
介護職員の不足数が2年後に22万人に|厚労省の最新推計と転職者が知っておくべきこと
厚労省の最新推計で2026年度に約25万人の介護職員が不足する見通し。人材不足の現状と政府の対策、転職希望者にとってのメリットを解説します。
この記事のポイント
厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく最新推計では、2026年度に約240万人の介護職員が必要となり、2022年度の約215万人と比較して約25万人が不足する見通しです。有効求人倍率は約4倍と全職種平均の3倍以上で、転職希望者にとっては条件交渉がしやすい売り手市場が続いています。
介護職員不足の最新推計データ
厚生労働省は2024年7月、第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)の介護サービス見込み量に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表しました。この推計は、各市町村が計画に位置づけたサービス見込み量をもとに算出されたものです(厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
年度別の介護職員必要数と不足数
| 年度 | 必要な介護職員数 | 不足数(2022年度比) | 年間増員ペース |
|---|---|---|---|
| 2022年度(実績) | 約215万人 | ― | ― |
| 2026年度 | 約240万人 | 約25万人 | 年6.3万人 |
| 2040年度 | 約272万人 | 約57万人 | 年3.2万人 |
※2022年度の介護職員数約215万人は「令和4年介護サービス施設・事業所調査」による
さらに深刻化する2023年の実態
2025年8月に公表された厚生労働省の最新データ(第3回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材確保の現状について」)によると、2023年度の介護職員数は約212.6万人となり、調査開始以降初めて減少に転じました。2022年度の約215.4万人から約2.8万人の減少です。
必要数は増え続けているにもかかわらず実際の職員数が減少したことで、不足の深刻度はさらに増しています。
有効求人倍率にみる人手不足の深刻さ
介護関係職種の有効求人倍率は約4.0倍(令和7年9月時点)で、全職業平均の約1.1倍と比較すると約3.6倍の開きがあります(厚生労働省「介護人材確保の現状について」)。これは求職者1人に対して約4件の求人がある状態を意味し、事業者にとっては極めて厳しい採用環境です。
地域差も顕著で、東京都では7倍を超える地域もあり、都市部ほど人材獲得競争が激しくなっています。
なぜ介護職員が不足しているのか|3つの構造的原因
介護職員の不足は単なる採用難ではなく、日本社会の構造的な問題が複合的に絡み合っています。主な原因を3つに整理します。
原因1:高齢者の急増と生産年齢人口の減少
日本の65歳以上人口は約3,600万人を超え、総人口に占める割合は29%を上回っています。要介護・要支援認定者数は2000年度末の256万人から2023年度末には約708万人へと約2.8倍に増加しました。
一方で、介護の担い手となる15〜64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、2040年にかけては85歳以上の「介護ニーズが特に高い層」の割合がさらに増す見込みです。需要が増え続けるのに供給側の母数が減る「構造的ギャップ」が、不足の根本原因です。
原因2:給与水準と職業イメージの課題
介護職の平均給与は全産業平均と比べて低い水準が続いてきました。「きつい・汚い・危険(3K)」というイメージが根強く、特に若い世代が職業選択の候補に入れにくい状況があります。
介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」によると、現在の仕事の悩みとして「賃金が低い」が35.3%を占めています。処遇改善加算の拡充により改善は進んでいるものの、他産業との競争で人材を引きつけるには十分とは言えない状況です。
原因3:離職と採用のアンバランス
令和6年度の介護職員の離職率は12.4%で、全産業平均(14.2%)と同水準まで改善しています。しかし問題は採用率の低下です。同調査で採用率は14.3%と3年ぶりの低下を記録しました。
離職理由をみると、「職場の人間関係に問題があった」(24.7%)が最も多く、次いで「理念や運営のあり方に不満」「収入が少ない」と続きます。給与だけでなく、職場環境全体の改善が求められていることがわかります。
年間約30万人が入職する一方で約25万人が離職する状況が続いており、差し引きの増加分では必要数に追いつかないのが現状です。
政府が進める介護人材確保の5つの対策
厚生労働省は「総合的な介護人材確保対策」として、以下の5つの柱で施策を推進しています(厚生労働省「介護人材確保に向けた取組について」)。
対策1:処遇改善|給与の底上げ
介護職員の給与水準を引き上げるため、処遇改善加算の段階的な拡充が行われています。令和6年度の介護報酬改定では加算制度が一本化され、より多くの職員が恩恵を受けられる仕組みに変わりました。
具体的には、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップが実施されています。月額平均約6,000円(2%相当)の引き上げとなり、勤続10年以上の介護福祉士には月額8万円相当の処遇改善が適用されるケースもあります。
また、地域医療介護総合確保基金として令和7年度には約97億円が介護人材確保のために計上されています。
対策2:多様な人材の参入促進
これまで介護に関心がなかった層を取り込むため、「介護に関する入門的研修」を全都道府県で展開中です。短期間で介護の基本知識を学べるプログラムで、未経験者が介護職への不安を払拭できるよう設計されています。
若年層、子育て中の女性、定年退職者など、採用ターゲットを拡大し、「介護のしごと魅力発信等事業」による体験イベントや学校での進路指導連携も進めています。
対策3:離職防止・定着促進と生産性向上
既存の職員が長く働ける環境を整えることも重要な柱です。採用に効果があった取り組みとして、事業所へのアンケートでは「賃金水準の向上」(22.5%)、「有給休暇等が取得しやすい職場づくり」(19.2%)、「人間関係が良好な職場づくり」(12.5%)が上位に挙がっています(介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」)。
介護ロボットやICT機器の導入も推進されており、導入事業所では記録業務が平均6分短縮、移乗介助が平均9分短縮されたとの報告があります。業務負担の軽減効果を感じた事業所は72.8%に上ります。
対策4:介護職の魅力向上
キャリアアップの仕組みづくりとして、初任者研修から介護福祉士へのステップアップ支援、資格取得費用の補助、勤務時間内の研修参加の仕組みなどが整備されています。
「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」では、一定基準を満たす事業者を認証し、求職者が「良い職場」を可視化できる仕組みも稼働しています。
対策5:外国人材の受け入れ環境整備
特定技能1号の在留資格による外国人介護人材は、2025年6月末時点で約5万5,000人と過去最多を更新し続けています(厚生労働省「介護人材確保の現状について」)。EPA(経済連携協定)、技能実習、特定技能など複数の受け入れルートが用意されています。
2025年4月からは特定技能外国人の訪問介護サービスへの従事が解禁され、活躍の場がさらに広がりました。海外13カ国での試験実施、多言語教材の整備、介護福祉士国家試験対策の支援なども進められています。
転職者にとっての追い風|人材不足が生むチャンス
介護業界の深刻な人材不足は、事業者にとっては課題ですが、転職を考えている人にとっては大きなチャンスでもあります。具体的にどのようなメリットがあるのか整理します。
有効求人倍率4倍=「選べる立場」で転職できる
有効求人倍率が約4倍ということは、求職者1人に対して4件以上の求人があるということです。一般的な転職市場(全職種平均約1.1倍)と比べて圧倒的に有利な環境で、複数の事業所を比較検討しながら、自分の条件に合った職場を選べる状況にあります。
介護労働安定センターの調査では、中途採用者の就職理由として「通勤が便利」(51.9%)、「やりたい介護ができる」(33.6%)が上位に挙がっており、給与だけでなく働き方や職場の理念で選ぶ余裕があることが読み取れます。
処遇改善が進み、給与水準は上昇トレンド
国の施策により介護職の給与は着実に改善されています。処遇改善加算を最大限活用している事業所では、月額5〜8万円程度の上乗せが見込めます。特に介護福祉士の資格を持つ常勤職員の場合、平均月給は約33万円の水準に達しています。
転職時のポイントとしては、処遇改善加算の取得状況を事前に確認することが重要です。上位の加算を取得している事業所ほど給与水準が高い傾向にあります。
未経験・無資格でも歓迎される環境
人材不足を背景に、未経験者向けの入門的研修や資格取得支援制度が充実しています。「介護に関する入門的研修」を修了すれば基本的な知識を短期間で習得でき、研修修了から就職までを一体的に支援する「伴走支援事業」も実施されています。
異業種から介護に転職する場合でも、研修制度や資格取得費用の補助が整っている事業所を選べば、キャリアのスタートを切りやすい環境が整っています。
2040年まで需要拡大が確実=長期的な雇用安定
厚労省の推計では、2040年度にはさらに約57万人の不足が見込まれています。つまり、少なくとも今後15年以上は介護職の需要が拡大し続けることが確実視されています。AI やロボットの導入が進んでも、人の手による介護の需要がなくなることは考えにくく、長期的な雇用の安定性は他業種と比較しても際立っています。
当サイト独自分析:「転職タイミング」の最適解
当サイトが厚労省の推計データと処遇改善の動向を分析したところ、2026年度は転職の好機と言えます。理由は3つあります。
- 処遇改善加算の一本化(令和6年度〜)により、事業所間の給与格差が可視化されやすくなった。条件の良い事業所を見つけやすい時期です。
- 特定技能外国人の訪問介護解禁(2025年4月〜)により、施設系だけでなく訪問系でも人材確保競争が激化。事業所が採用条件を引き上げる動きが出ています。
- 第9期計画(2024〜2026年度)の最終年度にあたり、各自治体が目標達成に向けて人材確保策を強化する時期。自治体独自の支援制度が充実する可能性が高いです。
地域別の人材不足状況|都道府県で大きな格差
介護人材の不足は全国一律ではなく、地域によって深刻度に大きな差があります。厚生労働省が公表した都道府県別の推計データから、主要地域の状況を見てみましょう(厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
主要都道府県の不足数と不足率(2026年度推計)
| 都道府県 | 2026年度不足数 | 不足率 | 2040年度不足数 | 2040年度不足率 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | ▲約2.1万人 | 18.1% | ▲約5.6万人 | 43.4% |
| 東京都 | ▲約2.8万人 | 13.2% | ▲約7.3万人 | 28.5% |
| 神奈川県 | ▲約1.7万人 | 10.1% | ▲約4.4万人 | 22.1% |
| 埼玉県 | ▲約1.7万人 | 14.0% | ▲約3.1万人 | 21.4% |
| 千葉県 | ▲約1.1万人 | 5.1% | ▲約2.8万人 | 22.1% |
都市部と地方で異なる「不足の質」
データから読み取れる重要なポイントは、都市部と地方では不足の性質が異なるということです。
都市部(東京・神奈川・埼玉など)の特徴:
- 絶対数としての不足人数が大きい(東京は約2.8万人と全国最多)
- 有効求人倍率が5〜7倍と極めて高い
- 生活コストが高く、介護職の給与では人材を引きつけにくい
- ただし求職者の母数も多く、条件次第で採用できる余地がある
地方(北海道など)の特徴:
- 不足率が高い(北海道は2040年度に43.4%と全国で突出)
- 若年層の流出により、将来的な担い手の確保がさらに困難
- 一方で有効求人倍率は都市部より低く、競争は比較的緩やか
転職者が地域を選ぶ際のポイント
この地域格差は転職者にとって判断材料になります。
- 高待遇を求めるなら都市部:人材獲得競争が激しいため、事業所が給与や福利厚生を引き上げる傾向にあります
- 安定した就職を求めるなら地方:有効求人倍率が2〜3倍と都市部より採用されやすく、生活コストも低いため実質的な暮らしやすさでは有利な面もあります
- 訪問介護を希望するなら要注意:事業所の人手不足感が83.4%と最も深刻な職種であり、条件交渉の余地が特に大きい分野です
よくある質問
Q. 介護職員の不足数は今後どう推移しますか?
A. 厚生労働省の推計では、2026年度に約25万人、2040年度には約57万人が不足する見通しです。高齢者人口の増加に伴い、不足数は中長期的に拡大し続けると予測されています。特に2025年から2040年にかけては、85歳以上の介護ニーズが高い層が増える一方で生産年齢人口が急減するため、状況はさらに厳しくなります。
Q. 有効求人倍率4倍とは、具体的にどういう状況ですか?
A. 求職者1人に対して約4件の求人がある状態です。全職業平均の約1.1倍と比較すると、介護業界は約3.6倍も採用が困難な状況にあります。転職希望者にとっては、複数の求人を比較検討し、条件の良い職場を選びやすい「売り手市場」を意味します。
Q. 未経験でも介護業界に転職できますか?
A. はい、可能です。人材不足を背景に、未経験者向けの「介護に関する入門的研修」が全国で実施されています。研修は短期間で介護の基本知識を習得できる内容で、修了後は就職までをサポートする制度もあります。また、多くの事業所が介護職員初任者研修の受講費用を補助しており、働きながら資格を取得できる環境が整ってきています。
Q. 介護職の給料は本当に上がっていますか?
A. 上昇傾向にあります。国の処遇改善加算により、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップが実施されました。介護福祉士の資格を持つ常勤職員の平均月給は約33万円の水準です。ただし、事業所によって処遇改善加算の取得状況が異なるため、転職時には加算の取得状況を確認することが重要です。
Q. 介護職の離職率は高いのですか?
A. 令和6年度の介護職員の離職率は12.4%で、全産業平均の14.2%を下回っています。かつては20%を超えていた時期もありましたが、処遇改善や職場環境の整備により大幅に改善しています。ただし、事業所規模によるばらつきが大きく、離職率10%未満の事業所は全体の53.6%ある一方、高い事業所も存在します。転職時は離職率や定着支援制度の有無を確認しましょう。
Q. 外国人材の増加で日本人の雇用に影響はありますか?
A. 現時点では、外国人材の増加が日本人の雇用を脅かす状況にはありません。特定技能1号の外国人介護人材は約5万5,000人(2025年6月末時点)ですが、25万人規模の不足を補うには遠く及びません。むしろ外国人材の受け入れにより、日本人職員の負担軽減やサービスの維持が期待されています。
参考文献・出典
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まとめ|人材不足の今こそ、介護転職の好機
厚生労働省の最新推計により、介護業界の人材不足は今後さらに深刻化することが明らかになりました。2026年度に約25万人、2040年度には約57万人の不足が見込まれ、2023年度には介護職員数が調査開始以来初めて減少に転じるなど、状況は厳しさを増しています。
一方で、この人材不足は転職を考える人にとっては大きなチャンスでもあります。有効求人倍率約4倍という売り手市場のなかで、複数の求人を比較しながら条件の良い職場を選べる環境が整っています。処遇改善加算の拡充により給与水準は着実に上昇しており、未経験者向けの研修制度や資格取得支援も充実してきました。
転職を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 処遇改善加算の取得状況を確認する:上位加算を取得している事業所ほど給与が高い傾向があります
- 離職率・定着支援制度を確認する:離職率が全国平均(12.4%)を大きく下回る事業所は、職場環境が良好である可能性が高いです
- 地域特性を活用する:都市部は高待遇、地方は競争の緩やかさと生活コストの低さがメリット。自分の優先事項に合わせて選びましょう
政府は処遇改善、多様な人材の確保、ICT活用、外国人材の受け入れなど総合的な対策を進めています。2026年度は第9期介護保険事業計画の最終年度にあたり、各自治体が人材確保策を強化する時期です。介護業界への転職を検討している方は、この追い風を活かして行動に移すことをおすすめします。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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