
ベースアップ加算とは
介護職員等ベースアップ等支援加算(2022年10月創設)は2024年6月の介護報酬改定で処遇改善加算・特定処遇改善加算と統合され『介護職員等処遇改善加算』に一本化された。
この記事のポイント
ベースアップ加算(介護職員等ベースアップ等支援加算)は、2022年10月に介護職の賃上げ施策として創設された介護報酬上の加算。月額平均9,000円相当の賃上げを目的とし、賃上げ分の2/3を基本給アップに充てる要件が設けられた。2024年6月の介護報酬改定で『処遇改善加算』『特定処遇改善加算』と統合され、現在は『介護職員等処遇改善加算』として一本化されている。
目次
ベースアップ加算の創設背景と仕組み
ベースアップ加算は、2021年11月の政府『コロナ克服・新時代開拓のための経済対策』を受け、介護職の賃上げを継続的に支援する仕組みとして2022年10月に創設された。同年2月から9月まで実施された『介護職員処遇改善支援補助金』(補助金形式での月額9,000円相当賃上げ)の後継として、介護報酬上の加算化された経緯がある。
算定要件は以下の3点:①賃上げ実施計画書の提出、②賃上げ分の2/3以上を基本給または毎月の手当として支給(残り1/3は賞与等可)、③キャリアパス要件・職場環境等要件の充足。月額平均9,000円の賃上げを目指す制度設計で、介護現場の人材確保策の柱として位置付けられた。
2022年創設から2024年統合までの流れ
- 2022年2月〜9月:介護職員処遇改善支援補助金(補助金形式、月額9,000円相当)
- 2022年10月〜2024年5月:介護職員等ベースアップ等支援加算(介護報酬上の加算化、3区分Ⅰ〜Ⅲ)
- 2024年6月:介護報酬改定で『介護職員処遇改善加算』『介護職員等特定処遇改善加算』『介護職員等ベースアップ等支援加算』の3加算を統合 → 『介護職員等処遇改善加算』に一本化(4区分Ⅰ〜Ⅳ)
- 2024年6月〜現在:統合後の処遇改善加算で運用、賃上げ目標は継続
統合の目的は事務負担軽減と加算体系の簡素化。事業所側は4区分から1区分を選択して算定する形となった。
旧3加算の単位数と統合後の関係
統合前の旧3加算は以下の体系だった(概算、サービス種類により変動):
- 処遇改善加算:基本給アップ向け、4区分Ⅰ〜Ⅳ、最大加算率6%程度
- 特定処遇改善加算:経験技能のある介護福祉士向け、2区分Ⅰ〜Ⅱ、最大加算率3%程度
- ベースアップ加算:月額9,000円相当の賃上げ、3区分Ⅰ〜Ⅲ、最大加算率2.4%程度
2024年6月統合後の介護職員等処遇改善加算は、3加算の合算分をベースに4区分(Ⅰ〜Ⅳ)で再構成。介護福祉士比率・キャリアパス要件・職場環境要件の組み合わせで加算率が決まる仕組みとなった。
旧ベースアップ加算と統合後加算の違い
| 項目 | 旧ベースアップ加算 | 統合後 処遇改善加算 |
|---|---|---|
| 区分数 | 3区分Ⅰ〜Ⅲ | 4区分Ⅰ〜Ⅳ |
| 算定様式 | 3加算別々に申請 | 1加算で一本化 |
| 賃上げ要件 | 2/3を基本給 | 2/3を基本給(継承) |
| キャリアパス要件 | 各加算で別 | 統合・段階化 |
| 事務負担 | 3加算分の書類 | 大幅軽減 |
賃上げ実施の根本要件は継承されたため、現場介護職の手取り給与水準は維持されている。
介護現場でのチェック方法
自分の事業所が処遇改善加算をどの区分で算定し、自分の給与にどう反映されているかは以下で確認できる。
- 給与明細:『処遇改善手当』『ベースアップ手当』等の項目で月額分配額を確認
- 就業規則の賃金規定:法人が定める処遇改善加算分配ルール(基本給組込み・別途手当・賞与配分)
- 処遇改善計画書:年1回事業所が作成、職員代表に共有義務。写しを請求可能
- 処遇改善実績報告書:年度終了後に都道府県に提出。事業所内での共有を求めることも
転職時の比較材料としても、求人票の『処遇改善加算区分』『ベースアップ分配方法』を採用面接で確認すると、実質月収の透明性が上がる。
よくある質問
Q1. 2024年6月以降『ベースアップ加算』という名称は使われない?
A. 制度上は『介護職員等処遇改善加算』に統合されたため、加算名としてのベースアップ加算は廃止。ただし給与明細上で『ベースアップ手当』として残している事業所も多い。
Q2. 賃上げ目標『月額9,000円相当』は達成された?
A. 厚労省調査では概ね達成、ただし事業所間・地域間で差がある。介護労働実態調査で継続的にモニタリングされている。
Q3. パート・派遣にも対象?
A. 算定要件を満たす職員(介護職員等)であれば対象。配分比率は事業所の処遇改善計画書で定める。
Q4. 統合で給与が下がる事例は?
A. 制度変更直後の混乱期に一部報告あり。基本給組込み分は退職金・賞与算定基礎に反映されるため長期では有利。
参考資料
- [1]介護職員等処遇改善加算- 厚生労働省
- [2]令和6年度介護報酬改定の概要- 厚生労働省
- [3]令和5年度介護労働実態調査- 介護労働安定センター
- [4]介護職員処遇改善支援補助金- 厚生労働省
まとめ
ベースアップ加算は2022年10月創設の介護職賃上げ加算で、2024年6月に処遇改善加算・特定処遇改善加算と統合され『介護職員等処遇改善加算』に一本化された。賃上げ実施の根本要件(2/3基本給組込み)は統合後も継承され、現場介護職の給与水準は維持されている。介護職は給与明細・就業規則・処遇改善計画書で自身への分配状況を確認し、転職時の比較材料としても活用したい。
統合後の介護職員等処遇改善加算の単位数体系
2024年6月以降の介護職員等処遇改善加算は、サービス種別ごとに単位数が定められる。代表例(基本サービス費に対する加算率):
- 訪問介護:加算Ⅰ24.5%、Ⅱ22.4%、Ⅲ18.2%、Ⅳ14.5%
- 通所介護:加算Ⅰ9.2%、Ⅱ9.0%、Ⅲ8.0%、Ⅳ6.4%
- 特養(介護老人福祉施設):加算Ⅰ14.0%、Ⅱ13.6%、Ⅲ11.3%、Ⅳ9.0%
- 認知症グループホーム:加算Ⅰ18.6%、Ⅱ17.8%、Ⅲ15.5%、Ⅳ12.5%
加算率は事業所の介護福祉士比率・キャリアパス要件・職場環境要件の充足度で4区分から選択。同じ施設形態でも事業所により月額数万円〜十数万円の差が生じる。
求職者・転職検討者が確認すべき4ポイント
転職時、求人票・採用面接で処遇改善加算について確認すべき4項目。
- 算定区分(Ⅰ〜Ⅳ):求人票に明記されている場合あり。明記なしなら採用面接で必ず質問
- 分配方法:基本給組込み(賞与・退職金にも反映)/毎月手当/賞与時一括の比率
- キャリアパス要件の段階:法人内の昇給ルート(資格取得・経験年数・役職)が透明化されているか
- 処遇改善計画書・実績報告書の閲覧可否:年1回作成・職員代表共有が義務。閲覧拒否する事業所は要警戒
同じ介護福祉士でも、加算Ⅰと加算Ⅳの法人で年収50〜80万円差が出る事例も多い。転職時の比較材料として最重要項目の一つ。
ベースアップ加算の歴史的意義
- 介護職賃上げの政策化:補助金(2022年2月〜9月)から介護報酬加算(2022年10月〜)への移行で、賃上げが恒常的政策に
- 2/3基本給組込み原則:単発手当ではなく基本給アップを要件化、長期キャリアの賃金水準向上に直結
- 処遇改善加算統合(2024年6月):3加算合算で事務負担軽減、加算率の見える化
- 政策的賃上げの継続シグナル:介護報酬改定の度に処遇改善加算が拡充される傾向、業界全体の賃金水準上昇の原動力
- 介護人材確保の中核施策:賃金改善で離職率低下・新規参入促進を狙う、政府『介護人材確保対策』の柱の一つ
2027年度以降も継続的な見直しが議論されており、介護職の賃金は政策的に下支えされる構造が確立している。
統合後加算の算定要件4区分の取得手順
2024年6月以降の介護職員等処遇改善加算は、4区分(Ⅰ〜Ⅳ)のいずれかを選択して算定する。区分の取得手順。
Step1:キャリアパス要件の確認。Ⅰ〜Ⅴまでの5段階あり、上位区分ほど高度な要件。①職位等級と賃金規程の明示、②昇給ルール、③研修体系、④資格取得支援、⑤定量的キャリア評価。
Step2:職場環境等要件の充足。①入職促進、②キャリアアップ、③両立支援、④腰痛・健康管理、⑤生産性向上、⑥職員育成。Ⅰ区分なら6取組必須、下位区分は要件緩和。
Step3:賃上げ実施計画書の作成。事業所内の介護職員別に、月額賃金改善計画額・基本給組込み比率・賞与組込み比率を明記。職員代表との協議要。
Step4:都道府県への届出。年1回、計画書を提出。実績は翌年に実績報告書として再提出。
Step5:算定開始・継続。届出受理後、加算算定開始。月次の処遇改善実施状況をモニタリング。
区分上げのための法人内アクション
同じ事業所でも、加算Ⅳ→Ⅰへ区分上げすることで月額数万円の賃金原資を確保できる。区分上げの実践アクション。
- 介護福祉士比率の向上:事業所内の介護福祉士配置比率がⅠ区分の前提。資格取得支援(実務者研修・国家試験受験支援)の体系化が必要
- キャリアパス制度の見える化:職位等級・昇給ピッチ・研修体系を就業規則と人事考課規程で明文化
- 職場環境改善6取組の実装:①新人研修プログラム、②ICT導入、③育児・介護休業の取りやすさ、④腰痛予防体制、⑤生産性向上指標、⑥職員アンケート定例実施
- 処遇改善計画書の精緻化:単なる『手当として配分』ではなく、職員別の賃金改善額・基本給組込み比率の明示
- 外部支援活用:社労士・介護経営コンサルタントへの相談、自治体の介護人材確保支援補助金活用
2027年以降の処遇改善加算の見通し
- 2025年度介護報酬改定議論:介護給付費分科会で処遇改善加算のさらなる拡充が論点。賃上げ目標の引き上げ(月額1万円〜1.5万円相当への増額)が検討される見通し
- 介護人材確保策との連動:外国人介護人材(特定技能・育成就労)の受入拡大、テクノロジー活用支援、潜在介護福祉士の復職支援と並ぶ柱として位置付け
- 賃金水準の業界全体引上げ:介護労働実態調査での賃金水準モニタリング継続、医療・福祉他職種との格差是正
- 事業所間格差の是正:処遇改善加算未算定事業所への対応、加算区分Ⅳ取得への支援強化
- 介護保険財源との整合:保険料率・自己負担割合の見直しと連動した賃上げ財源確保
介護職の賃金改善は『一過性の施策』ではなく『継続的な政策テーマ』として確立。介護職のキャリア設計に重要な変数。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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