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家族の介護で使える「介護休業制度」完全解説|取得日数・給付金・申請手順・2025年改正ポイント

家族の介護で使える「介護休業制度」完全解説|取得日数・給付金・申請手順・2025年改正ポイント

家族の介護のために最大93日休業でき、賃金の67%が給付される介護休業制度。取得要件、介護休暇との違い、申請手順、2025年4月施行の40歳情報提供義務化まで、厚生労働省の資料に基づき実務目線で解説します。

はじめに:「介護のために仕事を休む」を制度として使い倒す

親の入院連絡、ケアマネジャーとの面談、ショートステイの手配、在宅介護への切り替え──家族の介護は「ある日突然」始まります。厚生労働省の調査でも、介護を理由とした離職者は年間約10万人規模で発生しており、そのうちのかなりの割合が「制度を知らなかった」「相談先が分からなかった」ことを背景にしていると指摘されています。裏を返せば、介護休業制度を正しく知って使いこなせれば、仕事を辞めずに介護の初期対応を乗り切れる可能性が高いということです。

この記事は、「親が倒れた」「要介護認定を受けた」「遠距離介護が必要になりそう」といった段階で、会社を辞めずに介護の体制を組み立てたい働く家族に向けて書いています。育児・介護休業法で定められた「介護休業(通算93日・分割3回)」を中心に、雇用保険から支給される「介護休業給付金(賃金の67%)」、数日単位のスポット対応に使う「介護休暇」との違い、申請書類と2週間前ルール、会社との交渉のしかた、そして2025年4月に施行された改正(40歳到達時の情報提供義務化/個別周知・意向確認の義務化)まで、厚生労働省・ハローワーク・都道府県労働局の公的資料にもとづいて実務目線で整理しました。

ポイントを先に押さえておくと以下のとおりです。

  • 介護休業は対象家族1人につき通算93日まで・3回まで分割して取得できる法定制度。事業主は原則として拒めない。
  • 申請は休業開始予定日の2週間前までに書面などで申し出る。申出先は会社(人事・総務)。
  • 雇用保険の被保険者で要件を満たせば、休業期間について休業開始時賃金の67%相当の介護休業給付金が支給される(1か月あたり上限356,574円/令和7年8月~)。
  • 介護休業は「自分で介護する期間」ではなく「介護の体制を整えるための準備期間」として位置づけられている(厚生労働省パンフレット)。
  • 2025年4月1日施行の改正で、事業主には「40歳前後の従業員への情報提供」「介護に直面した従業員への個別周知・意向確認」「雇用環境整備」が義務化された。

制度の骨格だけを暗記するのではなく、「自分のケースで何日・どう取り、どの順番で会社と話すか」まで落とし込めるよう、以降のセクションで具体的に見ていきます。

主な出典:厚生労働省「育児・介護休業法の概要」、厚生労働省「介護休業制度特設サイト 法改正のポイント」、ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」(いずれも公的資料)。

介護休業制度とは|育児・介護休業法に基づく「休む権利」

介護休業は、正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下、育児・介護休業法)に定められた労働者の法定の権利です。1992年の育児休業法施行時には介護関係の規定はありませんでしたが、1995年の改正で介護休業が制度化され、その後、対象家族の範囲拡大・分割取得の導入・給付率引き上げなど、数次の改正を経て現在の姿になっています。

「休業」の法的な定義

育児・介護休業法における「介護休業」とは、要介護状態にある対象家族を介護するための休業を指します(法第2条第2号)。ここでいう「要介護状態」とは、負傷・疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態と定義されており、介護保険法上の要介護認定(要介護1〜5)とは別の基準である点が重要です。したがって、要介護認定を受ける前でも、「2週間以上、常時介護を要する状態」と会社が判定できれば介護休業の対象になります。厚生労働省も「要介護1以下と判定されていても、常時介護を必要とする状態の判断基準を満たすと労働者が主張する場合、その基準に照らして該当するなら要介護状態となる」とQ&A(介護休業Q&A)で明確にしています。

対象となる「家族」の範囲

介護休業の対象となる家族は、育児・介護休業法施行規則で次のように定められています。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母(養父母を含む)
  • 子(養子を含む/法律上の親子関係がある子)
  • 配偶者の父母(義父母)
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
  • 孫

以前は祖父母・兄弟姉妹・孫については「同居かつ扶養」が要件でしたが、2017年施行の改正で同居・扶養要件は撤廃され、遠距離で暮らす祖父母や兄弟姉妹の介護でも休業を申請できるようになりました。ただし、子については「法律上の親子関係」が必要で、事実婚の配偶者の連れ子などは対象外になる点に注意が必要です。

対象となる「労働者」の範囲

介護休業を取得できるのは、要介護状態の対象家族を介護する男女の労働者です。日々雇用される者(いわゆる日雇い)は対象外ですが、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員などの有期雇用労働者も要件を満たせば取得できます。

有期雇用労働者の場合は、申出時点において、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合には更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないことが必要です。簡単に言えば、「93日+6か月=半年強の先まで雇用が続く見込みがある」ことが条件で、契約更新の予定が明確に絶たれているケースだけが除外されます。

なお、労使協定が締結されている場合、次の労働者は対象から除外できます。
①入社1年未満の労働者
②申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
③1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

この「労使協定による除外」があるかどうかは就業規則または労使協定を確認する必要があります。協定がなければ入社1年未満でも介護休業を取得できるため、勤続が浅い人ほど「うちは対象外」と早合点せず会社に確認してください。

介護休業が「介護そのもの」ではなく「体制づくり」に位置づけられる理由

厚生労働省のパンフレットでは、介護休業の期間を「自分が介護を行う期間」ではなく「仕事と介護を両立させるための体制を整える期間」として明確に位置づけています。通算93日は、一般的な介護期間(平均4〜5年と言われる)から見れば短い期間ですが、この間に地域包括支援センターへの相談、要介護認定の申請、ケアマネジャーとの契約、在宅サービスや施設の利用開始、家族内での役割分担、職場での働き方調整といった「長期戦に備える仕組み」を作り切るための時間と考えるのが正しい使い方です。

このフレームを理解しておくと、「93日しかないのに介護は終わらない」という不安が「93日の使い方を設計できれば復職後も回せる」という見通しに変わります。

93日の取得ルールと分割の使い方|「連続」だけが介護休業ではない

介護休業の取得日数については、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できるというルールが中心です。この「93日・3回」の使い分けが、制度を活かせるかどうかの分岐点になります。

93日は「家族1人につき」

93日は対象家族ごとにカウントされます。父の介護で93日をすべて使い切ったあとでも、母の介護が新たに必要になれば、母についてあらためて93日の枠を使うことができます。逆に、同じ父親の介護について、過去に93日を取得し終わっていれば、その後要介護度が上がっても原則として新たな介護休業は取得できません(厚生労働省Q&A)。

3回までの分割取得の意味

93日を「一気に連続して」使う必要はなく、3回までに分けて取得できます。たとえば次のような組み合わせが可能です。

  • 入院対応で14日 → 退院・在宅準備で30日 → 在宅介護の立ち上げで49日(合計93日)
  • 入院時に30日 → 施設入居の手続きで20日 → 看取り期に43日(合計93日)
  • 要介護認定〜ケアマネ契約〜サービス開始までの40日のみ取得し、残り53日は温存

介護は「入院→退院→在宅→施設→看取り」とフェーズが変わるため、「1回で使い切る」より「フェーズごとに細かく使う」方が実用的です。厚生労働省のパンフレットでも、分割取得を前提とした例示が紹介されています。

1回あたりの取得期間のルール

育児・介護休業法上、1回あたりの介護休業の最低取得期間は定められていません(厚労省Q&A 1-2)。労働者が申し出た期間が法定の取得期間になるため、理論上は「1回目は3日だけ」といった使い方も可能です(ただし、会社の就業規則で独自のルールがある場合は確認が必要)。一方、一度の休業の上限は通算93日のうちの残り日数です。

休業期間の変更(繰下げ・繰上げ)

介護休業の終了予定日については、労働者が終了予定日の2週間前までに申し出ることで、事由を問わず1回に限り終了予定日の繰下げ(延長)が可能です。延長できる範囲は、通算93日の範囲内に限られます。たとえば「30日で戻る予定だったが、在宅の体制が整わず20日延長したい」といったケースに対応できます。

一方、開始予定日の繰上げ・繰下げ変更については法令上の明確な定めがなく、会社が労働者に有利な制度として設けることは可能ですが、法定の権利ではありません。そのため、「急遽前倒しで休みたい」場合は、会社と個別に交渉する形になります。

休業の途中終了事由

介護休業は通常は申し出た終了予定日に終わりますが、次の場合は労働者の意思にかかわらず終了します(東京都労働相談情報センター資料)。

  • 対象家族が死亡した場合
  • 対象家族と労働者の親族関係が消滅した場合(例:離婚により配偶者の父母との関係が消滅)
  • 労働者自身が負傷・疾病等により対象家族を介護できない状態になった場合
  • 労働者について、産前産後休業、育児休業または新たな介護休業が始まった場合

たとえば対象家族が亡くなった時点で介護休業は終了し、それ以降の日は介護休業給付金の支給対象にもならない点に注意してください(残日数は他の家族の介護に使うこともできません)。

法を上回る制度を置く企業もある

一部の企業では、法定の93日を超える独自の介護休業制度(「通算1年・5回分割」など)を設けているケースがあります。厚生労働省Q&Aでも「通算120日・分割3回」「通算93日・分割5回」のように、法の基準を上回る設定は可能とされています。自社の就業規則・介護休業規程を一度読み返し、法定以上の制度が用意されていないか確認してみましょう。

介護休業給付金の金額・要件・計算例|賃金の67%を雇用保険から

介護休業期間中の給与については、育児・介護休業法上事業主に給与支払義務はありません。多くの企業では介護休業中は無給扱いとなるため、生活を支える役割を担うのが雇用保険の「介護休業給付金」です。2016年8月の制度改正で給付率が40%から67%に引き上げられ、現在に至ります。

支給対象者の要件

介護休業給付金は、次の要件を満たす雇用保険の被保険者が対象です(ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」)。

  1. 育児・介護休業法に基づく介護休業を取得していること(対象家族の範囲・要介護状態の定義は前述のとおり)。
  2. 介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(完全月)が通算12か月以上あること。
  3. 介護休業中の就業日数が、1支給単位期間(1か月)あたり10日以下であること。
  4. 有期雇用労働者の場合、前項で説明した「93日+6か月先まで契約が続く見込み」要件を満たすこと。

過去に同じ対象家族について介護休業給付金を受給した場合、通算93日・3回の枠の残りの範囲でのみ給付を受けることができます。退職を前提とした介護休業は給付対象になりません(復職を予定していることが前提)。

支給額の計算式

介護休業給付金の支給額は次の式で計算されます(ハローワークリーフレット)。

支給額=休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 67%

  • 「休業開始時賃金日額」は、介護休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日
  • 「支給日数」は原則30日(最終月のみ、休業終了日までの実日数)
  • 1支給対象期間あたりの上限額:356,574円(令和7年8月1日〜令和8年7月31日)
  • 賃金月額の下限:90,420円、上限:532,200円

具体的な支給額のイメージ(賃金による比較)

介護休業期間中に会社から賃金の支払いがまったくない場合、概算の支給額は次のようになります(ハローワークQ&A)。

  • 平均月額賃金15万円 → 介護休業給付金 月額約10万円
  • 平均月額賃金20万円 → 介護休業給付金 月額約13.4万円
  • 平均月額賃金30万円 → 介護休業給付金 月額約20.1万円
  • 平均月額賃金40万円 → 介護休業給付金 月額約26.8万円(上限356,574円の範囲内)

93日(最大3か月)フルに取得した場合、賃金30万円の人でおよそ60万円前後の給付が見込める計算です。

休業中に賃金が支払われた場合の減額ルール

介護休業中に会社から何らかの賃金(有給休暇分の給与、会社独自の休業手当、一部就労に対する賃金など)が支払われる場合、支給額が調整されます(雇用保険法第61条の4)。

  • 賃金が「賃金月額×13%」以下:満額(67%)支給
  • 賃金が13%超〜80%未満:賃金月額の80%との差額を支給
  • 賃金が80%以上:支給されない

たとえば「介護休業中に有休を組み合わせて給与を受け取る」構成にすると、給付金が減額・不支給になるリスクがあります。介護休業給付金は税金が課されない一方、有休給与は課税対象である点も含め、どちらが手取りで有利かを勤務先の給与担当と一緒にシミュレーションしておくと安心です。

申請時期とフロー

介護休業給付金は介護休業が終わってから申請する後払い型の給付です。そのため、休業中にリアルタイムで振り込まれるわけではなく、1〜2か月のタイムラグがある点に注意が必要です。

  • 申請期限:介護休業終了日の翌日から2か月後の月末まで
  • 申請経路:原則として事業主を経由してハローワークへ提出(本人が直接申請することも可能)
  • 主な提出書類:
     ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(事業主が用意)
     ・介護休業給付金支給申請書(本人・事業主の連名、マイナンバー記載)
     ・本人が事業主に提出した介護休業申出書のコピー
     ・対象家族の続柄を証明する書類(住民票記載事項証明書、戸籍抄本など)
     ・賃金台帳、出勤簿(休業実績の確認用)

介護休業を3回に分割した場合は、1回の介護休業が終わるたびに申請手続きが必要になります。書類は人事・総務部門が取りまとめるのが一般的ですが、家族の続柄書類など本人が用意するものもあるので、早めに市区町村窓口で住民票を取得しておきましょう。

健康保険料・厚生年金保険料の扱い

注意しておきたいのは、介護休業中は育児休業中と異なり社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除制度はない点です。そのため、給与が無給でも社会保険料は発生し、会社が立て替えて後で本人に請求するか、介護休業給付金から控除する運用が多くなります。住民税についても特別徴収が継続するため、手取り額を計算する際は「給付金+休業手当の合計から社会保険料・住民税を引いた額」でイメージしておくと実態に近づきます。

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介護休業と介護休暇の違い|「長期まとめて」と「スポット」の使い分け

家族の介護で使える「休む」制度には、大きく分けて介護休業と介護休暇の2つがあります。名前が似ているため混同されやすいのですが、目的・日数・申請方法・給付金の有無がそれぞれ異なります。両者を使い分けることで、「通院付添い」「入院対応」「ケアマネ面談」「長期の体制づくり」といった介護のさまざまな場面に柔軟に対応できます。

2つの制度を一覧で比較

厚生労働省「育児・介護休業法の概要」およびハローワーク資料をもとに整理すると、主な違いは次のとおりです。

  • 目的
     ・介護休業:介護の体制を構築するための長期の休業
     ・介護休暇:日常的な介護ニーズにスポット対応するための短期の休暇
  • 取得できる日数
     ・介護休業:対象家族1人につき通算93日、3回まで分割可
     ・介護休暇:年5日(対象家族2人以上で年10日)
  • 取得単位
     ・介護休業:日単位(連続した期間)
     ・介護休暇:1日または時間単位(令和3年1月から時間単位取得が可能)
  • 申請期限
     ・介護休業:原則として開始予定日の2週間前までに書面等で
     ・介護休暇:当日の口頭申請でもOK
  • 賃金
     ・介護休業:原則無給(会社の規程による)
     ・介護休暇:原則無給(会社の規程による)
  • 雇用保険の給付
     ・介護休業:介護休業給付金(賃金の67%)あり
     ・介護休暇:なし(給付金の対象外)
  • 対象労働者(労使協定による除外)
     ・介護休業:入社1年未満/申出日から93日以内に雇用終了/週所定労働日2日以下
     ・介護休暇:週所定労働日2日以下(2025年4月改正で「入社6か月未満」の除外は廃止)

介護休暇は「時間単位」で使えるのが強み

介護休暇は、通院の付添い、ケアマネジャーとの面談、介護保険の申請手続き、デイサービスの体験利用、役所での手続きなど、半日〜数時間で終わる用事に向いています。2021年の法改正で時間単位取得が可能になったため、「午前中だけ病院に付き添って午後から出社する」「夕方1時間早く退社して薬を取りに行く」といった細かい運用ができます。

ただし、法令では「時間単位の中抜け(いったん出社→数時間抜ける→また戻る)」までは義務化されていないため、中抜け運用が可能かは会社の就業規則次第です。また、時間単位の取得が困難と労使協定で定められている業務(たとえば流れ作業など)は、1日単位のみに限定されることもあります。

2025年4月改正で介護休暇の対象者が広がった

厚生労働省の「介護休業制度特設サイト 法改正のポイント」によれば、2025年4月1日施行の改正で介護休暇の「入社6か月未満の労働者を労使協定で除外できる」規定が廃止され、入社直後から取得できるようになりました。新しい職場で介護が始まった人にとっては大きな改善点です。ただし、「週所定労働日が2日以下の労働者」については引き続き労使協定での除外が可能です。

どう使い分けるのがベストか

実務上の使い分けの目安は次のとおりです。

  • 通院付添い・ケアマネ面談・短時間の見守り → 介護休暇(時間単位)
  • 入院・手術・退院立会い・短期の在宅対応 → 介護休暇(1日単位)または年休
  • 要介護認定申請〜サービス開始までの体制づくり → 介護休業(30〜90日)
  • 自宅介護への切り替え、施設入居手続き、看取り期 → 介護休業(分割して活用)

「介護休暇の5日をまず使い、足りなくなったら年休を投入し、長期になりそうなら介護休業に切り替える」という3段ロケット方式が、多くの家族にとって現実的な運用になります。

そのほかの両立支援制度も押さえる

育児・介護休業法には、介護休業・介護休暇以外にも次の両立支援制度が定められています。これらは介護休業とも組み合わせて使えるため、休業明けの働き方に必ず確認しておきましょう。

  • 所定外労働の制限:残業を拒否できる(1回の請求で1か月〜1年、繰り返し利用可)
  • 時間外労働の制限:月24時間・年150時間を超える時間外労働を拒否できる
  • 深夜業の制限:午後10時〜午前5時の深夜勤務を拒否できる
  • 選択的措置義務:短時間勤務、フレックスタイム、始業終業時刻の繰上げ・繰下げ、介護費用助成などから事業主が最低1つを導入(対象家族1人につき利用開始から3年以上の期間内に2回以上利用可)
  • 介護のためのテレワーク:2025年4月改正で事業主に努力義務化

介護休業の93日を使い切ったあと、これらの制度を組み合わせて働き方をスライドさせていくのが、介護離職を避けるための定石です。

申請手続きの流れ|2週間前ルールと必要書類を時系列で

介護休業の申請手続きは、育児休業に比べて頻度が低いため、人事担当者ですら運用経験が少ない会社が少なくありません。結果として、本人が「いつまでに何を出せば確実に取れるのか」を把握し、人事と並走したほうがスムーズに進みます。ここでは、介護の発生から復職までを時系列で整理します。

STEP 1:要介護状態の発生〜情報収集(0日目)

親の入院連絡、救急搬送、ケアマネから「要介護認定を受けたほうがよい」と言われた、といったトリガーが発生した時点で、まずは以下を把握します。

  • 対象家族の現状(入院先、診断名、退院見込み、主治医の所見)
  • 常時介護を必要とする状態の期間が2週間以上になる見込みか
  • 自社の介護休業規程(就業規則に綴じ込まれている、もしくは人事部が保管)
  • 労使協定の有無(入社1年未満・所定労働日数2日以下の除外規定があるか)

この段階で、最寄りの地域包括支援センターに電話相談しておくと、介護保険申請の段取りが見えてきます。

STEP 2:会社への事前相談(0〜7日目)

2週間前の正式申請の前に、直属の上司と人事に「介護休業を取る方向で調整したい」と口頭で相談しておくのが実務上は重要です。引継ぎ先の選定や業務の再配分には時間がかかるため、書面提出後に「明日から休みます」では現場が回りません。

相談時に伝えるべき情報は次のとおりです。

  • 休業の希望開始日と想定終了日(幅を持たせてOK)
  • 取得予定日数(1回ですべて使うのか、分割するのか)
  • 対象家族(続柄)
  • 休業中の連絡可否(緊急時のみ対応可など)
  • 復職時の配慮希望(時短、テレワーク、所定外労働制限など)

STEP 3:書面での正式申請(休業開始の2週間以上前)

介護休業の法定の申請期限は「休業開始予定日の2週間前まで」です。書面(またはファックス・電子メールなど事業主が認める方法)で、以下を記載した介護休業申出書を提出します(厚生労働省 社内様式例)。

  1. 申出の年月日
  2. 労働者の氏名
  3. 対象家族の氏名および労働者との続柄
  4. 対象家族が要介護状態にある事実
  5. 休業開始予定日と終了予定日
  6. 対象家族について、すでに取得している介護休業の日数(分割取得の場合)

事業主は、③④の事実を証明する書類(診断書、介護保険被保険者証の写しなど)の提出を求めることができます。ただし、要介護認定が下りていないことを理由に申請を拒むことは認められません(「2週間以上、常時介護が必要な状態」であることが示せればよい)。

申請が2週間前ギリギリより遅れた場合、事業主は申出の日の翌日から2週間後までの間で休業開始日を指定できます(法第12条第3項)。つまり、急な入院対応などで2週間前ルールが守れない場合、会社は開始日を2週間程度ずらせる権利を持つので、本人の希望どおりに即日休みに入るとは限りません。この期間は年休や介護休暇でつなぐのが現実的です。

STEP 4:事業主からの通知受領

事業主は介護休業の申出を受けたら、書面等で次の事項を本人に速やかに通知しなければなりません(則第7条第4項、則第23条第2項)。

  • 介護休業申出を受けた旨
  • 介護休業開始予定日および終了予定日
  • 介護休業申出を拒む場合はその旨とその理由

このタイミングで、休業開始時賃金月額証明書の作成に必要な情報(過去6か月の賃金台帳など)を人事が整え始めます。

STEP 5:休業期間中(介護体制の構築)

休業に入ったら、介護休業の本来の目的である「仕事と介護を両立させる体制の構築」にフォーカスします。代表的なタスクは以下です。

  • 市区町村への要介護認定申請(地域包括支援センター経由が一般的)
  • 認定調査の立会い、主治医意見書の手配
  • ケアマネジャーの選定・契約、ケアプランの作成
  • 訪問介護・デイサービス・ショートステイ等の利用開始
  • 住宅改修(手すり・段差解消等)、福祉用具のレンタル
  • 家族内の役割分担の明確化(兄弟姉妹間の費用・時間の分担)
  • 復職後の働き方のシミュレーション(時短、テレワーク、所定外労働制限)

STEP 6:復職と給付金申請(休業終了後)

休業終了後、事業主を経由して介護休業給付金支給申請書をハローワークに提出します。提出期限は介護休業終了日の翌日から2か月後の月末までです。1〜2か月後に指定の銀行口座へ給付金が振り込まれます。

復職後は、前述の両立支援制度(所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、選択的措置義務、テレワーク)を組み合わせた働き方にシフトします。復職後すぐに介護の負担が再度大きくなった場合は、残っている介護休業の日数・回数で再度休業を申請することも可能です。

申請を拒否された・不利益な取扱いを受けたとき

介護休業の申出に対し、要件を満たしているにもかかわらず事業主が正当な理由なく拒否した場合、または介護休業の取得を理由に解雇・降格・減給などの不利益取扱いを行った場合は、育児・介護休業法違反となります。相談先としては以下が挙げられます。

  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)…育児・介護休業法の所管窓口
  • 総合労働相談コーナー(各労働局・労基署内)…無料相談、匿名可
  • 労働組合または個人加入可能な合同労組
  • 弁護士会の労働相談窓口

「制度がない」と会社に言われても、就業規則に書いていなくても法律上の権利として取得可能です。育児・介護休業法は最低基準を定めた法律で、会社の制度が法定基準を下回る場合は法の基準が適用されます。

職場との交渉のしかた|上司・人事を味方にする伝え方

介護休業は法定の権利なので、極論を言えば「取得します」の一言で成立します。しかし、制度を使い切ったあとも同じ職場で働き続けることを考えれば、上司・同僚・人事と丁寧にコミュニケーションを取りながら進めたほうが、本人にも会社にもメリットが大きいのは間違いありません。ここでは、実際の交渉で押さえておきたいポイントを整理します。

1. 「言い出しにくさ」は情報格差から生まれる

厚生労働省の調査によれば、介護離職者のなかには「会社に相談しなかった」「相談したが制度を知らなかった」という層が一定割合存在します。職場で介護休業の取得例がなければ、本人だけでなく上司も「どう扱えばいいか分からない」のが実情です。だからこそ、本人の側から「法律ではこう決まっている」「給付金はここから出る」といった正確な情報を持ち込むことが、交渉を前に進める最大の武器になります。

厚生労働省「介護休業制度特設サイト」には、従業員向け・事業主向けのリーフレットが無料で公開されており、A4で数ページの要点資料を印刷して面談時に持参するだけでも、会話の前提がそろいます。

2. 上司との初回相談で話すべき5点

上司との最初の面談では、次の5点を短時間で伝えることを意識します。

  1. 事実:親(または配偶者など)に介護が必要な状況が発生した
  2. 制度:育児・介護休業法に基づく介護休業を活用したい(93日以内、分割可)
  3. 見通し:いつから、何日程度、どの業務を止めるかの試算
  4. 業務継続の案:引継ぎ相手の候補、マニュアル化できる業務の範囲
  5. 復職イメージ:休業終了後の働き方(時短・テレワーク・残業制限など)

特に④⑤を自分から提示すると、「休みたい」だけではなく「仕事を回し続ける方法を一緒に考えたい」というメッセージになり、上司側も受け止めやすくなります。

3. 人事との打ち合わせで確認すべき事項

人事部門には、制度の運用面を具体的に確認します。

  • 自社の介護休業規程(法定93日か、法を上回る制度があるか)
  • 労使協定による除外対象者に該当するか
  • 介護休業中の社会保険料・住民税の取扱い(立替か、給付金からの相殺か)
  • 介護休業給付金の申請手続きのフロー(必要書類、締切、窓口担当者)
  • 復職時の役職・賃金の扱い(原則として原職復帰が望ましいとされている)
  • ハラスメント防止措置(育児・介護休業法第25条)の周知状況

4. 「同僚への迷惑」を仕組みで減らす

介護休業が取りづらい最大の理由は、「同僚に迷惑をかけたくない」という心理です。ここは本人の配慮だけで解決する問題ではなく、仕組みで解くのが筋です。

  • 担当業務を棚卸しし、「誰でもできる業務」と「自分しかできない業務」に分ける
  • 前者はマニュアル化と引継ぎで平準化、後者は休業前に終わらせる・先送りする
  • 顧客対応はメール署名や留守電に「◯月◯日〜介護休業中につき、後任◯◯が対応」と明記
  • 休業中の緊急連絡ルールを決める(原則連絡不可/緊急時のみメールでなど)

この段取りを上司・人事と共有し、「休業中に誰が何を担うのか」を一枚紙で見える化すると、同僚への説明もスムーズになります。

5. ハラスメントに遭ったときの対応

育児・介護休業法第25条は、事業主に対して「介護休業等の申出・取得等を理由とするハラスメントを防止する措置を講じる義務」を定めています。具体的には、方針の明確化・周知、相談窓口の設置、事後の迅速な対応などが求められます。

もし上司から「そんなに休むなら辞めてほしい」「他の人の迷惑を考えろ」といった発言を受けた場合、それは法律上の防止措置義務違反に該当しうるハラスメントです。次の順番で記録・相談を進めます。

  1. 発言内容を日時・場面とともにメモに残す(録音が可能ならなお良い)
  2. 社内のハラスメント相談窓口に申し出る
  3. 解決しない場合、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談

6. 「復職してからが本番」を前提に設計する

93日の介護休業は、介護のすべてを自分で担う期間ではなく、復職後に仕事と両立できる体制を作るための期間です。だからこそ、交渉のゴールは「93日の休みを取ること」ではなく、「復職後も介護と両立できる働き方に着地すること」。上司・人事との会話では、休業中のタスクだけでなく、復職後の残業制限・テレワーク・部署異動の要望までセットで合意しておくと、介護離職を避ける確率が大きく上がります。

企業に課される義務|2025年4月改正で「40歳情報提供」が必須に

2024年5月に成立した改正育児・介護休業法は、2025年4月1日と10月1日の2段階で施行されました。介護関係については、4月1日施行の改正によって企業側の義務が大幅に拡大されています。労働者の立場でも「会社がどこまで対応すべきか」を知っておくと、自社の対応の遅れに気づけたり、情報提供を受ける機会を活用できたりします。

改正の背景と狙い

厚生労働省が改正の背景として強調しているのは、「介護離職を防ぐためには、制度があるだけでは不十分で、従業員が制度を知り、使える環境が必要」という問題意識です。正社員の約1割が介護を担っているとされる一方で、両立支援制度が活用されないまま離職してしまうケースが後を絶ちません。介護は育児と異なり、ある日突然始まる性質があるため、当事者になってから初めて制度を調べるのでは遅いというのがポイントです。

義務1:40歳前後の従業員への情報提供

改正の目玉の一つが、介護に直面する前の早い段階(40歳前後)での情報提供義務です。事業主は、従業員が40歳に達する前後の1年間のうちいずれかのタイミングで、介護休業等の制度について情報提供しなければなりません(厚生労働省「法改正のポイント」)。

  • 情報提供の対象者:全従業員(日々雇用を除く)のうち、40歳前後の者
    • ①労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)
    • ②労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間
    上記①②のいずれかを選択
  • 情報提供事項
    • ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等の内容
    • ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(人事部など)
    • ③介護休業給付金に関すること
    あわせて介護保険制度についても周知することが望ましいとされている
  • 情報提供の方法:面談(オンライン可)、書面交付、FAX、電子メールのいずれか(FAX・電子メールは労働者の希望がある場合のみ)

なぜ40歳か。厚生労働省の資料では、親が75歳を超えると要介護・要支援の認定率が急上昇すること、子世代が40代後半から親の介護に直面するケースが増えることを根拠に挙げています。40歳は介護保険の第2号被保険者資格を取得する年齢でもあり、「介護を自分事として考え始める節目」として設計されています。

義務2:介護に直面した従業員への個別周知・意向確認

40歳情報提供とは別に、従業員から「家族の介護に直面した」旨の申出があったときには、個別に制度を周知し、利用意向を確認することが義務化されました。

  • 周知事項は40歳情報提供と同じ3項目(制度内容/申出先/給付金)
  • 周知・意向確認の方法も同じ4つ(面談・書面・FAX・電子メール)
  • 制度の利用を控えさせるような対応は禁止(たとえば「うちは人手が足りないから取らないでほしい」といった誘導)

この義務は、労働者が「親が要介護認定を受けた」「退院が近い」「遠距離介護で出張対応が増えそう」といった相談を人事や上司にした段階で発動します。本人から申し出なければ発動しない点には注意が必要で、「困ったら早めに申し出る」ことが両立支援の入口になります。

義務3:雇用環境の整備

介護休業・介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるよう、事業主は次の4つのうちいずれか1つ以上の措置を講じなければなりません。

  1. 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  2. 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

相談窓口は人事部内でも外部委託でも構わず、相談担当者が育児・介護休業法の知識を持っていることが求められます。

義務4:介護のためのテレワーク等の導入(努力義務)

要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるよう、事業主には努力義務が課されました。「義務」ではなく「努力義務」のため罰則はありませんが、介護を理由とした離職防止の観点から、徐々に導入企業が増えることが想定されています。

義務5:介護休暇の取得要件緩和

前述のとおり、2025年4月1日以降は介護休暇について「入社6か月未満」を労使協定で除外する規定が廃止されました。入社直後であっても介護休暇が年5日(対象家族2人以上で10日)取得できるようになり、中途入社や転職直後の介護対応がしやすくなっています。

違反した場合の罰則

育児・介護休業法の違反に対しては、厚生労働大臣による報告徴収・助言・指導・勧告が行われ、勧告に従わない場合は企業名の公表が行われます。また、報告を求められた際に正当な理由なく応じなかったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の過料に処される可能性があります。行政処分だけでなくレピュテーションリスクも大きいため、近年は制度整備を急ぐ企業が増えています。

労働者側のアクション

改正の義務が会社に課されたことを踏まえ、労働者側でも次のアクションをとるとよいでしょう。

  • 40歳前後の人は、会社から情報提供の面談・書面があるかを確認する(ない場合は人事に問い合わせる)
  • 相談窓口の有無と担当者の名前を把握しておく
  • 社内で介護休業の取得事例が共有されているか確認する(事例がなければ自分が第一号になるかもしれない)
  • 親の年齢が70歳を超えたあたりから、介護保険制度・地域包括支援センターの情報を集めておく

よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

Q1. 要介護認定を受けていなくても介護休業は取れますか?

取れます。介護休業の対象となる「要介護状態」は、育児・介護休業法上「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されており、介護保険法の要介護認定(要介護1〜5)とは別物です。厚生労働省Q&Aでも「要介護1以下と判定された場合でも、常時介護を必要とする状態に関する判断基準を満たすと主張する場合は、その基準で判断する」と明示されています。入院直後や認定申請中でも要件を満たせば対象になります。

Q2. パートですが介護休業は取得できますか?

取得できます。介護休業はパート・アルバイト・契約社員・派遣社員など雇用形態を問わず取得可能です(日々雇用を除く)。有期雇用の場合は、申出時点で「介護休業開始予定日から起算して93日経過日+6か月先まで雇用契約が続く見込み」があることが条件です。労使協定で「入社1年未満」「週所定労働日数2日以下」等が除外される場合があるため、就業規則と労使協定の確認が必要です。

Q3. 93日を使い切ったらもう休めないのですか?

同一の対象家族については、通算93日・3回を使い切った時点で新たな介護休業は取得できません。ただし、対象家族が別人であれば、新たに93日の枠が発生します(父で93日使い切った後、母の介護が必要になった場合など)。また、介護休暇(年5日/2人以上で10日)、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、選択的措置義務(短時間勤務・フレックス等)など、介護休業以外の両立支援制度は引き続き利用できます。

Q4. 介護休業給付金は休業中にもらえますか?

もらえません。介護休業給付金は休業終了後に申請する後払い型の給付です。申請期限は介護休業終了日の翌日から2か月後の月末まで。申請から振込までさらに1〜2か月かかるため、休業期間中の生活費は、貯蓄・配偶者の収入・家族からの支援などで補う必要があります。分割取得の場合は、1回の介護休業が終了するたびに申請でき、都度給付金が振り込まれます。

Q5. 介護休業中は社会保険料が免除されますか?

免除されません。育児休業と異なり、介護休業中は健康保険料・厚生年金保険料の免除制度はありません。休業中は給与がゼロ(または大幅減)でも保険料は発生するため、会社が立て替えて後日請求するか、介護休業給付金から相殺する運用が一般的です。住民税の特別徴収も原則継続します。手取り額のシミュレーションは人事・給与担当と事前にすり合わせておきましょう。

Q6. 介護休業の取得を理由に解雇されたら?

育児・介護休業法第10条は、介護休業の申出・取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。違反の解雇は無効になる可能性が高く、労働者は次の窓口に相談できます:都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー(無料・匿名可)、労働組合、弁護士会の労働相談。証拠として、解雇通知書、業務連絡メール、人事との面談記録などを保全しておくことが重要です。

Q7. 介護休業と育児休業は同時に取れますか?

1人の労働者が同じ期間に育児休業と介護休業を重ねて取得することはできません(厚生労働省Q&A 7-3)。ただし、育児休業を終えてから介護休業を取得する、逆に介護休業を終えてから育児休業を取得するなど連続して取得することは、それぞれの要件を満たす限り可能です。いわゆる「ダブルケア」の場合は、時期をずらして両方の給付金を受給できます。

Q8. 会社に介護休業規程がないと言われたら?

介護休業は法律で定められた労働者の権利であり、会社の就業規則や規程に書いていなくても取得できます。「うちには制度がない」と言われた場合は、厚生労働省「育児・介護休業法の概要」リーフレットを持参して人事と話し合いましょう。それでも解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が無料で相談に乗ってくれます。匿名での相談も可能で、会社への是正指導につながるケースもあります。

Q9. 遠距離介護でも介護休業は使えますか?

使えます。2017年の改正で、祖父母・兄弟姉妹・孫についても「同居・扶養」要件が撤廃され、遠方に住む家族の介護でも対象になりました。父母や配偶者の父母については元々同居要件はありません。遠距離介護では、移動時間を含めた体制づくりに時間がかかるため、むしろ介護休業の93日を活用してケアマネ選定・在宅サービス契約・見守り機器の設置などを集中的に進めるケースが多く見られます。

Q10. 40歳になったら会社から必ず情報が来ますか?

2025年4月1日以降、事業主には40歳前後の従業員への情報提供義務が課されています。40歳到達の年度(1年間)または40歳の翌日から1年間のいずれかで、介護休業制度・申出先・介護休業給付金に関する情報が提供されるはずです。もし何の案内もなければ、人事部に「介護休業等の情報提供を受けたい」と申し出てみてください。義務化されているため、会社は対応しなければなりません。

まとめ|介護休業は「使って初めて意味がある」制度

介護休業は、1995年の制度化以来30年にわたって改正が続けられてきた働く家族のためのセーフティネットです。対象家族1人につき通算93日・3回分割、賃金の67%に相当する介護休業給付金、介護休暇との組み合わせ、そして2025年4月からは40歳情報提供と個別周知の義務化──制度は着実に労働者側に有利な方向へアップデートされてきました。

一方で、実際に取得する人の割合はまだ低く、介護離職は年間約10万人規模で続いています。制度が整っても、「知らない」「言い出せない」「会社が慣れていない」という情報・心理・運用のギャップがある限り、介護離職はなくなりません。この記事の内容を、「自分が使うとき」だけでなく、「家族や同僚が介護に直面したとき」「後輩が相談に来たとき」に渡せる地図として使ってもらえればと思います。

最後に、今日から動ける3つのアクションをまとめておきます。

  1. 自社の就業規則と介護休業規程を読む。労使協定の有無、法定以上の制度の有無、申出先、相談窓口を確認する。
  2. 親の状況と地域包括支援センターを把握する。親が住む市区町村のセンター名・電話番号を手帳やスマホにメモ。介護は「情報戦」と言われるほど事前準備で差がつく。
  3. 40歳以上なら情報提供の有無を確認する。2025年4月以降は義務なので、案内がなければ人事に請求する。介護保険の第2号被保険者資格と合わせて、制度を自分事にする。

介護休業は、使わずに温存しておく制度ではなく、介護の立ち上げ期に集中的に投入して仕事と介護を両立できる体制を作るための制度です。93日という時間を「自分と家族のインフラ整備」に使い切る設計ができれば、辞めずに働き続ける選択肢は大きく広がります。

本記事の主な出典

  • 厚生労働省「育児・介護休業法の概要」(公式パンフレット)
  • 厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」
  • 厚生労働省「介護休業制度特設サイト 法改正のポイント」
  • 厚生労働省「育児・介護休業法 Q&A(介護休業/介護休業給付)」
  • ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」(LL070801保06)
  • 厚生労働省「令和7年8月1日から支給限度額が変更になります」
  • 東京都労働相談情報センター「介護休業制度」(育児・介護休業法の解説資料)
  • 日本労働組合総連合会(連合)「労働相談Q&A 育児休業・介護休業」

※本記事の内容は執筆時点の法令・公的資料に基づいています。最新の情報は厚生労働省・ハローワーク・都道府県労働局の公式サイトでご確認ください。会社固有の制度については、就業規則および人事部門への確認をおすすめします。

公開日: 2026年4月15日最終更新: 2026年4月15日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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