介護現場の意思決定支援の実践|本人の意思を汲み尊重するケア
介護職向け

介護現場の意思決定支援の実践|本人の意思を汲み尊重するケア

認知症で意思表示が難しい利用者の意思をどう汲み尊重するか。厚労省ガイドラインの3原則と意思形成・表明・実現の支援を、食事や入浴など日々の小さな選択に落とし込み、家族・多職種との合意形成、ACP・成年後見との違いまで現場目線で解説します。

Quick Diagnosis

45

全6問・動画ガイド付き

性格から、合う働き方をみつける。

介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

無料で診断を始める
ポイント

この記事のポイント

介護現場の意思決定支援とは、認知症などで意思表示が難しい利用者でも、本人がもてる能力を活かして自分のことを決められるよう、意思の形成・表明・実現の3段階を支える関わりです。厚生労働省ガイドラインは「本人の意思の尊重」「意思決定能力への配慮」「チームによる早期からの継続的支援」を基本原則とし、支援者が良し悪しを評価して選ぶのではなく、本人の表明した意思や推定意思をまず尊重することから始まります。食事や入浴といった日々の小さな選択の保障が、その出発点です。

目次

「お風呂はいや」と言う利用者を、なだめて浴室へ連れて行く。献立を本人に聞かず、栄養を考えてこちらが決める。認知症ケアの現場では、こうした場面が日常的に起こります。安全や効率を優先するうちに、いつのまにか本人の意思が後回しになってしまうことは、誰にでも起こりうることです。

厚生労働省は2018年(平成30年)に「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を策定し、2025年(令和7年)にも改訂しました。その根底にあるのは、認知症があっても、本人には大切にしている思いや好みが残っており、もてる能力を活かせば自分のことを決められる、という考え方です。この記事では、ガイドラインが示す考え方を、食事や入浴といった日々のケアの場面にどう落とし込むかという観点から、介護職の実践に役立つ形で整理します。意思決定支援とは何かという定義よりも、現場で何をどう変えるかに重点を置いて解説していきます。

意思決定支援とは|「決められる力がある」から始める

意思決定支援とは、自分で意思を決めることに困難を抱える人が、日常生活や社会生活について自らの意思が反映された生活を送れるように、本人を主体として行う一連の支援です。介護現場でこれを考えるときに、まず外せない出発点が「意思決定能力の存在推定」という原則です。これは、一見すると意思決定が難しそうに見える人でも、まずは「自分で決められる力がある」という前提から支援を始める、という考え方です。

「何もわからない人」という前提を疑う

認知症に対しては、「進行すると何もわからなくなる」という誤解がいまだに根強く残っています。しかしガイドラインは、認知症の人を単に「支えられる対象」としてとらえるのではなく、一人の尊厳ある人として、その個性と能力を十分に発揮できるよう支えることを求めています。言葉でうまく意思を表せなくても、本人の内面には大切にしている思いや、好き嫌いといった選好が残っています。

大事なのは、意思決定能力は「ある・ない」で固定されるものではなく、支援者の関わり方によって変化するという点です。情報の伝え方、選択肢の示し方、声をかける環境を工夫すれば、本人が決められる範囲は広がります。つまり、本人が決められないのではなく、決められるような支援ができていないだけ、という見方をまずもつことが実践の起点になります。

意思決定能力を構成する4つの要素

本人がどこでつまずいているかを見立てるとき、意思決定能力を次の4つの要素に分けて考えると、支援の糸口が見えやすくなります。

  • 理解:説明された情報の内容を理解できているか
  • 認識:その情報が自分のこととして認識できているか
  • 比較検討(論理的思考):選択肢を比べて考えられているか
  • 表現:考えた結果を何らかの形で表せているか

たとえば「理解」でつまずいているなら説明をかみくだく、「表現」でつまずいているなら言葉以外の表し方を用意する、というように、どの要素を補えばよいかが具体的に見えてきます。能力がないと決めつける前に、4つのうちどこを支えれば本人が決められるかを考えるのが、介護職の専門性の見せどころです。

意思決定支援の3つの基本原則

ガイドラインは、意思決定支援を貫く3つの基本原則を示しています。現場で迷ったときに立ち返るべき軸となるものです。

1. 本人の意思の尊重

支援は、本人の自己決定の尊重に基づいて行います。ここで最も間違えやすいのが、本人の意思の内容を支援者が評価し、「これは良い選択だ」と判断したときだけ支援する、という関わり方です。これは意思決定支援ではありません。まずは本人が表明した意思や選好を、あるいはその確認が難しい場合は推定される意思を確認し、それを尊重することから始めます。本人が示した意思は、それが他者を害する場合や、本人にとって見過ごせない重大な影響が生じる場合でない限り、尊重されます。介護職が「本人のためを思って」先回りで決めてしまう善意こそ、最も注意すべき落とし穴です。

2. 本人の意思決定能力への配慮

本人に意思決定能力があることを前提に支援します。前述のとおり、能力は支援の仕方によって変わります。説明を繰り返す、図や写真を使う、慣れた場所で時間をかける、といった配慮そのものが、本人の決める力を引き出します。能力の有無を判定する前に、引き出す努力を尽くすという順序が大切です。

3. チームによる早期からの継続的支援

意思決定支援は、一人の職員が抱え込むものではありません。本人をよく知る家族や多職種がチームとなり、早い段階から日常的に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握します。認知症が進んでから慌てて確認するのではなく、まだ言葉で表せるうちから、何を大切にしている人なのかを知っておくことが、後の支援の質を決めます。

意思形成・表明・実現|支援の3プロセスを現場の動作に翻訳する

ガイドラインは、意思決定支援を「人的・物的環境の整備」を土台に、「意思形成支援」「意思表明支援」「意思実現支援」の3つのプロセスで進めると整理しています。3段階は一方向に進むとは限らず、行きつ戻りつしながら、何度も交差させて進めるものです。それぞれを現場の動作に翻訳します。

土台:人的・物的環境を整える

すべての支援に先立つのが環境づくりです。支援者の態度として、本人の意思を尊重する姿勢を保ち、安心できる丁寧な関わりを心がけ、生活史や家族関係を理解しておきます。物理的には、本人が慣れた場所を選び、大勢で囲まない、急がせない、疲れている時間帯を避ける、といった配慮をします。本人を複数人で取り囲むと圧倒されて意思決定が難しくなるため、まずは信頼できる職員と二人で確認する場面をつくるのも有効です。

第1段階:意思形成支援(決めるための材料を整える)

適切な情報・認識・環境のもとで、本人が意思を形成できるよう支えます。現場の動作としては次のとおりです。

  • わかりやすい言葉や文字で、ゆっくり説明する
  • 説明した内容を忘れることもあるため、その都度ていねいに繰り返す
  • 選択肢を複数示し、それぞれの比較ポイントを明示する
  • 図・写真・実物など、視覚的な手がかりを使う
  • 本人がうなずいていても実際は理解できていないことがあるため、理解を確かめる

第2段階:意思表明支援(表せるように支える)

形成された意思を、本人が表明・表出できるよう支えます。

  • 時間をかけてコミュニケーションを取り、決断を迫って焦らせない
  • 複雑な選択は、重要なポイントを整理して選択肢を提示する
  • 意思は時間や状況で変わるため、最初に示した意思に縛られず適宜確認する
  • 重要な決定は、時間をおいて、複数の職員で確認する
  • 本人の生活歴や価値観と表明内容が食い違うときや、迷いがあるときは、形成のプロセスに立ち返って再確認する

第3段階:意思実現支援(暮らしに反映する)

形成・表明された意思を、本人の能力を最大限活かしながら、日常生活・社会生活に反映します。多職種が協働し、使える社会資源を用いて実現を支えます。ここで大切なのは、何でも「やってあげる」のは実現支援ではなく代行決定になってしまうという点です。本人を抜きにして職員がすべて手配するのではなく、本人と一緒に実現を目指していく過程そのものに意味があります。また、ショートステイの体験利用のように、実際に経験してみると本人の意思が変わることもあるため、無理のない体験を提案するのも有効です。

日々の小さな選択を保障する|食事・入浴・整容の意思決定支援

意思決定支援というと、施設入居や延命治療といった大きな決断を思い浮かべがちです。しかしガイドラインは、食事・入浴・衣服の好み、外出、排せつ、整容といった基本的な生活習慣や、日々のプログラムへの参加を決める場面も、明確に意思決定支援の対象としています。むしろ、日々繰り返される小さな選択を本人に保障することこそ、意思決定支援の土台です。日常で本人の意思を尊重できていないのに、人生の節目だけ本人主体にできるはずがないからです。

「拒否」を意思のサインとして読む

「入浴拒否」「食事を食べない」「帰宅願望」。これらは現場では困りごととして扱われがちですが、本人が言葉以外で表している意思のサインでもあります。お風呂を嫌がるのは、寒い・裸を見られたくない・タイミングが合わないなど、本人なりの理由があるかもしれません。「帰りたい」という訴えは、今いる場所への納得のなさを映していることがあります。拒否を抑え込む対象ではなく、その奥にある意思を読み取る入口としてとらえ直すと、関わり方が変わります。

言葉以外の表現を最大限に読み取る

認知症の人は言葉での意思表示が難しいことが多いため、身振り・手振り・表情の変化も意思表示として読み取る努力を最大限に行うことが求められます。食事のときに表情がやわらぐおかず、声をかけたときにふっと笑顔になる話題、特定の職員の前でだけ見せる落ち着き。こうした小さな反応の積み重ねが、本人の選好を知る手がかりになります。言語的なコミュニケーションができなくても、本人は表情や行動で意思を伝えようとしている、という前提に立つことが出発点です。

日々の選択を増やす具体例

  • 献立を一方的に出すのではなく、二つのおかずを見せて指さしや表情で選んでもらう
  • 着る服を写真や実物で示し、本人に選ぶ機会をつくる
  • 入浴の時間帯や順番を、本人の生活リズムに合わせて調整する
  • レクリエーションへの参加・不参加を、その日の様子を見て本人に確かめる

これらは特別な準備が要らない、今日から変えられる関わりです。小さな選択の保障の積み重ねが、本人の「自分のことは自分で決められる」という感覚を支えます。

家族・多職種との合意形成|本人の意思を中心に据える

意思決定支援は介護職だけで完結するものではありません。家族や多職種を巻き込み、合意を形づくっていくプロセスが欠かせません。

家族は支援者であり、支援の対象でもある

ガイドラインは、家族も本人の意思決定支援者の一人と位置づけます。本人の生活歴や価値観、これまで大切にしてきたものを最もよく知るのは、多くの場合、家族だからです。一方で、家族自身も介護の負担や将来への不安を抱えており、支援の対象でもあります。家族の意向が本人の意思とずれることもあります。たとえば、安全を心配する家族が外出を止めたがる一方で、本人は外に出たいと願っている、という場面です。このとき大切なのは、家族の意見を本人の意思と取り違えないことです。家族の希望はあくまで参考情報の一つとして扱い、最終的には本人の意思・推定意思を中心に据えます。

本人の意思を推定する手順

本人の意思の確認がどうしても難しい場合は、本人の価値観・選好・生活歴をもとに意思を推定します。これは「家族や職員が良かれと思うこと」を当てはめる代行決定とは異なります。あくまで「この人だったらどう考えるか」を、本人をよく知る複数の人で持ち寄って推し量る作業です。推定すら難しい場合に、はじめて本人にとっての最善の利益を検討する段階に移ります。この順序を飛ばして、いきなり「本人のためだから」と周囲が決めてしまわないことが重要です。

多職種カンファレンスで意思をすり合わせる

各プロセスで困難や疑問が生じたときは、チームでの会議を併用します。医師・看護師・ケアマネジャー・生活相談員など、それぞれの立場から本人に関する情報を出し合うと、一人では見えなかった本人像が浮かび上がります。ある支援者には頑固に見える人が、別の支援者には「家族思いで遠慮しがち」と映ることもあります。多面的な情報を持ち寄り、本人の意思を中心に支援方針をすり合わせることが、合意形成の核になります。

意思決定支援・ACP・成年後見・SDMの関係を整理する

現場では「意思決定支援」「ACP(人生会議)」「成年後見」「SDM」といった言葉が入り混じり、どれが何のための仕組みなのか分かりにくくなりがちです。これらは対立するものではなく、本人の意思を尊重するという同じ目的のもとで、守備範囲が異なる枠組みです。厚生労働省は意思決定支援に関する5つのガイドラインを整備しており、それぞれが扱う場面を介護職の視点で整理すると、次のように位置づけられます。

守備範囲で整理する4つの枠組み

  • 意思決定支援(認知症ガイドライン):食事・入浴・住まいなど、日常生活・社会生活の場面で本人が決めるのを支える。本記事の中心となる、日々のケアの土台。
  • ACP(人生会議):人生の最終段階の医療・ケアについて、本人を主体に家族や医療・ケアチームが繰り返し話し合うプロセス。日常の意思決定支援の延長線上にあり、まだ話せるうちから価値観を共有しておく取り組み。
  • 成年後見制度:財産管理や契約など、法的な権限が必要な場面で本人を保護・支援する制度。日常のケアの意思決定支援とは別レーンで、後見人も意思決定支援の考え方を踏まえることが求められている。
  • SDM(共同意思決定):医療場面などで、本人と専門職が情報を共有しながら一緒に決めていく考え方。意思決定支援と重なり合う、本人参加型の意思決定モデル。

支援付き意思決定と代理代行決定の境界

これらを貫く最も重要な区別が、「支援付き意思決定」と「代理代行決定」の違いです。認知症ガイドラインが扱うのは、あくまで本人が決めるのを支える「支援付き意思決定」の領域です。意思決定支援を尽くしてもなお本人が決められない場合の、周囲が代わりに決めるルール(代理・代行)は、このガイドラインの範囲外とされています。日常の食事や入浴の選択は意思決定支援で支え、財産処分のような法的場面は成年後見で、人生の最終段階の医療は ACP で、というように、場面に応じて適切な枠組みを使い分ける視点が、現場では役立ちます。いずれの場面でも、出発点は「本人が決められるよう支える」であり、代行は最後の手段である、という順序は共通しています。

現場が陥りやすい誤り|「最善の利益ファースト」と代行決定

意思決定支援が現場で空回りする最大の原因は、「最善の利益ファースト」に陥ることです。私たちケア提供者は、つい自分たちの観点から「適当だ」と考えることをしようとし、本人の意思を評価して、それが妥当だと判断したときだけ支援しようとします。しかし、それは意思決定支援ではありません。この「評価してから支援する」という順序の逆転こそ、ガイドラインが最も間違いやすいと名指しする落とし穴です。

表面の要求の奥にある真意をさがす

厚生労働省の意思決定支援の事例集には、示唆に富む例があります。グループホームで暮らすある利用者が、突然「犬を飼いたい」と訴えました。このホームはペット禁止です。ここで「飼えないと説明して説得する」または「飼えるよう交渉する」という対応を取りがちですが、職員が選んだのは、訴えの真意を探ることでした。よく聞くと、本人は犬が飼いたかったのではなく、自分の部屋に他人が勝手に入ってくるのが怖くて「犬を飼いたい」と訴えていたのです。入り口に施錠できる扉をつけたところ、本人は満足し、もう犬の話はしなくなりました。

この例が教えるのは、本人の言葉をそのまま叶えることでも、頭から却下することでもなく、その奥にある本当の願い(この場合は「安心して過ごしたい」)を一緒にさがすことが意思決定支援だということです。同じ「犬を飼いたい」でも、別の人なら本当にペットを求めているかもしれません。だからこそ、本人の生活歴や価値観を踏まえ、一人ひとりの文脈で真意を読み解く姿勢が欠かせません。

「やってあげる」が代行決定にすり替わる瞬間

もう一つ陥りやすいのが、意思実現支援のつもりが代行決定になっているケースです。本人の希望を聞き出したあと、職員がすべて段取りして「叶えてあげる」と、本人は決定の主体から外れてしまいます。実現それ自体よりも、本人と一緒に実現を目指していく過程が重要だとされるのはこのためです。本人を抜きに何でも先回りで手配するのは、たとえ善意であっても支援ではなく代行になっている、という自己点検が、現場には必要です。

意思を記録し、振り返る|支援を継続させる仕組み

意思決定支援は一度きりのイベントではなく、記録・確認・振り返りを伴う継続的なプロセスです。本人の意思は時間や状況で変わるため、いつ・どんな場面で・どんな意思を示したかを記録し、チームで共有することが、支援の連続性を保ちます。

申し送り・記録に「本人の意思」を残す

申し送りや介護記録は、ともすれば「拒否あり」「全量摂取」といった行動の記録に偏りがちです。そこに「なぜそうしたか」「本人がどんな反応を示したか」という意思の手がかりを書き残すと、次に関わる職員が本人の選好を引き継げます。たとえば「入浴を嫌がったが、午後に声をかけ直したら応じた。午前は眠そうで午後のほうが調子が良い様子」と書けば、それは立派な意思の記録です。

最初の表明に縛られない

一度示した意思に、本人も周囲も縛られすぎないことも大切です。「前にこう言っていたから」と固定してしまうと、変化した本人の今の意思を見落とします。重要な意思は、時間をおいて、複数の職員で繰り返し確認する。この適宜の再確認を習慣にすることで、過去の表明ではなく、今の本人の意思に沿った支援に近づきます。

よくある質問(FAQ)

Q. 本人が「決められない」ように見えるとき、どこまで支援すればよいですか

決められないと判断する前に、意思決定能力の4要素(理解・認識・比較検討・表現)のどこでつまずいているかを見立て、その部分を補う支援を尽くします。説明をかみくだく、図や実物を使う、慣れた場所で時間をかける、といった工夫で決められる範囲は広がります。能力は支援の仕方で変わるため、まずは引き出す努力を尽くすのが原則です。

Q. 本人の希望と家族の意向がぶつかったらどうすればよいですか

家族の意見は本人をよく知る貴重な参考情報ですが、本人の意思そのものではありません。家族の希望を本人の意思と取り違えないことが重要です。最終的には本人の意思・推定意思を中心に据え、ずれが大きいときは多職種カンファレンスで情報を持ち寄り、本人にとって何が大切かをすり合わせます。

Q. 言葉が出ない利用者の意思はどう汲み取ればよいですか

身振り・手振り・表情の変化を意思表示として最大限に読み取ります。食事で表情がやわらぐおかず、特定の話題での笑顔、特定の職員の前での落ち着きなど、小さな反応の積み重ねが選好を知る手がかりです。言葉がなくても本人は表情や行動で意思を伝えようとしている、という前提に立つことが出発点です。

Q. 意思決定支援とACP(人生会議)はどう違いますか

意思決定支援は食事や住まいなど日常生活・社会生活全般の選択を支えるもので、ACPはその延長線上で、人生の最終段階の医療・ケアについて本人を主体に繰り返し話し合うプロセスです。日々の意思決定支援が積み重なっていれば、ACPで本人の価値観を共有することも自然につながります。

Q. どうしても本人の意思が確認できない場合はどうしますか

本人の価値観・選好・生活歴をもとに、本人をよく知る複数の人で意思を推定します。推定すら難しい場合に、はじめて本人にとっての最善の利益を検討する段階に移ります。いきなり周囲が「本人のため」と代行決定するのではなく、推定を尽くす段階を飛ばさないことが大切です。

参考文献・出典

まとめ|日々の選択を本人に返すことから始める

介護現場の意思決定支援は、特別な研修や大きな決断の場面だけのものではありません。それは、献立を見せて選んでもらう、入浴の時間を本人のリズムに合わせる、拒否の奥にある理由を一緒にさがす、という日々の小さな関わりの積み重ねの中にあります。

大切なのは順序です。本人の意思を支援者が評価して選ぶのではなく、まず本人の意思や推定意思を尊重することから始める。能力がないと決めつける前に、決められるよう支える工夫を尽くす。何でも先回りで「やってあげる」のではなく、本人と一緒に実現を目指す。この順序を守るだけで、現場の関わりは大きく変わります。意思決定支援は、認知症があっても「私の人生の主人公は、私」であり続けられるよう支える、介護職の専門性そのものです。日々の一つひとつの選択を本人に返していくことから、始めてみてください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連トピック

ご家族・ご利用者の視点

同じテーマをご家族・ご利用者の方の視点から書いた記事。視野を広げるためのヒントとして。