同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を求めるルールです。パート・有期雇用労働法第8条の均衡待遇、第9条の均等待遇、第14条の説明義務を条文で整理し、2026年10月1日から適用される改正ガイドラインの退職手当の新設まで解説します。

ポイント

この記事のポイント

同一労働同一賃金とは、正職員とパート・有期契約職員・派遣職員との間で、雇用形態の違いを理由とした不合理な待遇差を設けてはならないという考え方です。中心となる条文は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期雇用労働法)の第8条と第9条。判断は賃金総額ではなく、基本給・賞与・各種手当・福利厚生といった待遇ごとに行います。労働者から求めがあれば、事業主は待遇差の内容と理由を説明しなければなりません(第14条第2項)。

目次

均衡待遇(第8条)と均等待遇(第9条)の条文構造

パート・有期雇用労働法は、待遇差の是正を性質の異なる2本の規定で組み立てています。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用されています。

第8条 不合理な待遇の禁止(均衡待遇)

短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間に、次の3要素のうち「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるもの」を考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。

  1. 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
  2. 当該職務の内容および配置の変更の範囲
  3. その他の事情

3要素すべてを一律に使うのではなく、待遇ごとに「その待遇は何のために払っているのか」を先に決め、それに関係する要素だけを考慮するという建て付けです。通勤手当のように通勤の実費補填が目的の手当は、責任の程度とは結びつきません。

第9条 差別的取扱いの禁止(均等待遇)

職務の内容が通常の労働者と同一であり、かつ雇用関係が終了するまでの全期間において職務の内容および配置が通常の労働者と同一の範囲で変更されることが見込まれる者について、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いを禁じています。第8条が「不合理な差はだめ」なのに対し、第9条は「差そのものがだめ」という強い規定です。

説明義務(第14条)

雇入れ時に講じる措置の内容を説明する義務(第1項)、求めがあったときに通常の労働者との待遇の相違の内容と理由を説明する義務(第2項)、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(第3項)の3段構えです。派遣職員については労働者派遣法第30条の3および第30条の4が同趣旨の規定を置いています。

ガイドラインが原則となる考え方を示している待遇

厚生労働省の「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)は、待遇ごとに原則となる考え方と、問題とならない例・問題となる例を示しています。介護施設に関係の深いものを挙げます。

手当

  • 役職手当:同一内容の役職に就くなら同一額。所定労働時間に比例した支給は問題とならない例に挙げられています
  • 特殊作業手当・特殊勤務手当:同一の危険度・作業環境、同一の勤務形態なら同一支給
  • 精皆勤手当:業務の内容が同一なら同一支給
  • 時間外・深夜・休日労働の割増:同一の割増率
  • 通勤手当および出張旅費:短時間・有期雇用労働者にも同一支給。ただし週3日以下や出勤日数が変動する職員に日額相当を支給するのは問題とならない例
  • 家族手当:契約更新を繰り返しているなど相応に継続的な勤務が見込まれる場合は同一支給
  • 食事手当・単身赴任手当・地域手当:それぞれ目的に応じた同一支給

福利厚生

  • 給食施設・休憩室・更衣室の利用を認めること。利用料金や割引率も第8条の対象
  • 慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除と受診時間の給与保障
  • 病気休職。有期雇用の場合は労働契約が終了するまでの期間を踏まえて取得を認めること
  • 夏季冬季休暇

更衣室と休憩室は、介護施設ではパート職員の利用を事実上制限してしまいがちな箇所です。ガイドラインが名指ししている以上、運用の見直し対象になります。

2026年10月1日から適用される改正ガイドラインで退職手当が新設

同一労働同一賃金ガイドラインは、令和8年4月28日厚生労働省告示第203号によって改正され、令和8年(2026年)10月1日から適用されます。この記事の公開時点ではまだ適用前です。

改正で目立つのは、短時間・有期雇用労働者の章に「退職手当」が独立した項目として新設されたことです。厚生労働省が公表している新旧対照表では、改正前の目次が「1 基本給/2 賞与/3 手当/4 福利厚生/5 その他」であったのに対し、改正後は「1 基本給/2 賞与/3 退職手当/4 各種手当(退職手当を除く。)/5 福利厚生/6 その他」となり、退職手当の欄が(新設)と表示されています。派遣労働者の章も同じ構成に変わります。

新設された退職手当の項目は、退職手当に労務の対価の後払いや功労報償などさまざまな性質・目的が含まれうることを前提に、通常の労働者と同様にその性質・目的が短時間・有期雇用労働者にも妥当するのに、均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつその見合いとして基本給を高く支給しているなどの事情もない場合、その相違は不合理と認められるものに当たりうる、という趣旨を示しています。

介護分野には、社会福祉施設職員等退職手当共済や中小企業退職金共済といった外部の退職金制度があります。就業規則でこれらの加入対象や退職手当の適用範囲を正職員に限っている場合、2026年10月以降はその線引きの理由を待遇の性質・目的にさかのぼって説明できるかが問われます。制度そのものは退職金とはもあわせて確認してください。

待遇差を説明できる状態にする4ステップ

1. 待遇を洗い出して目的を1行で書く

基本給、賞与、退職手当、手当類、福利厚生、教育訓練を一覧にし、それぞれ「何に対して払っているのか」を1行で言語化します。この言語化ができない待遇は、第8条の判断で不利に働きます。

2. 職務の内容と変更の範囲を事実で書き出す

正職員とパート職員で、担当業務、責任の程度(急変時の判断、シフト作成、実習生の指導など)、異動や職務転換の有無を具体的に比べます。「正職員だから」は理由になりません。

3. 待遇ごとに、関係する要素だけで説明を組み立てる

目的と関係のない要素を持ち出すと説明が崩れます。通勤手当の差を責任の程度で説明することはできません。

4. 求めがあったときの窓口と記録を決める

第14条第2項の説明は口頭でも可能ですが、説明内容を記録に残しておくと後の紛争で有利です。説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは第3項で禁じられています。求人段階の記載との整合は応募が来る介護求人票の書き方|職業安定法の法定明示11項目を欄ごとに逐条チェックもあわせて点検してください。

無期転換すると適用対象から外れることがある

見落とされやすいのが適用範囲です。パート・有期雇用労働法が対象とするのは短時間労働者と有期雇用労働者であり、フルタイムの無期契約労働者は含まれません。このため、有期契約のフルタイム職員が無期転換ルールとはで無期契約になると、同法の直接の適用対象から外れることになります。

ただしガイドラインは、所定労働時間が通常の労働者と同一で期間の定めのない労働契約を締結している労働者等についても項目を設けており、不合理な待遇差を放置してよいという意味ではありません。無期転換後の待遇設計を「別段の定め」で組むときは、この点を織り込む必要があります。

また第6条は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口といった特定事項を文書の交付等で明示することを求めています。雇用契約書とはの様式にこれらの欄があるかを確認してください。

同一労働同一賃金とはに関するよくある質問

Qパートと正職員で時給が違うのは違法ですか。

時給差そのものが直ちに違法になるわけではありません。パート・有期雇用労働法第8条は、待遇ごとに職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものを考慮して判断するとしています。責任の程度や異動範囲に実際の違いがあり、それが基本給の性質と結びついていれば、差が不合理とはされない場合があります。

Q待遇差の理由を説明してもらえない場合はどうすればよいですか。

第14条第2項は、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときの説明を事業主の義務としています。説明を求めたことを理由とする不利益取扱いは第3項で禁じられています。応じてもらえない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

Q賞与をパートに支給しないのは問題ですか。

ガイドラインは、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与について、同一の貢献には同一の、違いがあればその相違に応じた賞与を支給しなければならないという原則を示しています。まず自事業所の賞与が何に対する支給なのかを整理し、その目的が短時間・有期雇用労働者にも妥当するかを確認することになります。

Q介護職員等処遇改善加算の配分でも同一労働同一賃金は関係しますか。

関係します。加算による賃金改善は事業所の裁量で配分方法を決められますが、支給する手当が待遇である以上、正職員とパート職員の間の相違は第8条の判断対象になります。配分ルールを就業規則や賃金規程に明記し、目的を説明できるようにしておくことが実務上の備えになります。

Q改正ガイドラインはいつから適用されますか。

令和8年4月28日厚生労働省告示第203号による改正後の指針は、令和8年(2026年)10月1日から適用されます。厚生労働省のページで改正後の本文と新旧対照表が公開されているので、退職手当の項目の新設を含め、適用前に自事業所の待遇一覧と突き合わせておくと安全です。

同一労働同一賃金とはの参考文献・出典

同一労働同一賃金とはのまとめ

同一労働同一賃金は、賃金総額を揃える制度ではなく、待遇ごとにその性質・目的をさかのぼって差の合理性を問う仕組みです。パート・有期雇用労働法第8条が均衡待遇、第9条が均等待遇、第14条が説明義務を担い、派遣は労働者派遣法第30条の3・第30条の4が受け持ちます。2026年10月1日からは改正ガイドラインが適用され、退職手当が独立した項目として加わります。介護施設は、待遇一覧と目的の言語化、職務の内容と変更範囲の事実整理、説明の記録という順で準備を進めておくと、求めがあったときに慌てずに済みます。

この用語に関連する記事

介護職の変形労働時間制|シフト・夜勤と残業代の仕組み

介護職の変形労働時間制|シフト・夜勤と残業代の仕組み

介護施設の16時間夜勤やシフトを支える変形労働時間制を、worker目線で解説。1か月・1年単位の違い、法定労働時間の総枠、変形労働でも残業代が出る3つのケース、よくある誤解、自分のシフトで損していないかの確認方法、36協定との関係まで厚労省資料と労基法条文で整理。

介護職の公益通報・内部告発|虐待や不正を通報した職員を守る法律と進め方

介護職の公益通報・内部告発|虐待や不正を通報した職員を守る法律と進め方

介護現場で虐待・人員配置基準違反・介護報酬の不正請求・労基法違反を通報した職員を守る法律を解説。公益通報者保護法の保護要件と通報先3類型、2022年改正の体制整備義務と守秘義務、高齢者虐待防止法第21条の通報義務との関係、通報前の証拠・相談先の準備までを一次ソースで整理。

介護現場の労務トラブル対処|未払い残業・有給拒否・パワハラの解決手順

介護現場の労務トラブル対処|未払い残業・有給拒否・パワハラの解決手順

介護現場で多い5つの労務トラブル(未払い残業・有給拒否・シフト変更・パワハラ・不当解雇)の法的根拠と解決手順を労働基準法・パワハラ防止法・労働契約法に沿って5ステップで解説。証拠収集と相談窓口も網羅。

介護職の労働基準法ガイド|労働時間・休憩・残業・年休・解雇の最低ライン【2026年版】

介護職の労働基準法ガイド|労働時間・休憩・残業・年休・解雇の最低ライン【2026年版】

介護職が現場で必要な労働基準法の基礎を1か所に集約。1日8時間/週40時間の原則、変形労働時間制、6時間超は45分・8時間超は1時間の休憩、36協定と残業上限、年休、解雇ルール、介護現場特有のグレーゾーンまで厚労省資料を根拠に解説。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。