
在宅復帰加算とは
在宅復帰加算(在宅復帰・在宅療養支援機能加算)の定義と老健5区分(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型)の指標基準・単位数、評価10項目を整理。2024年改定の指標見直しも反映。
この記事のポイント
在宅復帰加算とは、介護老人保健施設(老健)が在宅復帰・在宅療養支援機能をどれだけ果たしているかを「在宅復帰・在宅療養支援等指標」(最高90点)で評価し、点数に応じて超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型の5区分に振り分けて基本報酬や加算単位を上乗せする仕組みです。区分により1日の介護報酬は約140単位(要介護3・多床室)の差が生じ、老健の収益構造と人員配置に直結します。
目次
在宅復帰加算の正式名称と位置づけ
現場で「在宅復帰加算」と呼ばれる加算には、厳密には2つの意味があります。1つは「在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)/(Ⅱ)」という独立した加算単位(基本型に上乗せされる加算)、もう1つは老健の基本報酬区分(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型)そのものを決める評価指標です。どちらも「在宅復帰・在宅療養支援等指標」というスコア(最高90点)に基づいて算定の可否や区分が決まる点で、実務上は一体で語られます。
制度上の根拠は、厚生労働省「指定介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」と、3年に1度の介護報酬改定で告示される算定告示・留意事項通知です。2018年の介護報酬改定で老健の基本報酬体系が大きく組み替えられ、「在宅復帰機能のある老健」と「ない老健」の単位差を明確化する目的で、5区分の階段構造が導入されました。
老健は本来、病院と自宅の中間に位置する「在宅復帰を目指すリハビリ施設」と法的に定義されています。しかし実際には特養待機者の長期入所先として運用されてきた歴史があり、本来の「在宅復帰機能」を果たす施設に高い報酬を、長期入所中心の施設には低い報酬を、という政策誘導の中核ツールが在宅復帰加算(指標)です。2024年度改定では入所前後訪問指導割合・退所前後訪問指導割合の指標基準引き上げ、社会福祉士配置の評価追加など、より「在宅志向」を強める方向で見直されました。
この区分は、現場で働く介護職員・支援相談員・ケアマネジャーにとって他人事ではありません。区分が上がれば基本報酬が増え、人員配置やリハビリ体制が手厚くなる一方、指標を維持するために「在宅復帰率を落とせない」「ベッド回転を早める」プレッシャーが現場に降りてきます。求人を見るときに「超強化型老健」と書かれていれば、それは「リハビリ機能が手厚いが、入所期間は短く回転が速い」というシグナルでもあります。
老健5区分の指標基準と基本報酬(要介護3・多床室の例)
2024年度介護報酬改定後の老健(Ⅰ)における要介護3・多床室の基本報酬と、各区分が満たすべき「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の点数を整理します。
| 区分 | 指標スコア | 基本報酬(要介護3・多床室) | 関連加算 |
|---|---|---|---|
| 超強化型 | 70点以上 | 1,000単位/日 | 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)51単位/日 算定可 |
| 在宅強化型 | 60〜69点 | 954単位/日 | 基本報酬に内包 |
| 加算型 | 40〜59点 | 914単位/日 | 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)34単位/日 算定可 |
| 基本型 | 20〜39点 | 880単位/日 | 加算なし |
| その他型 | 19点以下 | 862単位/日 | 加算なし |
超強化型と基本型の差は1日あたり120単位(要介護3・多床室)。1単位10円換算で1日約1,200円、入所者1人あたり年間で約44万円の収益差が生じます。100床規模の老健なら年間4,000万円超の差となり、人員加配・リハビリ機器投資・賃金原資に直結します。
在宅復帰・在宅療養支援等指標の評価10項目
指標は10項目の合計スコアで決まります(最高90点)。各項目は施設の実績に応じて段階的に得点が割り振られます。
- 在宅復帰率:直近6か月の退所者のうち、自宅・サ高住・有料老人ホーム等に退所した割合。50%超で最高得点。老健機能の最重要指標。
- ベッド回転率:1か月あたりの新規入所者数÷平均入所者数。10%以上で最高得点。短期間で次の入所者を受け入れる回転力を評価。
- 入所前後訪問指導割合:入所前または入所後30日以内に職員が自宅を訪問し指導した割合。2024年改定で基準引き上げ。
- 退所前後訪問指導割合:退所前または退所後30日以内に訪問し療養指導をした割合。2024年改定で基準引き上げ。
- 居宅サービスの実施数:通所リハ・訪問リハ・短期入所療養介護のうち実施しているサービスの種類数。
- リハビリ専門職の配置割合:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の入所者100人あたり配置数。
- 支援相談員の配置割合:入所者100人あたりの支援相談員数。2024年改定で「社会福祉士の配置」が加点対象に。
- 要介護4・5の割合:重度者を一定割合受け入れているか。重度者ケアの責任を評価。
- 喀痰吸引の実施割合:医療的ケアが必要な入所者の受け入れ実績。
- 経管栄養の実施割合:経管栄養が必要な入所者の受け入れ実績。
1〜4の「在宅志向系」の項目で高得点を取るほど、超強化型・在宅強化型に到達しやすくなります。一方で5〜10の「重度・医療系」の項目は、医療的ケアが必要な入所者を受け入れる施設に有利な構造です。
介護職・支援相談員・ケアマネが知っておきたい実務影響
- 求人選びのシグナルとして使う:「超強化型老健」「在宅強化型」と明記されている施設は、リハビリ機器・PT/OT/ST配置・支援相談員数が手厚い傾向。一方で平均在所日数が短く(おおむね3〜6か月)、入退所サイクルが速いため、業務密度は高い。
- 支援相談員の役割が重い:在宅復帰率・入所前後訪問指導割合・退所前後訪問指導割合の3指標は、支援相談員の動きが直接影響する。社会福祉士保有者は2024年改定で評価対象になり、求人での優遇度が増している。
- ケアマネ(施設・居宅)の連携負荷:施設ケアマネは退所前カンファレンス・居宅サービス調整を密に行う必要があり、居宅ケアマネ側も入所中から関与を求められる。老健の支援相談員・施設ケアマネの仕事を参照。
- 介護職員にとっての影響:在宅復帰を目指す入所者が中心になるため、ADL維持・向上を意識したケア(食事・移乗・排泄を「できることを奪わない」設計)が求められる。重度の長期入所者中心の特養とはケアの方向性が異なる。
- 区分降格リスクへの対応:指標は3か月ごとに自己点検し、毎月の在宅復帰率・ベッド回転率を管理する施設が多い。区分が下がると年間数千万円規模の減収となるため、現場には数値プレッシャーがかかる。
よくある質問
- Q. 「在宅復帰加算」と「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」は同じものですか?
- A. 現場では同義で使われますが、厳密には異なります。「在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)34単位/日/(Ⅱ)51単位/日」は基本型・加算型の老健に上乗せされる独立加算で、超強化型・在宅強化型の基本報酬には既に組み込まれています。一方、5区分そのものを決める「在宅復帰・在宅療養支援等指標」は加算ではなく評価指標です。
- Q. 在宅復帰率は何%あれば超強化型になれますか?
- A. 在宅復帰率単独ではなく、10項目の合計指標が70点以上必要です。在宅復帰率は最高得点(50%超)で20点が割り当てられ、超強化型に到達するうえで最も重要な指標の1つですが、ベッド回転率・訪問指導・リハビリ職配置などとの合算で判定されます。
- Q. 「その他型」の老健は問題のある施設ですか?
- A. 必ずしもそうではありません。重度の長期入所者を多く受け入れる「特養待機者の受け皿」として機能している老健は、構造的に在宅復帰率・ベッド回転率が低くなり、その他型に該当します。利用者ニーズに応じた役割分担と捉えることもできます。ただし、報酬は最も低くなります。
- Q. 2024年度改定で何が変わりましたか?
- A. 主な変更点は3つです。①入所前後訪問指導割合の指標基準引き上げ、②退所前後訪問指導割合の指標基準引き上げ、③支援相談員に社会福祉士を配置していることを評価対象に追加。在宅志向と専門職配置をより強く誘導する方向で見直されました。経過措置として6月の猶予期間が設けられました。
- Q. 自分が働きたい老健の区分はどう調べられますか?
- A. 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」で施設名検索すると、サービス概要に基本報酬の単位数が記載されています。また、自治体に提出されている加算届出状況(自治体ホームページで公開している場合あり)でも確認できます。求人票や施設パンフレットに「超強化型」と明記されているケースも増えています。
まとめ
在宅復帰加算(在宅復帰・在宅療養支援機能加算と等指標)は、老健の機能区分5段階を決め、基本報酬と加算単位を上下させる中核制度です。在宅復帰率・ベッド回転率・訪問指導割合・リハビリ職配置など10項目の指標で90点満点を競い、超強化型と基本型では年間数千万円規模の収益差が生じます。老健で働く・転職する場合は、施設の区分を確認することで、リハビリ体制の手厚さ、在所期間の長さ、業務密度を事前に推測できます。2024年度改定では訪問指導指標の引き上げと社会福祉士配置の評価追加が行われ、より「在宅志向」「専門職志向」を強める方向に進化しています。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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