認知症専門医・認知症サポート医とは

認知症専門医・認知症サポート医とは

認知症専門医(日本認知症学会・日本老年精神医学会)と認知症サポート医(厚労省制度)の3類型を、資格要件・全国登録数・かかりつけ医との連携経路までやさしく整理。介護職と家族が知っておきたい紹介の流れと役割分担を解説。

ポイント

この記事のポイント

認知症専門医・認知症サポート医とは、認知症診療を担う医師の3つの類型を指す総称です。代表的なのは日本認知症学会専門医、日本老年精神医学会専門医、そして厚生労働省が制度化した認知症サポート医で、サポート医は2024年度末で全国15,548人が研修を修了しています。鑑別診断や薬物療法を担う「専門医」と、地域のかかりつけ医を支える「サポート医」では役割が異なります。

目次

認知症診療を担う医師の3類型

「認知症の専門医」と一口に言っても、根拠となる制度は3つあります。学会が認定する2つの専門医と、厚生労働省・国立長寿医療研究センターが運営する公的な研修修了医です。それぞれ役割と認定主体が異なるため、介護現場や家族が医師を探すときには違いを押さえておく必要があります。

1. 日本認知症学会専門医

日本認知症学会が認定する学会専門医です。精神神経・神経内科・老年医学・内科・脳神経外科・リハビリテーション医学・老年精神医学いずれかの基本領域専門医資格を保有したうえで、認知症診療の症例報告審査と厳格な筆記試験に合格した医師が認定されます。アルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型・血管性などの鑑別診断と、抗認知症薬を含む薬物療法を中心に担当します。

2. 日本老年精神医学会専門医

日本老年精神医学会が認定する専門医で、精神科・神経内科・老年科・内科などの専門医資格を持ち、学会会員として2年以上の臨床経験と認定施設での研修カリキュラム修了が要件です。高齢者特有のBPSD(行動・心理症状)、うつ・せん妄との鑑別、向精神薬の使い分けに強いのが特徴で、精神科病院・もの忘れ外来で出会うことが多い類型です。

3. 認知症サポート医(厚生労働省制度)

2005年度に始まった厚生労働省の「認知症サポート医養成研修事業」で養成される医師です。国立長寿医療研究センターが研修を実施し、修了した医師は都道府県の名簿に登録されます。地域のかかりつけ医を後方から支援する「指導者」役で、専門医のように難症例を直接診療するというより、かかりつけ医や地域包括支援センター・認知症初期集中支援チームとの橋渡しを担います。

資格要件と全国登録数

3類型の認定主体・基本要件・登録規模を一覧で整理します。

類型認定主体主な要件規模の目安
日本認知症学会専門医日本認知症学会基本領域専門医+症例報告審査+筆記試験全国に専門医・認定臨床医が分布(学会名簿で公開)
日本老年精神医学会専門医日本老年精神医学会基本領域専門医+会員2年以上+認定施設研修全国の老年精神医学領域で活動
認知症サポート医厚生労働省/国立長寿医療研究センターサポート医養成研修修了2024年度末で15,548人(うち2024年度修了938人)

サポート医の内訳は内科医が42.8%で最多、続いて精神科医12.2%、総合診療科医7.4%となっており、地域のかかりつけ医のすそ野を広く取り込んでいる点が学会専門医との大きな違いです(国立長寿医療研究センター公表値、2024年度末)。

認知症専門医とサポート医の違い

学会専門医とサポート医は「同じ認知症の医師」と誤解されがちですが、役割と立ち位置はかなり異なります。

観点学会専門医(認知症学会・老年精神医学会)認知症サポート医
主な役割鑑別診断・薬物療法・難症例の専門治療かかりつけ医への助言、地域連携の推進役
典型的な勤務先大学病院、認知症疾患医療センター、もの忘れ外来地域のクリニック・在宅医療を担う診療所など
認定の根拠学会の専門医制度(試験・症例審査)厚労省事業の研修修了
更新性学会基準で更新ありフォローアップ研修で継続性を維持
家族・介護職との接点診断確定・治療方針の決定で関わる地域包括・認知症初期集中支援チームと日常的に連携

言い換えると、専門医は「診断・治療の精度を上げる縦の専門性」、サポート医は「地域全体で支える横の連携力」を担います。両者は対立する制度ではなく、認知症ケアパスのなかで補完し合う関係です。

紹介の流れ|介護現場から専門医までの導線

介護職や家族が「もの忘れが気になる」と感じてから専門医にたどり着くまでの一般的な経路です。地域によって運用は異なりますが、おおむね次のような流れになります。

  1. 気づき・相談:本人・家族・介護スタッフが日常の変化に気づき、地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談する。
  2. かかりつけ医での初期評価:普段から通っている内科や総合診療医を受診し、長谷川式・MMSEなどの認知機能評価や採血・画像検査の手配を受ける。
  3. 認知症サポート医の助言:かかりつけ医が地域のサポート医と連絡を取り、診断方針・受診先選定の助言を受ける(直接受診ではなく、医師同士の相談が中心)。
  4. 認知症疾患医療センター/専門医外来へ紹介:鑑別診断や治療方針の確定が必要な場合、学会専門医がいる認知症疾患医療センター・もの忘れ外来へ紹介される。
  5. 認知症初期集中支援チームの活用:受診拒否や重症化リスクが高いケースでは、地域包括が認知症初期集中支援チームへつなぎ、自宅訪問で受診支援を行う。
  6. 地域に戻して継続フォロー:診断後は再度かかりつけ医に戻り、サポート医・専門医がバックアップしながら抗認知症薬の処方やBPSD対応を続ける。

介護職としては「専門医にいきなり紹介する」のではなく、かかりつけ医・サポート医・地域包括の3点セットに最初に情報を集約することが、ご本人の負担を最小にする近道です。

介護現場で押さえておきたいポイント

  • 名簿は都道府県サイトで公開されている:認知症サポート医は都道府県・指定都市が名簿を公表しているため、地域包括支援センターや市区町村のサイトから検索できる。
  • 「専門医がいる」だけで選ばない:在宅介護では通院距離・往診の有無・夜間対応の方が暮らしへの影響が大きい。サポート医のいるかかりつけ医を軸に組み立てた方が継続しやすい。
  • 家族支援の窓口としての役割:診断告知後の介護方針・薬の調整・看取り意思決定(ACP)まで、長く相談できるのはサポート医や在宅医のことが多い。
  • 多職種カンファレンスで活きる:サービス担当者会議に医師を呼ぶのは難しくても、サポート医経由でかかりつけ医の意見を集約してもらえることがある。
  • 更新研修・フォローアップ研修がある:サポート医も定期的に学び直す仕組みがあるため、年次の最新ガイドラインに沿った助言が期待できる。

よくある質問

Q. 認知症専門医と認知症サポート医はどちらを受診すれば良いですか?
A. まずは普段のかかりつけ医に相談するのが基本です。鑑別診断や難しい治療が必要と判断されたときに、かかりつけ医を経由して認知症疾患医療センターの専門医へ紹介されます。サポート医はかかりつけ医を支える立場のため、直接の予約窓口ではありません。
Q. 認知症サポート医はどこで探せますか?
A. 各都道府県・指定都市が名簿を公開しています。地域包括支援センターに問い合わせると、自宅近くで通いやすいサポート医のいる医療機関を教えてもらえます。
Q. 学会の認知症専門医は何人くらいいますか?
A. 日本認知症学会は専門医・認定臨床医を学会サイトで一覧公開しており、人数は更新時点で変動します。サポート医は2024年度末で15,548人と公的に集計されています。
Q. 認知症サポート医の研修はどんな内容ですか?
A. 国立長寿医療研究センターが運営し、原則オンラインと集合のハイブリッド形式です。鑑別診断、薬物・非薬物療法、地域連携、かかりつけ医への助言方法などを学びます。
Q. 介護職としてサポート医とどう関わればよいですか?
A. 直接の指示系統にはありませんが、ケアマネジャーや地域包括を通じて多職種カンファレンスで意見をもらうことができます。BPSD対応や服薬調整で迷ったときの相談ルートとして、所属事業所がどのサポート医と連携しているかを把握しておくと安心です。

参考資料・出典

まとめ

認知症診療を担う医師は「日本認知症学会専門医」「日本老年精神医学会専門医」「認知症サポート医」の3類型に整理できます。学会専門医が鑑別診断と治療の縦軸を担うのに対し、サポート医は厚労省制度のもと、かかりつけ医と地域包括・認知症初期集中支援チームをつなぐ横軸を担い、2024年度末で全国15,548人が活動しています。介護現場では、まずかかりつけ医とサポート医のいる地域連携の入り口を押さえたうえで、必要に応じて専門医外来へつなぐ流れを覚えておくと、利用者と家族の安心につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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