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介護職の賃上げは「基本給」で|厚労省が処遇改善加算の新方針を公表【2026年6月改定】

介護職の賃上げは「基本給」で|厚労省が処遇改善加算の新方針を公表【2026年6月改定】

厚労省が2026年6月の介護報酬臨時改定に向け、処遇改善加算の賃上げは基本給重視との方針を公表。最大月19,000円の賃上げの仕組みと介護職が確認すべきポイントを解説。

ポイント

この記事のポイント

厚労省は2026年3月4日、6月施行の介護報酬臨時改定で処遇改善加算の賃上げを「基本給によるベースアップ」を基本とする方針を公表しました。介護従事者全体に月1万円、生産性向上に取り組む事業所の介護職員にはさらに月7,000円を上乗せし、定期昇給分を含め最大月19,000円(6.3%)の賃上げが実現します。対象は介護職員から介護従事者全体に拡大され、訪問看護・居宅介護支援なども新たに加算対象となります。

処遇改善加算の新方針とは

厚生労働省は2026年3月4日、「介護保険最新情報Vol.1474」として、令和8年度の介護職員等処遇改善加算に関する基本的な考え方や事務処理手順を記した文書案を公表しました(正式版は3月中旬に発出予定)。

この文書案の最大のポイントは、賃金改善は「基本給による改善が望ましい」と明記されたことです。従来の処遇改善加算では、手当や一時金として支給する事業所も多く見られましたが、今回の方針では安定的な処遇改善の観点から、基本給(ベースアップ)による賃金改善を基本とするよう求めています。

新方針の3つの柱

今回の改定は以下の3点が大きな柱となっています。

  1. 基本給重視の賃上げルール:令和7年度と比較して増加した加算額については、ベースアップ(賃金表の改訂による基本給等の一律引き上げ)により行うことを基本とする
  2. 対象範囲の拡大:従来の「介護職員」から「介護従事者全体」へ。訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援なども新たに対象
  3. 生産性向上への上乗せ評価:ICT活用やケアプランデータ連携システム導入など、生産性向上に取り組む事業所に対して追加の加算区分(Iロ・IIロ)を新設

なお、2026年6月の施行までの間(2025年12月〜2026年5月)は、つなぎ措置として補助金による賃上げ支援が実施されています(厚生労働省「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」)。

具体的な賃上げ額と加算率

今回の改定で実現する賃上げは、最大で月19,000円(6.3%)です。その内訳を見てみましょう。

月19,000円の内訳

区分月額対象条件
基本賃上げ(A)10,000円(3.3%)介護従事者全体処遇改善加算を算定する事業所
上乗せ措置(B)7,000円(2.4%)介護職員生産性向上・協働化に取り組む事業所
定期昇給分2,000円介護職員事業所による定期昇給の実施
合計(最大)19,000円(6.3%)介護職員全要件充足時

ただし、上乗せ措置(B)の月7,000円を得るには、事業所が生産性向上等の追加要件を満たす必要があります。また定期昇給分の2,000円は制度的な保証ではなく、例年の事業所努力による昇給見込み額です。すべての介護職員に自動的に19,000円が支給されるわけではない点に注意が必要です。

サービス別の加算率一覧(令和8年6月以降の主な例)

以下は訪問介護の加算率です。他のサービスも同様に引き上げられます。

加算区分加算率主な追加要件
加算I「イ」27.0%キャリアパス要件I〜V+職場環境改善(28項目中2区分以上)+年収440万円以上の介護職員1人以上
加算I「ロ」(新設)28.7%加算Iイの要件+ケアプランデータ連携システム加入等
加算II「イ」24.9%キャリアパス要件I〜III+職場環境改善+年収440万円以上の介護職員1人以上
加算II「ロ」(新設)26.6%加算IIイの要件+ケアプランデータ連携システム加入等
加算III20.7%キャリアパス要件I〜III+職場環境改善
加算IV17.0%月額賃金改善要件+キャリアパス要件I・II+職場環境改善

新設された「ロ」区分は、生産性向上に取り組む事業所を評価するもので、「イ」に比べて1.7ポイント高い加算率が設定されています(厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1474」令和8年3月4日)。

なぜ基本給が重要なのか

厚労省が「基本給による賃金改善が望ましい」と明記した背景には、手当や一時金による処遇改善では、介護職員の生活の安定につながりにくいという課題がありました。転職を考える介護職員にとって、この違いは特に重要です。

基本給と手当・一時金の違い

比較項目基本給に反映手当・一時金で支給
毎月の安定性毎月確実に支給される事業所判断で変動する可能性あり
退職金への影響退職金算定の基礎に含まれる通常は退職金に反映されない
賞与への影響「基本給×〇か月」で増額賞与額には影響しない
社会保険料標準報酬月額に安定的に反映一時金は反映が不安定
将来の年金額厚生年金の受給額が増える影響が限定的
住宅ローン審査安定収入として評価される一時的な収入と見なされやすい

【独自分析】基本給の差が生涯年収に与える影響

基本給が月1万円上がった場合と、同額を手当で受け取った場合の差を試算してみます。

  • 賞与への影響:基本給×4か月(年間賞与の場合)=年間4万円の差
  • 退職金への影響:基本給×勤続年数の係数で算定する場合、20年勤務で数十万円の差
  • 年金への影響:標準報酬月額の上昇により、65歳以降の年金受給額が月数百円〜千円程度増加

つまり、同じ月1万円の賃上げでも、基本給に反映されるかどうかで生涯収入に100万円以上の差が生じる可能性があります。これが厚労省が基本給重視を打ち出した理由であり、転職先を選ぶ際にも「処遇改善加算をどのように配分しているか」を確認すべきポイントです。

なお、厚労省の通知では、賃金体系の整備が途上にある事業所については、手当や一時金との組み合わせも例外的に認めています。しかし、基本原則はあくまでベースアップです(厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1474」)。

介護職が確認すべき5つのポイント

2026年6月の改定を前に、現職の介護職員も転職を検討中の方も、以下の5点を確認しておきましょう。

1. 事業所が処遇改善加算を算定しているか

処遇改善加算は事業所が申請しなければ受け取れません。厚労省の通知によれば、事務手続きの煩雑さから算定を断念する事業所も存在します。自分の職場がどの区分(I〜IV)の加算を取得しているかを確認してください。情報は「介護サービス情報公表システム」で公開されています。

2. 加算分がきちんと給与に反映されているか

処遇改善加算の算定額は、全額を職員の賃金改善に充てることが義務付けられています。給与明細に「処遇改善手当」などの項目で記載されているかを確認しましょう。不明な場合は事業所に説明を求める権利があります。厚労省の通知でも、職員から求められた場合は資料を用いてわかりやすく説明することが義務付けられています。

3. 賃上げが基本給に反映されるか、手当・一時金か

今回の新方針では「ベースアップが基本」とされましたが、例外規定もあります。事業所の就業規則や賃金規程で、処遇改善加算の増額分がどの賃金項目に充てられるのかを確認してください。基本給に反映される事業所ほど、長期的に有利です。

4. 上乗せ措置(月7,000円)の対象になるか

月7,000円の上乗せは、事業所が以下の取り組みを行っている場合に限られます。

  • 訪問・通所サービス等:ケアプランデータ連携システムへの加入
  • 施設・居住サービス等:生産性向上推進体制加算I又はIIの取得
  • 社会福祉連携推進法人への所属

転職先を選ぶ際は、これらの取り組みを実施している(または予定している)事業所かどうかが、給与に直結するチェックポイントになります。

5. 経験・資格に応じた配分ルールを確認する

厚労省の通知では、勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善が重要であることに留意するよう求めています。一方で、職種間の配分は事業所の裁量に委ねられています。介護福祉士の資格を持つ方は、経験加算や資格手当がどのように設定されているか、転職先の賃金テーブルを事前に確認することをおすすめします。

対象サービスの拡大

今回の改定で最も大きな変化の一つが、処遇改善加算の対象が「介護職員」から「介護従事者全体」に拡大されたことです。これにより、これまで対象外だった職種やサービスの従事者も賃上げの恩恵を受けられるようになります。

新たに対象となるサービス

サービス種別これまで2026年6月以降
訪問看護対象外新たに対象
介護予防訪問看護対象外新たに対象
訪問リハビリテーション対象外新たに対象
介護予防訪問リハビリテーション対象外新たに対象
居宅介護支援(ケアマネジャー)対象外新たに対象
介護予防支援対象外新たに対象
居宅療養管理指導対象外新たに対象
福祉用具貸与(販売)対象外新たに対象

既存の対象サービス(加算率引き上げ)

すでに処遇改善加算の対象だった以下のサービスでも、加算率が引き上げられます。

  • 訪問介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
  • 介護老人保健施設
  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ) など

転職者への影響

この対象拡大は、介護業界内でのキャリアチェンジを考えている方にとって朗報です。たとえば、訪問看護ステーションやケアマネ事業所への転職を検討する際にも、処遇改善加算による賃上げが期待できるようになりました。「介護職員ではないから処遇改善の対象外」という従来の壁がなくなり、介護従事者として幅広い職種で処遇改善の恩恵を受けられます。

新たに対象となるサービスでは、処遇改善加算IVに準ずる要件(キャリアパス要件I・II、職場環境等要件)を満たすことで算定が可能です。令和8年度中の対応を誓約すれば、6月当初から算定を認める経過措置も設けられています(厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1474」)。

よくある質問

Q. 月19,000円の賃上げは全員がもらえるのですか?

A. いいえ。月19,000円は、基本賃上げ(1万円)+上乗せ措置(7,000円)+定期昇給(2,000円)の最大値です。上乗せ措置は生産性向上に取り組む事業所の介護職員が対象で、定期昇給は事業所の判断によるものです。事業所が取得している加算区分や配分方針によって、実際の賃上げ額は異なります。

Q. パートや派遣の介護職員も対象になりますか?

A. パート職員は多くの事業所で処遇改善の対象に含まれています(時給への上乗せや一時金等で支給)。派遣社員については、派遣先の事業所が対象に含めているかどうかを派遣会社に確認する必要があります。

Q. いつから賃上げが始まりますか?

A. 介護報酬の臨時改定は2026年6月1日施行です。ただし、2025年12月から2026年5月までは補助金によるつなぎ措置(月1万円相当)が実施されています。6月以降は補助金が終了し、処遇改善加算による恒久的な賃上げに移行します。

Q. 基本給ではなく手当で支給されている場合はどうすればいいですか?

A. 今回の通知では、令和8年度に増加した加算額の賃上げは「ベースアップにより行うことを基本とする」と明記されています。ただし、賃金体系の整備が途上にある事業所については、手当や一時金との組み合わせも例外的に認められています。もし手当のみで支給されている場合は、事業所に基本給への反映予定を確認することをおすすめします。

Q. 転職する場合、処遇改善加算の状況はどう調べればいいですか?

A. 厚労省が運営する「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)で、事業所ごとの加算取得状況を確認できます。また、求人票の給与欄に「処遇改善手当」の記載があるか、面接時に加算区分と配分方法を質問するのも有効です。

Q. ケアマネジャーや看護師も賃上げの対象になりますか?

A. はい。2026年6月から、居宅介護支援(ケアマネ)や訪問看護も処遇改善加算の対象に新たに追加されます。ただし、事業所が加算を申請し、要件を満たしていることが前提です。

参考文献・出典

  • [1]
    介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度)(案)- 厚生労働省(介護保険最新情報Vol.1474・令和8年3月4日)

    処遇改善加算の運用ルール全文。基本給重視の方針、加算率、要件、申請手順を記載

  • [2]
    介護職員の処遇改善:制度概要- 厚生労働省

    処遇改善加算制度の概要・最新情報のポータルページ

  • [3]
    第253回社会保障審議会介護給付費分科会(令和8年1月16日)答申- GemMed(社保審・介護給付費分科会の報道)

    2026年度介護報酬改定の答申内容。訪問介護の加算率最大28.7%、対象拡大の詳細

  • [4]
    介護職の処遇改善は基本給増が望ましい 厚労省が考え方や事務処理の文書案公表- 福祉新聞(2026年3月15日)

    厚労省の文書案公表に関する報道。基本給重視方針、勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善への言及

まとめ

2026年6月の介護報酬臨時改定で、処遇改善加算は大きく拡充されます。ポイントを整理します。

  • 賃上げは基本給(ベースアップ)が基本:厚労省が安定的な処遇改善のために基本給重視を明確化
  • 最大月19,000円の賃上げ:基本1万円+上乗せ7,000円+定期昇給2,000円(全要件充足時)
  • 対象が介護従事者全体に拡大:訪問看護、ケアマネ、訪問リハなども新たに対象
  • 生産性向上に取り組む事業所を評価:新設のIロ・IIロ区分で加算率が上乗せ

転職を考えている介護職の方にとって、今回の改定は「どの事業所で働くか」が給与に直結することをより鮮明にしました。処遇改善加算の取得区分、基本給への反映方針、生産性向上への取り組み状況を転職先選びの判断材料にすることで、制度改定の恩恵を最大限に活かせます。

正式な通知は2026年3月中旬に発出される予定です。最新情報は厚生労働省の処遇改善ポータルサイトで確認してください。

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公開日: 2026年4月4日最終更新: 2026年4月4日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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