
介護職が利用者にケガ・物損させたら|損害賠償と個人賠償責任保険
介護中の事故で利用者にケガや物損を与えたとき、賠償するのは誰か。民法715条の使用者責任で原則は施設が負い、職員個人への求償は信義則上限定されます。故意・重過失と軽過失の違い、個人賠償責任保険の加入是非まで実務目線で解説。
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この記事のポイント
介護中の事故で利用者にケガをさせても、賠償責任を負うのは原則として施設(事業者)です。民法715条の使用者責任により、事業者が被害者へ賠償します。職員個人が事業者から弁償を求められる(求償)のは、故意や重大な過失があった場合などに限られ、最高裁(昭和51年7月8日)は求償を「信義則上相当と認められる限度」に制限しています。預かっていた眼鏡や補聴器の破損も、多くは事業者の賠償責任保険で対応されます。
介護中に利用者が転倒してケガをした。預かっていた補聴器を紛失した。食事介助の最中に義歯を破損した。こうした事故が起きたとき、多くの介護職が真っ先に不安に思うのが「自分が弁償させられるのではないか」「自分のせいで大金を請求されたらどうしよう」という点です。とくに経験の浅い時期には、この不安が仕事への萎縮や離職の理由にもなりかねません。
結論から言えば、賠償の責任を負うのは原則として施設(事業者)であり、職員個人が損害の全額を負担させられるケースはまれです。法律は、事業として人を雇って利益を上げている側に責任を負わせる仕組みを用意しており、労働者である職員を保護しています。ただし「個人は絶対に何も負わない」というわけでもありません。誰が、どの法律を根拠に、どこまで責任を負うのか。民法の仕組みと裁判所の考え方、現場での具体的な実務対応、そして備えとしての保険までを、介護職の目線で順番に整理していきます。正しく理解すれば、過度な不安に振り回されずに働けるようになります。
利用者にケガをさせる行為は、法律上は「不法行為」にあたります。民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めており、本来は加害者本人が賠償するのが原則です。介護の場面でいえば、転倒・誤嚥・誤薬・送迎中の事故などで利用者に損害が生じ、そこに職員の「過失」があれば、不法行為が成立しうるということになります。
しかし介護は「事業」として組織的に行われているため、ここに使用者責任(民法715条)が働きます。715条1項本文は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めます。つまり職員(被用者)が業務の執行中に起こした事故の損害は、施設(使用者)が賠償する責任を負うのです。この「事業の執行について」という要件は幅広く解釈され、本来の介護業務だけでなく、それに密接に関連する行為まで含まれると考えられています。
715条1項には但書があり、「被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をした」場合、または「相当の注意をしても損害が生ずべきであった」場合は免責とされます。ただし組織として介護を提供している以上この免責はほぼ認められず、実務上は中間責任(立証責任が事業者側に転換された責任)として扱われます。事業者が「うちは指導していたから責任がない」と主張して免責される例は、現実にはまず起こりません。
さらに施設は、利用者との介護サービス契約に基づく安全配慮義務を負っています。利用者の心身の状態に応じて転倒や誤嚥などの危険を予見し、回避する義務であり、その違反は債務不履行(民法415条)にもあたります。被害者側は、使用者責任(715条)と債務不履行(415条)のどちらを根拠に賠償を請求してもよいとされています。いずれの構成でも、賠償の相手方は原則として事業者です。
誰が・どの根拠で責任を負うか
| 法的根拠 | 誰が負うか | 現場での意味 |
|---|---|---|
| 民法709条(不法行為) | 加害者本人(職員) | 理論上は職員も負うが、被害者は通常は資力のある事業者に請求する |
| 民法715条(使用者責任) | 施設(事業者) | 業務中の事故の賠償は原則ここで施設が負う。免責はほぼ認められない |
| 民法415条(債務不履行) | 施設(事業者) | 契約上の安全配慮義務違反。被害者はこちらでも請求できる |
ここで押さえておきたいのは、賠償責任を負う「主体」と、事故を「起こした人」は必ずしも一致しないということです。事故を起こしたのが職員であっても、賠償の窓口になるのは原則として事業者であり、職員個人が被害者から直接全額を請求されるわけではありません。
賠償責任が認められた場合、利用者側が請求できる損害は、確立した算定基準がないため交通事故の算定を参考に個別に検討されます。弁護士実務では損害を「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3つに分けて積み上げます。
積極損害(実際に支出を強いられた費用)
- 治療費・看護費・付添費(症状や年齢から付添の必要があれば認められる)
- 将来介護費(事故による後遺障害で新たに必要になった介護の費用)
- 入院雑費(1日あたり1,500円程度が目安)
- 通院交通費(原則は公共交通機関。状態によってはタクシーや自家用車のガソリン代)
- 義歯・義眼・義手などの装具購入費、後遺障害に対応する自宅改造費
- 葬儀関係費用(死亡時のみ)
消極損害(逸失利益)
介護サービスの利用者は通常は就労していないため、休業損害は問題になりにくい費目です。ただし、年金収入のある利用者が死亡した場合は、余命を全うすれば得られたはずの年金相当額が逸失利益として請求されることがあります。この場合は生活費控除と中間利息控除がなされるため、想定よりかなり少額になることもあります。家事に従事していた利用者の場合は、家事労働分の逸失利益が問題になることもあります。
慰謝料
入通院慰謝料(入通院の期間・回数・ケガの程度で変動)、後遺障害慰謝料(後遺障害の程度で大きく上下)、死亡慰謝料の3種類があります。
実際の裁判例と賠償額
裁判例では、施設に高額な賠償が命じられた例があります。たとえば、玄関で利用者を待たせた際に転倒させた事故について、施設に約1,726万円の賠償が認められた裁判例があります。骨折一つでも、その後の入院・手術・後遺障害・介護負担の増加につながれば、賠償額は数百万円から千万円単位に達することもあります。だからこそ、賠償資力のある事業者と保険でこのリスクをカバーする仕組みが重要になるのです。
賠償請求権の時効に注意
2020年4月施行の改正民法により、人の生命・身体を害する損害賠償請求権の時効は「損害および加害者を知った時から5年、かつ不法行為の時から20年」に延長されました(物の損害は知った時から5年・行為から20年)。事故からかなり時間が経ってから請求される可能性もあるため、事故報告書などの記録は長期間保管しておくことが望まれます。
ここが多くの介護職が最も気にする論点です。「事業者が賠償する」としても、その後に職員個人が事業者から弁償を求められる(求償される)のではないか。順を追って整理します。
職員個人が直接訴えられることはまれ
職員個人も民法709条の不法行為責任を理論上は負います。しかし被害者(利用者・家族)は、資力のある事業者に請求するのが通常で、職員を単独で訴えるケースはほとんどありません。実際の訴訟でも、施設と職員が連名で被告となる形が大半です。弁護士の解説でも「職員に対して損害賠償請求が行われるケースはほぼない」と指摘されています。まず大前提として、職員が被害者から直接全額を取り立てられる事態は例外的だと理解してください。
求償権とは(民法715条3項)
事業者が被害者へ賠償した後、その立て替え分を職員に請求できる権利を求償権といいます。民法715条3項は「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」と定めています。条文だけを読むと「事業者は職員にいくらでも請求できる」ように見えますが、実際はそうではありません。
最高裁昭和51年7月8日判決(茨石事件)は、使用者から被用者への求償について、「その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」のみ求償できると判示しました。労働者は法律上強く保護されており、事業者は職員を使って利益を上げている以上、損失も一定程度は事業者が負担すべきだという考え方です。このため、通常の業務上の過失であれば、求償は大きく制限されるか、そもそも行使されないのが一般的です。
軽過失・重過失・故意で負担は変わる
職員個人の負担がどの程度になるかは、過失の重さによって変わります。あくまで考え方のイメージとして整理すると、次のようになります。
| 過失の程度 | 具体例 | 事業者の負担 | 職員個人の負担イメージ |
|---|---|---|---|
| 軽過失 | 通常の介助中の見落とし・とっさの判断ミス | 原則ほぼ全部 | 求償はまず問題にならない/されても小さい |
| 重過失 | マニュアルの著しい無視、明らかな不注意の放置 | 一部 | 負担割合が大きくなりうる |
| 故意 | わざと・私的な逸脱行為・飲酒勤務など | 限定的 | 本人の責任が重い。保険も故意は免責 |
つまり、まじめに業務にあたっていて起きてしまった事故(軽過失)であれば、職員が重い金銭負担を背負うことは通常ありません。一方で、ルールを無視した、わざとに近い行為であれば、職員自身の責任が問われます。この線引きが、過度に不安にならないための重要なポイントです。
職員が先に払った場合(逆求償)
反対に、職員が先に被害者へ全額を支払ってしまった場合はどうなるか。かつては「不法行為をした職員が全部負担すべき」という考えもありましたが、最高裁令和2年2月28日判決は、職員(被用者)から事業者(使用者)への求償(逆求償)も、損害の公平な分担の見地から相当な額について認められると判断しました。事業者が払った場合も、職員が払った場合も、最終的な負担は「公平な分担」で調整されるということです。職員だけが一方的に損害を抱え込む構図にはなりにくい、と理解しておきましょう。
「それでも不安だから、自分でも保険に入っておくべきか」という疑問に答えるには、まず事業者側の備えを理解する必要があります。結論を先に言えば、業務中の事故は基本的に事業者の保険でカバーされるため、多くの人にとって個人で重ねて入る必然性は高くありません。ただし働き方によっては検討する価値があります。
業務中の事故は基本的に事業者の保険でカバーされる
事業者は、公的介護保険の指定事業者となる要件として、賠償資力の確保が義務づけられています。そのため多くの事業者が「介護サービス事業者賠償責任保険」に加入しています。介護労働安定センターなどが扱うこの保険は、被保険者に理事・役員のほか、常勤・非常勤の職員やパートも含みます。補償の対象となる事故例として、パンフレットには「施設内で高齢者を介助して椅子に座らせようとした際に手を放した瞬間に転倒し骨折させた」「食材を細かく切らずに提供し利用者がのどに詰まらせた」「利用者宅で清掃中にテレビを誤って落として破損した」「預かっていた補聴器を紛失した」といったケースが挙げられています。職員個人が業務中に起こした事故も、この事業者の保険で対応されるのが基本です(ただし故意による事故は免責されます)。
個人で重ねて加入する必然性は高くない。ただし例外も
このため、保険の整った事業所で正規職員として働いているなら、個人で同種の賠償責任保険を重ねて持つ必然性は高くありません。一方で、次のような人は個人加入を検討する価値があります。
- 勤務先が十分な賠償責任保険に加入しているか、補償範囲に職員が含まれているかを確認できない
- 登録ヘルパー・非常勤・派遣・副業など、補償の対象や範囲があいまいになりやすい働き方をしている
- 業務外(ボランティア活動や私生活での事故)の賠償リスクにも一緒に備えたい
職能団体の保険という選択肢
日本介護福祉士会は、会員向けの福利厚生として保険「安心三重奏」を用意しています。これは個人賠償責任保険・傷害総合保険・所得補償保険の3本立てで、業務上の管理・指導ミスや飲食物の提供などによって、サービス利用者その他第三者の身体に障害を与えた場合、または財物に損害を与えた場合に、個人が法律上負担すべき損害賠償金などを補償する仕組みです(会員専用)。自分自身のケガや収入減(所得補償)まで含めて備えたい人には、こうした職能団体の制度が選択肢になります。
注意:火災保険などの個人賠償責任「特約」では介護業務は守れない
火災保険や自動車保険に付帯する一般的な「個人賠償責任特約」は、日常生活上の賠償事故が対象であり、業務遂行中の事故は対象外とされるのが通常です。「自分は個人賠償責任特約に入っているから介護の仕事中も安心」と考えるのは誤りです。介護業務を補償の対象とするには、事業者の賠償責任保険か、職能団体・介護職向けに設計された賠償責任保険を選ぶ必要があります。加入を検討する際は、必ず「業務中の事故が対象か」を約款で確認してください。
利用者の眼鏡・補聴器・義歯の破損や紛失は、介護現場で最も多い物損トラブルです。高価なものも多く、利用者や家族とのトラブルに発展しやすい一方で、対応を誤ると保険でカバーできなくなることもあります。やってはいけないことと、正しい初動を押さえておきましょう。
やってはいけないこと
- その場で職員が自腹で弁償を約束する/個人的に示談してしまう。賠償責任保険の約款上、保険会社の同意を得ずに被害者と示談すると、示談金額の全部または一部が保険金として支払われなくなる恐れがあります。良かれと思って「弁償します」と即答することが、かえって事業者の保険対応を妨げてしまうのです。
- 事故をなかったことにして報告しない。後から発覚すると、隠蔽として職員個人の責任が重く問われる原因になります。実害がなくても必ず報告するのが原則です。
正しい初動の流れ
- 破損・紛失・ケガに気づいたら、まずその場の安全を確保し、利用者の状態を確認する
- すぐに上司・管理者に報告する(自己判断で完結させない)
- 事故報告書(または事故・ヒヤリハット報告書)に客観的事実を記録する
- 事業者が加入する保険会社に連絡する
- 保険会社の助言に基づいて、被害者(利用者・家族)への謝罪・対応を進める
物損の場合、補聴器や眼鏡は「預かっていた物(管理下財物)」として扱われ、事業者の賠償責任保険の管理下財物事故や対物賠償で対応されることが一般的です。職員が個人で弁償する話ではなく、組織として保険で対応する話だと捉えてください。
ヒヤリハットは賠償問題ではないが記録する
補聴器を落としかけた、利用者が転倒しかけたが支えて事なきを得た、といった実害のないヒヤリハットは賠償問題にはなりません。しかし、同じ状況が次は実際の事故につながる可能性があります。ヒヤリハットを記録・共有して再発防止につなげることは、結果的に事故そのものを減らし、職員自身を賠償リスクから守ることにもつながります。
事故報告書を「自分の過失を認める書類」と誤解して、書くこと自体に強い不安を持つ職員は少なくありません。しかし事故報告書は、あくまで客観的な事実の記録であり、賠償の主体は原則として事業者です。報告書を書いたからといって、職員個人が賠償義務を負うことになるわけではありません。むしろ正確な記録は、後に求償の場面になったときに、職員に過度な負担が及ばないようにするための重要な材料になります。
事故報告書を書くときのポイント
- 5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)で、事実を時系列に沿って記録する
- 自己弁護や憶測、感情的な表現は書かない。あくまで客観的事実に徹する
- 「自分が悪い」「賠償します」といった法的評価・約束は書かない(評価は事業者と保険会社が行う)
- とった対応(バイタル確認、受診、家族への連絡など)も具体的に記録する
- 再発防止策まで記録することで、事故の予防・損失分散への配慮として評価され、求償の判断でも職員に有利に働きうる
なお、利用者が死亡または重篤な状態に至った介護事故などは、運営基準により市町村への報告義務があります。事故報告書は、賠償の場面での証拠であると同時に、施設全体のリスクマネジメントの基盤になる大切な書類です。
不安を減らすために確認したい3つのこと
漠然とした不安を具体的な備えに変えるために、次の3点を一度確認しておくことをおすすめします。
- 勤務先の賠償責任保険:加入の有無と補償範囲を確認する。とくに「職員も被保険者に含まれるか」「管理下財物(預かり物)も対象か」を見ておく
- 就業規則:損害賠償・求償に関する規定がどうなっているかを確認する。過大な弁償を求める内容になっていないかをチェックする
- 個人の備え:補償に不安が残る働き方(非常勤・登録ヘルパー等)なら、職能団体や介護職向けの賠償責任保険を検討する
知識として「原則は事業者が賠償する」「求償は信義則上制限される」という2点を押さえておくだけでも、事故が起きたときに冷静に正しい初動をとれるようになります。
Q. 利用者を転倒させてケガをさせたら、自分が治療費を払うのですか?
A. 原則は事業者が賠償します。民法715条の使用者責任により、業務中の事故は施設が責任を負うのが基本で、職員が被害者から直接全額を求められることはまれです。
Q. 預かっていた補聴器を壊したら弁償ですか?
A. その場で自腹を約束せず、まず上司に報告してください。多くは事業者の賠償責任保険(管理下財物・対物補償)で対応されます。個人で示談すると保険金が支払われなくなる恐れがあります。
Q. 事業者は職員に弁償を求められる(求償)のですか?
A. 求償権はありますが(民法715条3項)、最高裁判例により「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」に制限されます。通常の業務上の軽過失では、まず問題になりません。
Q. 故意や重大な過失だとどうなりますか?
A. 飲酒勤務やマニュアルの著しい無視など故意・重過失がある場合は、職員個人の負担割合が大きくなります。保険も故意による事故は免責です。
Q. 自分が先に被害者に支払った場合、会社に請求できますか?
A. できる場合があります。最高裁令和2年2月28日判決は、職員から事業者への求償(逆求償)も損害の公平な分担の見地から相当な額について認められると判断しました。一人で抱え込まず、まず事業者に相談してください。
Q. 個人賠償責任保険には入るべきですか?
A. 業務中の事故は事業者の保険が基本です。勤務先の補償が確認できない人、非常勤・登録ヘルパーで補償があいまいな人、業務外も備えたい人は、職能団体や介護職向けの賠償責任保険を検討するとよいでしょう。
Q. 火災保険の個人賠償責任特約で介護業務は守れますか?
A. 一般的な個人賠償責任特約は、業務遂行中の事故が対象外とされるのが通常です。介護業務の備えには使えないため、必ず約款で「業務中の事故が対象か」を確認してください。
参考文献・出典
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介護中の事故で利用者にケガや物損を与えてしまっても、賠償の主体は原則として施設(事業者)であり、民法715条の使用者責任がこれを支えています。職員個人が弁償を求められる場面は、故意や重大な過失があるなど限られた場合であり、最高裁も事業者から職員への求償を「損害の公平な分担という見地から信義則上相当な範囲」に制限しています。さらに令和2年の最高裁判決により、職員が先に支払った場合も事業者へ求償できるとされ、職員だけが一方的に損害を背負い込む仕組みにはなっていません。
大切なのは、事故が起きてもその場で自腹を約束したり個人的に示談したりせず、まず上司に報告し、事故報告書で事実を正確に残すことです。これが結果的に、保険による適切な対応と、職員自身を守ることにつながります。そのうえで、自分の勤務先の賠償責任保険の補償範囲を確認し、補償があいまいな働き方なら職能団体や介護職向けの賠償責任保険で備えておけば安心です。「原則は事業者が賠償する」「求償は信義則上制限される」。この2つの知識が、過度な不安からあなた自身を守る、もっとも確かな備えになります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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