抗認知症薬とは

抗認知症薬とは

抗認知症薬は認知症の中核症状進行を遅らせる薬剤群。ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン・メマンチンの作用機序・適応・剤形・副作用と新薬レカネマブまで一次ソースに基づき解説します。

ポイント

この記事のポイント

抗認知症薬とは、認知症(特にアルツハイマー型)の中核症状の進行を遅らせる薬剤の総称です。日本で保険適用されている主要4薬剤はドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン(コリンエステラーゼ阻害薬)とメマンチン(NMDA受容体拮抗薬)。2023年承認のレカネマブは新作用機序の疾患修飾薬です(出典:国立長寿医療研究センター・日本神経学会)。

目次

抗認知症薬の位置づけと限界

抗認知症薬は、アルツハイマー病などの脳神経変性によって低下した神経伝達物質の働きを補うことで、記憶力・判断力・見当識など中核症状の進行を一定期間遅らせる薬です。日本では1999年のドネペジル承認以来、4薬剤が長く使われてきました。

「治す薬」ではなく「進行を緩やかにする薬」

従来の抗認知症薬は、低下した認知機能を一時的に回復させる、あるいは進行スピードを緩やかにする対症療法であり、原因となる脳の変性そのものを止めるものではありません。日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」でも、効果は「軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症で6か月〜1年程度認知機能の低下を遅らせる」と評価されています。

2023年承認の新薬レカネマブ

レカネマブ(製品名レケンビ)は、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβを脳から除去する初の「疾患修飾薬」として2023年9月に厚労省承認を受けました。早期アルツハイマー病・MCI(軽度認知障害)が対象で、点滴静注により2週間に1回投与します。中核症状の進行を27%抑制する効果が報告されている一方、ARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる副作用にも注意が必要です。

主要4薬剤の比較

一般名(商品名)作用機序適応の重症度主な剤形主な副作用
ドネペジル(アリセプト)コリンエステラーゼ阻害軽度〜高度錠・OD錠・細粒・ゼリー・ドライシロップ・貼付剤吐き気・下痢・食欲不振・徐脈
ガランタミン(レミニール)コリンエステラーゼ阻害+ニコチン受容体修飾軽度〜中等度錠・OD錠・内用液吐き気・嘔吐・下痢・食欲不振
リバスチグミン(リバスタッチ・イクセロン)コリンエステラーゼ/ブチリルコリンエステラーゼ阻害軽度〜中等度貼付剤のみ皮膚かぶれ・吐き気
メマンチン(メマリー)NMDA受容体拮抗中等度〜高度錠・OD錠・ドライシロップめまい・ふらつき・便秘・頭痛

ドネペジルはレビー小体型認知症にも適応があります。コリンエステラーゼ阻害薬3剤は同時併用できませんが、メマンチンはNMDA受容体に作用するためコリンエステラーゼ阻害薬1剤と併用可能な唯一の薬剤です。剤形が選べるドネペジル・嚥下困難でも使えるリバスチグミン貼付剤など、患者の生活機能に合わせた処方が一般的です。

開始時のチェックポイント

抗認知症薬は少量から開始して段階的に増量する「漸増療法」が基本です。介護現場で確認すべきポイントを整理します。

増量スケジュールの遵守

  • ドネペジル:3mg→1〜2週後に5mg→必要時10mg
  • ガランタミン:8mg→4週後に16mg→必要時24mg
  • リバスチグミン貼付剤:4.5mg→4週ごとに増量し最大18mg
  • メマンチン:5mg→1週ごとに5mgずつ増量し最大20mg

家族・介護者への説明事項

  • 「飲んで急に良くなる薬ではない」と伝える
  • 消化器症状は服用初期に出やすく、徐々に慣れることが多い
  • 食欲不振・体重減少が続く場合は要受診
  • 貼付剤は毎日違う場所に貼り、皮膚状態を観察
  • 転倒・徐脈リスクがあるため血圧・脈拍の変化に注意

BPSDには対症的な別薬が使われる

怒りっぽさ・幻覚・徘徊などBPSD(行動・心理症状)には、抗認知症薬ではなく抑肝散・抗精神病薬・抗うつ薬が使われることがあります。抗精神病薬は脳卒中・死亡リスク上昇が報告されており、漫然投与を避ける「最小有効量・最短期間」原則が日本神経学会ガイドラインで強調されています。

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介護職にできる観察と支援

服薬の継続を支える

  • 毎日同じ時間(朝食後など)にお薬カレンダーで服薬
  • OD錠(口腔内崩壊錠)・ゼリー・貼付剤など嚥下機能に応じた剤形を医師・薬剤師に相談
  • 飲み忘れに気づいたら、その日のうちなら服用、翌日にずらすなら主治医確認

副作用の早期発見

  • 食事量の減少・体重減少を毎日記録
  • 下痢・嘔吐の有無、便の性状観察
  • 転倒・ふらつきが増えていないか
  • 脈拍が遅い(50回/分以下)・失神を訴えるなどは緊急報告

中止判断は医師

「薬を飲んでも進行している」と家族が訴えても、自己判断で中止しないことが原則です。中止すべきか継続すべきかは主治医が判断します。経口困難になった場合の貼付剤への切り替えなど、剤形変更で継続できることも多いため、ケアマネ・医師に情報共有することが大切です。

よくある質問

Q. 抗認知症薬で認知症は治りますか?

A. 治癒はしません。中核症状の進行を一定期間(一般に6か月〜1年)緩やかにする効果が中心です。新薬レカネマブも進行を遅らせる薬であり、回復させる薬ではありません。

Q. レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症にも使えますか?

A. 保険適用上、レビー小体型認知症にはドネペジルのみ使用できます。脳血管性認知症や前頭側頭型認知症には抗認知症薬の保険適用はなく、症状に応じた個別治療が行われます。

Q. 副作用で食欲がなくなった場合はどうしますか?

A. 自己中断せず、まず主治医・薬剤師に相談します。投与時刻の変更・剤形変更(貼付剤)・他系統への切り替えで改善する場合があります。

Q. レカネマブは誰でも使えますか?

A. アミロイドPET等で病理が確認された早期アルツハイマー病・MCIが対象で、専門医療機関での投与が必要です。ARIAという脳浮腫・微小出血の副作用リスクがあり、定期的なMRI検査が必須です。

まとめ

抗認知症薬は中核症状の進行を緩やかにする対症療法が中心で、治癒させる薬ではありません。介護現場ではドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン・メマンチンの違いと副作用を押さえ、食事量・体重・脈拍・転倒の観察、剤形選択への意見出し、家族の過剰期待を和らげる説明などが役割になります。新薬レカネマブの登場で早期発見の重要性も増しており、MCIの段階で受診へつなぐ視点も大切です。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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