介護保険法改正案、衆院厚労委で可決|27項目の附帯決議に『中山間サービスの質検証』『住宅型囲い込み対策』
介護職向け

介護保険法改正案、衆院厚労委で可決|27項目の附帯決議に『中山間サービスの質検証』『住宅型囲い込み対策』

2026年5月22日、介護保険法・老人福祉法・社会福祉法等の改正案が衆議院厚生労働委員会で原案通り可決。27項目の附帯決議には中山間地域サービスの質検証や住宅型有料老人ホームの囲い込み対策の実効性担保が盛り込まれた。

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介護保険法・老人福祉法・社会福祉法等の改正案が2026年5月22日、衆議院厚生労働委員会で原案通り可決され、近く衆院本会議を通過する見通しとなった。同日、27項目に及ぶ附帯決議も採択され、中山間・人口減少地域での新サービス類型『特定地域サービス』の質確保や、住宅型有料老人ホームの『囲い込み』対策の実効性担保などが付されている。読者の介護職にとっては、来年度(令和8年度)の介護報酬改定議論に直接波及する制度改正で、自身の事業所が中山間地域・住宅型併設・登録施設介護支援のいずれに該当するかで影響度が大きく変わる。

目次

解説動画

国会で審議されていた介護保険法・老人福祉法・社会福祉法・健康保険法等の一括改正案が2026年5月22日、衆議院厚生労働委員会で原案通り可決された。今後、衆議院本会議で可決を経て参議院に送付される見通し。中山間・人口減少地域でのサービス運営基準の弾力化、中重度の要介護者を受け入れる住宅型有料老人ホームへの事前規制(登録制)の導入など、今後の介護政策の方向性を決める重要法案だ。同日採択された27項目の附帯決議は、政府に対して中山間地域でのサービス質の検証、住宅型ホームの囲い込み対策の実効性担保、介護職の負担への影響検証など、実装段階での慎重な運用を求める内容となっている。

可決された改正案の主要ポイント

中山間・人口減少地域の事業所柔軟運用

政府提出の改正案には、介護需要が縮小し人手不足が深刻化する中山間・人口減少地域を対象に、事業所の人員配置基準の柔軟化や包括評価(定額報酬)の導入を認める『特定地域サービス』の新設が盛り込まれている。これと併せて、市町村が介護サービスを給付ではなく事業として実施できる新たな仕組み『特定地域居宅サービス等事業』の創設も打ち出された。地域包括ケアの限界に直面する自治体が、給付の枠を超えて柔軟に介護資源を組み立てられる制度的余白を作るのが狙いだ。

住宅型有料老人ホームへの登録制導入

中重度の要介護者を多く受け入れる住宅型有料老人ホームに対し、事前規制としての登録制が導入される。住宅型ホームをめぐっては、併設の訪問介護・居宅介護支援事業所が入居者に過剰なサービスを提供する『囲い込み』が長年問題視されてきた。今回の登録制は、この囲い込みを構造的に抑制する仕組みとして設計されている。

新類型『登録施設介護支援』の創設

住宅型ホーム入居者に特化したケアマネジメントの新類型『登録施設介護支援』も改正案に含まれる。来年度(令和8年度)の介護報酬改定で基本報酬が設定される予定で、現行の居宅介護支援との差別化(同一建物減算の強化を含む)が論点となっている。

27項目の附帯決議が要求する『実効性担保』

中山間地域の質検証と職員負担モニタリング

22日の厚労委で採択された附帯決議では、中山間・人口減少地域のサービスの質や介護職の負担への影響を十分に検証することが政府に求められている。人員配置基準の柔軟化は、運営側にとっては事業継続のための呼び水になる一方、現場介護職の業務負担増加・サービス質低下・利用者の事故リスク上昇といった副作用も指摘されている。附帯決議は『柔軟化の制度設計と並行して、質・負担の両面でのモニタリング体制を整える』ことを政府に求めた格好だ。

住宅型ホーム囲い込み対策の実効性

住宅型有料老人ホームの登録制導入については、附帯決議で『囲い込み対策の実効性を担保すること』が明記された。登録制という形式的な事前規制だけでなく、運用段階でケアマネジメントの公正性・中立性を確認する仕組みが必要となる。介護給付費分科会では、新類型『登録施設介護支援』の基本報酬を居宅介護支援より10〜15%低く設定する案や、特定事業所加算で差をつける案が議論されている。

介護職の処遇改善加算の継続性

附帯決議は処遇改善加算の継続的な拡充にも触れている。2024年度介護報酬改定で3つの加算が1本化された処遇改善加算について、令和8年度改定でもさらなる強化を求める内容が盛り込まれた。介護職の賃上げを政策的に下支えする姿勢を、政府に明示した形だ。

介護現場への波及と読者の論点整理

中山間地域で働く介護職の選択肢

中山間・人口減少地域の事業所柔軟運用は、過疎地で働く介護職にとっては『事業所が存続するか・撤退するか』の境界線を変える制度改正となる。包括評価(定額報酬)の導入は、訪問件数や個別ケアの密度ではなく、地域単位での包括的サービス提供量で評価する仕組み。介護職の働き方は『個別利用者ベース』から『地域ベース』へ転換する可能性がある。一方、人員配置基準の緩和は1人当たり業務量の増加リスクも内包しており、現場負担の見える化を継続的に求める必要がある。

住宅型ホーム併設事業所のケアマネへの影響

住宅型有料老人ホームに併設される居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、新類型『登録施設介護支援』への移行可否を検討する局面に入る。基本報酬が現行より低く設定されれば、事業所運営は厳しくなる一方、地域生活相談の業務追加で職務範囲は広がる。日本介護支援専門員協会は『現行評価の維持』を求める声明を発表しており、来年度改定議論の中で報酬水準が焦点となる。個人宅を担当する居宅ケアマネにとっても、住宅型併設事業所の経営優位性が緩和されれば、相対的に競争環境が公平化される面がある。

処遇改善加算の今後

令和8年度介護報酬改定議論では、処遇改善加算のさらなる拡充が焦点となる。介護労働安定センター令和5年度実態調査では、介護職の離職理由トップは依然として『人間関係』だが、給与は2位(17.8%)と高位を占める。賃上げの継続性が職員定着の鍵であることを附帯決議も認識しており、政府の対応が注目される。

今後のスケジュールと注目ポイント

参議院審議と施行時期

衆院厚労委可決を受け、衆院本会議での可決後、参議院に送付される。参議院でも厚労委員会の審議を経て本会議で可決されれば、改正法が成立する。施行時期は条文によって異なるが、中山間地域の特定地域サービスは令和8年4月施行が想定されている。住宅型ホームの登録制は、関連政省令の整備を経て段階的に施行される見通しだ。

令和8年度介護報酬改定議論との連動

改正法成立後、社会保障審議会介護給付費分科会で具体的な報酬設計が議論される。登録施設介護支援の基本報酬水準、中山間地域包括評価の単価設定、処遇改善加算のさらなる拡充内容など、現場に直結する数字は2025年12月〜2026年2月にかけての分科会で固まる。介護職・ケアマネ・事業所管理者は、自身の事業所が新制度のどの区分に該当するかを早めに把握しておく必要がある。

介護保険制度の構造転換

今回の改正は『全国一律』から『地域別・サービス別』への転換を本格化させる節目となる。社会保障審議会介護保険部会の野口晴子部会長も国会で『2040年問題は全国一律ではない』と意見陳述しており、地域差を踏まえた制度設計の必要性を強調している。介護事業所と介護職にとっては、自地域の人口動態・需要動向を読み解きながらキャリアを設計する時代に入ったといえる。

参考文献・出典

参考資料

まとめ

2026年5月22日、介護保険法等の改正案が衆院厚労委で可決され、27項目の附帯決議が同日採択された。中山間・人口減少地域の事業所柔軟運用、住宅型有料老人ホームの登録制、新類型『登録施設介護支援』の創設という3本柱の改正は、令和8年度介護報酬改定議論とも直結する。介護職・ケアマネ・事業所管理者は、自身の地域・事業所が新制度のどの区分に該当するか、附帯決議が求める『質と負担のモニタリング』にどう関与するかを早めに整理しておく必要がある。介護報酬の具体的な単位数は2025年12月〜2026年2月の介護給付費分科会で固まる見通しだ。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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