショナルが2026年6月25日、ツクイ・SOYOKAZE傘下のジャパン・ウェルビーイングをMBKパートナーズから買収すると発表。負債込み2000億円規模の在宅介護M&Aが介護職の働き方に与える影響を読み解く。

厚労省、訪問介護の令和9年度改定論点を提示|現場は「基本報酬の底上げを」、財務省は同一建物の適正化迫る【2026年6月】
2026年6月29日の介護給付費分科会で、厚労省が令和9年度改定に向けた訪問介護の論点を提示。現場団体は専門性評価と基本報酬の底上げを求め、財務省は同一建物減算ありの事業所の適正化を要請。収支差率9.6%の内訳と介護職への影響を読み解く。

カスハラ対策、全介護事業者に義務化へ|黒田老健局長「運営基準に位置付け」・川口ケアマネ殺害が議論を加速【2026年6月】
厚生労働省の黒田秀郎老健局長は2026年6月18日の参院厚労委で、カスタマーハラスメント対策をすべての介護事業者に義務付ける方針を改めて示した。運営基準への位置付けを念頭に令和9年度(2027年度)介護報酬改定で検討。川口市のケアマネ殺害事件が議論を加速させている。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。