
リフレーミングとは
リフレーミングは物事の枠組みを変える心理技法。介護現場では認知症BPSDの理解、家族支援、同僚関係、自分のキャリア再構築に活用でき、バーンアウト予防にも効果的です。4類型と実例10パターンを解説。
この記事のポイント
リフレーミング(Reframing)とは、出来事の「捉え方の枠組み(フレーム)」を変えることで意味づけを転換する心理技法です。介護現場では認知症利用者のBPSDを「不安の表現」と捉え直したり、自分の仕事のしんどさを学びに置き換えたりすることで、ケアの質とバーンアウト予防の両方に効果を発揮します。
目次
リフレーミングとは|定義と介護現場での位置づけ
リフレーミング(Reframing)とは、ある出来事や状況を「捉え方の枠組み(frame)」を変えることで、まったく違う意味として再解釈する心理技法です。1970年代にアメリカで生まれた神経言語プログラミング(NLP)と認知行動療法(CBT)の影響を受け、対人援助・コーチング・教育の現場で広く活用されてきました。
同じ事象でも、見る「フレーム」が変われば感情も行動も変わります。たとえば「利用者さんが食事に時間がかかる」という状況は、業務効率の視点では負担ですが、「咀嚼能力が維持されている」「食事を味わって楽しんでいる」というフレームに置き換えると、ケアの成果として再解釈できます。
介護現場でリフレーミングが特に重要なのは、職員が日常的に「うまくいかない」「拒否された」「報われない」と感じる出来事に直面しやすく、それが積み重なると共感疲労(コンパッション・ファティーグ)や燃え尽き症候群(バーンアウト)につながるからです。事実そのものは変えられなくても、解釈を変えることで自分を守り、利用者への眼差しを温かく保つことができます。
厚生労働省が推進するパーソンセンタードケア(PCC)やストレングスモデルとも親和性が高く、認知症ケアの基本姿勢として「行動の背景にある本人の世界観を理解する」ためのツールとして位置づけられています。
リフレーミングの基本概念
リフレーミング(reframing)は、英語の「frame(枠組み)」を「re(再)」する、つまり物事を見る枠組みを意図的に変えて新たな意味を見出す技法。1970年代に米国の心理学者リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーが提唱したNLP(神経言語プログラミング)の中核技法の一つで、認知行動療法(CBT)の認知再構成法とも親和性が高い。
同じ事実でも「失敗した」と捉えるか「学びを得た」と捉えるかで、その後の感情・行動が大きく変わる。リフレーミングは現実を歪曲するのではなく、より建設的・適応的な視点を選び取ることで、ストレス耐性とコミュニケーション質を高める。介護現場のように感情労働の比重が高く、慢性的ストレスにさらされる職場で特に有効とされる。
リフレーミング4類型
- 意味のリフレーミング:『暴れる』→『不安や不快を表現している』のように、行動の意味を再解釈
- 状況のリフレーミング:『デイサービスを嫌がる』→『自宅で過ごす時間を大切にしたい意思表示』のように、文脈を変えて見る
- 行動のリフレーミング:『細かい先輩』→『丁寧な指導者』のように、性格や行動の評価を肯定的に転換
- 時間のリフレーミング:『今は辛いだけ』→『1年後に振り返ったときの貴重な経験』のように、時間軸を伸ばして見る
状況に応じて4類型を組み合わせて活用することで、対話・自己内省の幅が広がる。
リフレーミング4類型|介護現場での使い分け
リフレーミングは、何を組み替えるかによって大きく4つの類型に分かれます。介護現場では場面に応じて使い分けることで、コミュニケーションの幅が広がります。
1. 意味のリフレーミング(Meaning Reframing)
出来事の意味づけそのものを変える方法。最も基本的な型で、「マイナス」と思われた特性を「強み」に置き換えます。
- 「頑固な利用者」→「自分の意思を最後まで貫ける方」
- 「介助拒否が多い」→「主体性が保たれている」
- 「失敗ばかりで自信がない新人」→「慎重で安全への意識が高い」
2. 状況のリフレーミング(Context Reframing)
同じ行動・特性でも別の場面では価値が変わることに着目する方法。「この場面ではマイナスだが、別の場面ではプラスになる」と置き換えます。
- 「夜間に何度も起きる利用者」→「日中に活動性が低いサインとして気づける」
- 「会議でよく意見を言う同僚」→「家族説明会では頼れる発信力になる」
- 「細かいことが気になる性格」→「服薬管理や記録業務では大きな強み」
3. 行動のリフレーミング(Behavior Reframing)
困った行動の背景にある肯定的意図を読み解く方法。特に認知症ケアでBPSD(行動・心理症状)を理解するときに有効です。
- 「徘徊している」→「自宅に帰ろう・誰かを探そうとしている目的行動」
- 「暴力的になる」→「言葉にできない不快や恐怖を体で表現している」
- 「同じ話を繰り返す」→「不安を確認しようとしている安心希求行動」
4. 時間のリフレーミング(Time Reframing)
視点を時間軸でずらす方法。今の苦しさを過去・未来から見直すことで、感情の重さを軽くします。
- 「今月は退職者が多くて辛い」→「3年後に振り返れば自分が組織を守った時期だった」
- 「初めての看取りで動揺している」→「これは自分のケア観を深める通過点」
- 「介護保険改定の対応がしんどい」→「制度を最も理解した世代になれるチャンス」
介護現場での実例10パターン
- BPSD暴言:『攻撃的』→『不安・恐怖を言葉にできない苦しみ』
- 食事拒否:『わがまま』→『今の体調・気分を伝える方法』
- 徘徊:『困った行動』→『何かを探したい意思の表れ』
- 家族の介護負担:『大変なだけ』→『家族の絆を深める時間』
- 看取りの悲しみ:『辛い終わり』→『最期まで寄り添えた充実』
- 厳しい先輩:『パワハラ』→『高い基準を求める指導者』※ハラスメント認定基準を満たす行為は別途対処必要
- 新人への苛立ち:『仕事ができない』→『成長過程で支援が必要』
- 夜勤の孤独:『ワンオペで辛い』→『自分のペースで深く関われる時間』
- 低い給与:『割に合わない』→『社会貢献として価値ある仕事』※構造的待遇改善要求は別軸で必要
- キャリアの停滞:『先が見えない』→『今の経験が次の選択肢を広げる準備期』
介護現場でのリフレーミング実例10パターン
場面別に、現場で明日から使えるリフレーミング例を紹介します。「言葉を変えること」より「眼差しを変えること」が本質です。
認知症利用者のBPSDへの活用
- 「暴れる」→「言葉にできない不安や痛みを表現している」:身体的不快(便秘・脱水・痛み)や環境刺激を最初に確認するきっかけになる。
- 「介護拒否」→「自分の領域を守ろうとする健康な反応」:信頼関係構築のステップとして再設計できる。
- 「同じ質問を繰り返す」→「短期記憶が薄れる中で安心を再確認している」:「何度でも答えていい」と覚悟が決まる。
家族介護者支援への活用
- 家族の「大変」→「人生の中で親と深く向き合う最後の機会」:介護負担感を意味あるものとして受け止め直す支援につながる。
- 家族の「自分が悪い」→「ここまで一人で支えてきた力がある」:罪悪感をストレングス視点に置き換える声かけ。
同僚・チーム関係への活用
- 「細かい先輩」→「丁寧な指導者・安全管理のプロ」:苦手意識を学びの機会に変換できる。
- 「指示が曖昧な上司」→「現場の裁量を信頼してくれている」:自律的に動く余地として捉え直せる。
- 「会議で対立する同僚」→「異なる視点を持ち込んでくれる存在」:チームの多様性として再設計する。
自分のキャリアへの活用
- 「今の職場を辞めたい」→「次のステージに進む準備が整ってきた」:感情的退職ではなく戦略的キャリア設計に転換。
- 「給料が上がらない」→「経験を別の場で評価してもらう時期」:転職・処遇改善加算の高い法人探しへの行動エネルギーに変える。
使う際の3つの注意点
- 嫌な状況を正当化しない:ハラスメント・違法労働・虐待などは「学びの機会」と片付けず、まず通報・対処が先。
- 本人の感情を否定しない:「ポジティブに考えよう」と押し付けるのは逆効果。まず感情を受け止めてから、別の見方を「一緒に探す」姿勢が大切。
- 事実を歪曲しない:危険行動や医療上のリスクを「個性」と言い換えるのはNG。事実評価と意味づけは分けて扱う。
リフレーミングに関するよくある質問
Q1. リフレーミングとバリデーション療法はどう違いますか?
バリデーション療法は認知症の方の感情や言動を「そのまま受容し共感する」コミュニケーション技法で、対象者本人へのアプローチです。一方リフレーミングは、ケアする側(職員・家族)が出来事をどう意味づけるかを変える援助者自身の認知技法です。両者は対立せず、リフレーミングで職員の眼差しが変わることで、結果的にバリデーション的な関わりが自然にできるようになります。
Q2. パーソンセンタードケア(PCC)とどう関係しますか?
PCCは「認知症の人を一人の人として尊重し、その人の視点から世界を理解する」ケア哲学です。「行動のリフレーミング」(BPSDを意味のある行動として読み解く)はPCCを実践するための具体的な思考ツールとして機能します。トム・キットウッドのPCC理論でも、職員の認知の枠組みを変えることがケア文化変革の鍵とされています。
Q3. ストレングス視点との違いは?
ストレングス視点は「対象者の強み・できることに着目する」援助観で、主にソーシャルワーク領域の概念です。リフレーミングは強みを発見するための技術と位置づけられ、両者は車の両輪です。「意味のリフレーミング」を使うことでストレングスを言語化しやすくなります。
Q4. リフレーミングはバーンアウト予防に効きますか?
はい、認知行動療法の研究で認知再構成法(cognitive restructuring)として効果が確認されており、ストレス源そのものは変えられなくても解釈を変えることで情緒的疲弊を軽減できると報告されています。介護職のバーンアウト3要素(情緒的消耗・脱人格化・個人的達成感の低下)のうち、特に脱人格化の予防に効果が期待されます。
Q5. ネガティブな感情を抑え込むことになりませんか?
正しく使えば抑圧にはなりません。リフレーミングの前提は「まず感情を認める」ことです。「辛い・しんどい」という感情を否定せず一旦受け止めてから、「別の見方もできるかも」と選択肢を増やすのが本来の使い方です。感情を飛ばしていきなり「ポジティブに考えよう」と言うのは、リフレーミングではなく感情の否認です。
注意点:リフレーミングの落とし穴
リフレーミングは強力な技法だが、誤用すると逆効果になる。
- 嫌な状況を正当化しない:ハラスメント・違法行為・人権侵害の現実までリフレーミングで覆い隠してはいけない。これらは事実として対処が先
- 感情の否定にしない:『辛い→学び』と急ぐ前に、辛さを認める時間を持つ。傾聴→共感→リフレーミングの順序が大切
- 他者に押し付けない:自分の捉え直しは有効だが、他者の感情をリフレーミングで否定するのは逆効果。本人主導が原則
- 慢性的問題には不向き:個人の認知転換で解決しない構造的問題(人手不足・低賃金・ハラスメント)はリフレーミングだけでは不十分。組織的対処が必要
パーソンセンタードケア(PCC)・バリデーション療法・ストレングス視点と組み合わせると、より実践的に活用できる。
よくある質問
Q1. リフレーミングは介護現場の研修で扱われている?
A. 認知症介護実践者研修・認知症介護実践リーダー研修の一部で扱われる。職場研修・1on1コーチングでも導入が進んでいる。
Q2. リフレーミングを学ぶおすすめ書籍は?
A. NLP関連書、認知行動療法入門書、介護コミュニケーション関連書など多数。日本認知症ケア学会の研修教材も活用できる。
Q3. リフレーミングと現実逃避の違いは?
A. 現実を変えるのではなく、捉え方を変えて建設的行動を引き出すのがリフレーミング。現実逃避は問題を見ない・無視する点が異なる。
Q4. 認知症ケアでバリデーション療法とどう使い分ける?
A. バリデーションは認知症本人の感情を肯定する技法、リフレーミングは介護者側の捉え方を変える技法。両者は補完関係にある。
参考資料
- [1]認知症介護実践者研修・リーダー研修- 厚生労働省
- [2]日本認知症ケア学会- 日本認知症ケア学会
- [3]パーソンセンタードケア- 認知症介護研究・研修センター
- [4]認知行動療法- 国立精神・神経医療研究センター
まとめ
リフレーミングは介護現場のコミュニケーション・自己メンテナンスに使える普遍的な技法。意味・状況・行動・時間の4類型を使い分けることで、BPSD対応・家族支援・職場関係・キャリア観の柔軟性が広がる。ただしハラスメント等の構造的問題までリフレーミングで覆ってはいけない。傾聴・共感の上でリフレーミングを重ねることが、持続可能な介護コミュニケーションの基本だ。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。