GLIM基準とは

GLIM基準とは

GLIM基準は2018年に提唱された低栄養診断の国際統一基準。現症(表現型)3項目と病因2項目から各1つ以上で診断し、重症度も判定する2段階プロセスをわかりやすく解説。

ポイント

GLIM基準とは(定義)

GLIM基準(グリム基準)とは、2018年に日本栄養治療学会(JSPEN)を含む世界4つの栄養学会が協力して策定した、低栄養を診断するための国際統一基準です。「現症(表現型)3項目」と「病因2項目」から、それぞれ1つ以上が該当したときに低栄養と診断します。世界共通のものさしで低栄養を判定できる点が最大の特徴です。

目次

GLIM基準の概要と背景

GLIM基準とは何か

GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準は、それまで世界でバラバラだった低栄養の診断基準を統一するために、ESPEN(欧州)、ASPEN(米国)、PENSA(アジア)、FELANPE(中南米)といった世界の主要な臨床栄養学会が連携して2018年に発表した診断基準です。日本では日本栄養治療学会(JSPEN)がこの基準の普及を進めています。

これまでは施設や国ごとに低栄養の判定方法が異なり、研究データの比較や、患者が転院・転所したときの情報共有が難しいという課題がありました。GLIM基準は「世界共通のものさし」として、こうした課題を解決することを目的としています。

高齢者の低栄養は、フレイルやサルコペニアの進行、感染症リスクの上昇、入院期間の延長などにつながります。介護現場でも、食事量の低下や体重減少を早く見つけ、管理栄養士・看護師・介護職が共通言語で連携するうえで、GLIM基準の考え方を知っておくことは大きな意味を持ちます。

GLIM基準の2段階の診断プロセス

GLIM基準の診断は「スクリーニング→診断・重症度判定」の2段階

GLIM基準による低栄養の判定は、大きく分けて次の流れで進みます。

  1. 栄養リスクスクリーニング:すべての対象者に対し、検証済みのスクリーニングツール(MUST、NRS-2002、MNA-SFなど)を用いて栄養リスクのある人を拾い上げます。
  2. 低栄養の診断(アセスメント):リスクありと判定された人について、「現症(表現型)3項目」と「病因2項目」を評価し、それぞれから1つ以上該当すれば低栄養と診断します。
  3. 重症度の判定:低栄養と診断された人を、現症の程度に応じて「中等度低栄養」または「重度低栄養」に分類します。

このように、まず広くふるい分けをしてから詳しく診断し、最後に重症度を決めるのがGLIM基準の特徴です。

GLIM基準の現症3項目と病因2項目

診断の柱は「現症3項目」と「病因2項目」

GLIM基準では、低栄養の「結果として現れているサイン(現症=表現型基準)」と「低栄養を引き起こしている原因(病因基準)」の両面から評価します。両方のグループからそれぞれ1つ以上が当てはまることが、診断の条件です。

現症(表現型)基準 ― 3項目

  • 意図しない体重減少:6か月以内に5%超、または6か月以上で10%超の体重減少
  • 低BMI:70歳未満でBMI 18.5未満、70歳以上でBMI 20未満(GLIM原著の値。日本人ではアジア人向けの調整が議論されており、施設ごとに採用値を定める運用が一般的)
  • 筋肉量の減少:身体計測(下腿周囲長など)、生体電気インピーダンス法(BIA)、CTやDXAなどで評価。人種に適したサルコペニア診断の基準値を用いる

病因基準 ― 2項目

  • 食事摂取量の減少・消化吸収能の低下:1週間以上にわたり必要栄養量の50%以下しか摂取できない、または2週間以上にわたり食事摂取量が減少している、あるいは消化吸収に影響する慢性的な消化器症状がある
  • 疾患による負荷・炎症:急性疾患・外傷による炎症、または慢性疾患による持続的な炎症がある

GLIM基準の重症度判定(中等度・重度)

重症度は「現症」の程度で中等度・重度に分ける

低栄養と診断されたあと、現症(表現型)3項目のうち「より深い基準値」を1つでも超えていれば重度低栄養(Stage 2)、超えていなければ中等度低栄養(Stage 1)と判定します。

体重減少での重症度の目安(GLIM原著)

  • 中等度(Stage 1):6か月以内に5〜10%、または6か月以上で10〜20%の体重減少
  • 重度(Stage 2):6か月以内に10%超、または6か月以上で20%超の体重減少

低BMIでの重症度の目安(GLIM原著・非アジア人の値)

  • 中等度:70歳未満でBMI 20未満、70歳以上でBMI 22未満
  • 重度:70歳未満でBMI 18.5未満、70歳以上でBMI 20未満

ただし、アジア人・日本人における低BMIと低筋肉量の重度カットオフ値は、GLIM原著では明確に示されていません。日本栄養治療学会(JSPEN)は、当面は「中等度の基準値からおよそ10%低い値」を施設で仮設定し、運用しながら検証していく方法を一つの目安として示しています。施設ごとに採用値を明記して運用するのが実務的です。

GLIM基準と低栄養・MNA-SFの違い

低栄養・MNA-SF・サルコペニアとの違い

低栄養に関連する用語は混同されやすいので、GLIM基準との関係を整理します。

  • 低栄養:エネルギーやたんぱく質が不足した「状態」そのものを指す言葉です。GLIM基準は、その低栄養を「どう診断するか」を定めた国際的なものさしです。
  • MNA-SF:6項目で低栄養リスクを素早くふるい分けるスクリーニングツールです。GLIM基準の最初の段階(リスク抽出)で使われる「入口」にあたり、診断そのものではありません。
  • サルコペニア:加齢などによる「筋肉量・筋力の低下」を指します。GLIM基準では現症の「筋肉量減少」の評価に、サルコペニア診断の基準値を借用します。低栄養とサルコペニアは重なりやすいものの、別の概念です。

整理すると、MNA-SFでふるい分け→GLIM基準で診断・重症度判定という関係になります。

GLIM基準を介護現場で活かすポイント

介護現場での活かし方

GLIM基準は医師・管理栄養士が診断に用いるものですが、介護職や看護職が考え方を知っておくと、低栄養の早期発見と多職種連携に役立ちます。

  • 体重の定期測定を習慣に:現症の中心は「意図しない体重減少」です。月1回でも体重を記録しておくと、6か月で5%超の減少といった変化に気づけます。
  • 食事摂取量の記録:病因の柱は「食事摂取量の減少」。主食・副食の摂取割合を記録しておくと、管理栄養士のアセスメントに直結します。
  • 下腿周囲長の確認:ふくらはぎの周囲長は、特別な機器がなくても筋肉量の目安として活用できます。
  • 共通言語として共有:「中等度低栄養」「重度低栄養」という共通の表現を使うことで、看護師・管理栄養士・ケアマネとの情報共有がスムーズになります。

GLIM基準のよくある質問

よくある質問

GLIM基準はいつ作られたのですか?

2018年に、ESPEN(欧州)・ASPEN(米国)・PENSA(アジア)・FELANPE(中南米)など世界の主要な臨床栄養学会が連携して発表しました。日本では日本栄養治療学会(JSPEN)が普及を進めています。

GLIM基準で低栄養と診断される条件は?

現症(表現型)3項目のうち1つ以上と、病因2項目のうち1つ以上の両方が当てはまることが条件です。どちらか片方だけでは診断されません。

MNA-SFとは何が違うのですか?

MNA-SFは低栄養リスクをふるい分ける「スクリーニングツール」で、GLIM基準の最初の段階で使われます。GLIM基準はそのあとに行う「診断と重症度判定」の基準です。

日本人にもGLIM基準のBMIの値をそのまま使えますか?

GLIM原著のBMI値は主に非アジア人を想定したものです。アジア人・日本人向けの重度カットオフ値は明確に定まっておらず、JSPENは「中等度基準より約10%低い値」を施設で仮設定して運用・検証する方法を目安として示しています。

GLIM基準の参考資料

GLIM基準のまとめ

まとめ

GLIM基準は、世界共通のものさしで低栄養を診断するために2018年に提唱された国際基準です。「現症(表現型)3項目」と「病因2項目」からそれぞれ1つ以上が該当すれば低栄養と診断し、現症の程度で中等度・重度に分類します。介護現場では、体重と食事摂取量の記録が早期発見の第一歩。多職種連携の共通言語として、その考え方を押さえておきましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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