認知症初期集中支援チームとは

認知症初期集中支援チームとは

認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる40歳以上の人やその家族を訪問し、おおむね6ヶ月の集中的な支援で医療・介護サービスにつなぐチーム。認知症施策推進大綱に基づき全市町村に設置されている。

ポイント

この記事のポイント

認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる人やその家族を専門職チームが訪問し、おおむね6ヶ月の集中的な支援で医療・介護サービスにつなぐ仕組みです。認知症サポート医を含む複数の医療・介護専門職で構成され、認知症施策推進大綱に基づき全市町村に設置されています。地域包括支援センターや認知症疾患医療センターに配置され、本人や家族からの相談、市町村窓口・包括への情報提供をきっかけに動きます。

目次

認知症初期集中支援チームの定義と設置背景

認知症初期集中支援チーム(にんちしょうしょきしゅうちゅうしえんちーむ)は、認知症が疑われる人や認知症の人とその家族を、医療・介護の複数専門職がチームで訪問し、初期の段階で集中的にアセスメント・支援を行い、自立した生活のサポートと適切な医療・介護サービスへの橋渡しを行う仕組みです。厚生労働省の解説では、チーム名の「初期」は「疾患の初期段階」だけでなく「ファーストタッチ(初動)」を、「集中」はおおむね6ヶ月の包括的・集中的支援を意味するとされています。

設置の根拠と歴史

認知症施策の流れは、2012年のオレンジプラン、2015年の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)を経て、2019年に閣議決定された認知症施策推進大綱に整理されています。認知症初期集中支援チームは新オレンジプランで全市町村への設置目標が示され、介護保険法に基づく地域支援事業の包括的支援事業(認知症総合支援事業)として、2018年度(平成30年度)から全市町村で実施されています。

目的

厚生労働省の資料では「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられる」ことを目的に、認知症の早期診断・早期対応を実現するための専門職チームと位置づけられています。医療や介護を待つのではなく、専門職が能動的に訪問する「アウトリーチ型」であることが大きな特徴です。

関連する制度・チームとの違い

認知症ケアの中核を担う仕組みには、地域住民が学ぶ認知症サポーター、市町村が実施する地域支援事業、専門医療機関である認知症疾患医療センター、市町村ごとに配置される認知症地域支援推進員などがあります。認知症初期集中支援チームはこのうち「診断前後で支援が途切れがちな初期に集中的に介入し、サービス利用の橋渡しを担う」役割で、地域支援事業の中核機能の一つです。

チームの構成員と配置場所

認知症初期集中支援チームは、医療と介護の双方をカバーするため、以下の専門職を組み合わせて構成されます。厚生労働省の実施要綱では、認知症サポート医1名以上+医療系専門職1名以上+介護系専門職1名以上、合計2名以上の専門職でチームを編成することが原則とされています。

主な構成員

  • 認知症サポート医(チーム員):認知症の専門医療研修を修了した医師。チーム員会議の運営や医療判断を担う中核的存在です。
  • 医療系専門職:保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士(PSW)など。健康状態のアセスメントや医療機関との連携を担います。
  • 介護系専門職:社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)など。生活面の支援や介護保険サービスの利用調整を担います。

これらの専門職は、いずれも国(国立長寿医療研究センター等)が実施する認知症初期集中支援チーム員研修を受講していることが原則です。

配置場所

  • 地域包括支援センター:もっとも一般的な配置先で、既存の総合相談窓口と連動します。
  • 認知症疾患医療センター:診断機能を持つ専門医療機関にチームを置き、診断後の支援に直結させるパターン。
  • 診療所・病院:地域の医療資源に応じて、一部の市町村ではかかりつけ医機能を持つ診療所等に配置。
  • 市町村直営:保健センター等に直接設置する自治体もあります。

配置形態は地域の医療・介護資源によって異なりますが、市町村が責任主体であることは共通しています。

訪問対象となる人と支援期間

支援チームの訪問対象には、認知症の早期介入を実現するため、明確な要件が定められています。

訪問対象者の要件

  • 40歳以上で在宅生活をしている人であること。介護保険の第2号被保険者に相当する若年層も含まれます。
  • 認知症が疑われる人、または認知症の診断を受けた人であること。
  • かつ、次のいずれかに該当すること:
    1. 医療・介護サービスを受けていない、または途中で中断している人
    2. 医療・介護サービスを受けているが、認知症のBPSDが顕著なため対応に困難をきたしている人

つまり、「認知症が疑われるのに医療や介護にまだつながれていない人」「サービスを使い始めたものの行動・心理症状(BPSD)が強く支援が困難になっている人」が主たる対象です。

支援期間:おおむね6ヶ月

支援期間はおおむね6ヶ月と定められています。これは「初期集中」の名のとおり、長期的なケアではなく短期間で集中的に介入し、本来の医療・介護チームに引き継ぐことを前提としているためです。厚労省の実施要綱でも「最長6ヶ月をめどに支援の達成を目指す」とされており、6ヶ月を超える支援が必要なケースは、地域包括支援センターやケアマネジャーへ確実に引き継がれます。

支援の流れ:相談から引き継ぎまで

認知症初期集中支援チームの支援は、相談受付から訪問・アセスメント・引き継ぎまで一連の流れで行われます。長寿科学振興財団の解説に基づくと、典型的な流れは以下のとおりです。

1. 相談・情報提供の受付

本人や家族からの相談、地域住民や民生委員からの情報提供、市町村窓口や地域包括支援センターからの依頼などを起点に、対象者を把握します。介護保険申請の窓口で「認知症が疑われるが医療につながっていない」と判断された場合に、チームへ情報が共有されることもあります。

2. 初回訪問:観察と本人・家族面談

原則として2名以上のチーム員が訪問し、本人の様子を観察するとともに家族から日常の困りごと・経過を聞き取ります。この場でチームの説明、認知症についての情報提供、医療機関受診や介護サービス利用のメリットを説明し、信頼関係を築きます。

3. 2回目以降の訪問:アセスメントと支援計画

2回目以降の訪問で、認知機能や生活機能、家族の介護負担などを多面的にアセスメントします。MMSE改訂長谷川式といった認知症スクリーニング検査の結果も踏まえ、チーム員会議で初期集中支援計画を立案します。

4. 集中支援の実施(おおむね6ヶ月)

計画に沿って、医療機関の受診同行、介護保険申請のサポート、家族への助言、BPSDへの対応指導などを集中的に行います。必要に応じて認知症疾患医療センターでの精査、かかりつけ医との連携、デイサービスや訪問介護の利用調整なども行います。

5. 引き継ぎ

本人が安定して医療・介護サービスを継続利用できる状態になったら、地域包括支援センター、担当のケアマネジャー、かかりつけ医などに支援を引き継ぎます。チームの役割は「初期に集中的に橋渡しする」ことであり、長期のケアマネジメントは引き継ぎ先が担います。

相談したいときの窓口・連絡先の探し方

「親に認知症の疑いがあるが、本人が病院を嫌がる」「物忘れがひどくなったが介護保険の申請の仕方がわからない」といった場面で、認知症初期集中支援チームは有効な選択肢になります。連絡ルートは大きく3つあります。

主な相談ルート

  • 地域包括支援センター:もっとも一般的な窓口。市町村のホームページや「介護サービス情報公表システム」で居住地域のセンターを検索でき、電話相談が可能です。多くの市町村でチームが地域包括支援センター内に置かれているため、ここに相談すれば直接つながります。
  • 市町村の介護保険担当課・高齢福祉課:自治体の窓口に「認知症初期集中支援チームに相談したい」と伝えれば担当者が案内してくれます。市町村の広報誌やホームページにチームの連絡先が掲載されているケースもあります。
  • 認知症疾患医療センター:チームを併設しているセンターであれば、医療相談を入り口にチームへつなげてもらえます。

介護職・ケアマネが活用するときのポイント

現場の介護職員やケアマネジャーが、利用者・家族から「認知症の疑いがあるがどこに相談すれば」と聞かれた場合、自身の事業所だけで抱え込まず地域包括支援センター経由でチームに情報共有するのが有効です。特に、医療未受診のまま在宅で生活している方、サービスを途中で拒否してしまった方などは初期集中支援チームの典型的な対象であり、早めに連携することで重度化を防げます。

よくある質問

Q1. 利用は無料ですか?

A. 認知症初期集中支援チームによる訪問・アセスメント自体は、市町村の地域支援事業として実施されているため、原則として本人・家族の自己負担はありません。ただし、その後つながった医療機関の受診や介護保険サービスの利用には通常の自己負担が発生します。

Q2. 本人が「自分は認知症ではない」と拒否しても訪問してもらえますか?

A. 家族や近隣住民、民生委員などからの相談で、本人が直接受診や相談に来られないケースこそ、このチームの主たる対象です。本人の意思を尊重しながら、家族支援や見守り体制の構築から始め、信頼関係を築いた上で医療や介護につなげていきます。

Q3. 6ヶ月で支援は終わってしまうのですか?

A. チームによる集中的な支援は最長6ヶ月をめどに終了しますが、その後は地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医などが継続して支援する仕組みになっています。「終わり」ではなく「日常のケア体制への引き継ぎ」と捉えるのが正しい理解です。

Q4. 65歳未満でも対象になりますか?

A. はい。訪問対象は40歳以上と定められており、若年性認知症が疑われる方も対象です。若年性認知症の場合は就労支援や経済面の支援も必要になるため、若年性認知症支援コーディネーターと連携して支援を行うケースが多いです。

Q5. 認知症地域支援推進員とは何が違いますか?

A. 認知症地域支援推進員は、市町村全体の認知症施策の企画・調整・関係機関連携を担う職種で、個々のケースへの直接訪問は行いません。一方、初期集中支援チームは個別のケースに対して訪問・アセスメント・支援計画を実行する実働部隊です。両者は地域支援事業の中で補完的に機能します。

まとめ

認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる人やその家族を専門職チームが訪問し、おおむね6ヶ月の集中的な支援で医療・介護サービスにつなぐ、市町村ベースの早期介入の仕組みです。認知症施策推進大綱に基づき全市町村に設置され、認知症サポート医を中心に医療系・介護系の専門職が連携してアウトリーチ型の支援を提供します。介護職や家族にとっては「医療や介護にまだつながれていない認知症の方」を地域で支えるための重要なリソースであり、地域包括支援センター経由で気軽に相談できることを覚えておくと役立ちます。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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