
2026年10月から適用される福祉用具貸与の新価格|厚労省が新規65品目の平均・上限価格を公表
厚生労働省は2026年4月10日、令和8年10月貸与分から適用される福祉用具の全国平均貸与価格と上限価格を公表。新規65品目の内容、利用者負担への影響、福祉用具専門相談員・介護職・ケアマネが押さえるべき実務ポイントを整理する。
目次
リード:4月10日公表の新価格、何が決まったのか
厚生労働省は2026年(令和8年)4月10日、介護保険最新情報Vol.1493を発出し、令和8年10月貸与分から新たに適用される福祉用具の「全国平均貸与価格」と「貸与価格の上限」を公表した。対象となったのは、直近の貸与実績データに基づき平均・上限価格が初めて設定される新商品65品目で、特殊寝台(介護用ベッド)・車いす・床ずれ防止用具・歩行器・移動用リフトなど、在宅介護の現場で日常的に扱われる品目が幅広く含まれている。
福祉用具貸与の平均・上限価格の仕組みは、2018年度介護報酬改定で導入された制度で、同じ製品に対する事業者ごとの価格ばらつきを抑え、利用者への情報提供を強化することを目的としている。新商品についてはその後も3か月に1度のサイクルで公表が続けられており、今回のVol.1493は令和8年度最初の新商品分アップデートにあたる。次回以降も、7月・10月・1月と3か月ごとに新しい商品が順次対象となっていく。
今回の改定で最も重要なポイントは、上限価格を超える額で貸与された場合、その製品については介護報酬の「福祉用具貸与費」が算定できず、超過分が利用者の全額自己負担になり得るという点である。これは今回新設される65品目にそのまま当てはまる。つまり、2026年10月以降にこれら65品目のいずれかを契約・更新する利用者・家族は、事業者の設定価格が上限以下に収まっているかを事前に確認する必要がある。福祉用具専門相談員・ケアマネジャー・介護職にとっても、担当ケースで該当商品が使われていないかを棚卸しし、10月施行までの約半年間のうちに契約見直しフローを整えておくことが求められる。
本記事では、(1)今回のVol.1493通知の内容を一次情報に即して整理し、(2)価格上限制度そのものの仕組みと2018年以降の経緯をおさらいし、(3)新規65品目に含まれる代表的な製品例と価格帯のイメージを示し、(4)利用者負担がどの局面で発生し得るかを具体的に試算し、(5)福祉用具専門相談員・ケアマネ・介護職・施設管理者がそれぞれ10月までに押さえておくべき実務ポイントをまとめる。出典は厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1493」、厚労省「福祉用具・住宅改修」ページ、公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具貸与価格適正化推進事業」ページを中心とし、併せて業界専門誌GemMedが4月15日付で報じた新価格の具体例も参照している。
Vol.1493通知の中身|令和8年10月貸与分・新商品65品目が対象
今回の発出元は厚生労働省老健局高齢者支援課で、文書は事務連絡扱いの「令和8年10月貸与分から適用される福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表について(新商品に係る分)」である。宛先は各都道府県・指定都市・中核市の介護保険主管課(室)で、管内の市町村および福祉用具貸与事業者等への周知と、遺漏なき対応を依頼する内容となっている。根拠は、平成30年3月22日老高発0332第1号「福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与の基準について」で示された「新商品について3か月に1度の頻度で全国平均貸与価格の公表や上限価格を設ける」という方針である。
「新商品」とは何か
ここでいう「新商品」とは、テクノエイド協会のTAIS(福祉用具情報システム)および介護給付費請求の商品コード体系上、これまで全国平均貸与価格および上限価格が設定されていなかった製品のうち、月平均貸与件数100件以上の実績に達し、価格データとして安定して把握できるようになったものを指す。初回設定以降に市場に投入された新製品や、貸与件数が少なく対象外だった既存製品が、件数基準を満たしたタイミングで順次新商品として公表される。
制度上、上限価格は「当該商品の全国平均貸与価格+1標準偏差(1SD)」で設定される。正規分布の前提では上位およそ16%に相当する水準で線引きされる計算で、突出して高額な設定をしている事業所を保険給付から除外する効果を狙っている(厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」参考資料より)。今回の65品目についても、この算定方式に基づき個別に上限額が設定されている。
対象商品はどこで確認できるか
対象65品目の具体的な商品名と価格は、Vol.1493の本文中では個別に列記されておらず、以下2か所のウェブサイトで一覧を入手する運用となっている。
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」ページ内、「貸与価格の公表について」セクションで公開されているExcel一覧ファイル
- 公益財団法人テクノエイド協会( https://www.techno-aids.or.jp/tekisei/ )の「令和8年度 福祉用具貸与価格適正化推進事業」ページ
テクノエイド協会のページには過去の公表分が一覧表形式で整理されており、令和8年10月貸与分のファイルもここからダウンロードできる。Vol.1493は厚労省サイトにPDF(文書番号001689718.pdf)として掲載されている。
今後の見直しサイクル
新商品の価格公表は3か月ごとに行われる。直近の流れを追うと、令和7年4月25日(Vol.1379、令和7年10月貸与分向け)、令和7年7月25日(Vol.1407、令和8年1月貸与分向け)、令和7年10月24日(Vol.1431、令和8年4月貸与分向け)、令和8年1月23日(令和8年7月貸与分向け)、そして今回の令和8年4月10日(Vol.1493、令和8年10月貸与分向け)という順で途切れずに更新されている。全商品を対象とする大規模な見直しは3年に1度で、直近は令和6年度に実施された。次回の全商品見直しは令和9年度の予定で、それまでの期間は新商品の3か月サイクル公表が価格情報更新の中心となる。
つまり現場で福祉用具を扱う専門職にとっては、年4回(1月・4月・7月・10月)必ず発出される新商品通知を確認することが、利用者の超過負担を防ぐための事実上のルーチンとなる。今回のVol.1493はそのサイクルの一環であり、単発の改定ではなく、継続的な運用の中の1つのタイミングであることを理解しておきたい。
上限価格制度の仕組み|2018年導入の背景と「言い値問題」の解消
今回の公表の意味を正確に理解するには、福祉用具貸与の価格制度がそもそも何を解決するために作られたかを押さえる必要がある。
かつては「言い値」だった福祉用具価格
介護保険の福祉用具貸与は、車いす・特殊寝台・床ずれ防止用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト(つり具部分を除く)・自動排泄処理装置の11品目を対象に、貸与費用の7〜9割(所得に応じた負担割合)を保険給付する仕組みである。他の介護サービスと異なり、公定価格(介護報酬上の固定単価)を設けず、市場の価格競争を通じて適切な価格が形成されることを制度設計として選んでいる。
ところが市場競争に委ねた結果、同じ型番・同じ機能の製品でも、事業所ごとに月額貸与価格に大きなばらつきが生まれた。一部の事業者が明らかに高額な価格を設定しているケースも発生し、公的保険の給付対象として看過できないとの声が強まった。この「言い値問題」を受けて、2018年度介護報酬改定で(1)全国平均貸与価格の公表、(2)上限価格の設定、の2点が導入された(厚生労働省「福祉用具関係参考資料」2022年)。
制度導入後の3本柱
現在、福祉用具貸与の価格適正化は以下の3点で支えられている。
- 全国平均貸与価格の公表と説明義務:福祉用具専門相談員は、利用者に対して「当該製品の貸与価格」「同一製品の全国平均貸与価格」「当該製品の特徴」「同一機能を持つ他製品の情報」を提供する義務がある(2018年10月から適用)。
- 上限価格の設定と給付制限:上限価格を超える貸与を行った場合、その製品は介護報酬上の「福祉用具貸与費」として算定できない。事業所が上限超過価格で貸し出すこと自体は可能だが、超過分は保険給付されず利用者実費となる。
- 定期的な見直し:全商品対象の見直しは3年に1度。新商品は3か月に1度。貸与実績データ(介護給付費実態調査および請求レセプト)に基づき算定する。
効果検証:制度は機能しているのか
厚生労働省が令和6年度介護報酬改定の効果検証の一環として実施した福祉用具貸与の分析では、上限価格設定が実際に価格是正効果を生んでいることが確認されている。たとえば2023年10月貸与分の全レコード(12,032件、総貸与額326億4,344万円)のうち、上限設定対象商品(2024年4月時点)が占める割合は、総貸与額ベースで97%前後に達している品目(特殊寝台など)が多く、ほぼすべての主流製品が上限管理下に入っている(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」資料)。1レコードあたり貸与額は令和3年4月時点の約3,413円から令和6年4月時点の約3,396円へとほぼ横ばいで推移しており、総貸与額が3年間で約40億円増加したにもかかわらず単価が抑制されている点は、上限設定の効果として読み取れる。
一方で、新商品は上限設定されるまでのリードタイムがあり、市場投入から貸与件数100件を超えて公表対象となるまでの間は上限管理の外側にある。今回のVol.1493で65品目が対象入りしたということは、それだけ市場で流通量が増えていた新製品が上限管理下に取り込まれるということであり、2026年10月以降は「これまでは上限がなかったがこれからは上限がある」製品が65品目分増えると理解するのが正確である。
貸与と販売の選択制との関係
2024年度介護報酬改定では、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖の4カテゴリについて、貸与と特定福祉用具販売の選択制が導入されている。利用者は担当ケアマネジャーと福祉用具専門相談員の情報提供を受けて、貸与と販売のいずれかを選ぶ仕組みだ。今回公表された65品目にも、この選択制対象カテゴリの製品が含まれている可能性がある。相談員・ケアマネは、上限価格の更新と選択制の説明を同時に利用者へ行う場面が増えるため、説明資料を整えておきたい。
新規65品目の中身|特殊寝台・車いす・マットレスが中心
Vol.1493通知そのものは対象品目の一覧を本文に含まないが、業界専門誌GemMed(グローバルヘルスコンサルティング発行)が2026年4月15日付で報じた内容と、テクノエイド協会が公開しているExcel一覧から、対象品目の傾向を把握できる。
公表された代表的製品の平均・上限価格例
GemMedが報じた代表的な新規品目の月額価格は以下の通り(いずれも1か月あたり・税別表示ベース)。
- 特殊寝台「Emi笑(エミ)2M+電動ヘッドレスト付、スタンダード樹脂木目ダークボード、83cm幅」:平均価格7,824円/上限価格8,540円
- 特殊寝台「楽匠プラス2M/OP受・キャメル/ボード・多機能Mグリーン」:平均価格7,038円/上限価格8,720円
- 特殊寝台「RaKuDa Wポケット2M 固定脚」:平均価格6,523円/上限価格6,840円
上記はいずれも電動機能付きの介護用ベッド本体で、月額7,000円前後が新平均値のレンジとして見えてくる。GemMed記事では続けて移動用リフト等の具体例も例示されている。65品目の全容はテクノエイド協会のExcelファイルで確認が可能で、特殊寝台・車いす・床ずれ防止用マットレス・歩行器・移動用リフトなど主要カテゴリにまたがる構成となっている。
過去の新商品公表との比較
直近の新商品公表と対象品目数を振り返ると、スケールの感覚がつかみやすい。
- 令和7年4月貸与分から適用(Vol.1363、2024年10月28日公表):新規75品目(例:BAL-R1アルミ製自走用標準型車いす 平均2,859円/上限3,280円、ミライトウインググリッププッシュ式介助用電動アシスト車いす 平均20,860円/上限23,180円、プレグラーSTRマットレス通気タイプ 平均2,020円/上限2,210円、歩行車マルシェ 平均3,217円/上限3,630円など)
- 令和7年7月貸与分から適用(2025年1月24日公表):新規62品目(例:BAL-R3アルミ製自走用ウイング・スイング車いす 平均3,801円/上限4,300円、介助用ティルト・リクライニング6輪車いす 平均8,908円/上限9,810円、カーボン杖四点固定式 平均1,099円/上限1,300円など)
- 令和7年10月貸与分から適用(Vol.1379、2025年4月25日公表)
- 令和8年1月貸与分から適用(Vol.1407、2025年7月25日公表)
- 令和8年4月貸与分から適用(Vol.1431、2025年10月24日公表)
- 令和8年7月貸与分から適用(2026年1月23日公表)
- 令和8年10月貸与分から適用(Vol.1493、2026年4月10日公表):新規65品目←今回
1サイクルあたり60〜80品目規模で新商品が追加されていることがわかる。今回の65品目はここ数回の平均的なボリュームであり、特別に多いわけではないが、年間では250品目前後が新たに上限管理下に入る計算になる。現場の相談員・ケアマネが担当する利用者が使用している製品の中に、3か月ごとに数品目は該当が出てくる規模感だと理解しておきたい。
カテゴリ別の価格帯イメージ
過去公表分の実績から、主要カテゴリ別の月額上限価格のおおまかなレンジを示す(いずれも製品によって幅がある)。
- 車いす(標準型自走用):月額上限3,000〜5,000円前後
- 車いす(電動アシスト・ティルトリクライニング):月額上限10,000〜25,000円前後
- 特殊寝台(電動ベッド本体):月額上限7,000〜9,000円前後
- 床ずれ防止マットレス:月額上限2,000〜3,000円前後
- 歩行器・歩行車:月額上限1,500〜4,000円前後
- 歩行補助つえ(多点・四点固定など):月額上限1,000〜1,500円前後
- 移動用リフト:製品により大きく異なり、月額上限数千円〜数万円
今回の65品目もおおむねこのレンジに収まると見られるが、個別の製品名・型番単位で上限が設定されるため、相談員・ケアマネは必ず製品コード単位で一覧を照合する必要がある。型番違いや付属品違いで別コードが振られるため、「同じシリーズだから同じ上限」とは限らない点に注意したい。
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利用者負担への影響|上限超過はどの場面で発生するか
新しい上限価格が設定されるということは、2026年10月以降、その製品を上限超過価格で貸し出している事業所は介護給付を受けられなくなるということでもある。この変化は利用者の負担にどう波及するのか、3つの局面に分けて整理する。
局面1:既契約が継続する場合
2026年10月時点で、利用者がすでに対象65品目のいずれかを使用しており、契約が継続している場合がまず問題になる。事業所が新しい上限価格以下で貸与している場合は、従来どおり介護保険給付の対象となり、利用者負担は従来と変わらない(原則1割、所得に応じて2割または3割)。一方、事業所の設定価格が新上限を上回ったままの場合、10月貸与分から当該製品は介護保険の給付対象外となり、事業所は(1)価格を上限以下に引き下げる、(2)保険対象外として全額利用者負担で貸し続ける、(3)契約を打ち切り別製品に切り替える、のいずれかの対応を迫られる。
局面2:新規契約の場合
2026年10月以降に新たに契約する利用者は、事業所から提示される価格が上限以下であることを契約前に確認できるようになる。福祉用具専門相談員は、利用者への情報提供義務の中で全国平均貸与価格を必ず説明する必要があり、利用者・家族は平均と上限の両方を踏まえた上で納得して契約できる。新しい65品目もこの情報提供の対象に含まれるため、相談員の説明資料・パンフレット・見積書の価格欄は2026年10月以降用に更新する必要がある。
局面3:超過分の実費負担が発生する場合
事業者が上限を超える価格のまま保険対象外として貸与を継続した場合、利用者は全額を自己負担する。具体例で試算してみる。
- 対象の新商品について新上限が月額3,500円と設定されたとする
- 事業所が従来通り月額4,800円で貸し続けた場合
- 超過分1,300円/月は介護保険給付の対象外となる
- しかもこの製品自体が「上限超過価格での貸与」となるため、事業所はそもそも福祉用具貸与費を算定できなくなる。利用者は4,800円全額を自費で払うか、別事業所・別製品へ切り替える必要がある
仮に自費継続を選んだ場合、月1,300円の超過×12か月で年間15,600円の追加負担となる。介護保険の1割負担なら本来月480円(4,800円×10%)で済むところが、年間で約5万7,600円実費が上乗せされる計算だ。所得水準によっては決して軽い金額ではない(MITSUKETA「福祉用具の上限価格、10月分が更新された」2026年4月分析より)。
誰が確認義務を負うのか
制度上、貸与価格が上限を超えていないかを最終確認する責任は、ケアプランを作成するケアマネジャーにある。福祉用具サービス計画書は福祉用具専門相談員が作成するが、その計画はケアプラン全体の一部として位置づけられるため、ケアマネが上限管理から外れた契約を放置すれば、結果として利用者の超過負担リスクを負わせることになる。
現場では「価格は相談員が見てくれている」という認識が根強いが、制度の正式な建て付けでは、ケアマネも上限価格確認のプロセスに責任を持つ。今回の65品目追加を機に、「担当利用者が使っている福祉用具のうち、10月から新上限が適用される商品はどれか」を相談員へ問い合わせ、記録として残すフローを整えることが望ましい。問い合わせ自体がケアマネの確認義務履行の証拠にもなる。
費用額ベースで見た影響規模
厚生労働省の効果検証資料(令和6年度)によれば、2023年10月貸与分時点で福祉用具貸与の総貸与額は約326億円/月規模、年間ベースで約4,000億円弱の市場である。新商品65品目分が占める割合はごく一部だが、主要品目の特殊寝台ひとつをとっても月額総貸与額が約90億円規模(全レコードに占める割合約27%)に達しており、ベッド系の新商品が上限管理下に入ることの財政的インパクトは小さくない。利用者個々の家計への影響と合わせて、制度全体としての給付費適正化にも寄与する改定である。
職種別・実務対応チェックリスト|10月施行までにやること
今回の公表は2026年4月10日で、施行は同年10月貸与分から。準備期間は約半年ある。この期間を使って、各職種が押さえておくべき実務対応を整理する。
福祉用具専門相談員
最前線で価格説明と契約を行う専門相談員には、以下の対応が求められる。
- 対象商品の洗い出し:テクノエイド協会からダウンロードしたExcel一覧を、自社で貸与している全製品の商品コードと突合する。65品目の中に自社取扱製品がある場合、現行の貸与価格と新上限を比較する。
- 価格改定の社内稟議:新上限を超える価格で貸与している製品については、10月貸与分までに価格改定を決裁する。改定しない場合は保険対象外となるため、利用者への事前説明と同意書の取得準備が必要。
- 利用者説明資料の更新:説明時に交付する全国平均貸与価格一覧・パンフレット・見積書テンプレートを、令和8年10月以降用に差し替える。2018年10月から義務化されている「当該製品の貸与価格・全国平均貸与価格・製品特徴・同一機能他製品情報」の4点情報提供を、新上限ベースで実施できる状態にする。
- モニタリング時の確認項目追加:2024年度改定でモニタリング実施時期が明確化され、結果をケアマネへ書面交付することが求められている。10月以降の最初のモニタリング時には、該当製品の価格が上限内であることを記録に残す。
ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)
ケアプラン上の責任を負うケアマネには、以下の対応が望ましい。
- 担当ケースの棚卸し:福祉用具貸与を位置づけているケースをリストアップし、使用中の製品コードを相談員に確認する。新65品目に該当する利用者が何人いるかを把握する。
- 年4回のリマインダー設定:Vol.1493のような新商品上限公表は1月・4月・7月・10月の年4回必ず発出される。カレンダー・業務管理ツールにリマインダーを設定し、公表日から10日以内に相談員への確認を入れるフローを作る。
- サービス担当者会議での周知:10月施行前のサービス担当者会議で、新上限適用に伴う価格変更の可能性について利用者・家族へ説明する。変更が発生した場合は速やかに再開催する。
- 記録の残し方:相談員への確認内容・相談員からの回答・利用者への説明内容を支援経過に記録する。後日の指導監査や苦情対応に備える。
介護職(訪問介護・通所介護・施設職員)
利用者の生活に直接関わる介護職にとっても、福祉用具の価格改定は他人事ではない。
- 利用者からの質問に一次対応できる知識:「10月からベッドの料金が変わるって言われた」「車いすを替えなきゃいけないかもしれない」といった不安を利用者・家族が抱えた時、まず制度の大枠を説明できるだけで信頼が変わる。今回の改定は新商品65品目が新たに上限管理に入るという整理であり、既存の上限設定済み製品には直接の変更はない点を正確に伝える。
- 福祉用具の使用状況の共有:訪問介護員・施設職員は日々の介助の中で、ベッドや車いすの動作不良・サイズ不適合に気づきやすい。気づきを相談員・ケアマネに共有することで、10月の価格見直しと同時に製品そのものの見直しにつながる場合がある。
- 転職・キャリア形成の視点:福祉用具の価格制度・加算構造を理解しているかは、介護福祉士・ケアマネジャー受験の実務力の一部でもある。今回のような制度改定の節目は、資格取得を目指す介護職にとって実務知識を体系化する好機となる。
福祉用具貸与事業所の管理者
経営・運営の観点では、以下の対応が必要になる。
- 商品マスタ・請求システムの更新:令和8年10月貸与分からの新単価を請求システムに反映する。上限超過製品の取扱いルールを社内で明文化する。
- 仕入先との交渉:新上限が現行仕入価格を下回る場合、仕入価格の見直しをメーカー・卸と交渉する必要が出る。粗利が圧迫される品目については、貸与継続するか取扱い中止するかの経営判断を行う。
- 集団指導・実地指導への備え:都道府県・市町村の実地指導では、上限価格遵守は定番の確認項目である。令和7年度の和歌山県など各自治体の集団指導資料でも、上限超過貸与時の給付制限は明記されている。
- モニタリング記録・ケアマネ交付書類のテンプレート見直し:2024年度改定対応の書式を、新上限情報を盛り込んだ形にアップデートする。
利用者・家族ができる自己防衛
最後に、制度の主役である利用者・家族が取れる行動も整理しておく。
- 契約書・請求書で使用している福祉用具の製品名・型番を確認する
- テクノエイド協会または厚労省のページで、その製品の全国平均貸与価格と上限を調べる
- 10月に自分の貸与価格がどう変わるかを、相談員またはケアマネに問い合わせる
- 超過が発生する場合は、別事業所や別製品への切り替えも含めて比較検討する
制度は専門職任せにせず、利用者側が価格情報にアクセスできるようデザインされている。今回の65品目公表もその延長線上にあり、情報の非対称性を減らすための継続的な取り組みの一環と捉えることができる。
まとめ|3か月サイクルを前提にした運用を
2026年4月10日に発出された介護保険最新情報Vol.1493は、令和8年10月貸与分から適用される福祉用具の新規65品目について、全国平均貸与価格と上限価格を設定する内容だった。2018年度導入の上限価格制度は、3年ごとの全商品見直しと3か月ごとの新商品追加という二重サイクルで運用されており、今回のVol.1493はその後者にあたる定期更新である。
重要なのは、今回の65品目に限らず、年4回の公表サイクルが今後も途切れずに続くという点だ。現場の福祉用具専門相談員・ケアマネジャー・介護職・事業所管理者は、単発の対応ではなく、年4回必ず行う棚卸しと確認のルーチンとして組み込む必要がある。利用者の実費負担リスクを未然に防ぐのは、この小さなルーチンの積み重ねに他ならない。
対象品目の詳細は厚生労働省ホームページおよび公益財団法人テクノエイド協会のウェブサイトに掲載されているExcel一覧で確認できる。次回公表は2026年7月下旬(令和9年1月貸与分向け)が見込まれる。
出典・参考
- 厚生労働省老健局高齢者支援課「介護保険最新情報Vol.1493 令和8年10月貸与分から適用される福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表について(新商品に係る分)」2026年4月10日発出(厚労省サイト文書番号001689718.pdf)
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」ページ(貸与価格の公表について)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
- 公益財団法人テクノエイド協会「令和8年度 福祉用具貸与価格適正化推進事業」https://www.techno-aids.or.jp/tekisei/
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」(文書番号001483109.pdf)
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」参考資料(文書番号000931246.pdf)
- GemMed「新規の福祉用具貸与65品目について、2026年10月からの平均価格・上限価格を公表―厚労省」2026年4月15日
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