
ホリスティックケアとは
ホリスティックケアは身体・心理・社会・スピリチュアルの4側面から人間をまるごと捉える全人的ケア。WHO健康定義やAHNAホリスティック看護の理論に基づき、認知症ケアや終末期介護で実践される。
この記事のポイント
ホリスティックケア(Holistic Care)とは、人間を「身体」「心理(精神)」「社会」「スピリチュアル」の4側面から不可分の全体として捉え、相互に関連する存在として癒しを目指す全人的ケアの考え方です。1926年にスマッツが提唱したホーリズム思想を起点に、WHOの健康定義やアメリカホリスティック看護協会(AHNA)の看護観に発展し、認知症ケア・終末期ケア・在宅介護で広く実践されています。
目次
ホリスティックケアの基本|身体・心理・社会・スピリチュアルの4側面を統合する全人的ケア
ホリスティックケア(Holistic Care)は、人を身体(Body)・心理(Mind)・社会(Social)・スピリチュアル(Spirit)の4側面が相互に関係する一つの全体として捉え、ケアを提供する考え方です。「ホリスティック」の語源はギリシャ語の holos(全体)で、1970年代から欧米で発展しました。
WHO(世界保健機関)の健康定義「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態」を発展させた概念で、緩和ケア・在宅医療・認知症ケア・終末期ケアの分野で標準的なアプローチになっています。
従来のバイオメディカルモデル(病気を治す視点中心)では、疾病・症状・検査値が中心軸でしたが、ホリスティックケアでは「その人らしさをどう保つか・支えるか」が中心軸になります。介護現場ではパーソンセンタード・ケアと密接に関連しており、ナラティブ・アプローチや人生回顧療法と組み合わせて実践されます。
ホリスティックケアの4側面とアセスメント観点
- 身体(Body): 痛み・睡眠・食事・排泄・移動能力・既往歴・服薬・栄養状態
- 心理(Mind): 認知機能・感情・不安・抑うつ・自己評価・コーピング(対処)スタイル
- 社会(Social): 家族関係・友人関係・地域とのつながり・経済状況・住環境・仕事の有無
- スピリチュアル(Spirit): 生きがい・価値観・信仰・人生の意味・死生観・尊厳の感覚
4側面のどれか一つが崩れると他にも波及する。例えば「身体の痛み」が「不眠」を生み、「孤独感」を強め、「生きる意味の喪失」につながる、というように連鎖します。
バイオメディカルモデルとホリスティックケアの違い
| 項目 | バイオメディカルモデル | ホリスティックケア |
|---|---|---|
| 視点の中心 | 疾病・症状 | その人らしさの全体 |
| アセスメント軸 | 検査値・診断名 | 身体・心理・社会・スピリチュアルの4軸 |
| 目標 | 症状の除去・延命 | QOL最大化・尊厳維持 |
| 関わる職種 | 医師中心 | 多職種協働(看護・介護・リハ・心理・宗教者など) |
| 代表的な場面 | 急性期医療 | 緩和ケア・在宅看取り・認知症ケア |
ホリスティックケアの広がり|緩和ケアと終末期ケアでの位置づけ
ホリスティックケアは、欧米では1970年代から看護理論として体系化され、日本でも1980年代以降に緩和ケア・終末期ケア・在宅医療の現場で広がってきました。WHO(世界保健機関)は1948年の健康定義で「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態」と示し、1998年にはスピリチュアル領域を含める議論が進められたことで、ホリスティック視点はグローバル基準のケア観として確立されてきました。
日本の緩和ケア病棟は1990年に診療報酬で認可されて以降、施設数が増え続け、近年では全国で約460施設・約9,700床規模が稼働しています。一般病棟・在宅・介護施設にも緩和ケアチームの設置が広がり、身体・心理・社会・スピリチュアルの4側面を多職種で支える体制が標準化しています。
介護分野でも、認知症ケアや看取り介護加算の運用において、ホリスティックな視点をケアプランに組み込むことが求められています。厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)では、本人の意思決定を中心に医療・ケアチームが繰り返し話し合うACP(アドバンス・ケア・プランニング、人生会議)が示され、心理・社会・スピリチュアルの側面を含めた合意形成が標準プロセスになっています。
介護現場でのホリスティックケア実践のコツ
- 4側面アセスメントシートを作る: ケアプラン作成時に「身体・心理・社会・スピリチュアル」の4枠で情報を整理
- 『人生の物語』を聞き取る: 入所・サービス開始時に「生きてきた歴史」を1時間かけて聞き、ケアに活かす
- 多職種カンファレンスを月1回開く: 看護・介護・リハ・栄養・心理が4側面の視点を持ち寄る
- スピリチュアルケアを軽視しない: 「生きがい」「楽しみ」「願い」を引き出し、レク・行事・日常ケアに反映
- 家族も支援対象: 介護者本人だけでなく、支える家族の身体・心理・社会も同時にケア
よくある質問
- Q1. 介護報酬での評価はありますか?
- A. 直接的な加算項目はありませんが、「個別機能訓練加算」「認知症ケア加算」「看取り介護加算」のアウトカムを高めるアプローチとして実践されます。アセスメントやケアプランに4側面を組み込むことで、加算要件である多職種連携やQOL評価が充実します。
- Q2. 認知症の方にも有効ですか?
- A. パーソンセンタード・ケアと組み合わせて使うのが標準的。本人の表情・行動から4側面を読み取り、ケアプランに反映します。BPSD(行動・心理症状)の背景に身体的不快や孤独感が隠れていることも多く、4側面のアセスメントが原因特定に役立ちます。
- Q3. 1人の介護職にここまで求めるのは無理では?
- A. 1人で全部やる必要はなく、多職種で分担するのが原則です。介護職は身体・心理・社会側面の観察、看護・医療職は身体、宗教者・心理職はスピリチュアル、というように役割分担します。チーム全体で4側面をカバーする運用設計が現実的です。
まとめ
ホリスティックケアは、人を「身体・心理・社会・スピリチュアル」の4側面の全体として捉え、その人らしさを支えるケアの考え方です。介護現場では多職種で4側面を分担しながら統合し、QOLと尊厳を最大化することを目指します。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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