
介護休業とは|2026年版・取得条件・93日上限・給付金67%・申請手順を完全解説
介護休業制度の全体像を完全解説。育児・介護休業法に基づく取得条件、対象家族7区分、93日3分割、給付金67%、2週間前の申請手順、介護休暇との違い、社会保険料、復職時の対応、両立支援助成金まで、厚労省資料と独自データで網羅。
あなたに合った介護の働き方は?
簡単な質問に答えるだけで、ピッタリの施設タイプがわかります
この記事のポイント
介護休業とは、要介護状態にある家族(配偶者・父母・配偶者の父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫)を介護するため、労働者が会社を休める制度です。育児・介護休業法に基づき、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得でき、雇用保険から休業前賃金の67%の介護休業給付金が支給されます。申請は休業開始予定日の2週間前までに会社へ書面で行います。介護を理由とした不利益取扱いは法律で禁止されています。
目次
「親が倒れた」「義母が突然要介護に」——人生のどこかで、誰もが家族の介護と向き合う日がやってきます。総務省「就業構造基本調査」によると、家族の介護・看護を理由に離職した人は2022年までの1年間で約10.6万人。働き盛りの40〜50代に集中し、介護離職は一度すると生涯賃金で1,000万円以上のダメージを被るとも言われます。
こうした介護離職を防ぐために整備されているのが、育児・介護休業法に基づく介護休業制度です。法律で全労働者に保障された権利でありながら、厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」では介護休業を取得した人がいた事業所はわずか1.9%。利用したくても「制度を知らない」「職場で言い出せない」という人が多いのが実態です。
この記事では、介護休業の取得条件・93日の使い方・給付金67%の計算方法・申請手順を、厚生労働省の最新資料(2025年4月・10月施行の改正含む)と独自データで網羅的に解説します。介護休暇との違い、社会保険料の扱い、復職時のキャリア影響、ダブルケアやヤングケアラー視点の活用法まで、働きながら介護を続けるための実務知識をまとめました。
介護休業とは|育児・介護休業法に基づく労働者の権利
介護休業とは、要介護状態にある対象家族を介護するため、労働者が事業主に申し出て取得できる休業のことです。根拠は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称:育児・介護休業法)の第11条〜第15条。事業主は、要件を満たした労働者からの申出を拒むことはできません。
制度のねらいは「介護離職ゼロ」
介護休業は、自分が直接介護を担い続けるための制度ではありません。育児・介護休業法のねらいは、「働き続けながら、介護の体制を整えるための準備期間」を保障することにあります。具体的には、ケアマネジャーとの相談、要介護認定の申請、介護施設の見学・契約、在宅介護の環境整備、家族間での介護分担の調整など、長期的な両立体制を作るための時間として使うことが想定されています。
「要介護状態」の判断基準
介護休業の対象となる「要介護状態」とは、負傷・疾病・身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。介護保険法の要介護認定(要介護1〜5)を受けている必要はなく、独自の判断基準に基づきます。
厚生労働省は2017年に判断基準を改定し、2025年4月にはさらに柔軟な運用を促す形で改定されました。判断基準は12項目(食事・排泄・移乗・歩行・認知症の症状など)で、各項目を「自分で可」「一部介助」「全部介助」に区分し、一定の組み合わせに該当すれば要介護状態と判断します。要介護2相当以上がおおむね目安となりますが、認知症の症状による徘徊・暴力行為などがあれば要介護2未満でも該当します。
正社員でなくても取得できる
介護休業は、日雇い労働者を除くすべての労働者(正社員・契約社員・パート・派遣社員)が対象です。有期雇用労働者の場合、申出時点で雇用契約が93日経過日からさらに6か月を経過する日までの間に満了することが明らかでないことが要件となります(つまり、契約期間が短くてもすぐに更新されない予定でなければ取得可能)。
労使協定で「入社1年未満」「週所定労働日数2日以下」の労働者を対象から除外している会社もあるため、就業規則や労使協定の確認が必要です。日雇い労働者は法律上対象外です。
介護休業の対象家族|7区分の範囲と「同居・扶養なし」でもOK
介護休業を取得できる「対象家族」は、育児・介護休業法第2条第4号で次の7区分に限定されています。叔父・叔母・いとこなどは対象外です。
対象家族の7区分
| 区分 | 具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 夫・妻 | 事実婚(内縁)含む |
| 父母 | 実父母・養父母 | 養親含む |
| 子 | 実子・養子 | 法律上の親子関係に限る(里子は対象外) |
| 配偶者の父母 | 義父母 | 事実婚の配偶者の父母も含む |
| 祖父母 | 実・養いずれも | 同居・扶養要件なし |
| 兄弟姉妹 | 実・養いずれも | 同居・扶養要件なし |
| 孫 | 実・養いずれも | 同居・扶養要件なし |
2017年改正で「同居・扶養」要件は撤廃済み
2017年1月の法改正以前は、「祖父母・兄弟姉妹・孫」については同居・扶養していることが要件でした。現在はこの要件が撤廃されており、別居していても、扶養関係になくても、対象家族であれば介護休業を取得できます。離れて暮らす祖父母を介護するために介護休業を取る、というケースも可能です。
同じ家族を複数人で交代して取得もOK
同じ対象家族(例:父)に対して、複数の家族(例:自分・兄・妹)がそれぞれ介護休業を取得することは可能です。それぞれが「自分自身の対象家族」として申請できるため、職場が異なれば各自が93日ずつ取得できます。介護を1人で抱え込まない「介護のチーム化」に活用できる仕組みです。
介護休業の期間|通算93日・3回まで分割の使い方
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます(育児・介護休業法第15条)。「93日」は連続でなくても良く、状況の変化に応じて柔軟に区切って使えるのが大きな特徴です。
93日の数え方と3分割パターンの例
93日の起算日は「介護休業開始日」、終了日は「介護休業終了日」までの暦日数(土日祝含む)で計算します。3回まで分割可能なため、たとえば次のような使い方ができます。
パターンA:体制構築型(30+30+33日)
- 1回目(30日):要介護認定の申請、ケアマネ選定、サービス計画作成
- 2回目(30日):在宅介護への移行、リフォーム、家族間調整
- 3回目(33日):介護施設入所準備、看取りなど
パターンB:緊急対応型(10+10+73日)
- 1回目(10日):突然の入院・退院後の手続き
- 2回目(10日):状態悪化時の対応
- 3回目(73日):終末期の集中介護・看取り
パターンC:一括取得型(93日連続)
- 1回で93日連続取得(分割の権利を残さない)
「3回」をリセットできるか?
同じ対象家族について、過去に介護休業を取得した場合、残り回数・残り日数は引き継がれます。たとえば父について過去に60日(2回)取得していた場合、残り33日を1回まで取得できます。「同じ家族で、退職後に再雇用された」「他社へ転職した」場合でも、対象家族の93日上限はリセットされません(雇用保険上の通算管理)。
93日を超えて休業したい場合
93日を超えて家族介護に時間を使いたい場合は、介護休業を使い切った後、以下の制度を組み合わせます。
- 介護のための短時間勤務制度(利用開始から3年間で2回まで利用可能、1日6時間など)
- 所定外労働の制限(残業免除、1か月以上1年以内)
- 時間外労働の制限(月24時間・年150時間以内)
- 深夜業の制限(22時〜5時の労働を制限)
- 介護のためのテレワーク(2025年4月から事業主の努力義務)
これらを組み合わせれば、3年以上にわたり仕事と介護を両立する体制が作れます。
介護休業給付金|賃金の67%・上限34.7万円・計算例と支給時期
介護休業中は、原則として会社から給与は支払われません(育児・介護休業法に賃金保障の規定なし)。代わりに、雇用保険から休業前賃金の67%が「介護休業給付金」として支給されます(雇用保険法第61条の4)。
支給額の計算式
介護休業給付金の額は、次の式で計算します。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
※休業開始時賃金日額 = 介護休業開始前6か月間の総支給額(賞与除く)÷ 180
月額賃金別の支給額シミュレーション(30日休業)
| 休業前月給 | 賃金日額 | 30日分支給額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 6,667円 | 134,007円 |
| 25万円 | 8,333円 | 167,493円 |
| 30万円 | 10,000円 | 201,000円 |
| 35万円 | 11,667円 | 234,507円 |
| 40万円 | 13,333円 | 267,993円 |
| 50万円 | 16,667円 | 335,007円 |
支給上限と下限(2025年8月改定値)
支給額には毎年8月1日に見直される上限・下限があります。2025年8月以降の上限は347,127円/30日(賃金月額換算約51.8万円相当)。これを超える高所得者でも、上限額までしか支給されません。
給付金の受給4要件
- 雇用保険の被保険者であること(在職中であれば原則OK)
- 介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あること(病気・出産で30日以上賃金支払いがなかった場合は最大4年に延長)
- 支給単位期間(休業開始から30日ごとの区切り)に働いた日数が10日以下であること
- 支給単位期間中に支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%未満であること
給与が支払われた場合の調整
会社が一部給与を支払った場合、賃金額に応じて給付金が減額されます。
| 支払賃金(休業前比) | 給付金の扱い |
|---|---|
| 13%以下 | 満額支給(67%) |
| 13%超〜80%未満 | 賃金額と合わせて休業前賃金の80%までに調整 |
| 80%以上 | 支給なし |
支給時期は「介護休業終了後」
介護休業給付金は、介護休業終了後にまとめて申請・支給されるのが原則です(休業中の前払いはなし)。事業主がハローワークへ申請し、約1〜2か月後に労働者の口座へ振り込まれます。分割取得の場合は、各休業終了ごとに申請可能です。
休業中の生活資金は、貯蓄・配偶者収入・有給休暇の併用などでカバーする必要があります。給付金の振込タイミングを見越した家計計画が重要です。
非課税扱い
介護休業給付金は非課税のため、所得税・住民税はかかりません。雇用保険料も差し引かれず、満額が手元に入ります。
介護休業と介護休暇の違い|年5日/10日の使い分け
「介護休業」と「介護休暇」は名前が似ていますが、まったく別の制度です。両方とも育児・介護休業法に定められた労働者の権利で、併用も可能です。
制度の比較表
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 取得日数 | 通算93日(対象家族1人につき) | 年5日(対象家族2人以上は10日) |
| 分割可否 | 3回まで | 1日・時間単位で取得可 |
| 申出期限 | 2週間前まで(書面) | 当日でも口頭でOK |
| 賃金 | 原則無給(給付金67%) | 原則無給(会社により有給) |
| 給付金 | あり(雇用保険) | なし |
| 用途の想定 | 長期の介護体制構築 | 通院付添・短期の対応 |
| 取得対象家族 | 同じ7区分 | 同じ7区分 |
使い分けの実例
ケース1:母が骨折で入院
- 入院手続き・通院付添 → 介護休暇(年5日)を1日単位で消化
- 退院後の在宅介護体制構築 → 介護休業30日を取得
- その後のリハビリ通院付添 → 残りの介護休暇+有給休暇で対応
ケース2:父が認知症と診断
- 認知症診断・介護保険申請の付添 → 介護休暇を時間単位で消化
- ケアマネ選定・施設見学 → 介護休業10日取得
- 状態悪化時の入所手続き → 介護休業30日を再取得
- 看取り → 残り53日を取得
2025年4月改正で介護休暇も使いやすく
2025年4月1日施行の改正で、介護休暇の「継続雇用6か月未満は労使協定で除外できる」規定が廃止されました。これにより、入社直後の労働者でも介護休暇を取得できるようになっています(週所定労働日数2日以下の労働者は引き続き除外可能)。
育児休業との併用は不可
同一期間内で、介護休業給付と育児休業給付は併給できません。子育てと介護のダブルケア中の方は、どちらか有利な方を選択することになります。詳細はハローワークで個別相談が必要です。
介護休業の申請手順|2週間前までに会社へ書面で申出
介護休業の取得は、労働者から事業主への「申出」がスタート地点です。法律上、要件を満たす申出を会社が拒むことはできません(不利益取扱いも禁止)。手順を5ステップで解説します。
ステップ1:要介護状態の発生・予測
家族の入院・診断・要介護認定など、2週間以上の常時介護が必要になることが見込まれた段階で、まず情報収集を始めます。介護休業は「直接介護のため」だけでなく「介護体制を整える準備期間」としても利用できることを念頭に置き、休業中に何をするかを大まかに整理します。
ステップ2:会社の窓口を確認
就業規則を確認し、介護休業の申出先(人事部・総務部・直属上司など)を把握します。2025年4月施行の改正で、事業主には労働者からの介護に直面した旨の申出に対する個別周知・意向確認義務があり、相談すれば制度内容や申出方法を会社側から説明される建付けになっています。
ステップ3:申出書の提出(休業開始予定日の2週間前まで)
原則として、休業開始予定日の2週間前までに書面で申出ます。申出書には次の事項を記載します。
- 申出日・労働者氏名
- 対象家族の氏名・続柄・住所
- 対象家族の要介護状態に関する事項
- 介護休業開始予定日・終了予定日
- 過去の介護休業取得状況(同一家族について)
厚生労働省ホームページに「介護休業申出書」の様式例が公開されており、これを使うのが確実です。書式は任意ですが、記録を残すため書面が望ましく、メール・FAXでも可能です。
ステップ4:会社からの通知受領
申出を受けた事業主は、原則として書面で次の内容を労働者へ通知します。
- 介護休業申出を受けた旨
- 介護休業開始日・終了予定日
- 申出を拒む場合はその旨と理由(労使協定で除外している労働者など)
申出時点で要件を満たしていれば、会社は休業を認めなければなりません。
ステップ5:休業開始・給付金申請の準備
休業開始後、給付金の申請手続きは原則として会社経由でハローワークへ提出します。労働者は次の書類を用意します。
- 介護休業給付金支給申請書(ハローワーク交付)
- マイナンバー
- 振込先口座情報
- 対象家族の住民票・戸籍謄本など続柄確認書類(コピー可)
事業主側で賃金台帳・出勤簿・休業証明書を添付し、ハローワークに提出します。申請期限は介護休業終了日の翌日から2か月後の月末まで。期限を過ぎると給付金を受け取れなくなるため、復職後速やかに事業主へ書類提出することが重要です。
休業期間の変更・短縮も可能
休業中に状況が変わった場合、開始予定日の繰下げ・繰上げ、終了予定日の繰下げ(93日以内なら)が可能です。やむを得ない事情があれば2週間前を過ぎての申出も柔軟に運用されます。
介護休業中の社会保険料・住民税の扱い|手取り計算の盲点
介護休業中は無給でも、社会保険料・住民税の支払義務は基本的に継続します。育児休業のような社会保険料の免除制度はありません。給付金で生活設計をする際の最大の落とし穴になりやすいので、必ず事前に確認しておきましょう。
健康保険料・厚生年金保険料は「免除なし」
育児休業の場合、申出により休業期間中の社会保険料(健保・厚年)が労使ともに免除されますが、介護休業にはこの仕組みがありません。休業中も毎月、本人負担分の健保料・厚年保険料は会社が立替え、復職後に給与から徴収するか、休業中に会社が指定する方法で振り込むのが一般的です。
たとえば月給30万円の人が93日休業した場合、本人負担の健保+厚年保険料は月約4.5万円×3か月=約13.5万円を別途支払う必要があります。介護休業給付金(67% = 約60.3万円)から差し引くと、実質手取りは月15.6万円程度になる計算です。
住民税は前年所得ベースで通年徴収
住民税は前年の所得に基づき翌年6月〜翌々年5月に納付します。介護休業中も住民税は減額されません。会社が特別徴収(給与天引き)している場合、休業中はいったん普通徴収(自分で納付書で支払う)に切り替わるか、復職後に未払分を一括徴収されるかのどちらかです。
月給30万円クラスの住民税は年間約20万円(月約1.7万円)。3か月休業すると約5万円の支払いが必要になります。
雇用保険料・所得税は「給付金は非課税」
介護休業給付金は非課税のため、給付金から所得税・雇用保険料は引かれません。ただし、給付金分は翌年の住民税計算には含まれない(=翌年の住民税が下がる)ため、「翌年は手取りが増える」というプラス面もあります。
介護休業中の手取り早見表(月給30万円・1か月休業)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 介護休業給付金(67%) | +201,000円 |
| 健康保険料(本人負担) | −約15,000円 |
| 厚生年金保険料(本人負担) | −約27,500円 |
| 住民税 | −約17,000円 |
| 実質手取り | 約141,500円 |
休業前の手取り(月給30万円なら約23万円程度)の約60%になる計算です。「給付金67%」のイメージより手取りはさらに目減りすることを織り込んでおくと、家計設計の精度が上がります。
生活費の備え方
- 有給休暇の併用:介護休業の前後で年休を取得し、給与と給付金の二重取りタイミングを作る
- 賞与の取扱確認:休業期間が賞与査定にどう影響するか会社に確認
- 家族の収入:配偶者・きょうだいで分担取得し、家計合算で乗り切る
- 社会保険料の支払い方法:会社と事前に相談し、まとめ払いか毎月払いか決める
復職時のキャリア影響と職場対応|不利益取扱いは法律で禁止
介護休業を取得することで、評価・昇進・昇給に「マイナス影響が出るのでは」と不安に感じる人は少なくありません。しかし育児・介護休業法は、介護休業の申出・取得を理由とする不利益取扱いを禁止しています(第10条準用、第16条)。
禁止される「不利益取扱い」の例
- 解雇・雇い止め
- 降格・減給
- 賞与・退職金における不利益な算定
- 不利益な配置転換
- 就業環境を害する言動(ハラスメント)
- 有期雇用契約の不更新
- 正社員から契約社員への変更強要
これらに該当する行為は違法であり、都道府県労働局・雇用環境均等部(室)に相談すれば、是正勧告や調停の対象となります。「介護パワハラ」「ケアハラスメント」と呼ばれる職場の言動も、企業に防止措置義務があります(2022年4月施行)。
復職時のキャリアを守る5つのポイント
- 休業中も会社との連絡を維持する:完全に音信不通にせず、月1回の状況報告などを続ける
- 復職前面談で配置・業務量を相談:いきなり以前と同じ業務量に戻らず、段階的復帰を提案
- 短時間勤務・テレワークを併用:介護休業終了後も両立支援制度(最大3年)を活用
- 業務の脱属人化に協力:復職後のキャリアリスクは「自分しか分からない仕事」を残すことで増える。引継ぎ書を整えておく
- ハラスメント記録を残す:万が一不利益発言があれば日時・内容を記録し、社内相談窓口や労働局へ
2025年4月施行の新ルール:会社からの個別周知・意向確認
2025年4月から、事業主は労働者から介護に直面した旨の申出があった場合、介護休業制度・両立支援制度・給付金について個別に周知し、利用意向を確認する義務があります。さらに、労働者が40歳に達する年度(または41歳の年度)にも、これらの情報を提供する義務が新設されました。介護に「直面」してから慌てるのではなく、40歳前後で会社から制度の説明を受けられる環境が整いつつあります。
会社側のメリット:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
労働者が介護休業を取得・復帰すれば、中小企業事業主には1人につき40万円の助成金(両立支援等助成金・介護離職防止支援コース)が支給されます。2026年度からは有給の介護休暇制度を導入した中小企業に最大50万円の新設助成も登場。会社側にも経済的メリットがあるため、制度活用の話し合いはWin-Winで進められます。
| 2026年度 介護離職防止支援コース支給額 | 金額 |
|---|---|
| 介護休業(取得&職場復帰) | 40万円 |
| 介護両立支援制度(1つ導入&利用) | 20万円 |
| 介護両立支援制度(2つ以上導入&1つ以上利用) | 25万円 |
| 業務代替支援(新規雇用・派遣受入) | 20万円 |
| 有給介護休暇制度導入(新設) | 30万円(年10日以上は50万円) |
【独自分析】介護休業の取得率はわずか1.6%|利用が広がらない3つの壁
厚生労働省の最新データを当サイトが分析した結果、介護休業制度は法律で保障されているにもかかわらず、実際の利用率は極めて低い状況にあります。
取得率の実態(厚労省「令和6年度雇用均等基本調査」より)
| 調査項目 | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 介護休業を取得した人がいた事業所の割合 | 1.9% | 1.4% |
| 介護休暇を取得した人がいた事業所の割合 | 3.6% | 3.5% |
厚労省「令和6年仕事と介護の両立に関する実態把握調査」では、家族の介護をしている雇用者(約322万人)のうち、介護休業制度を実際に利用したのは1.6%(約5.1万人)にとどまります。一方、家族介護を理由に離職した人は2022年までの1年間で約10.6万人。本来、介護休業で離職を防げたはずの層が、制度を使わずに辞めている実態が浮かび上がります。
利用が広がらない3つの壁
壁1:制度認知の低さ
介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」によると、介護現場の職員自身でも、介護休業制度を「知っている」と答えた割合は20.0%、介護休暇は18.5%にとどまります。介護を仕事にしている人ですらこの認知度であり、一般の労働者ではさらに知られていない可能性があります。
壁2:「代替要員がいない」職場の壁
同調査では、両立支援制度を利用しにくい理由として「代替要員がいない」が13.0%で最多。「制度はあっても使えば同僚に迷惑がかかる」という心理的ブレーキが、特に中小企業や少人数チームで強く働きます。2026年度の両立支援等助成金(業務代替支援20万円)は、この壁を経済面から崩すための仕組みです。
壁3:「自分でやらなければ」という思い込み
厚労省「仕事と介護の両立実態把握調査」の自由回答では、「介護休業はもっと深刻な人が使う制度」「介護保険サービスで足りるはず」と自己制限する声が多く寄せられています。しかし介護休業のねらいは「自分が直接介護する」ためではなく「介護体制を整える準備期間」。介護のプロ(ケアマネ・ヘルパー)と組むための時間として使うべき制度です。
ダブルケア・ヤングケアラー視点での活用
育児と介護を同時に担う「ダブルケア」は、内閣府推計で約25万人。配偶者の出産・育児に重なって自分の親が要介護になるケースが30〜40代で増えています。このような場合、育児休業の前後に介護休業を組み合わせることで両方の体制構築が可能です(同時期の併給は不可)。
また、18歳未満で家族介護を担う「ヤングケアラー」が高校卒業後すぐ就職した場合、入社1年未満でも労使協定で除外されていなければ介護休業を取得できます。「若いから」「介護に慣れているから」と自分から制度を諦めず、会社の人事窓口・地域包括支援センターに相談する選択肢があります。
介護休業に関するよくある質問
Q1. 要介護認定を受けていない家族でも介護休業を取れますか?
取れます。介護休業の「要介護状態」は、介護保険法の要介護認定とは別基準で判断されます。厚生労働省の独自基準(食事・排泄・歩行など12項目)で「2週間以上の常時介護が必要」と判断されれば対象です。要介護認定の申請中・申請前でも問題なく取得できます。
Q2. 入社1年未満でも介護休業は取れますか?
原則は取れますが、会社が労使協定で「入社1年未満を対象外」と定めている場合は除外されます。就業規則と労使協定を確認してください。なお、介護休暇については2025年4月の改正で「継続雇用6か月未満」の除外規定が廃止されており、入社直後でも取りやすくなっています。
Q3. パート・派遣社員でも介護休業給付金はもらえますか?
もらえます。雇用保険の被保険者であれば、雇用形態を問わず対象です。ただし給付金の受給には「介護休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上」という条件があるため、勤続期間が極端に短い場合は対象外になる可能性があります。
Q4. 同じ親で兄と私が同時に介護休業を取れますか?
取れます。それぞれが「自分自身の対象家族」として申請するため、勤務先が別々であれば、兄も私もそれぞれ93日まで取得できます。ただし給付金は重複しても全員に支給されるので、家族で介護を分担しやすい仕組みです。
Q5. 介護休業中にアルバイトをしても良いですか?
給付金との関係に注意が必要です。支給単位期間(30日ごと)に働いた日数が10日を超えると給付金が支給されません。10日以下でも、賃金が休業前賃金月額の80%以上になると不支給、13%超〜80%未満なら減額されます。本業以外の収入が増えると給付金が削られる可能性があります。
Q6. 退職予定でも介護休業は取れますか?
制度上は取れますが、給付金は受給できません。介護休業給付金は「職場復帰を前提」とした制度のため、休業開始時点で退職予定の場合は不支給となります。退職を決めるなら介護休業ではなく、有給休暇消化+退職を選ぶ方が現実的です。
Q7. 介護休業を理由に解雇された場合はどうすれば?
育児・介護休業法第10条(第16条で介護にも準用)違反です。都道府県労働局・雇用環境均等部(室)に相談すれば、是正勧告・調停の対象となります。証拠(解雇通知書・上司の発言メール等)を保存し、無料の労働相談を活用してください。
Q8. 介護休業中に有給休暇は取得できますか?
同一日に介護休業と有給休暇は重複取得できません。ただし介護休業の前後で有給休暇を取得することは可能で、給付金が支給されない期間の生活費補填として有効です。
Q9. 93日を使い切った後はどうすれば?
介護のための短時間勤務(最大3年)、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、テレワーク(2025年4月から努力義務)などを組み合わせて両立体制を継続します。介護保険サービス(訪問介護・デイサービス・ショートステイ)を最大限活用するのが基本戦略です。
Q10. 同じ親で2回目の介護休業を取れますか?
同じ対象家族で通算93日・3回までの範囲なら取れます。たとえば1回目に30日、2回目に30日取得した場合、残り33日を3回目として取得可能です。状態の悪化や入院・退院の節目に分割して使うのが一般的です。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
まとめ|介護休業は「介護体制を整える」ための準備期間として使う
介護休業は、要介護状態にある家族を介護するために通算93日まで・3回まで分割取得でき、賃金の67%の給付金が雇用保険から支給される、すべての労働者に保障された制度です。本記事の要点を5つにまとめます。
- 対象は7区分の家族:配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫。同居・扶養要件は2017年に撤廃済みで、別居でも取得可。
- 申請は2週間前まで書面で:会社の人事窓口に申出書を提出。やむを得ない事情があれば直前申出も可。
- 給付金は休業終了後に支給:支給時期と社会保険料・住民税の支払いを織り込んだ家計設計が必要。
- 2025年4月以降は会社側の周知義務:40歳前後で個別の制度説明・意向確認が義務化。介護に直面する前から相談しやすい環境に。
- 介護休業+介護休暇+短時間勤務の組み合わせ:93日を使い切っても両立支援制度を最大3年間利用でき、長期的な仕事と介護の両立が可能。
介護休業のねらいは「自分が直接介護する」ことではなく、「介護のプロと組んで両立体制を作る準備期間」です。ケアマネジャー・地域包括支援センター・介護施設と相談しながら、家族で分担する仕組みを作ることが、介護離職を防ぎ、自分のキャリアと家族の暮らしを守る最大のポイントです。
具体的な申請手続きや93日の使い方の実例については、関連記事「介護休業制度の取り方と使い方|93日・給付金・2025年法改正までわかる実務解説」で実務目線の解説をしています。あわせてお読みください。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
最新の介護業界ニュース

2026/5/8
介護・福祉職員の退職金共済、抜本見直しへ|厚労省「財政運営の安定化」を論点に検討開始
厚労省が2026年4月23日、88万人が加入する社会福祉施設職員等退職手当共済制度の抜本見直し検討会を始動。準備金残高は3年で505億→294億円に急減。財政運営・対象法人・給付水準を論点に秋に方向性。

2026/5/8
財務省、ケアマネ報酬に「自立支援アウトカム連動」を提言|要介護度改善で報酬増の仕組みへ・27年度改定論点
2026年4月28日の財政制度等審議会で財務省が提言した「居宅介護支援の報酬体系に自立・要介護度改善のインセンティブを組み込む」論点を一次資料から解説。LIFEとの接続、ケアマネ業務への影響、成功報酬型の利点とリスクを読み解く。

2026/5/8
財務省、訪問介護・通所介護の賃上げ要件に介護テクノロジー導入を|ケアプー導入率28.2%が後押し
財政制度等審議会・財政制度分科会(2026年4月28日)で財務省が、訪問介護・通所介護のさらなる賃上げ要件に介護テクノロジー導入の追加を要請。ケアプー導入率が3月時点で28.2%に急伸した実績を背景に、2027年度介護報酬改定の新たな論点として浮上した。

2026/5/7
家事支援、国家資格を新設へ|高市首相「介護離職をどうしても防止したい」2027年めど初試験
高市早苗首相は2026年4月22日の日本成長戦略会議で家事支援サービスの新たな国家資格創設を関係閣僚に指示。職業能力開発促進法の技能検定として2027年秋の第1回試験実施を目指す。介護離職防止と保険外サービス育成が狙い。

2026/5/7
介護福祉士養成校卒業生の経過措置、2031年度まで延長|国試不合格でも卒業後5年目まで就労可
社会保障審議会福祉部会で説明された一括改正案により、介護福祉士養成校卒業生が国家試験に不合格でも有資格者として働ける経過措置が2031年度卒業者まで延長される。一方で6年目以降の措置は2026年度卒業者で終了。制度改正の中身と進学者・新人介護職への影響を整理する。

2026/5/7
日本医師会、介護報酬改定「2年に1度」を提言|江澤常任理事「3年後は見通せない」
2026年4月27日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、日本医師会の江澤和彦常任理事が介護報酬改定を3年から2年サイクルに短縮するよう提言。物価高騰・賃上げは別枠で毎年改定を主張し、全老健・東憲太郎会長も同調した。背景と現場・転職者への影響を整理する。
続けて読む

2026/4/15
介護休業制度の取り方と使い方|93日・給付金・2025年法改正までわかる実務解説
家族の介護のために最大93日休業でき、賃金の67%が給付される介護休業制度。取得要件、介護休暇との違い、申請手順、2025年4月施行の40歳情報提供義務化まで、厚生労働省の資料に基づき実務目線で解説します。

2026/4/20
ダブルケア(育児×介護)の乗り切り方|時間・お金・心の対処法
育児と親の介護を同時に担う「ダブルケア」。約25万人と推計される実態、時間管理、育児・介護休業などの制度、経済的支援、相談窓口、キャリア両立のコツまで、家族がすぐ動ける対処法を整理します。

2026/4/16
親の介護施設どう選ぶ?8タイプの費用・条件・見学ポイントを徹底比較
親の介護施設選びで迷う家族向けに、特養・老健・有料老人ホーム・グループホーム・サ高住など8タイプの費用相場・入居条件・待機期間を一覧比較。見学時のチェックリストや地域別の費用差も解説します。

2026/4/20
親の介護家族会議の進め方|兄弟親族の負担分担と意思決定
親の介護を家族で話し合う「介護家族会議」の進め方を解説。開催準備、5つの必須論点、ファシリテーション技法、揉めないルール、オンライン開催、地域包括支援センターの同席依頼、合意事項の書面化まで網羅。

2026/5/10
有料老人ホームの入居一時金|返還ルール・90日ルール・初期償却の仕組み
有料老人ホームの入居一時金の相場・初期償却・経年返還・90日ルール(短期解約特例)・500万円保全措置を徹底解説。返還計算式や倒産リスク、重要事項説明書のチェックリストまでご家族目線で整理します。
このテーマを深掘り
ご家族・ご利用者の視点
同じテーマをご家族・ご利用者の方の視点から書いた記事。視野を広げるためのヒントとして。