年金だけで入れる老人ホームはある?お金がないときに使える制度と現実的な選択肢
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年金だけで入れる老人ホームはある?お金がないときに使える制度と現実的な選択肢

国民年金や厚生年金だけで入れる老人ホームは?特養の負担限度額認定、高額介護サービス費、生活保護、養護老人ホーム、生活福祉資金貸付を厚労省データで解説。月10万円の年金で入居できる施設の現実と申請手順を整理。

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ポイント

結論:年金だけで入れる老人ホームはあるが、選択肢は限られる

結論から言うと、年金だけで入れる老人ホームは存在します。ただし選択肢は限定的で、現実的には次の3つが中心です。

  • 特別養護老人ホーム(特養)×負担限度額認定:住民税非課税世帯であれば、第2段階で食費・居住費(多床室)合わせて月約2万4,600円まで軽減。介護サービス費の自己負担と合わせても月7〜9万円程度に収まるケースが多い(厚労省「サービスにかかる利用料」より日額換算)。
  • 養護老人ホーム:環境上・経済的理由で在宅生活が困難な65歳以上に対し、市区町村長の措置によって入所が決まる老人福祉法上の施設。費用は所得に応じて算定され、年金月7〜8万円でも入所事例がある。
  • 救護施設・生活保護受給による入居:生活保護を受けると介護扶助で本人負担なしに介護サービスが利用でき、特養や軽費老人ホームへの入居も可能になる。

一方、民間の有料老人ホームやサ高住は月15万〜25万円が中心価格帯のため、年金だけでの入居は基本的に困難です。この記事では、自分の年金額と資産から「どの制度が使えるか」を順に判定できるよう、厚労省・日本年金機構の最新一次資料に基づいて整理します。

目次

イントロ:年金だけで老後の介護を乗り切れるのか

「親の年金は月10万円もない。これで本当に老人ホームに入れるのか」「自分の老後、貯金が底を突いたら施設に入れるのか」。介護費用の相談現場でもっとも多い問いの一つです。

日本年金機構の発表によれば、令和6年度の老齢基礎年金(満額)は月額6万8,000円、夫婦2人のモデル年金(厚生年金)は月額23万483円です。一方で厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、老齢厚生年金(基礎年金含む)の平均月額は約14万7,000円。「年金だけで月15万円以上の有料老人ホームに入る」のは、平均的な厚生年金受給者でも難しいことが分かります。

ただし、日本の介護保険制度・生活保護制度は低所得層が施設介護から排除されないよう、何重ものセーフティネットを用意しています。代表的なものが、住民税非課税世帯の食費・居住費を1日数百円まで下げる「負担限度額認定」、月額自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」、所得に応じて入所できる「養護老人ホーム」、そして「生活保護の介護扶助」です。

この記事では、以下の順序で「年金だけで入れる老人ホームはあるか」という問いに具体的な数字で答えます。

  1. そもそも年金はいくらもらえるのか(平均受給額の現実)
  2. どの施設なら年金内に収まるのか(特養・サ高住・有料の比較)
  3. 負担限度額認定の使い方(第1〜4段階)
  4. 高額介護サービス費の上限
  5. 生活保護受給者の選択肢
  6. 自治体助成・生活福祉資金貸付
  7. 年金月10万円のシミュレーション

年金の平均受給額:国民年金・厚生年金別の実態

老人ホーム入居を検討するときは、まず「自分の年金が日本全体のどの位置にあるのか」を把握しましょう。施設入居費の上限は、年金額と直結します。

国民年金(老齢基礎年金)の平均月額は約5.7万円

厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金のみを受給している人の平均月額は約5万7,000円。満額(令和6年度の新規裁定者で月6万8,000円)に達するためには、20歳から60歳までの40年間(480月)すべて保険料を納付している必要があり、未納・免除期間があれば比例して減額されます。

つまり、自営業・フリーランス・専業主婦(第3号被保険者期間が短い人)など、厚生年金加入歴が短い層は、年金月額が4〜6万円台にとどまることが一般的です。この層が「年金だけで入れる老人ホーム」を探す場合、後述する負担限度額認定や生活保護を併用しないと、有料老人ホームやサ高住への入居はほぼ不可能です。

厚生年金の平均月額は約14.7万円、男女差は大きい

同じ厚労省の概況によれば、老齢厚生年金(基礎年金を含む)の平均月額は約14万7,000円。ただし男女差が非常に大きく、男性の平均が約16万5,000円であるのに対し、女性は約10万8,000円と差があります(令和5年度数値)。

女性高齢者の場合、結婚・出産等で厚生年金加入期間が短くなりやすく、結果として「年金月10万円前後」が中心ゾーンになります。夫の死亡後は遺族厚生年金が加わりますが、それでも単身高齢女性の年金収入が月10〜13万円というケースは珍しくありません。

「年金月額」と「老人ホーム費用」のリアリティチェック

一般的に、民間の介護付き有料老人ホームの月額利用料は15万〜30万円、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でも12万〜20万円が中心価格帯です(厚労省「施設・居住系サービスについて」参考資料)。これに対して、年金収入が月7〜12万円の高齢者は、民間施設に「年金だけで」入居することは事実上できません。

逆に、特別養護老人ホーム(特養)は介護保険の施設サービスであり、所得に応じた軽減制度が整備されているため、年金月10万円でも自己負担を月7〜8万円程度に抑えて入居できる可能性があります。次章で詳しく比較します。

年金だけで入れる施設の現実:特養・サ高住・低所得型有料の比較

「年金だけで入れるかどうか」を判断するには、施設タイプごとの月額費用と入居要件を整理することが先決です。ここでは年金月10万円前後の高齢者が現実的に検討できる4タイプを比較します。

1. 特別養護老人ホーム(特養)

介護保険法に基づく公的施設で、原則として要介護3以上が対象(厚労省「介護サービス情報公表システム」)。多床室(4人部屋など)を選び、住民税非課税世帯で負担限度額認定を受ければ、月額自己負担は7〜9万円程度に収まるのが一般的です。

  • 施設サービス費(1割負担・要介護3):月約2万5,000円前後
  • 食費(第2段階):月約1万1,700円(日額390円×30日)
  • 居住費(多床室・第2段階):月約1万2,900円(日額430円×30日)
  • 日用品・医療費等:月1〜2万円

入所申込から実際の入所まで数ヶ月〜数年かかる地域もあるため、早めの申し込みが鍵です。

2. 養護老人ホーム

老人福祉法第11条に基づく措置入所の施設。「環境上の事情と経済的事情の両方」を理由に、市区町村長の判断で入所が決まります(厚労省「老人福祉法施行規則」)。本人または世帯が市町村民税の所得割を課されていないことが要件の一つで、生活保護受給者も対象です。

利用料は本人の所得に応じて算定されるため、年金月7〜8万円でも入所事例があります。介護が必要になった場合は、施設内で外部の居宅介護サービス(特定施設入居者生活介護)を利用する形を取ります。相談窓口は自治体の高齢福祉課・地域包括支援センターです。

3. 軽費老人ホーム(ケアハウス)

身体機能の低下や独居等で在宅生活が困難な60歳以上が、低額料金で入所できる施設。所得に応じた負担金(事務費)が設定され、年収150万円以下なら月の事務費はおおむね1万円程度から始まります(厚労省「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」)。生活費(食費・光熱費)と合わせて月7〜13万円程度に収まるケースが多く、自立度の高い低所得高齢者の選択肢です。

4. 民間のサ高住・住宅型有料(低所得対応型)

近年、月額10万円前後で入居できる住宅型有料老人ホームやサ高住が一部地域で増えています。年金収入の範囲で運営することを前提に、家賃を生活保護の住宅扶助基準(地域により単身月3.7万〜6.9万円)に設定するモデルです。ただし介護サービスは別料金になるため、要介護度が上がると総額が膨らみやすく、契約前に「想定される介護費用」のシミュレーションが必須です。

選び方の優先順位

年金だけで施設介護を成立させたい場合の優先順位は、(1)特養+負担限度額認定 → (2)養護老人ホーム → (3)軽費老人ホーム → (4)低所得対応の民間住居。要介護度・自立度・地域の空き状況に応じて選びます。

負担限度額認定の使い方:第1〜4段階の所得要件と月額

特養・老健・介護医療院などの介護保険施設に入所する際、食費・居住費を所得に応じて軽減するのが「介護保険負担限度額認定」です(厚労省「補足給付(負担限度額認定)」)。市区町村に申請して認定証の交付を受け、施設へ提示することで適用されます。

申請の前提:世帯全員が住民税非課税であること

原則として、本人および世帯全員(世帯分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税であることが要件です。さらに、預貯金等の資産要件もあり、第1段階は単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下、第2段階は単身650万円以下・夫婦1,650万円以下といった具合に段階が下がるごとに緩和されます(厚労省「介護保険最新情報Vol.1280」)。

第1〜第3段階の自己負担額(日額)

段階対象食費(日額)多床室(日額)ユニット型個室(日額)
第1段階生活保護受給者/老齢福祉年金受給者で世帯非課税300円0円820円
第2段階世帯非課税・年金収入等80.9万円以下390円430円880円
第3段階(1)世帯非課税・年金収入等80.9万円超〜120万円以下650円430円1,370円
第3段階(2)世帯非課税・年金収入等120万円超1,360円430円1,370円

※基準費用額(軽減なし)は食費1,445円/日、ユニット型個室2,066円/日(厚労省2024年改定値)。

月額換算で見るインパクト

たとえば第2段階・多床室を選ぶと、食費+居住費だけで月約2万4,600円(820円×30日)まで圧縮できます。これに介護サービス費(要介護3・1割負担で月約2.5万円)を足しても、施設サービス分は月5〜6万円台に収まる計算です。日用品・医療費等を加味しても、年金月10万円圏で対応可能な水準になります。

申請窓口と必要書類

申請は市区町村の介護保険担当課または地域包括支援センター。本人確認書類、預貯金通帳の写し、年金通知書、配偶者の所得証明等が必要です。認定証の有効期間は8月から翌7月までの1年で、毎年更新申請が必要です。

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高額介護サービス費の上限制度

負担限度額認定が「食費・居住費」を抑える制度であるのに対し、高額介護サービス費は「介護サービス費(1〜3割の自己負担)」が一定額を超えた場合に、超過分を後から払い戻す制度です(介護保険法第51条)。年金生活者にとって、月々の支払いの上限を確定させる重要なセーフティネットになります。

所得段階別の月額上限(令和3年8月改定以降)

区分上限額(月額)
課税所得690万円以上140,100円(世帯)
課税所得380万〜690万円未満93,000円(世帯)
課税所得380万円未満(一般)44,400円(世帯)
世帯全員が住民税非課税24,600円(世帯)
世帯非課税・合計所得+課税年金80万円以下24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護被保護者・老齢福祉年金受給者15,000円(世帯)

出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(令和3年8月施行)。

年金月10万円世帯の実額イメージ

年金月10万円・世帯非課税の単身高齢者が特養(要介護3・1割負担)に入所する場合、介護サービス費の自己負担は月約2万5,000円程度。上限24,600円を超える月はその超過分が払い戻されるため、介護サービス費分は事実上月2万4,600円で固定されます。

申請は1度きりでOK

初回のみ市区町村への申請が必要ですが、2回目以降は登録口座へ自動振込される自治体が大半です。引っ越しや世帯構成の変更があった場合のみ再申請します。なお、医療費自己負担と合算できる「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあり、医療費が嵩む高齢者はさらに自己負担を抑えられます。

負担限度額認定との併用効果

負担限度額認定で食費・居住費を抑え、高額介護サービス費で介護費自己負担に上限をかける――この2つを併用することで、住民税非課税世帯の特養入所者は月7〜9万円圏に総額を収めることが現実的になります。年金額がそれ以下であれば、後述の生活保護や生活福祉資金貸付を併用します。

生活保護受給者の施設入居:救護施設・養護老人ホーム・特養

年金収入が著しく少なく、預貯金も底を突いた高齢者の最後のセーフティネットが生活保護です。生活保護を受給すると介護扶助によって介護サービス自己負担がゼロになり、入居できる施設の選択肢が変わります(生活保護法第15条の2「介護扶助」)。

1. 救護施設(生活保護法第38条)

身体上または精神上著しい障害があるために独立して日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させる施設。介護保険施設ではないため要介護認定は不要で、生活費・食費・居住費はすべて生活保護費から施設へ支払われ、本人負担はほぼ発生しません。全国に約180施設あり、相談窓口は福祉事務所です(厚労省「生活保護法に基づく保護施設」)。

2. 養護老人ホーム(老人福祉法第11条)

環境上の理由および経済的理由により居宅で養護を受けることが困難な65歳以上の高齢者を、市町村長の措置によって入所させる施設。生活保護受給者も対象になります。措置入所のため、申込先は本人ではなく市区町村の高齢福祉課。生活保護受給中の入所では、原則として生活保護は廃止されず、生活扶助の一部が施設に支払われる形になります(自治体により取扱いに差あり)。

3. 特別養護老人ホーム(特養)

生活保護受給者でも特養に入所可能で、介護扶助によって介護サービス自己負担はゼロ、食費・居住費は負担限度額認定の第1段階が適用されます(食費月額9,000円・多床室0円)。生活保護受給者は個室の居住費が生活扶助の住宅扶助上限内に収まるユニット型個室への入所も可能ですが、自治体・施設による取扱い差があるため事前確認が必要です。

申請の流れ

  1. 福祉事務所または市区町村役場で生活保護を相談・申請
  2. 受給決定後、ケースワーカーと相談しながら施設選択
  3. 特養希望の場合は別途特養入所申込(待機期間あり)
  4. 養護老人ホーム希望の場合は高齢福祉課が措置判定
  5. 救護施設希望の場合はケースワーカーが施設と調整

「年金額が少なく生活保護未満」の場合の判断

年金月7万円未満で預貯金もない単身高齢者は、生活保護の最低生活費(東京都区部1級地で単身約13万円目安)に達していない可能性が高く、申請すれば「年金+生活保護費」で最低生活費まで補填される仕組みになっています。「年金をもらっているから生活保護は受けられない」というのは誤解で、自治体の生活保護相談窓口で実額をシミュレーションしてもらうのが第一歩です。

自治体助成と社会福祉協議会の生活福祉資金

制度の谷間――「生活保護の受給要件は満たさないが、年金だけでは施設費用を賄えない」――に置かれた高齢者を支えるのが、自治体独自の助成と生活福祉資金貸付制度です。年金月10〜13万円層には特に重要な選択肢になります。

生活福祉資金貸付制度(社会福祉協議会)

都道府県社会福祉協議会が窓口となり、低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯を対象に必要資金を貸し付ける制度です(厚労省「生活福祉資金貸付制度」)。介護費用との関係で覚えておきたいのは次の2つです。

  • 福祉資金(福祉費):介護サービス利用費、住宅改修費、療養費等を対象に最大580万円まで貸付可能。返済期間は20年以内、連帯保証人ありで無利子、なしで年1.5%。
  • 不動産担保型生活資金:高齢者が居住用不動産を担保にして毎月一定額の生活費(月額30万円以内)の貸付を受け、契約者死亡時に不動産を処分して返済する仕組み(リバースモーゲージ型)。土地評価額の7割が貸付限度。

申込窓口は市区町村の社会福祉協議会。民生委員と協働した相談支援を受けながら、家計再建のプランニングが行われます。

自治体独自の助成制度

自治体ごとに「社会福祉法人による利用者負担軽減制度」「家賃補助」「紙おむつ支給」などの助成があります。たとえば、社会福祉法人が運営する特養に入所する場合、低所得者を対象に介護サービス費・食費・居住費の25%(生活保護受給者は全額)が軽減される制度があり、申請すれば月数千〜1万円程度の追加軽減が可能です(厚労省「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」)。

地域包括支援センターを起点に

これらの制度はバラバラに存在し、本人が探すのは現実的ではありません。地域包括支援センターが「年金・資産・介護度に応じた制度マッピング」のハブになります。本人または家族が電話・窓口で相談すれば、必要に応じて社協・福祉事務所・自治体高齢福祉課への橋渡しまで担ってくれます。65歳以上の介護相談は地域包括支援センターが最初の窓口、と覚えておきましょう。

家族による私的扶助との関係

民法第877条で定められる「扶養義務」により、子・兄弟姉妹に経済的余力があれば援助を求められる場合があります。ただし、生活保護や負担限度額認定では「世帯分離」によって本人のみの所得で判定することが可能で、子の収入が認定要件を阻害しないケースも多いため、世帯構成の整理は早めに自治体担当者と相談することが推奨されます。

実例シミュレーション:年金月10万円・15万円のケース

具体的に「年金月10万円なら何が選べるか」「月15万円なら選択肢が広がるか」をシミュレーションします。いずれも住民税非課税、預貯金600万円以下、要介護3、単身高齢者の前提で計算します。

ケースA:年金月10万円・特養多床室(第2段階)

  • 介護サービス費(要介護3・1割負担):約25,000円/月
  • 食費(第2段階・390円×30日):11,700円/月
  • 居住費(多床室・第2段階・430円×30日):12,900円/月
  • 日用品・理美容・医療費等:約8,000円/月
  • 合計:約57,600円/月

高額介護サービス費の上限24,600円(個人15,000円)が適用されると、介護サービス費部分はさらに軽減される可能性があります。年金月10万円との差額約4万円は手元に残り、預貯金の取り崩しを最小限に抑えながら入所継続が可能です。

ケースB:年金月10万円・養護老人ホーム

養護老人ホームの利用料は所得に応じて算定されます。年金月10万円・年収120万円程度の場合、月の利用料は3万〜6万円台になることが多く(自治体ごとに算定式が異なるため要確認)、年金内で生活費を残しながら入所可能です。介護が必要になった場合は外部の居宅介護サービスを利用し、自己負担は1割(高額介護サービス費の上限あり)。

ケースC:年金月15万円・特養ユニット型個室(第3段階(1))

  • 介護サービス費(要介護3・1割負担):約25,000円/月
  • 食費(第3段階(1)・650円×30日):19,500円/月
  • 居住費(ユニット型個室・第3段階(1)・1,370円×30日):41,100円/月
  • 日用品・医療費等:約10,000円/月
  • 合計:約95,600円/月

高額介護サービス費の上限44,400円(一般)または24,600円(非課税)の対象になり、年金月15万円であれば手元に4〜5万円を残せる計算です。プライバシーを確保しつつ、年金内で生活が回るバランス型のシナリオになります。

ケースD:年金月7万円・生活保護併用

年金月7万円・預貯金ほぼ無しの単身高齢者の場合、最低生活費13万円程度(東京都区部1級地・単身)との差額約6万円を生活保護で補填する形になります。特養入所時は介護扶助により介護サービス自己負担はゼロ、食費・居住費は第1段階(食費月9,000円・多床室0円)が適用されます。本人の手元負担はほぼゼロに近づき、施設介護を継続できます。

シミュレーション結果のまとめ

年金月7〜15万円のいずれのケースでも、「特養+負担限度額認定+高額介護サービス費+(必要に応じて)生活保護」の組み合わせで施設介護を成立させられることが確認できます。重要なのは「自分の年金額と資産額で、どの制度が使えるか」を早めに地域包括支援センターと整理し、特養への申込を済ませておくことです。

まとめ:年金だけで施設介護を成立させる3ステップ

「年金だけで入れる老人ホームはあるか」という問いに対する答えは、「制度を組み合わせれば、年金月7〜15万円でも特養・養護老人ホーム・救護施設のいずれかに入居できる」です。重要なのは、自分の年金額と資産額に応じて使える制度をマッピングし、施設選びと申請を並行で進めること。

STEP1:年金額と住民税課税状況を確認する

年金通知書と住民税課税証明書を用意し、「世帯全員が住民税非課税かどうか」「合計所得金額+課税年金収入の合計はいくらか」を把握します。この2つで負担限度額認定の段階(第1〜第3段階)と高額介護サービス費の上限が決まります。

STEP2:地域包括支援センターで制度マッピング

65歳以上の介護相談の最初の窓口は地域包括支援センター。本人または家族が出向き、「年金額・資産額・要介護度」を伝えれば、特養申込・負担限度額認定・養護老人ホームの措置入所相談・生活福祉資金貸付など、必要な手続きの導線を一括で案内してもらえます。

STEP3:特養への複数申込と並行プランの準備

特養は地域によって数ヶ月〜数年の待機期間があるため、複数施設に同時申込するのが原則。並行して、待機期間中の生活を支えるために養護老人ホームの相談、生活福祉資金の活用、必要なら生活保護申請を検討します。預貯金が底を突きそうな場合は、早めに福祉事務所への生活保護相談を行いましょう。

年金生活でも諦めない

「年金が少ないから施設には入れない」は、日本の介護保険制度・生活保護制度・社会福祉法人軽減制度を考慮すれば必ずしも正しくありません。負担限度額認定で食費・居住費を抑え、高額介護サービス費で介護費に上限をかけ、必要なら養護老人ホームや生活保護を活用する。この組み合わせを知っているかどうかで、選択肢の幅は大きく変わります。本記事を起点に、まずはお住まいの地域包括支援センターに電話で相談してみてください。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

介護の現場・介護職の視点

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