コミュニティナースとは
介護職向け

コミュニティナースとは

コミュニティナース(Community Nurse)とは、医療機関に属さず地域の暮らしの中で住民の健康と元気を支える看護師の在り方。雲南市発祥の概念と訪問看護師・保健師との違い、介護現場との接点を解説。

ポイント

この記事のポイント

コミュニティナース(Community Nurse)とは、医療機関や訪問看護ステーションに所属せず、まちのカフェや商店、コワーキングスペースなど暮らしの場に出向いて、住民の健康と「元気」を支える看護師の新しい在り方です。病気の有無に関わらず地域住民すべてを対象に、予防・健康増進・社会的処方・地域づくりを担い、2017年に島根県雲南市で矢田明子氏がCommunity Nurse Company株式会社を設立して以降、全国へ広がっています。

目次

コミュニティナースとは|職種ではなく『在り方』

コミュニティナースとは|職種ではなく「在り方」

コミュニティナースは、特定の資格制度や法的に定義された職種ではありません。看護師資格を持つ者が、病院・診療所・訪問看護ステーションといった既存の医療提供体制から離れ、地域の暮らしのなかで住民と日常的に関わりながら健康と幸せを支える「在り方」を指す概念です。

創案者の矢田明子氏(Community Nurse Company株式会社 代表取締役)は、コミュニティナースを「制度に縛られず自由で多様なケアを実践する医療人材」と定義しています。喫茶店の常連として通う、ガソリンスタンドの店員として働く、商店街のイベントで健康相談ブースを出すなど、活動の形は人と地域によって自在に変わります。

創案の背景と歴史

矢田氏は島根県出雲市出身。父親をがんで看取った経験から、病気になる前の段階で関われる看護師の必要性を強く感じ、2010年代前半から地域実践を始めました。2014年に島根大学医学部看護学科を卒業し、人材育成を担うNPO法人「おっちラボ」を設立。2017年3月に島根県雲南市でCommunity Nurse Company株式会社を立ち上げ、コミュニティナース育成講座と地域伴走を本格化させました。2019年には経済産業省の「健康寿命延伸産業創出推進事業」にも採択され、全国の自治体・企業との連携が広がっています。

3つの活動原則

  • 暮らしの場で関わる:診察室や訪問先ではなく、住民が普段過ごす場所に自然と入り込む
  • 病気の有無を問わない:要介護認定や疾病の有無に関係なく、すべての住民を対象とする
  • 予防・健康増進・社会的処方を担う:医療行為ではなく対話と関係づくりを通じて、孤立予防・行動変容・地域資源との接続を支援する

訪問看護師・保健師との違い

コミュニティナースは、既存の地域看護職である訪問看護師や保健師と類似しているように見えますが、対象・制度・活動の場が明確に異なります。

項目コミュニティナース訪問看護師保健師
対象者地域住民すべて(病気の有無を問わない)主治医の指示書がある療養者地区住民・特定健診対象者など制度上の対象
所属医療機関に属さない・法人形態は自由訪問看護ステーション・医療機関自治体・保健所・企業
資格要件看護師資格(保健師資格は任意)看護師資格+指示書に基づく実施保健師資格(看護師資格+保健師国家試験)
制度基盤制度に縛られない・自由設計介護保険・医療保険(介護報酬/診療報酬)地域保健法・健康増進法
主な活動暮らしの場での関係構築・予防・社会的処方居宅での医療処置・療養支援・看取り母子保健・成人保健・精神保健・健康教育
報酬事業収益・自治体委託・伴走料など多様介護報酬/診療報酬自治体給与

「制度の網からこぼれる人」を拾う役割

訪問看護師は介護保険・医療保険の制度内で報酬を得て稼働するため、要支援・要介護認定や主治医の指示書がない住民には関われません。保健師も自治体の所管業務に活動が限定されます。コミュニティナースはこの「制度の網からこぼれる人」――例えば一人暮らしで認知症の不安を抱えながら受診を拒む高齢者、退院後に介護保険申請を躊躇している家族介護者など――に最も早い段階で関わることができます。

実際の活動例|まちで何をしているのか

コミュニティナースの活動には決まった型がなく、地域と本人の強みに応じて多様に展開されます。代表的なパターンを4類型で整理します。

① 商業空間に常駐する型

カフェ、雑貨店、ガソリンスタンド、コワーキングスペース等の店員・運営者として日常的にまちに存在し、何気ない会話の中で健康相談を受ける。住民は「病院に行くほどでもない」段階の悩みを気軽に話せる。雲南市発祥のスタイル。

② 自治体・地域包括と協働する型

地域包括支援センターや社会福祉協議会と連携し、サロン運営・介護予防教室・認知症カフェの運営をサポート。要支援認定前の住民の早期発見・介入を担う。

③ 企業内・健保組合と協働する型

企業の健康経営担当として、従業員の生活習慣支援や家族の介護相談に対応する。働きながら介護を担うビジネスケアラーへの伴走窓口にもなる。

社会的処方のリンクワーカー型

かかりつけ医や訪問看護師から「医療では解決しきれない孤立・生活課題」を持つ住民の紹介を受け、地域のサークル・ボランティア活動・趣味の集まりへつなぐ。英国NHSが先行する社会的処方の日本版実装担い手として注目されている。

活動を始めるまでの主な経路

  1. 看護師資格を取得し、病院・訪問看護等で臨床経験を積む
  2. Community Nurse Company の養成講座(プロジェクト第10期以上の実績)や地域看護研修を受講する
  3. 活動拠点となる地域・場所を選び、自治体や民間企業と契約・委託・伴走料などの収益モデルを設計する
  4. 地域の医療・介護・福祉関係者とネットワークを構築し、紹介・連携の経路を開く

介護職との連携|現場でどう関わるか

コミュニティナースは介護現場の「外側」で活動しますが、介護職とは深く補完し合う関係にあります。地域共生社会と地域包括ケアシステムの推進が国の方針となるなか、両者の協働は確実に増えています。

介護職がコミュニティナースから得られるもの

  • 要介護申請前の住民情報:地域に常駐するコミュニティナースから、サービス導入前の生活課題や家族関係を共有してもらえる
  • 家族介護者の心理的支え:本人ケアに集中する介護職に代わって、家族の不安・孤立に伴走してくれる
  • 地域資源の紹介ネットワーク:サロン・趣味のサークル・配食ボランティアなど、デイサービス以外の選択肢を提示できる

コミュニティナースが介護職に期待すること

  • 専門的ケア技術への信頼:医療処置や認知症ケアなど、施設・在宅で介護福祉士が培う専門性を尊重し、必要時は躊躇なく引き継ぐ
  • ケアプランへの早期連携:ケアマネジャーや訪問介護員に、要介護認定が必要な兆候を早めに共有する
  • 地域行事への参加:介護施設職員にもまちのイベントに顔を出してもらい、施設と地域の境目を低くする

キャリアパスとしてのコミュニティナース

介護現場で看護師として働く中で「もっと予防の段階で関わりたい」「制度の枠を超えて住民と関わりたい」と感じる場合、コミュニティナースは有力なキャリアの選択肢です。施設・訪問看護で培った高齢者ケアの専門性は、地域実装の現場でも大きな強みになります。

よくある質問

Q1. コミュニティナースになるには特別な資格が必要ですか?

看護師資格があれば名乗ることができ、追加の国家資格は法的に必要ありません。ただし、地域実装には独自のスキルが求められるため、Community Nurse Company が運営する養成講座や、各地の地域看護研修を受けるケースが一般的です。

Q2. コミュニティナースの収入源はどうなっていますか?

制度報酬がない分、収益モデルは自由設計です。自治体からの委託料、企業との顧問契約、店舗運営収益、講座運営料、伴走支援料など、複数を組み合わせるのが現実的です。常勤雇用と比較して安定性は劣るため、初期は副業・兼業から始める例も多くなっています。

Q3. 訪問看護師がコミュニティナース的に働くことはできますか?

はい、可能です。訪問看護ステーション内で介護保険外の地域活動部門を立ち上げる事例や、訪問看護師として勤務しつつ非番日にコミュニティナース活動を行う事例があります。法人として両機能を併せ持つステーションも増えています。

Q4. 介護福祉士やケアマネジャーがコミュニティナースになることはできますか?

「コミュニティナース」は看護師の在り方を示す概念のため、看護師資格がない場合は厳密にはコミュニティナースを名乗りません。ただし、コミュニティナースの実践理念――暮らしの場で住民と関わる・予防に重きを置く・地域資源とつなぐ――は介護職の地域実践にも応用可能で、生活支援コーディネーターや認知症地域支援推進員の活動と重なります。

Q5. 都市部でもコミュニティナースは成立しますか?

成立しています。雲南市など過疎地域から始まった概念ですが、現在は東京・大阪・福岡などの都市部でも活動が広がっています。商店街・マンションコミュニティ・企業オフィスなど、都市ならではの「暮らしの場」を起点とする実装が進んでいます。

まとめ

コミュニティナースとは、医療機関や訪問看護ステーションといった既存の制度の外に出て、暮らしの場で住民と日常的に関わりながら健康と幸せを支える看護師の在り方です。2017年に島根県雲南市で矢田明子氏が立ち上げた概念は、地域共生社会・社会的処方・地域包括ケアの担い手として、全国の自治体・企業・医療機関に広がっています。介護現場で働く看護師・介護職にとっても、要介護認定前の住民や家族介護者と接点を持つ重要なパートナーとして、今後ますます重要になる存在です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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