喀痰吸引等研修の取り方|費用・期間・受講要件と認定証取得までの手順
介護職向け

喀痰吸引等研修の取り方|費用・期間・受講要件と認定証取得までの手順

喀痰吸引等研修の取り方を実務目線で解説。第1号15〜20万円・第2号10〜15万円・第3号3〜5万円の費用目安、基本研修8〜10日間と実地研修の内容、受講要件と介護福祉士の免除制度、申込みから認定特定行為業務従事者認定証の交付までの手順を網羅。費用軽減制度も紹介。

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目次

「喀痰吸引等研修を取りたいけれど、どこに申し込んで、いくらかかって、何から始めればいいの?」。この記事は、そんな方のための実務ガイドです。研修の選び方から申込み、費用と期間、受講要件、修了後に認定証を受け取るまでの手順を、順を追って解説します。

喀痰吸引等研修は、2012年施行の法改正により制度化された、介護職員が痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを実施するための研修です。修了して都道府県から認定を受けることで、介護職員も医療的ケアを担えるようになります。医療的ケアを必要とする利用者は増え続けており、研修修了者は就職・転職や給与面でも評価されやすい人材です。

制度の成り立ちや第1号・第2号・第3号という3類型の制度上の位置づけ、介護福祉士資格との関係といった全体像は、喀痰吸引等研修の制度全体像で体系的に整理しています。本記事は「実際に取る」ことに焦点を絞り、研修選び→申込み→受講→認定証取得の流れを具体的に追っていきます。

喀痰吸引等研修とは?

喀痰吸引等研修で学ぶ医療的ケアのイラスト

喀痰吸引等研修とは、介護職員等が痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを安全に実施するための知識・技術を習得する研修です。

喀痰吸引等研修の基本情報

項目内容
資格種別都道府県認定資格
根拠法令社会福祉士及び介護福祉士法
制度開始2012年(平成24年)4月
研修種別第1号・第2号・第3号研修
受講資格なし(誰でも受講可能)
費用約5〜20万円(研修種別による)

喀痰吸引とは?

喀痰吸引(かくたんきゅういん)とは、自力で痰を出すことが難しい方の口や鼻、気管カニューレから、吸引装置を使って痰を取り除く行為です。

痰が気道にたまると、以下のリスクがあります。

  • 呼吸困難
  • 窒息
  • 誤嚥性肺炎

そのため、適切なタイミングで痰を吸引することは、利用者さんの生命と健康を守る重要なケアです。

経管栄養とは?

経管栄養とは、口から食事を摂ることが難しい方に対して、チューブを通じて栄養剤を投与する行為です。以下の種類があります。

  • 胃ろう:腹部から胃に直接チューブを挿入
  • 腸ろう:腹部から腸に直接チューブを挿入
  • 経鼻経管栄養:鼻から胃までチューブを挿入

実施できる行為の範囲

喀痰吸引等研修を修了すると、以下の行為を実施できるようになります。

分類具体的な行為
喀痰吸引口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引
経管栄養胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養

法改正の背景

痰の吸引や経管栄養は、もともと医師法第17条に基づく医行為として医師・看護師にしか認められていませんでした。しかし介護現場で医療的ケアを必要とする利用者が増え、看護職員が常駐しない夜間帯などへの対応が課題となり、2003年のALS患者への例外容認を起点に段階的に範囲が拡大。2011年の社会福祉士及び介護福祉士法改正(2012年4月施行)で、研修を修了した介護職員等が医師の指示・看護職員との連携のもとで実施できる現行制度が確立しました。

実際に現場で実施するには、(1)喀痰吸引等研修の修了、(2)都道府県からの「認定特定行為業務従事者認定証」の交付、(3)勤務先の「登録特定行為事業者」としての登録、という3つの条件がすべて揃う必要があります。本記事ではこのうち(1)と(2)を自分で進める手順を扱います。

制度化の詳しい経緯や、登録研修機関・登録事業者・都道府県という関係主体の役割分担など、制度の枠組み全体は喀痰吸引等研修の制度全体像で解説しています。受講前に制度の背景まで押さえておきたい方は、合わせてお読みください。

喀痰吸引等研修を取るべき人 — 需要が急増中

医療的ケアができる介護職員への需要が急増しています。喀痰吸引等研修を取得すべき人と、取得のメリットを解説します。

需要が急増している背景

  • 医療依存度の高い利用者の増加:胃ろうや吸引が必要な高齢者が年々増加
  • 特養での看護師不足:夜間に看護師が不在の施設では、介護職員が吸引を行う必要がある
  • 訪問介護での需要:在宅で暮らす医療的ケア児・者の増加で、訪問介護での吸引ニーズが拡大

研修修了で広がる就職先

就職先なぜ有利か
特別養護老人ホーム夜間の吸引対応ができる職員は重宝される
訪問介護医療的ケアが必要な利用者を担当でき、時給も高い
障害者支援施設重度障害者の吸引・経管栄養ができる職員の需要大

研修費用は5〜15万円ですが、施設が費用を負担してくれるケースも多いです。「医療的ケアができる介護職員」は今後ますます求められる人材です。

第1号・第2号・第3号研修の違いと選び方

第1号・第2号・第3号研修の違いを示すイラスト

喀痰吸引等研修には第1号・第2号・第3号の3種類があり、実施できる行為の範囲だけでなく、取得にかかる費用・期間も大きく異なります。「どれに申し込むか」は受講前の最初の分かれ道です。

3つの研修の比較

項目第1号研修第2号研修第3号研修
対象者不特定多数不特定多数特定の方のみ
喀痰吸引(口腔内)
喀痰吸引(鼻腔内)
喀痰吸引(気管カニューレ)×
経管栄養(胃ろう・腸ろう)
経管栄養(経鼻)×
基本研修時間50時間50時間8〜9時間
費用目安15〜20万円10〜15万円3〜5万円

どの研修を選ぶべき?

おすすめの研修こんな方に
第1号研修施設で働き、気管カニューレ内吸引・経鼻経管栄養まで幅広く対応したい方
第2号研修施設で働き、基本的な医療的ケアに対応したい方(最も一般的)
第3号研修在宅で特定の利用者をケアする方、費用・時間を抑えたい方

選び方の目安はシンプルです。施設で働くなら第2号(費用・期間と対応範囲のバランスがよく、受講者が最も多い)、気管カニューレ内吸引や経鼻経管栄養まで担うなら第1号在宅で特定の利用者を担当するなら第3号です。第3号は安く短い反面、対象が「特定の方」に限定され、別の利用者に同じ行為を行うにはその方に対する実地研修を受け直す必要がある点に注意してください。迷った場合は、勤務先がどの行為まで必要としているかを確認してから申し込むのが確実です。

3類型それぞれの法的な位置づけ、第1号と第2号の制度上の違い、介護福祉士登録への付記可否(第3号のみの修了では付記できない)など、制度面の詳しい比較は喀痰吸引等研修の制度全体像|第1号・第2号・第3号の違いで解説しています。本記事では以降、受講の中身と費用、手続きに話を進めます。

研修内容(基本研修・実地研修)

喀痰吸引等研修は、基本研修実地研修の2つで構成されています。

基本研修の内容

基本研修では、喀痰吸引・経管栄養に関する知識と、シミュレーター(人形)を使った技術を学びます。

第1号・第2号研修の基本研修(50時間)

科目時間
人間と社会1.5時間
保健医療制度とチーム医療2時間
安全な療養生活4時間
清潔保持と感染予防2.5時間
健康状態の把握3時間
高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論11時間
高齢者及び障害児・者の経管栄養概論10時間
演習(シミュレーター)16時間
合計50時間

第3号研修の基本研修(8〜9時間)

科目時間
重度障害児・者等の地域生活等に関する講義2時間
喀痰吸引等を必要とする重度障害児・者等の障害及び支援に関する講義3時間
緊急時の対応及び危険防止に関する講義1時間
喀痰吸引等に関する演習1時間
現場演習(実際の利用者に対する演習)1時間
合計8〜9時間

演習(シミュレーター)の修了要件

第1号・第2号研修の演習では、厚生労働省の研修カリキュラムに基づき、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養を各5回以上、救急蘇生法を1回以上実施します。評価票の全項目で「手順どおりに実施できている」と評価されることが修了の条件で、1回できれば終わりではなく、安定して実施できるまで繰り返します。

実地研修の内容

基本研修を修了した後、実際の利用者に対して行為を実施する実地研修を受けます。

第1号・第2号研修の実地研修

行為必要回数
口腔内の喀痰吸引10回以上
鼻腔内の喀痰吸引20回以上
気管カニューレ内部の喀痰吸引(第1号のみ)20回以上
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養20回以上
経鼻経管栄養(第1号のみ)20回以上

実地研修は、指導看護師等の指導のもとで行います。規定回数を実施し、安全に行為を実施できると認められれば修了となります。

第3号研修の実地研修

第3号研修は、特定の利用者に対する実地研修を行います。その利用者に必要な行為のみを練習し、指導看護師から「実施可能」と評価されれば修了です。回数の規定はなく、安全・確実に実施できるようになるまで行います。

研修期間の目安

研修期間目安
第1号研修約2〜4ヶ月(基本研修8〜10日 + 実地研修)
第2号研修約1〜3ヶ月(基本研修8〜10日 + 実地研修)
第3号研修約1〜2週間(基本研修1〜2日 + 実地研修)

受講資格と免除制度

喀痰吸引等研修の受講資格と、介護福祉士向けの免除制度について解説します。

受講資格

喀痰吸引等研修には、特別な受講資格はありません

  • 学歴不問
  • 資格不要
  • 実務経験不要
  • 年齢制限なし

介護の仕事に就いていない方でも受講可能です。ただし、実地研修を受けるためには、実際に利用者がいる介護事業所で働いている(または働く予定がある)ことが必要です。

介護福祉士の免除制度

2016年度(平成28年度)以降に介護福祉士資格を取得した方は、基本研修が免除されます。

介護福祉士資格の取得時期基本研修実地研修
2015年度以前に取得必要必要
2016年度以降に取得免除必要

理由:2016年度以降の介護福祉士養成課程および実務者研修には「医療的ケア」の科目が含まれており、すでに基本研修相当の内容を学習しているためです。

介護福祉士が実地研修を受ける方法

2016年度以降の介護福祉士が喀痰吸引等を実施するには、以下の手順が必要です。

  1. 勤務先で実地研修を受ける:登録研修機関または勤務先で実地研修を受講
  2. 認定証の申請:都道府県に「認定特定行為業務従事者認定証」を申請
  3. 認定証の交付:認定証が交付されれば、医療的ケアを実施可能

実務者研修との関係

実務者研修を修了しただけでは、喀痰吸引等を実施することはできません。実務者研修で学ぶ「医療的ケア」は基本研修に相当しますが、実地研修は別途受ける必要があります。

研修・資格基本研修相当実地研修認定証
実務者研修のみ××(実施不可)
実務者研修 + 実地研修○(実施可能)
喀痰吸引等研修(第1・2号)○(実施可能)

費用と期間・申込みの流れ

喀痰吸引等研修にかかる費用と期間、申込みの流れを研修種別ごとに解説します。

研修費用の目安

研修費用目安備考
第1号研修15〜20万円全行為を実施可能
第2号研修10〜15万円気管カニューレ・経鼻を除く
第3号研修3〜5万円特定の利用者のみ
実地研修のみ(介護福祉士)3〜8万円基本研修免除者向け

費用の内訳

  • 受講料:講義・演習の費用
  • テキスト代:研修で使用する教材(受講料に含まれる場合が多い)
  • 実地研修費:実地研修にかかる費用(別途の場合あり)

研修期間の目安

研修基本研修実地研修合計期間
第1号研修8〜10日間1〜3ヶ月約2〜4ヶ月
第2号研修8〜10日間1〜2ヶ月約1〜3ヶ月
第3号研修1〜2日間数日〜2週間約1〜2週間

研修機関の選び方

喀痰吸引等研修は、都道府県が登録した研修機関で受講します。

主な研修機関の種類

  • 民間スクール:三幸福祉カレッジ、未来ケアカレッジなど
  • 社会福祉協議会:都道府県・市区町村の社協
  • 医療法人・社会福祉法人:病院や施設が主催
  • 職能団体:介護福祉士会など

選ぶポイント

  • 開催日程:仕事と両立できるスケジュールか
  • 開催場所:通いやすい場所か
  • 費用:予算内に収まるか
  • 実地研修のサポート:実地研修先を紹介してくれるか

申込みから受講開始までの流れ

  1. 登録研修機関を探す:勤務先(または住所地)の都道府県のウェブサイトに「登録研修機関一覧」が掲載されている。民間スクール・社会福祉協議会・医療法人など実施主体は多様
  2. 日程と実地研修サポートを確認:基本研修と実地研修をワンセットで提供しているか、実地研修先を紹介してもらえるかを必ず確認する
  3. 申込書類を提出:受講申込書、勤務証明書(勤務先がある場合)、本人確認書類など
  4. 受講料を納入して受講開始:基本研修(講義+演習)→実地研修→修了評価と進み、修了後に研修機関から修了証明書が交付される

費用負担を軽減する制度

  • 勤務先による負担:医療的ケアができる職員を増やしたい施設では、受講料の全額・一部や実地研修先の確保まで法人が負担するケースが多い。受講前に勤務先へ相談を
  • 都道府県の研修事業・補助:都道府県が「介護職員等によるたんの吸引等の研修事業」として登録研修機関への委託や受講料補助を行っている場合がある
  • 教育訓練給付制度:厚生労働大臣指定講座になっている研修では、雇用保険の一般教育訓練給付(受講料の20%、上限10万円)の対象になる場合がある。ハローワークまたはスクールに指定講座かどうかを確認

合格率・難易度

喀痰吸引等研修の合格率と難易度について解説します。

筆記試験の合格基準

基本研修の最後に筆記試験が行われます。

項目内容
出題形式選択式(四肢択一)
問題数30〜50問程度
合格基準総得点の90%以上
不合格時再試験あり

合格基準は「90%以上」と高めに設定されていますが、これは医療行為を安全に行うために必要な知識を確実に習得してもらうためです。

合格率

公式な合格率は公表されていませんが、ほとんどの受講者が合格しています。

  • 講習内容をしっかり受講していれば合格可能
  • 不合格の場合も再試験を受けられる
  • 再試験でほぼ全員が合格

難易度

喀痰吸引等研修の難易度は「やや易しい〜普通」程度です。

資格難易度
介護職員初任者研修★☆☆☆☆
喀痰吸引等研修★★☆☆☆
介護福祉士★★★☆☆
ケアマネジャー★★★★☆

合格のポイント

  • 講義に集中する:試験は講義内容から出題される
  • テキストを復習する:重要ポイントを確認
  • 医療用語を覚える:専門用語の意味を理解する
  • 手順を正確に覚える:喀痰吸引・経管栄養の手順

実地研修の評価

実地研修では、指導看護師等から「安全に実施できる」と評価されることが修了条件です。

  • 規定回数以上の実施が必要
  • 手技だけでなく、観察力・判断力も評価される
  • 不十分な場合は追加の練習を行う

認定証取得の流れ

喀痰吸引等研修を修了した後、実際に医療的ケアを行うためには「認定特定行為業務従事者認定証」の取得が必要です。ここでは、研修修了から認定証取得までの流れを詳しく解説します。

研修修了証明書の受領

研修を修了すると、研修実施機関から「研修修了証明書」が交付されます。この証明書には、修了した研修の種類(第1号・第2号・第3号)と、実地研修で習得した行為の種類が記載されています。

都道府県への認定申請

研修修了証明書を受け取ったら、原則として住民票記載の住所地を管轄する都道府県に「認定特定行為業務従事者」の認定申請を行います。所管課は高齢者福祉課・障害福祉課など自治体によって異なります。

申請に必要な書類:

  • 認定特定行為業務従事者認定証交付申請書
  • 研修修了証明書の写し
  • 住民票の写し(本籍地記載のもの)
  • 欠格事由に該当しないことの誓約書
  • 証明写真(縦4cm×横3cm)
  • 手数料(都道府県により異なる、1,000〜3,000円程度。無料の自治体もある)

様式や添付書類の細部は都道府県ごとに異なります(例:千葉県の案内ページ福岡県の案内ページ)。必ず申請先の都道府県の最新の案内を確認してください。

認定証の交付

申請書類に不備がなければ、通常2〜4週間程度で認定証が交付されます。書類不備があると差戻しで延びるため、誓約書の記載漏れなどに注意しましょう。認定証には、認定番号、氏名、認定を受けた行為の種類が記載されており、第2号研修で実地研修を受けていない行為は記載されません。

登録喀痰吸引等事業者への登録

認定証を取得しただけでは、まだ医療的ケアを実施することはできません。実際に行為を行うためには、勤務先の事業所が「登録喀痰吸引等事業者」として都道府県に登録されている必要があります。

事業者登録の要件:

  • 医療関係者との連携体制が確保されていること
  • 安全確保措置(マニュアル整備、感染症対策等)が講じられていること
  • 認定特定行為業務従事者が配置されていること

認定証の更新・変更届出

認定証自体に有効期限はありませんが、以下の場合は届出が必要です。

  • 氏名・住所の変更:変更届を提出(30日以内)。都道府県をまたいで転居した場合は転入先の都道府県へ手続き
  • 認定証の紛失・破損:再交付申請
  • 新たな行為の追加:追加の実地研修修了後に、修了証明書を添えて変更交付申請を提出

認定取消しとなるケース

以下に該当する場合、認定が取り消されることがあります。

  • 虚偽の申請により認定を受けた場合
  • 欠格事由に該当することとなった場合
  • 業務に関して不正行為があった場合

喀痰吸引等研修を取得するメリット

喀痰吸引等研修を修了することで、介護職としてのキャリアに多くのメリットがあります。資格取得を検討している方に向けて、具体的なメリットを詳しく解説します。

提供できるケアの幅が広がる

最大のメリットは、医療的ケアが必要な利用者に対応できるようになることです。喀痰吸引や経管栄養は、要介護度の高い方や難病の方には欠かせないケアであり、これらを提供できる介護職は非常に重宝されます。

対応可能になるケース:

  • ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病患者
  • 重度の嚥下障害がある高齢者
  • 気管切開を行っている方
  • 胃ろう・腸ろうを造設している方

就職・転職で有利になる

医療的ケアができる介護職は需要が高く、就職・転職において大きなアドバンテージとなります。特に以下の職場では、喀痰吸引等研修修了者を優遇して採用する傾向があります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 訪問介護事業所
  • 障害者支援施設
  • 重度訪問介護

給与・待遇の向上が期待できる

喀痰吸引等研修の修了者には、資格手当や特殊業務手当を支給する事業所が増えています。

手当の相場:

  • 資格手当:月額3,000〜10,000円
  • 特殊業務手当:1回あたり100〜500円
  • 基本給への反映:経験・能力評価で優遇

年間で計算すると、3〜15万円程度の収入増加が期待できます。

介護福祉士の実務者研修と連動

介護福祉士国家試験を受験するために必要な「実務者研修」には、医療的ケアの科目が含まれています。喀痰吸引等研修と実務者研修の医療的ケア科目は内容が重複しており、すでにどちらかを修了していれば、もう一方の科目が免除される場合があります。

利用者・家族からの信頼が高まる

医療的ケアが必要な利用者やその家族にとって、安心してケアを任せられる介護職の存在は心強いものです。専門的なスキルを持つことで、利用者・家族との信頼関係がより深まります。

チーム医療・介護への貢献

医療的ケアの知識を持つことで、看護師や医師との連携がスムーズになります。医療用語や手技の基礎知識があることで、チームの一員として質の高いケアを提供できます。

今後ますます需要が高まる

高齢化の進行に伴い、医療的ケアが必要な高齢者は増加の一途をたどっています。喀痰吸引等研修の修了者は、今後ますます需要が高まると予想されており、長期的なキャリア形成においても有利です。

よくある質問

Q. 研修を受けるのに介護福祉士の資格は必要ですか?

A. いいえ、介護福祉士の資格は必須ではありません。介護職員初任者研修や実務者研修の修了者、あるいは無資格の方でも受講可能です。ただし、介護職として働いている(または働く予定がある)ことが条件となる場合が多いです。

Q. 第1号・第2号・第3号のどれを受ければよいですか?

A. 勤務先や対象となる利用者によって異なります。施設で幅広い利用者に対応したい場合は第1号または第2号、特定の利用者のみを担当する場合は第3号が適しています。迷った場合は、勤務先の事業所に相談することをおすすめします。

Q. 研修期間はどのくらいですか?

A. 研修の種類によって異なります。第1号・第2号研修は基本研修(50時間)+実地研修で、通常2〜3ヶ月程度かかります。第3号研修は8〜9時間程度で、最短1日で修了できます。

Q. 働きながら受講できますか?

A. はい、可能です。多くの研修機関では、土日や夜間に開講したり、eラーニングで基本研修を受講できるコースを設けています。勤務先によっては、研修費用の補助や勤務調整を行ってくれる場合もあります。

Q. 研修費用は自己負担ですか?

A. 自己負担となるケースが多いですが、勤務先が費用を負担してくれる場合もあります。また、都道府県や市区町村によっては、受講費用の助成制度を設けているところもあります。ハローワークの教育訓練給付金の対象となる場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。

Q. 実地研修はどこで行いますか?

A. 通常、勤務先の施設・事業所で行います。勤務先がない場合や、勤務先で実地研修を行えない場合は、研修機関が指定する協力施設で行います。実地研修では、指導看護師の監督のもとで実際の利用者にケアを行います。

Q. 研修修了後、すぐに医療的ケアを行えますか?

A. 研修修了後、都道府県に申請して「認定特定行為業務従事者認定証」を取得する必要があります。また、勤務先の事業所が「登録喀痰吸引等事業者」として登録されていることも条件となります。これらの条件を満たして初めて、医療的ケアを行うことができます。

Q. 認定証に有効期限はありますか?

A. 認定証自体には有効期限はありません。ただし、氏名や住所が変わった場合は変更届を提出する必要があります。また、長期間実施していない行為については、技術の維持・向上のためのフォローアップ研修を受けることが推奨されています。

Q. 医療的ケア中に事故が起きた場合、責任はどうなりますか?

A. 適切な手順に従って行った上での事故であれば、通常は事業所の責任となります。そのため、事業所には賠償責任保険への加入や、ヒヤリハット報告制度の整備が求められています。個人として責任を問われないよう、日頃から手順の遵守と記録の徹底が重要です。

まとめ

喀痰吸引等研修は、介護職員が喀痰吸引と経管栄養という医療的ケアを行うための必須資格です。2012年の法改正により制度化され、医療的ケアが必要な高齢者・障害者へのケア体制の充実に大きく貢献しています。

この記事のポイント:

  • 喀痰吸引等研修には第1号・第2号・第3号の3種類があり、対象となる行為と利用者の範囲が異なる
  • 第1号・第2号研修は基本研修50時間+実地研修、第3号研修は8〜9時間で修了可能
  • 受講費用は5〜20万円程度。勤務先負担・都道府県の補助・教育訓練給付で軽減できる場合がある
  • 研修修了後は都道府県への申請により「認定特定行為業務従事者認定証」を取得
  • 医療的ケアができる介護職は需要が高く、就職・転職や給与面で有利

高齢化が進む日本において、医療的ケアが必要な方は今後も増加していくことが予想されます。喀痰吸引等研修を修了することで、介護職としてのスキルアップはもちろん、より多くの方に質の高いケアを提供できるようになります。

受講を検討されている方は、まずは勤務先や研修機関に相談し、自分に合った研修の種類と受講スケジュールを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。制度の枠組みや介護福祉士資格・実務者研修との関係を含めた全体像は、喀痰吸引等研修の制度全体像で整理していますので、合わせて参考にしてください。

参考文献・出典

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。