TUGテストとは

TUGテストとは

TUG(Timed Up and Go)テストは椅子から立ち上がり3m歩いて戻る時間を測る転倒リスク評価。13.5秒・20秒のカットオフ値、実施手順、介護現場での活用を解説。

ポイント

この記事のポイント

TUG(Timed Up and Go)テストとは、椅子から立ち上がって3m歩き、折り返して座るまでの時間を測定する移動能力の評価指標です。Podsiadlo&Richardsonが1991年に発表して以来、世界で最も広く使われる転倒リスクスクリーニングとして、介護現場・通所リハ・地域包括支援センターで実施されています。13.5秒以上で転倒ハイリスク、20秒以上で屋外移動制限、30秒以上で歩行障害ありと判定するのが一般的な目安です。

目次

TUGテストの定義と位置づけ

TUG(Timed Up and Go)テストは、Podsiadlo & Richardsonが1991年に「Journal of the American Geriatrics Society」で発表した、虚弱高齢者の機能的移動能力を評価するための指標です。元になったのはMathiasらが1986年に開発したGet Up and Go Testで、これに「時間計測」の概念を加えて再現性を高めたものがTUGになります。

テスト自体は椅子から立ち上がる→3m歩く→折り返す→戻って座るという一連の動作を1セットにしており、下肢筋力・動的バランス・歩行能力・方向転換・易転倒性を一度に評価できる点が最大の特長です。所要時間は1人あたり1〜2分と短く、特別な機材も椅子・メジャー・ストップウォッチがあれば実施できるため、医療機関だけでなく介護保険施設・通所リハ・地域包括支援センター・基本チェックリスト関連の介護予防事業まで幅広く採用されています。

厚生労働省の通所リハビリテーション計画書では、移動能力の評価指標としてTUGテストまたは6分間歩行のどちらかを測定することが事実上の標準になっており、リハビリテーションマネジメント加算の運用にも組み込まれています。介護職員にとっても、ご利用者の状態変化を客観的な秒数で把握できる共通言語として機能します。

カットオフ値の早見表

TUGの秒数は研究によって基準が異なりますが、介護現場で実用的に使われる目安は以下のとおりです。

秒数判定主な出典
10秒未満自立歩行・健常者レベル坂田(2007)
11秒以上運動器不安定症の診断基準日本整形外科学会
12秒以上地域在住高齢者で施設入所相当のリスクBischoff(2003)
13.5秒以上転倒ハイリスク(過去1年の転倒経験者と非経験者を区別)Shumway-Cook(2000)
20秒以上屋外歩行・屋外ADLに制限ありPodsiadlo & Richardson(1991)
30秒以上歩行障害あり・日常生活動作に介助が必要Podsiadlo & Richardson(1991)

※ 13.5秒は感度87%・特異度87%で転倒経験を予測するという報告(Shumway-Cook)が国内外で最も広く引用されています。20秒・30秒はTUTテストの原典論文に基づく屋内外ADLの目安です。

TUGテストの実施手順

正しい結果を得るために、計測手順は以下のとおり標準化されています。介護職・看護職が実施する場合も、PT・OTが行う場合も基本は同じです。

  1. 準備:座面高さ約46cm・肘掛けのある椅子を用意し、椅子の前脚から3mの位置にコーンや床テープで折り返し点を置きます。歩行路は障害物のない直線状にします。
  2. スタート姿勢:被験者を椅子の背もたれにつけて深く座らせ、肘掛けに手を置きます。肘掛けがない場合は両手を膝の上に置きます。普段使用している靴・歩行補助具(杖・歩行器)はそのまま使用します。
  3. 計測開始:「はじめ」の合図とともにストップウォッチを押し、被験者は無理のない通常歩行速度で立ち上がって歩行します。折り返し点まで歩き、回って戻り、椅子に座って背中が背もたれにつくまでを計測します。
  4. 本計測:通常速度で1回計測し、続けて最大歩行速度で1回計測します。速い方の値を採用するのが日本整形外科学会の推奨です。
  5. 記録:秒数のほかに、歩容(ふらつき・方向転換の不安定さ・補助具の使い方)を質的に記録します。リハビリ計画書やケアプランの根拠資料として残します。

練習試行を1回挟むと再現性が上がります。走ることは禁止、転倒リスクが高い場合は介助者が斜め後方に付き添って実施します。

他の転倒・移動能力評価との違い

TUGは万能ではなく、評価したい機能や場面によって他のテストと使い分けることが推奨されます。

評価名測定するもの所要時間TUGとの違い
TUG立ち上がり+歩行+方向転換の総合動作1〜2分転倒リスクと屋外ADLを同時に把握できる
5回立ち上がりテスト(5STS)下肢筋力・椅子起立能力30秒前後歩行・方向転換を含まないため筋力に特化
Berg Balance Scale(BBS)静的・動的バランス14項目15〜20分詳細だが時間がかかる、回復期向き
Functional Reach Test立位での前方リーチ距離1分以下立位バランスのみで歩行は含まない
6分間歩行テスト(6MWT)持久力・心肺機能・歩行距離6分持久力評価が主目的、転倒リスクは見ない
バーセル指数(BI)ADL 10項目の自立度5〜10分動作の質ではなく自立度を点数化
FIM運動13項目+認知5項目のADL自立度20〜30分介助量を7段階で評価する包括的指標

介護現場では、移動能力スクリーニングはTUG、下肢筋力の単独評価は5STS、ADLはバーセル指数FIMと組み合わせて使うのが定番です。

現場で精度を上げる実施のコツ

  • 椅子と床条件を毎回そろえる:座面の高さや床材が変わると秒数が大きく変動します。同一施設では同じ椅子・同じコース・同じ床で測定し、比較可能なデータを蓄積します。
  • 靴・補助具を統一する:スリッパでの測定はふらつきを増やすため、必ず本人がいつも使う履物で行います。杖や歩行器も普段使いのものをそのまま使用します。
  • 介助の有無を記録する:「自立」か「監視のみ」か「軽介助」かで秒数の解釈が変わります。同じ20秒でも介助なしと軽介助つきでは意味が異なります。
  • 1回練習を挟む:高齢者では1回目より2回目以降の方が速く安定する傾向があります。本計測の前にウォームアップ的な練習試行を1回入れると個人内変動を抑えられます。
  • 歩容も観察する:時間だけでなく、左右のふらつき・方向転換時の足の運び方・椅子に座る瞬間の安定性をメモします。同じ秒数でも歩容が悪化していれば再評価のサインです。
  • 定期測定で変化を追う:通所リハでは3ヶ月ごとの計画書更新時に再測定するのが基本です。2秒以上の悪化は機能低下のシグナルとして多職種で共有します。

TUGテストに関するよくある質問

Q1. 介護職員が単独で実施してもよいのですか?

計測自体は介護職員でも実施できます。ただし、ハイリスク者の評価判定や運動療法へのつなぎ込みはPT・OT・看護師の関与が前提です。施設では「介護職員が一次スクリーニング、リハ職が深掘り」という役割分担が一般的です。

Q2. 認知症の利用者でも測定できますか?

指示理解が可能で、立ち上がりと歩行が自立または軽介助で可能な方であれば測定できます。指示が伝わりにくい場合は、介助者が並んで歩く、デモを見せるなどの工夫が必要です。秒数より歩容の質的観察を重視します。

Q3. 何秒以上だと介護保険サービスを使うべきですか?

TUG単独で介護度が決まるわけではありませんが、13.5秒以上は転倒リスクへの介入検討、20秒以上は屋外活動の見直しと環境調整の検討、30秒以上は屋内ADLの介助検討が目安です。要介護認定とは別に、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所への相談タイミングとして活用できます。

Q4. 計測ごとに秒数のばらつきが大きいのですが?

2秒以内のばらつきは正常範囲です。それ以上の変動がある場合は、椅子・履物・指示の出し方・計測時刻(朝夕の体調差)を確認します。複数回測定の平均値を採用するか、最大歩行速度の値を採用するルールを施設で統一しておくと比較しやすくなります。

Q5. 杖や歩行器を使うと正しく測れませんか?

むしろ普段使いの補助具をそのまま使うのが原則です。「補助具込みの実生活での移動能力」を評価するためのテストなので、補助具を外して測ると本人の日常を反映しません。記録には「T字杖使用」「歩行器使用」など補助具の種類を必ず明記します。

まとめ

TUGテストは、椅子から立ち上がり3m歩いて戻る一連の動作を秒単位で測ることで、転倒リスクと屋内外ADLの自立度を同時にスクリーニングできる評価指標です。13.5秒以上は転倒ハイリスク、20秒以上は屋外移動の見直し、30秒以上は介助検討が実用的な目安となります。介護現場では計測条件を統一して定期的に測ることで、機能低下のサインを早期にキャッチし、リハビリ職・看護職・ケアマネと多職種で介入する起点として活用できます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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