厚労省、高齢者の薬の指針を改訂へ|発出から約8年「医療DXを盛り込む必要」、国民2000人調査も
介護職向け

厚労省、高齢者の薬の指針を改訂へ|発出から約8年「医療DXを盛り込む必要」、国民2000人調査も

厚生労働省は2026年6月24日の第22回高齢者医薬品適正使用検討会で、高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編・各論編)を令和8年度に改訂する方針を示した。電子処方箋やマイナ保険証など医療DXの普及を反映し、国民2000人へのポリファーマシー意識調査も実施する。介護職・ケアマネへの示唆を解説。

Quick Diagnosis

45

全6問・動画ガイド付き

性格から、合う働き方をみつける。

介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

無料で診断を始める
ポイント

この記事のポイント

厚生労働省は2026年6月24日に開いた第22回「高齢者医薬品適正使用検討会」で、高齢者の薬物療法の土台となる「高齢者の医薬品適正使用の指針」(総論編・各論編)を令和8年度に改訂する方針を示し、構成員から大筋で了承を得た。指針の発出から約8年が経ち、事務局は「医療DXが普及しているなど、現状の医療環境の変化について指針に盛り込む必要がある」と説明。電子処方箋やマイナ保険証の普及を織り込むほか、国民・患者2,000人を対象としたポリファーマシーの意識調査も実施する。ただし改訂内容そのものはこれから検討する段階で、決定した事実はまだない。介護職・ケアマネジャーにとっては、同じ検討会に示された実地調査で「薬剤師の連携相手のうちケアマネジャーは全体の1%」という数字が出ており、日々の服薬観察を減薬の議論にどう乗せるかが問われる改訂になる。

目次

介護の現場で「この利用者さん、最近ふらつきが増えた」「日中うとうとしている時間が長い」と感じたとき、その原因が薬にあるかもしれないと考えたことはあるだろうか。

高齢者が複数の病気を抱え、複数の医療機関から薬を処方された結果、薬の数が増えて有害事象や飲み間違いにつながる状態を「ポリファーマシー」と呼ぶ。国はこの問題に2017年から専門の検討会を設けて向き合ってきた。その到達点が、2018年5月にまとまった「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」と、2019年6月の「同(各論編(療養環境別))」である。特別養護老人ホームや在宅を含む療養環境ごとに、薬をどう確認し、どう見直すかの考え方を示した文書だ。

その指針が、いま初めて本体の改訂に向けて動き出した。2026年6月24日に開かれた第22回「高齢者医薬品適正使用検討会」で、厚生労働省は令和8年度に総論編・各論編を改訂する方針を示した。背景にあるのは、この8年で医療現場の景色が変わったことである。電子処方箋が動き出し、マイナ保険証で他院の処方が見えるようになった。指針が書かれた当時には存在しなかった仕組みだ。

この記事では、第22回検討会の一次資料と、7月14日に公表された議事録をもとに、何が決まり、何がまだ決まっていないのかを整理する。あわせて、同じ日に報告された実地調査のデータから、介護職・ケアマネジャーがこの改訂をどう受け止めるべきかを考える。結論を先に言えば、この改訂は医師と薬剤師だけの話ではない。

第22回検討会で示された「令和8年度に指針を改訂」の中身

令和8年度の取組は3つ。柱は指針の改訂

第22回検討会は2026年(令和8年)6月24日午前10時から12時まで、Web併用で開かれた。議題は「令和7年度事業の最終報告」「令和8年度事業について」「その他」の3本。座長は印南一路構成員(医療経済研究機構 副所長)が務め、座長代理は秋下雅弘構成員(東京都健康長寿医療センター 理事長)が務めている。事務局は厚生労働省医薬局医薬安全対策課である。

資料2「令和8年度事業について」で示された令和8年度の取組は、次の3点である。

第一に、「高齢者の医薬品適正使用の指針、療養環境別の指針の改訂」。第二に、「国民(患者)のポリファーマシーに対する意識調査」。第三に、「令和7年度調査で得られた調査結果の追加解析」。この3点について、事務局は議事録で「現状の医療環境を踏まえて、高齢者の医薬品適正使用の指針、総論編及び各論編の改訂を行うこと」と説明している。

「指針発出から約8年」が動機

なぜいま改訂なのか。資料2は理由を2つ挙げる。

ひとつは、指針が参考にしてきた日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」が2025年版として改訂されたこと。改訂された内容を指針に反映する必要がある。

もうひとつが医療環境の変化だ。事務局は議事録で「指針発出から約8年が経過しておりまして、医療DXが普及しているなど、現状の医療環境の変化について指針に盛り込む必要がある」と述べている。資料2はより具体的に「医療DXが普及していく中で、電子処方箋やマイナ保険証等の医療環境の変化について指針に盛り込む必要がある」と記す。指針が書かれた2018年当時、他の医療機関の処方をその場で確認する手段は、事実上お薬手帳しかなかった。

なお、この方向性自体は2025年12月25日の第21回検討会で「今後の取組みの方向性(案)」として示されたもので、第22回はそれを令和8年度の事業として提示し、構成員の意見を聞く場だった。

「決定」ではない。改訂の中身はこれから

ここは慎重に読む必要がある。第22回で確認されたのは「令和8年度に指針を改訂する」という方針までであり、改訂後の指針に何がどう書かれるかは決まっていない。改訂作業はこれから「改訂班」で進められる。

議事録では池端幸彦構成員(日本慢性期医療協会 副会長)が「令和8年度の取組、3点ともこれで結構かと思います」としたうえで、「今後、電子処方箋の普及ということを見据えて、その辺についても近未来も含めた対応を考えなくてはいけないのではないか」と述べ、指針への織り込みを求めた。

さらに議題終了後、秋下構成員がAIの扱いを提起している。「今回の指針の改訂で、デジタルの部分をしっかりと入れ込むというのは、その改訂班でも意識をしていただいてやる」としたうえで、「そうなりますと、AIのことをどう扱うかというのが、実は難しい問題があるのかなと、個人的には思っています」と発言。生成AIに処方内容を入力すると日本版抗コリン薬リスクスケールの判定がかなり正確に出てくる、という自身の試行にも触れ、可能な範囲で書き込むことも求められるのではないかと問いかけた。

これに対し印南座長は「AIの話は少し先かなと思っていたら、とんでもないスピードで、今、迫ってきている」と応じ、積極的に議題に取り上げる考えを示した。医薬安全対策課長は「何かここに書けるのか、あと8年度に何ができるかというところの限界もある」と述べ、やれる範囲で今年度検討するとした。AIの記載は、現時点では検討課題として提起された段階にとどまる。

印南座長は議題2を「いろいろな意見、御要望が出ましたので、ぜひそれらをできるだけ生かす形で今年度事業を進めていただき、事業実施の結果を検討会に報告していただきたい」と締めくくり、事務局は「来年度の検討会で報告させていただきます」と応じた。改訂の姿が見えるのは早くても2027年夏の検討会になる。

改訂の土台になるデータ|平均12.9剤、提案の半分は通らない

75歳以上・10剤以上の患者、平均12.9種類・95%に「慎重投与」薬

同じ日、検討会には令和7年度事業の最終報告(資料1-1・資料1-2)が示された。国立長寿医療研究センターの溝神文博構成員が代表を務めた調査で、指針改訂の土台になるデータである。ここに出てくる数字が、介護現場の実感とよく重なる。

薬局を対象にした調査では、埼玉県・広島県・兵庫県で「75歳以上・10種類以上の定期内服がある」来局患者651名が登録された。平均年齢は84.7歳。この人たちが飲んでいた薬は平均12.9種類にのぼり、95%の患者にPIMs(特に慎重な投与を要する薬物)が含まれていた。

症状として拾われたものも示されている。ふらつきが26%、日中の眠気が26%。いずれも介護職が日誌に書く「最近ふらつく」「よく寝ている」と同じ現象である。過去に副作用を経験したことがある患者は20%、「薬が多いから減らしたい」という減薬希望を持っていた患者は24%だった。10剤以上飲む後期高齢者の4人に1人が、自分から減らしたいと思っている計算になる。

処方提案142件のうち、実際に変わったのは75件

薬剤師が対象患者の57%に何らかの問題点があると評価し、合計142件の処方提案が行われた。そのうち実際に処方が変更されたのは75件で、処方変更率は52.8%。報告書は考察で「処方提案に対する変更率は約5割であった。今後、情報共有の質や処方提案の内容について詳細な検討が望まれる」としている。提案しても半分は通らない、という現実がここにある。

処方が変わった75件の理由の内訳を見ると、最も多いのが「患者の減薬希望」で57%。次いで「将来的な有害事象の懸念」32%、「薬物有害事象の可能性」23%、「重複投与・相互作用の可能性」19%と続く。本人が「減らしたい」と言えることが、処方を動かす最大の入口になっている。

病院側は加算が増えたが、定期カンファは27.3%どまり

病院を対象にした調査では、埼玉県・広島県・香川県の32病院が登録し、22病院・薬剤調整支援者26名から回答が得られた。事業期間中、「薬剤総合評価調整加算」「薬剤調整加算」「退院時薬剤情報連携加算」のいずれも算定件数が増加している。業務手順書とテンプレートを入れると業務プロセスが標準化され、算定が伸びるという構図だ。

一方で課題も明確に出た。ポリファーマシー対策の対象患者の選び方は「病棟業務等で気づいた患者」が50%で最多、全入院患者を対象とする病院は36.4%。多職種連携の方法は「必要に応じて関係する多職種に対面で声かけ」が81.8%に達したのに対し、定期的なポリファーマシー対策カンファレンスを実施している病院は27.3%にとどまった。連携の多くが、仕組みではなく個人の気づきと立ち話に依存している。

退院時に発行した薬物療法情報提供書についても、期間中にポリファーマシー対応を行った98例のうち、返答書を受け取ったのは35例(35.7%)だった。情報は出ているが、返ってこない。

阻害要因の自由記載には、現場の本音が並ぶ。「医師の理解が得られない」「かかりつけ処方は変更しない」「退院後に元の処方へ戻るケースが多い」「他院処方の開始理由・処方意図が不明」。報告書は考察で「院内での対策は進んでいるものの、退院後に元の処方に戻るケースや他院の処方意図が不明なケースがある」とし、切れ目のない情報共有体制の強化が必要だと結論づけた。せっかく入院中に整理した処方が、施設や自宅に戻ると元に戻る。この光景に心当たりのある介護職は少なくないはずだ。

介護現場から見た論点|「ケアマネ1%」と、調査からこぼれる人たち

薬剤師の連携相手、ケアマネジャーは651例中5件

資料1-2には、あまり注目されていないが介護職が直視すべき表がある。薬局の調査で、薬剤師が誰と連携したかを集計したものだ。

対象患者651名のうち、他職種と1人以上連携したのは183例(28%)。その連携相手の内訳は、医師が160件(25%)と圧倒的に多い。では他の職種はどうか。看護師は7件(1%)、ケアマネジャーは5件(1%)、病院薬剤師は5件(1%)である。

この数字の意味を、落ち着いて考えたい。対象は75歳以上で10種類以上の薬を飲む人たちだ。平均年齢84.7歳。この層の相当数は、要介護認定を受け、デイサービスに通い、ヘルパーの訪問を受け、ケアマネジャーが月に一度は自宅を訪れている人たちである。にもかかわらず、薬の見直しをめぐる連携において、ケアマネジャーが登場したのは651例中5件にとどまった。

ふらつきが26%、日中の眠気が26%の患者に出ていた。これらは薬剤起因性老年症候群として拾われた症状であり、同時に、介護職が最も高い頻度で観察している変化でもある。デイの送迎で足元がおぼつかない。レクリエーション中に寝てしまう。介護職は毎日それを見て、記録している。その観察が、薬を見直す議論の入口にほとんど接続していない。これが、指針改訂を前にした現状である。

促進要因のリストには、確かに「ケアマネ」の名前がある

希望がないわけではない。病院調査の「促進要因(自由記載)」で、薬剤調整支援者たちが挙げた突破口の5番目に「患者・地域の関与:患者・家族の減薬希望、ケアマネ・地域との情報連携」が入っている。現場の薬剤師は、ケアマネジャーとの情報連携が対策を前に進めると認識している。ただ、それが実際の連携件数として1%にとどまっているということは、認識と仕組みの間に大きな落差があるということだ。

先に見たとおり、処方が実際に変わった75件のうち57%は「患者の減薬希望」が理由だった。本人の「減らしたい」が最も強く処方を動かす。そして、その「減らしたい」を最初に聞くのは、多くの場合、診察室ではない。入浴介助の脱衣所であり、送迎車の助手席であり、居宅訪問の茶の間である。介護職とケアマネジャーは、処方を動かす最大のスイッチのすぐ隣に立っている。

国民2000人調査は、介護現場が見ている層を取りこぼす

令和8年度に行われる国民(患者)向けアンケート調査の設計にも、同じ構造が現れている。

別添の実施概要(案)によれば、調査はWeb調査会社が保有する個人モニター2,000人が対象。年齢区分は55〜64歳、65〜74歳、75〜84歳、85〜89歳の4区分、服用薬剤数は0種類、1〜5種類、6種類以上の3区分でサンプルを確保する。全25問で、ポリファーマシーという言葉の認知度、飲み忘れの頻度、自己判断で飲まないことがあるか、減薬を「言い出しにくい」と感じるか、お薬手帳やマイナ保険証で他院の薬を伝えているか、といった項目が並ぶ。

この設計の限界を、検討会でも構成員が指摘している。北澤京子構成員(京都薬科大学 非常勤講師)は「ウェブ調査会社が保有するモニターを対象とする調査であるということで、おのずと選択バイアスというか、モニターに登録していて、こういうアンケートに答えることができて、比較的元気な人を対象とする調査であることから、おのずと限界がある」と述べたうえで、こう続けた。「例えば、認知機能に少し障害があったり、あるいは介護を必要だったり、この調査からは漏れてしまう、でもポリファーマシーの害を受けやすい、そういう方のことも考慮して調査をしてもらいたい」。

この指摘は、介護職にとって決定的である。Webアンケートに自分で回答できる人は、自分で薬を管理できる人だ。介護現場が日々向き合っているのは、その手前にいる人たち、つまり服薬管理を家族や施設職員に委ねている人たちである。事務局への調査票案の問6は「あなたの飲み薬を誰が管理していますか」と尋ね、選択肢に「家族」「施設職員」を用意しているが、その本人がWebモニターとして回答できる状態にあるという前提は動かない。ポリファーマシーの害を最も受けやすい層の声は、この2,000人の中には入りにくい。

日看協の要望で「誰に相談したか」が加わる見込み

ただ、この検討会で介護・看護側にとって前向きな動きもあった。片岡弥恵子構成員(日本看護協会 常任理事)が、調査項目の追加を求めたのである。

片岡構成員は「やはり多職種の連携が、非常に重要だということが示されておりました。特に、看護職は訪問看護等で在宅に入ったりもしておりまして、患者さんや様々な方のお薬に関する相談等も受けている」としたうえで、「ぜひ質問の項目の中に、このような薬の量ですとか、種類に関しての相談をどういう医療者にしたことがあるかというようなことも含めていただけますと、看護職が今後ポリファーマシーに関してどのような取組をしたらいいかということの参考にもなります」と要望した。事務局は「相談の部分に関しては、修正させていただきます」と応じている。

これが実現すれば、「患者が薬のことを誰に相談しているか」という全国データが初めて出ることになる。訪問看護師に相談している人がどれだけいるのか。ヘルパーやケアマネジャーに漏らしている人がどれだけいるのか。もしそこに一定の数字が立てば、次の指針改訂やその先の報酬改定の議論で、介護職・看護職の観察を制度的な導線として位置づける根拠になり得る。1%という現状を動かすのは、こうした数字である。

改訂を待たずにできること|介護職の観察を「使える情報」に変える

観察を「症状」ではなく「時期」とセットで記録する

指針の改訂は令和8年度いっぱいをかけて進み、内容が見えるのは早くても2027年夏の検討会である。では、それまで介護職にできることはないのか。今回の調査データは、むしろ明日からの実務にそのまま使えるヒントを含んでいる。

調査で拾われた症状は、ふらつき26%、日中の眠気26%だった。介護職はこれらをすでに見ている。問題は、その観察が「最近ふらつきがある」で止まってしまうと、薬の話につながらないことだ。処方を見直す判断で決定的に効くのは、「いつから」である。

薬が変わった時期と症状が出た時期が重なっていれば、それは薬剤起因性を疑う具体的な材料になる。「先月の受診で薬が1種類増えてから、午後の傾眠が目立つようになった」という記録は、単なる「傾眠あり」とはまったく重みが違う。逆に言えば、日付が入っていない観察は、薬剤師や医師が使える情報にならない。処方の変更日は、お薬手帳を見れば分かる。

「減らしたい」を聞いたら、それは記録すべき情報である

今回のデータで最も実務的な示唆は、処方が変わった75件のうち57%の理由が「患者の減薬希望」だったという点だ。本人の意思表示が、処方を動かす最大の要因になっている。

そして調査票案の問21は、減薬の相談について「言い出しにくい」と感じることがあるかを尋ねている。この設問が置かれていること自体、国が「患者は医師に言い出せないのではないか」と疑っていることの表れである。

利用者が介護職にだけ「薬が多くてね」「本当は飲みたくないんだ」とこぼす場面は珍しくない。診察室では「変わりありません」と答える人が、送迎車の中では本音を言う。その一言は、雑談ではなく臨床情報だ。記録に残し、看護職やケアマネジャーに渡し、居宅療養管理指導や訪問薬剤管理指導が入っていれば薬剤師に伝える。それが、処方を動かす57%の側に本人を乗せる現実的な方法である。

ただし線引きは守りたい。介護職が「この薬は減らしたほうがいい」と判断したり、利用者に自己判断での中断を勧めたりすることは、明確に領域外である。指針も繰り返し強調しているのは、単なる減薬ではなく薬物療法の適正化、つまり有害事象の回避と、過少医療の回避の両立だ。特にベンゾジアゼピン系のように急な中止で離脱症状が出る薬もある。介護職の役割は、判断ではなく観察と橋渡しにある。

お薬手帳とマイナ保険証は、改訂の焦点そのものになる

調査票案の問22は、他院で処方された薬や市販薬を、受診時に口頭やお薬手帳、マイナ保険証で伝えているかを尋ねる。問24はさらに踏み込み、「お薬手帳やマイナ保険証を医療機関や薬局で提示することで、服用している薬の問題点を医師や薬剤師などの医療者が見つける可能性が高まることを知っていますか」と聞いている。

そして伝えていない場合の理由(問23)には、「伝えるのを忘れてしまう」「伝えるのが手間に感じる」「医療者から特に聞かれない」「医療者に任せている」といった選択肢が並ぶ。ここは介護職が直接手を出せる領域だ。受診同行や施設からの通院支援の際、お薬手帳を持たせる、他院の分もまとめて出す、市販薬やサプリの服用も伝わるようにしておく。地味だが、指針が改訂で強化しようとしている情報連携の入口は、この手の作業でできている。

今回の改訂で医療DXの記載が入れば、電子処方箋やマイナ保険証で他院の処方が参照できることが前提の書きぶりになる可能性が高い。ただし、施設入所者や在宅の高齢者がマイナ保険証を実際に使えているかは別問題である。本人が持ち歩けない、暗証番号が分からない、カードリーダーの操作ができない。ここでも、制度の前提と現場の実態の間を埋めるのは介護職の手作業になる。改訂される指針が、その手作業をどこまで見込んで書かれるかが、介護現場から見た最大の注目点になる。

2028年度の同時改定を見据えた動きでもある

もうひとつ、この検討会には制度全体を見据えた発言があった。池端構成員は中医協委員の経験を踏まえ、診療報酬の加算がインセンティブとして強く効くこと、処方する医師の意識改革が重要であることを指摘したうえで、「局をまたいで、また、それも含めてR10年度の改定に向けて、そういったことも意識しながら、どういうデータ、どういう資料が必要かということを解析し、そして、その調査を分析するという、そういう意識を持ちながら、ぜひ調査等々を進めていただければ」と述べている。

令和10年度、つまり2028年度は診療報酬と介護報酬の同時改定の年にあたる。今回の指針改訂と国民調査は、単独の文書更新ではなく、その先の報酬設計に向けたデータづくりでもあるという読み方ができる。実際、病院調査では加算の存在が実装の最大の促進要因として挙げられていた。制度は加算で動く。そして加算の要件は、こうした調査データを根拠に設計される。

介護職・ケアマネジャーの観察がポリファーマシー対策の導線として制度に書き込まれるかどうかは、今年度の国民調査に「誰に相談したか」がどう入り、どんな数字が出るかにかかっている。今回の検討会は、その入口だった。

参考文献・出典

まとめ

2026年6月24日の第22回高齢者医薬品適正使用検討会で、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針」総論編・各論編を令和8年度に改訂する方針を示した。理由は2つ。参考にしてきた日本老年医学会のガイドラインが2025年版に改訂されたことと、事務局が「指針発出から約8年」と表現した医療環境の変化、すなわち電子処方箋やマイナ保険証をはじめとする医療DXの普及である。あわせて国民・患者2,000人へのポリファーマシー意識調査と、令和7年度調査の追加解析も行う。ただし改訂の中身はこれからで、AIの扱いも検討課題として提起された段階にすぎない。結果が検討会に報告されるのは2027年の夏になる見込みだ。

同じ日に示された実地調査は、介護現場にとって直視すべき数字を含んでいた。75歳以上・10剤以上の来局患者651名は平均12.9種類を服用し、95%にPIMsが含まれ、26%にふらつきが、26%に日中の眠気が見られた。処方が変わった75件のうち57%は「患者の減薬希望」が理由だった一方、薬剤師の連携相手としてケアマネジャーが登場したのは全体の1%にとどまる。介護職が毎日見ている変化と、毎日聞いている「薬を減らしたい」という一言は、いまのところ制度の導線にほとんど乗っていない。

それでも、日本看護協会の構成員の要望により、国民調査に「薬について誰に相談したか」を尋ねる項目が加わる見込みとなった。そこにどんな数字が立つかは、2028年度の同時改定に向けた議論にもつながっていく。指針が改訂されるのを待つ必要はない。薬が変わった日付とともに変化を記録すること、「減らしたい」という言葉を臨床情報として扱うこと、受診にお薬手帳を確実に持たせること。改訂後の指針に介護現場の存在が書き込まれるとすれば、その根拠になるのは、今日の記録の積み重ねである。

あなたの事業所では、利用者の「薬が多くてね」という一言は、誰のところまで届いているだろうか。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連トピック

ご家族・ご利用者の視点

同じテーマをご家族・ご利用者の方の視点から書いた記事。視野を広げるためのヒントとして。