
特定求職者雇用開発助成金とは
高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者をハローワーク等の紹介で継続雇用する事業主に支給される厚生労働省の助成金です。4つのコース、特定就職困難者コースの支給額、介護施設が取り逃しやすい紹介経路の要件を整理します。
この記事のポイント
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者を、ハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に支給される厚生労働省の助成金です。対象者の類型ごとに複数のコースがあり、支給額は対象者の区分と企業規模で決まります。最大の落とし穴は経路要件で、自社サイトへの直接応募などハローワーク等の紹介を経ていない採用は対象になりません。求人の出し方の段階で決まる助成金です。
目次
特定求職者雇用開発助成金の位置づけと対象者
この助成金は、雇用保険二事業による雇用関係助成金の1つです。趣旨は、就職が特に困難な人を雇い入れることへの事業主のためらいを減らし、雇用のきっかけを作ることにあります。厚生労働省のリーフレットは「特定求職者雇用開発助成金は、事業主による就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブとして」支給されるものだと説明しています。
「特定求職者」とは特定の職種の求職者という意味ではなく、就職が困難な事情を抱えた求職者を指します。代表的なコースである特定就職困難者コースの対象は、高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、身体・知的・精神障害者などです。厚生労働省のリーフレットによれば、この区分には父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者等、アイヌの人々なども含まれます。
雇用形態と雇用期間の要件
助成対象となる雇用形態は、正規雇用、無期雇用、有期雇用(自動更新)です。有期雇用の自動更新については「対象労働者が望む限り更新できる契約」の場合のみ助成対象となり、勤務成績等により更新の有無を判断する契約は対象外とされています。また、雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつその雇用期間が継続して2年以上であることが見込まれる必要があります。
コースの構成
特定求職者雇用開発助成金は単一の制度ではなく、対象者の類型ごとにコースが分かれています。労働局の案内で現在示されているのは次の4つです。
- 特定就職困難者コース:高年齢者、障害者等の就職が特に困難な方が対象。最も利用されるコースです。
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース:発達障害者または難治性疾患患者が対象。
- 中高年層安定雇用支援コース:いわゆる就職氷河期世代を含む35歳から60歳未満の中高年層のうち、就職の機会を逃したこと等により十分なキャリア形成がなされず、正規雇用労働者としての就業が困難な方が対象。令和7年4月に新設され、それまでの就職氷河期世代安定雇用実現コースを引き継ぐ位置づけです。
- 生活保護受給者等雇用開発コース:ハローワークまたは地方公共団体において通算して3か月を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者が対象。
コース構成は年度ごとに見直されます。たとえば成長分野等人材確保・育成コースについて、労働局の案内は令和7年度限りで廃止したと告知しています。申請を検討する際は、必ず厚生労働省の最新のコース一覧を確認してください。
特定就職困難者コースの支給額(2026年8月時点)
厚生労働省が公表している特定就職困難者コースの支給額は次のとおりです。金額はいずれも対象労働者1人あたりで、カッコ内は中小企業事業主以外(大企業)の額です。
| 対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 60万円(50万円) | 1年(1年) | 30万円×2期(25万円×2期) |
| 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円(50万円) | 2年(1年) | 30万円×4期(25万円×2期) |
| 重度障害者等 | 240万円(100万円) | 3年(1年6か月) | 40万円×6期(33万円×3期。第3期は34万円) |
| 短時間労働者のうち高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 40万円(30万円) | 1年(1年) | 20万円×2期(15万円×2期) |
| 短時間労働者のうち重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 80万円(30万円) | 2年(1年) | 20万円×4期(15万円×2期) |
ここでいう短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を指します。支給は半年ごとで、2期の場合は採用から半年後と1年後に2回支給されるイメージです。所定労働時間より著しく実労働時間が短い場合には支給額が減額されることがあります。
参考までに、中高年層安定雇用支援コースの支給額は、支給対象期間1年で中小企業が30万円×2期の計60万円、大企業が25万円×2期の計50万円です。
支給額と要件は年度ごとに改定されます。上記は2026年8月時点で厚生労働省のページに掲載されている内容であり、実際の申請にあたっては雇入れ日時点の最新の支給要領を確認してください。
介護施設が取り逃しやすいポイント
紹介経路がすべてを決める
対象となるのは、ハローワーク、地方運輸局、適正な運用を期することのできる特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者または無料船員職業紹介事業者の紹介で雇い入れた場合のみです。厚生労働省のリーフレットは「まずは求人提出が必要です」と明記しています。施設のホームページから直接応募してきた人や、知人の紹介で採用した人は、たとえ本人が60歳以上でも対象になりません。採用してから助成金を探すのでは間に合わないのがこの助成金の構造です。
2026年5月からの高年齢者要件の見直し
厚生労働省は、令和8年(2026年)5月1日以降の紹介について、高年齢者(60歳以上)の要件を見直しました。従来は雇入れ時の年齢が60歳以上であることが要件でしたが、これに加えて紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが必要になっています。60歳以上というだけでは対象にならない点に注意してください。
賃金台帳の提出が必須に
令和8年4月以降の申請分からは、添付書類として賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給とされます。労働基準法で賃金台帳の記入事項として定められている項目を満たしているかを、申請前に確認しておく必要があります。
他の助成金との併給調整がある
支給対象期と重複する時期に他の助成金を受給する場合、一方の助成金のみを支給する併給調整が行われます。支給申請書には他の助成金の受給・申請の有無を記入する欄があります。複数の助成金を組み合わせる前提で採用計画を立てている場合は、事前に労働局へ確認してください。
特定求職者雇用開発助成金に関するよくある質問
Q. 外国人を採用した場合に使えますか
外国人であること自体は対象労働者の要件ではありません。このコースの対象は高年齢者や障害者、母子家庭の母等といった類型で判断されます。外国人介護人材の受け入れで使える助成金は別の枠組みになるため、外国人介護人材の受け入れで使える助成金を参照してください。なお厚生労働省のリーフレットでは、ウクライナ避難民や補完的保護対象者が特定就職困難者コースの対象区分に含まれています。
Q. パートでも対象になりますか
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であれば短時間労働者として対象になり、短時間労働者の区分の支給額が適用されます。
Q. トライアル雇用から本採用した場合はどうなりますか
トライアル雇用助成金を活用して雇い入れた対象者を、トライアル雇用終了後も引き続き継続して雇用する場合、本助成金の一部を受給できる場合があります。障害者トライアル雇用の場合は支給対象期間が重複するため第1期分は受給できず、第2期支給対象期分から受給できる扱いです。
Q. 支給までどのくらいかかりますか
支給は半年ごとの後払いです。ハローワーク等からの紹介、雇入れ、第1期の支給申請、支給申請書の内容の調査・確認を経て支給・不支給が決定されます。採用時の資金繰りをこの助成金で賄う設計は現実的ではありません。
Q. 採用後に離職者が出ると影響しますか
影響する場合があります。対象労働者の雇入れ日の前後6か月間を基準期間として、事業主都合による離職があった場合などに助成対象とならない要件が定められています。詳細な条件は厚生労働省のリーフレットおよび支給要領で確認してください。
特定求職者雇用開発助成金に関する参考資料
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特定求職者雇用開発助成金のまとめ
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者を継続雇用する事業主を支援する助成金です。特定就職困難者コースを中心に4つのコースがあり、対象者の区分と企業規模に応じて支給額が決まります。
介護施設にとっての要点は、金額そのものよりも段取りです。ハローワーク等の紹介を経ていない採用は対象にならないため、求人をどこに出すかを決める時点で受給可否がほぼ決まります。加えて2026年5月以降の紹介では、高年齢者について就労に向けた個別支援を受けていることが要件に加わりました。支給額と要件は年度ごとに改定されるため、採用計画を立てる段階で管轄の労働局またはハローワークに相談し、雇入れ日時点で適用される要件を確認しておくことをおすすめします。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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