
市民後見人とは
市民後見人とは、専門職資格を持たない一般市民が養成研修を受け、家庭裁判所の選任を経て担う成年後見人。親族・専門職に次ぐ第三の担い手としての役割・なり方・選任の流れを解説します。
市民後見人の定義(answer)
市民後見人とは、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職資格を持たない一般市民が、自治体などの養成研修を修了し、家庭裁判所の選任を受けて担う成年後見人等のことです。判断能力が十分でない高齢者や障害者の財産管理・身上保護を、報酬よりも社会貢献の観点から地域で支える「親族後見人・専門職後見人に次ぐ第三の担い手」と位置づけられています。
目次
市民後見人の概要
市民後見人とは何か
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が十分でない人に代わり、後見人等が財産管理や福祉サービスの契約(身上保護)を支える仕組みです。後見人には大きく分けて、(1) 本人の配偶者や子などの親族後見人、(2) 弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職後見人、そして (3) 専門職資格を持たない一般市民が養成研修を経て担う市民後見人の3つの担い手があります。
最高裁判所の実情調査における定義では、市民後見人とは「弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士、精神保健福祉士及び社会保険労務士以外の自然人のうち、本人と親族関係(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)及び交友関係がなく、社会貢献のために成年後見に関する一定の知識・技術・態度を身につけた者」とされています。つまり「専門職でも親族でもない、研修を受けた市民」が市民後見人です。
市民後見人の育成・活用は、老人福祉法第32条の2に法的根拠があります。同条は市町村に対し、後見等の業務を適正に行える人材の(1) 研修の実施、(2) 家庭裁判所への推薦、(3) その他必要な措置(候補者名簿の作成や活動支援など)を講じるよう努めることを求めています。都道府県は市町村への助言・援助に努めるものとされ、国(厚生労働省)は養成のための基本カリキュラムを示すなど、国・都道府県・市町村が連携して育成する建付けになっています。
市民後見人が担う典型的な業務は、ひとりで物事を決めることに不安のある人の金銭管理や、介護・福祉サービスの利用援助などです。複雑な訴訟・多額の財産・親族間の深刻な紛争を伴うケースは専門職後見人が向きますが、比較的争いが少なく日常的な見守りと支援が中心となるケースで、地域の事情に通じた市民後見人の力が期待されています。
市民後見人の選任データ
データで見る市民後見人の位置づけ
最高裁判所「成年後見関係事件の概況(令和6年1月〜12月)」によると、成年後見人等の選任における担い手の構成は次のとおりです。市民後見人は数としてはまだ少数ですが、親族以外の後見人が全体の多数を占める現状のなかで、専門職を補完する担い手として整備が進められています。
- 親族以外が成年後見人等に選任されたもの:全体の約82.9%(前年は約81.9%)で、親族が選任されたものを上回る
- 親族以外の内訳(主なもの):司法書士 11,875件、弁護士 8,794件、社会福祉士 6,873件
- 市民後見人の選任:331件(前年343件)
- 成年後見の利用者数:179,373人(前年178,759人)
厚生労働省の整理では、市民後見人の育成・活動支援に取り組む市町村は全体の約4分の1にとどまるとされ、地域差が大きいのが現状です。今後、認知症高齢者の増加に伴い後見ニーズが拡大することから、市民後見人の養成と活用の裾野を広げることが課題となっています。
市民後見人と他の後見人の違い
親族後見人・専門職後見人との違い
| 区分 | 担い手 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 親族後見人 | 配偶者・子など本人の家族 | 本人との関係が深く意向を反映しやすい。一方で財産管理の負担や親族間の利害対立が課題になることも |
| 専門職後見人 | 弁護士・司法書士・社会福祉士など | 法律・福祉の専門知識をもち、紛争性や複雑な財産管理を伴うケースに強い。報酬が発生する |
| 市民後見人 | 養成研修を受けた一般市民 | 専門資格はないが、地域に根ざし日常的な見守り・金銭管理・サービス利用援助を担う。社会貢献の性格が強い |
市民後見人は、判断能力が低下した本人を「身近な市民の目線」で支える点が特徴です。専門職のように紛争性の高い案件を一手に引き受けるのではなく、後見監督人や市町村・社会福祉協議会のバックアップを受けながら、比較的安定したケースを担うことが想定されています。なお、後見・保佐・補助の3類型(法定後見)のどれを市民後見人が担うかは、本人の判断能力の程度や家庭裁判所の判断によります。
市民後見人になる流れ
市民後見人になるまでの流れ
市民後見人になる一般的な道のりは、自治体(市区町村や社会福祉協議会)が実施する養成研修からスタートします。資格試験のような国家試験はなく、研修修了と候補者登録を経て、家庭裁判所の選任を受けて初めて活動が始まります。
- 養成研修の受講:市町村等が開催する養成講座で、成年後見制度・関連法令・対人援助の基礎・実務などを学ぶ。厚生労働省が示す基本カリキュラムは合計50単位(講義・実務・演習39単位+体験学習・レポート作成11単位)が目安
- 実務経験の蓄積:社会福祉協議会やNPO法人などで、後見業務の実務や見守り活動に携わり経験を積む
- 候補者名簿への登載:研修を修了した人を、市町村や実施機関が市民後見人候補者として名簿に登録する
- 家庭裁判所への推薦・選任:適切な案件があれば、市町村等の推薦を経て家庭裁判所が市民後見人を後見人等に選任する
- 選任後の継続的サポート:選任後も、市町村・社会福祉協議会・後見監督人などが活動を継続的に支援・監督する
このように、市民後見人は「個人で勝手に名乗る」ものではなく、自治体による養成・登録・推薦と、家庭裁判所による選任、そして選任後の支援体制がセットになって成り立つ仕組みです。
市民後見人と介護のかかわり
介護にかかわる人にとっての市民後見人
介護の現場で働く人や家族にとって、市民後見人は身近なテーマです。利用者・入居者のなかには、判断能力が低下し契約や金銭管理を一人で行えない人が少なくありません。こうした人の生活を支えるうえで、後見人(親族・専門職・市民後見人)との連携は欠かせません。
- ケアマネジャー・相談員:成年後見制度の利用が必要な利用者を、市町村の窓口や地域包括支援センター、中核機関につなぐ役割を担う場面がある
- 介護職・福祉職の経験:対人援助の経験は市民後見人の活動と親和性が高く、退職後や地域活動として市民後見人を志す人もいる
- 家族:親族後見が難しい場合に、専門職後見人や市民後見人という選択肢があることを知っておくと、介護と財産管理の負担を整理しやすい
市民後見人のよくある質問
市民後見人に関するよくある質問
市民後見人になるのに資格は必要ですか?
弁護士・司法書士・社会福祉士のような国家資格は不要です。ただし、市町村等が実施する養成研修を修了し、候補者として登録され、家庭裁判所の選任を受ける必要があります。誰でも自由に名乗れるものではありません。
市民後見人に報酬はありますか?
市民後見人は社会貢献としての性格が強い担い手ですが、後見人としての報酬は家庭裁判所が本人の財産状況などを踏まえて決定します。専門職後見人と比べて低額になる、あるいは無報酬に近い運用がなされる場合もあり、地域や実施機関によって扱いが異なります。
市民後見人はどんなケースを担当しますか?
多額の財産管理や親族間の深刻な紛争を伴う複雑なケースは専門職後見人が向くとされ、市民後見人は比較的争いが少なく、日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助・見守りが中心となるケースを担うことが想定されています。
市民後見人と成年後見人は違うものですか?
市民後見人は「成年後見人等の担い手の一類型」です。成年後見人という大きな枠のなかに、親族後見人・専門職後見人・市民後見人があり、市民後見人もれっきとした成年後見人等です。
市民後見人の参考資料
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市民後見人のまとめ
まとめ
市民後見人は、専門職資格を持たない一般市民が養成研修を受け、家庭裁判所の選任を経て担う成年後見人等です。親族後見人・専門職後見人に次ぐ「第三の担い手」として、老人福祉法第32条の2を根拠に市町村が育成し、地域に根ざした金銭管理・サービス利用援助・見守りを担います。認知症高齢者の増加で後見ニーズが高まるなか、市民後見人の養成と活用は、介護にかかわるすべての人にとって知っておきたいテーマです。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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