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介護施設の食費・居住費が2026年8月引き上げ|入所者と現場職員への影響

介護施設の食費・居住費が2026年8月引き上げ|入所者と現場職員への影響

2026年8月、介護施設の食費基準費用額が1日100円引き上げられ、第3段階利用者の負担も増加します。低所得者は据え置き、ユニット型個室は軽減も。改定の全貌と現場職員が知るべきポイントを解説します。

ポイント

この記事のポイント

2026年8月から、介護施設の食費の基準費用額が1日1,445円→1,545円(+100円)に引き上げられます。低所得者(第1〜2段階)の負担限度額は据え置き、第3段階①は1日30円、第3段階②は1日60円増。物価高に対応した臨時改定で、入所者だけでなく現場職員の業務にも影響が及びます。

基準費用額とは何か|2026年8月改定の概要

「基準費用額」とは、介護保険施設(特養・老健・介護医療院)に入所する際の食費・居住費の標準的な費用として国が定める金額です。介護保険給付の対象外であり、原則として入所者本人が全額を負担します。ただし、低所得者には「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という制度があり、所得段階に応じて負担限度額まで自己負担を抑える仕組みになっています。

2026年8月、この基準費用額(食費)が1日あたり100円引き上げられることが決定しました。具体的には、現行の1,445円から1,545円となります。月額換算(30日)でおよそ3,000円、年額では3万6,500円の増額です。施設食材費の高騰に施設側が耐えきれなくなっているのが背景で、政府は「2026年度介護報酬臨時改定」の一環として、6月の処遇改善加算改定とは別に8月施行の食費・居住費見直しをパッケージで決定しました。

あわせて、低所得者の負担限度額も見直されます。負担限度額は所得段階別に第1段階から第4段階まで分かれており、第1段階(300円/日)と第2段階(390円/日)は据え置きとする一方、第3段階①は650円→680円(+30円/日)、第3段階②は1,360円→1,420円(+60円/日)に増額されます。月額に換算すると、第3段階①は約900円、第3段階②は約1,800円の負担増です。

居住費(多床室・従来型個室・ユニット型個室など)についても、課税層では1日60円程度(月額約1,800円)の引き上げが行われる方向です。一方、ユニット型個室の低所得者については補足給付の負担限度額が引き下げられ、軽減される見通しです。これは2025年8月に始まった「老健(その他型・療養型)と介護医療院(Ⅱ型)の多床室における室料相当額負担」(月約8,000円)に続く改正で、施設入所コストはこの2年で段階的に上昇しています(特養の多床室室料負担は2015年度から既に導入済)。

本記事では、2026年8月改定の内容を所得段階別に整理し、入所者・家族・施設で働く介護職員それぞれの視点から解説します。

所得段階別の負担額|数字で見る2026年8月改定

食費・基準費用額の改定

区分2026年7月まで2026年8月から月額換算(30日)
基準費用額1,445円/日1,545円/日(+100円)+3,000円
第1段階300円/日300円/日(据え置き)±0円
第2段階390円/日390円/日(据え置き)±0円
第3段階①650円/日680円/日(+30円)+900円
第3段階②1,360円/日1,420円/日(+60円)+1,800円
第4段階(課税層)基準費用額相当1,545円/日+3,000円

※第1段階=生活保護受給者・老齢福祉年金受給者で世帯非課税、第2段階=世帯非課税で本人年金収入80万円以下、第3段階①=世帯非課税で本人年金収入80万円超120万円以下、第3段階②=世帯非課税で本人年金収入120万円超、第4段階=世帯に課税者がいる人。

居住費・基準費用額の改定(施設形態別)

居住費は施設形態ごとに基準費用額が定められており、いずれも1日あたり60円(月約1,800円)引き上げられます。

施設形態2026年7月まで2026年8月から
ユニット型個室(特養等)2,006円/日2,066円/日(+60円)
従来型個室(特養等)1,171円/日1,231円/日(+60円)
多床室(特養等)855円/日915円/日(+60円)
多床室(老健・介護医療院/室料徴収あり)437円/日697円/日※

※老健(その他型・療養型)・介護医療院(Ⅱ型)の多床室については、2025年8月から導入された室料相当額負担(260円/日)が反映された数値です。

低所得者に対する補足給付の取り扱い

  • 第1〜2段階の利用者:食費・居住費とも負担限度額は据え置き、または引き下げ(軽減)方向。基準費用額が上がっても自己負担は変動しません。
  • ユニット型個室の低所得者:補足給付による負担限度額が見直され、これまで割高で利用しづらかったユニット型個室を選びやすくなる方針です。
  • 第4段階(課税層):基準費用額の引き上げ分(食費+100円、居住費+60円)がそのまま自己負担に反映されます。

2025年8月に始まった老健・介護医療院の多床室室料負担との合算

すでに2025年8月から、老健(その他型・療養型)および介護医療院(Ⅱ型)の多床室では「室料相当額」として260円/日(月約8,000円・年約94,900円)の自己負担が導入されています(特養の多床室室料負担は2015年度から既に実施済)。今回の2026年8月改定はその上に上乗せされる形で、課税層の入所者にとってはここ2年で負担が段階的に積み増されています。

第4段階の入所者で試算すると、食費+100円/日と居住費+60円/日の合計160円/日×365日=年約58,400円の負担増となります。これに2025年8月以降の老健・介護医療院多床室の室料相当額負担(年約94,900円)を加えると、対象施設の入所者では2年累計で約15万円規模の負担増となるケースもあります。

賃上げと負担増のセット

2026年6月には介護職員等処遇改善加算が拡充され(訪問介護で最大28.7%)、続く8月に食費・居住費が引き上げられます。賃上げの財源確保と物価高対応をワンセットで処理した形で、政府の介護財政運営のスタンスが端的に表れた改定と言えます。

改定の背景|なぜ今、食費・居住費を上げるのか

背景①:施設食材費の高騰

近年の物価高で、施設が負担する食材料費が大きく上昇しました。米・肉・野菜・調味料いずれも値上がりが続き、現行の1,445円では1日3食を賄えなくなる施設が続出。全国老人福祉施設協議会などが「現場の悲鳴」を訴え、厚労省も現場ヒアリングや実態調査の結果として、基準費用額の見直しを臨時改定で前倒し実施することを決定しました。100円という上げ幅は決して大きくありませんが、それでも全国の介護施設にとっては財政的なインパクトが大きく、月額3,000円の引き上げで食材調達の余裕が生まれます。

背景②:在宅と施設の公平性

厚労省は「在宅で暮らす要介護者は光熱費や食費を全額自己負担しているのに、施設入所者は補助で軽減されすぎているのではないか」という「公平性」の議論を従来から進めてきました。2025年8月の多床室室料負担導入もその一環で、施設入所者の負担を「在宅水準に合わせる」流れが続いています。今回の食費引き上げと第3段階の負担増もこの延長線上にあり、政府の「在宅シフト」政策と連動した動きです。

背景③:低所得者保護と公費負担増の抑制

一方で、低所得者(第1〜第2段階)の負担限度額は完全に据え置かれます。これは「介護保険制度を持続可能にしながらも、本当に困っている人には負担を求めない」という政府の方針を反映したものです。特にユニット型個室の低所得者は、これまで割高な居住費負担に悩まされていましたが、今回の改定で大幅に軽減される予定で、ユニットケアへのアクセス改善という前向きな側面もあります。

背景④:処遇改善加算の財源確保

2026年6月施行の処遇改善加算拡充(訪問介護28.7%等)には、当然ながら巨額の財源が必要です。介護報酬の臨時改定は本来であれば保険料・公費・自己負担のいずれかで賄う必要があり、政府は「自己負担の一部見直しでまかなう」という選択肢を取りました。8月の食費・居住費引き上げは、6月の処遇改善加算とセットで議論されてきた経緯があります。介護職員の賃上げと入所者の負担増は、財政的には表裏一体の関係なのです。

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現場の介護職員が知っておくべき5つのポイント

食費・居住費の改定は入所者の問題に見えますが、現場で働く介護職員にも実務面で多くの影響があります。介護転職を考える人がチェックすべき5つのポイントを整理します。

  1. 家族からの問い合わせ・苦情対応が増える
    2026年8月以降、「請求金額が増えたのはなぜ?」「うちは負担増の対象になるのか?」といった家族からの問い合わせが急増することが予想されます。最初に窓口になるのは現場の介護職員や生活相談員です。所得段階の仕組みや負担限度額認定証の確認方法を最低限把握しておきましょう。
  2. 負担限度額認定証の更新業務
    低所得者が食費・居住費の軽減を受けるには「介護保険負担限度額認定証」が必要です。第3段階の見直しに伴って、認定証の再申請を促す業務が増える可能性があります。利用者・家族からの相談に応じて、市区町村窓口への案内ができるよう準備しておきましょう。
  3. 食事の質に対する期待値が上がる
    家族目線では「食費が上がるなら食事の質も上がるはず」と期待が高まります。施設給食を担う栄養士・調理員と連携し、献立の改善や行事食の充実など「目に見える価値向上」を行う施設は満足度が高まりやすいです。介護職員も食事介助の場面で利用者の声を拾う機会が増えます。
  4. 退所・転居検討の相談が増える可能性
    第4段階の入所者では、年間15万円規模の負担増となるケースもあります。家計が苦しくなった家族から「より安い施設はないか」「在宅介護に戻せないか」といった相談が増える可能性も。生活相談員やケアマネと連携した対応が求められます。
  5. 離職者には「処遇改善加算の側面」を併せて理解
    2026年は介護現場にとって変化の年です。6月に処遇改善加算拡充(賃上げ)、8月に食費・居住費引き上げという流れがセットで動いています。「賃上げの財源は、ある程度は入所者負担で賄われている」という構造を理解しておくと、今後の制度議論にもついていきやすくなります。

施設タイプ別・所得段階別|誰がどれだけ負担増になるのか

2026年8月改定で実際に負担が増える人と据え置きの人を、施設タイプ・所得段階ごとに整理します。

所得段階対象者の目安食費多床室居住費(特養等)ユニット型個室居住費
第1段階生活保護・老齢福祉年金据え置き0円据え置き据え置き or 軽減
第2段階世帯非課税・年金80万円以下据え置き据え置き軽減方向
第3段階①世帯非課税・年金80〜120万円+30円/日原則据え置き軽減 or 据え置き
第3段階②世帯非課税・年金120万円超+60円/日据え置き〜+60円/日据え置き
第4段階世帯に課税者あり+100円/日+60円/日(855→915円)+60円/日(2,006→2,066円)

※実際の金額は施設形態と自治体運用により異なります。基準費用額の引き上げ幅は食費+100円/日、居住費+60円/日です。

第4段階・特養多床室入所者の年間負担増(試算)

第4段階の特養多床室入所者で試算すると、食費の上げ幅100円×365日=36,500円、居住費の上げ幅60円×365日=21,900円、合計で年約58,400円の負担増となります。さらに、対象施設が老健(その他型・療養型)または介護医療院(Ⅱ型)の多床室であれば、2025年8月から導入された室料相当額負担(年約94,900円)が上乗せされ、2025〜2026年の2年累計では約15万円規模の負担増となります。

低所得者は負担増にならない

第1段階・第2段階の入所者は今回の改定でも食費・居住費とも据え置きです。介護保険制度は「払える人に払ってもらう」原則を強化する形で、低所得者保護を貫いている点はポジティブな評価ができるでしょう。生活保護受給者などは引き続き多床室居住費0円が継続されます。

ユニット型個室は「逆転現象」

従来、ユニット型個室は低所得者にとって負担が重く、希望しても利用できないケースが多々ありました。今回の改定でユニット型個室の低所得者の負担限度額が引き下げられることで、低所得者でもユニット型個室を選びやすくなります。「個室のプライバシーを確保しつつ、費用は抑える」という選択肢が広がる点は、今後の施設選びの基準を変える可能性があります。

よくある質問

よくある質問

Q1. 食費が1日100円上がるのは全員ですか?

いいえ。基準費用額は1日100円(1,445円→1,545円)の引き上げですが、低所得者(第1〜2段階)は負担限度額が完全に据え置かれます。第3段階①は1日30円、第3段階②は1日60円、第4段階は基準費用額相当の100円増額です。所得段階によって影響が大きく異なります。

Q2. 自分が何段階に該当するのか分からない場合は?

市区町村の介護保険担当窓口で確認できます。負担限度額認定証を申請することで、世帯の課税状況・本人の年金収入から該当段階が自動的に判定されます。「介護保険負担限度額認定申請」をすでに受けている人は、毎年8月の更新時期に最新情報が反映されます。

Q3. ユニット型個室の低所得者は本当に負担が減りますか?

はい、減ります。2026年8月改定では、ユニット型個室の第1〜2段階の利用者の負担限度額が引き下げられる方針です。これまで「ユニット型は割高で諦めていた」低所得者層にとって、選択肢が広がる良い改定と評価されています。具体額は厚労省告示で確認してください。

Q4. 8月施行ですが、もっと前倒しはできなかったのですか?

8月施行となったのは、自治体システム改修と利用者への周知期間を確保するためです。介護報酬の処遇改善加算は6月施行ですが、食費・居住費の見直しは現場の請求実務や認定業務に大きな影響があるため、2ヶ月後ろ倒しで施行されます。例年、食費・居住費の改定は8月に行われる慣例も影響しています。

Q5. 介護施設で働く側として、給料も上がるなら入所者負担増は仕方ないのでは?

その見方もできます。ただし、介護報酬の臨時改定は「処遇改善加算(賃上げ)」と「食費・居住費(負担増)」がワンセットで議論されており、財政的には連動した関係にあります。自分が働く施設の入所者がどう影響を受けるかを理解することは、家族対応や離職防止にもつながります。

Q6. 在宅介護に切り替えた方が安くなるケースはありますか?

第4段階の入所者で家族介護力が十分にある場合は、在宅介護+デイサービス+訪問介護の組み合わせのほうが月額費用を抑えられるケースがあります。ただし家族の負担や介護の質など、費用以外の要素も大きいため、ケアマネジャーと相談して総合的に判断する必要があります。

まとめ|2026年介護制度改定は「賃上げと負担増」のセット

2026年8月の介護施設食費・居住費引き上げは、6月の処遇改善加算拡充とセットで実施される2026年介護報酬臨時改定の一部です。食費の基準費用額は1日100円(月3,000円)の引き上げ、居住費は1日60円(月約1,800円)の引き上げ、第3段階の利用者は所得区分に応じて段階的に負担増、低所得者(第1〜2段階)は完全据え置き――というメリハリのある改定となっています。

注目すべきは、ユニット型個室の低所得者の負担限度額が引き下げられる点です。これまで割高で選べなかった人たちに、プライバシーを確保した個室ケアの選択肢が広がります。一方で、第4段階の課税層では食費・居住費合計で年約58,400円の負担増となり、対象施設が老健(その他型・療養型)や介護医療院(Ⅱ型)の多床室であれば、2025年8月から始まった室料相当額負担(年約94,900円)と合わせて約15万円規模の負担増となるケースもあります。施設選びの基準は今後ますます重要になります。

現場で働く介護職員にとっては、家族からの問い合わせ・苦情対応や負担限度額認定証の更新業務など、実務的な影響が確実に発生します。介護転職を検討する人も、応募先の施設で「2026年改定への対応はどう進めているか」「家族対応の窓口体制は整っているか」を確認するとよいでしょう。介護報酬の臨時改定は職員の賃上げと入所者負担をセットで動かす制度設計であり、「賃上げの恩恵を受ける側」として制度全体を理解しておくことが、長く安心して働くための第一歩となります。

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公開日: 2026年4月7日最終更新: 2026年4月7日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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