
生活支援体制整備事業とは
生活支援体制整備事業は介護保険の地域支援事業の一つ。生活支援コーディネーター(SC)の配置と協議体の設置により、高齢者の生活支援・介護予防の地域資源づくりを進める仕組みを解説します。
生活支援体制整備事業の結論
生活支援体制整備事業とは、介護保険法第115条の45に基づく地域支援事業(包括的支援事業)の一つで、市町村が主体となり生活支援コーディネーター(SC)の配置と協議体の設置を通じて、高齢者の生活支援・介護予防を担う地域資源を発掘・育成する取り組みです。住民やNPO、企業など多様な主体による支え合いの体制づくりを進めます。
目次
生活支援体制整備事業の概要と位置づけ
生活支援体制整備事業とは
生活支援体制整備事業は、介護保険法第115条の45第2項第5号を根拠とする地域支援事業のうち、包括的支援事業(社会保障充実分)に位置づけられる事業です。2015年の介護保険制度改正で本格化し、平成30年度(2018年度)までに全市町村が取り組むこととされました。
背景には、高齢者人口が増え続ける一方で支え手となる現役世代が減っていく「2025年・2040年問題」があります。介護保険サービスだけで高齢者の暮らしを支えるには限界があり、住み慣れた地域で最期まで生活し続けるには、住民同士の支え合い(互助)を含めた地域包括ケアシステムの構築が欠かせません。
しかし「地域の支え合い」は放っておいて育つものではありません。そこで、既存の地域資源を発掘し、足りないサービスや担い手を新たに生み出す「仕掛け役」として、生活支援コーディネーター(SC)を配置し、関係者が連携する場として協議体を設置するのが、この事業の中心的な仕組みです。事業の標準額は、第1層(市町村区域)が8,000千円×市町村数、第2層(中学校区域等)が4,000千円×日常生活圏域数とされています。
生活支援体制整備事業のSCと協議体の役割
2本柱:生活支援コーディネーター(SC)と協議体
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)
SCは市町村が定める区域ごとに、次の3つのコーディネート機能を担います。
- 資源開発:地域に不足するサービスの創出、サービスの担い手の養成、元気な高齢者が担い手として活動する場の確保
- ネットワーク構築:関係者間の情報共有、サービス提供主体間の連携の体制づくり
- ニーズと取組のマッチング:地域の支援ニーズとサービス提供主体の活動をつなぐ
協議体
協議体は、SCと多様なサービス提供主体が参画する定期的な情報共有・連携強化の場で、次の役割を担います。
- SCの組織的な補完
- 地域ニーズや既存の地域資源の把握・見える化(実態調査や地域資源マップの作成等)
- 企画・立案・方針策定を行う場
- 地域づくりにおける意識の統一・情報交換の場
協議体の構成団体は、市町村・地域包括支援センターなどの行政機関のほか、NPO法人、社会福祉法人、社会福祉協議会、地縁組織、協同組合、民間企業、ボランティア団体、介護サービス事業者、シルバー人材センターなど、地域の関係者で構成されます。
生活支援体制整備事業の重層構造とデータ
第1層・第2層の重層的な構造
SCと協議体は、地域の広さに応じて重層的に配置されます。
- 第1層(市町村区域):主に資源開発(不足するサービスや担い手の創出・養成、活動の場の確保)を中心に、市町村全域での体制づくりを担う。
- 第2層(日常生活圏域=中学校区域等):第1層の機能のもとで、地域ニーズと資源の見える化、関係者のネットワーク化、担い手の養成、ニーズとサービスのマッチングなど、より具体的な活動を展開する。
なお、個々のサービス事業主体が利用者と提供者をマッチングする「第3層」のコーディネート機能は、本事業の対象外です。
配置・設置の状況(厚生労働省 令和2年度調査)
厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況」によると、協議体の設置状況は次のとおりです。
- 第1層の協議体設置あり:1,626市町村(93.4%)
- 第2層の協議体設置あり:1,126市町村(64.7%)
第1層はほぼ全国で設置が進む一方、より住民に近い第2層の整備は道半ばであることがわかります。
令和6年度の制度拡充
令和6年度(2024年度)の地域支援事業実施要綱の改正で、SCが住民・医療介護関係者・民間企業などと地域課題の洗い出しや解決策の検討を行う「住民参画・官民連携推進事業」が新設されました(標準額4,000千円×市町村数)。タウンミーティングやワークショップを通じて、官民連携による新たな生活支援・介護予防の取り組みを企画・実装する狙いがあります。
生活支援体制整備事業と総合事業・SCの違い
総合事業・生活支援コーディネーターとの違い
混同されやすい関連用語との関係を整理します。いずれも地域支援事業の中の取り組みですが、役割が異なります。
| 用語 | 位置づけ | 役割の中心 |
|---|---|---|
| 生活支援体制整備事業 | 包括的支援事業の一つ(本記事) | SCの配置と協議体の設置による「体制づくり」そのもの |
| 生活支援コーディネーター(SC) | 本事業で配置される「人」 | 資源開発・ネットワーク構築・マッチングの実働役 |
| 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業) | 地域支援事業のもう一つの柱 | 要支援者等への訪問型・通所型サービスの提供 |
イメージとしては、総合事業が「住民や多様な主体による生活支援サービスの提供」という器であり、生活支援体制整備事業は、その器に盛るサービスや担い手を地域で生み出す「土壌づくり」を担います。そして、その土壌を耕す実働役がSCで、関係者が集う場が協議体という関係です。
生活支援体制整備事業を介護職が知る意義
介護現場で働く人・家族が知っておきたいポイント
介護職・専門職にとって:SCや協議体は、ケアプランだけでは支えきれない「制度の隙間」を埋める地域資源の窓口です。通いの場、配食・見守り、外出支援などの社会資源を把握しておくと、利用者の在宅生活を多面的に支えられます。地域包括支援センターに配置されるSCも多く、連携先として意識する価値があります。
利用者・家族にとって:要介護認定や介護保険サービスの対象にならない「ちょっとした困りごと」(買い物、ゴミ出し、話し相手など)も、地域の支え合い活動でカバーできる場合があります。お住まいの市町村やSC・協議体に相談すると、地域のサロンやボランティア活動などの情報が得られます。
生活支援体制整備事業のよくある質問
よくある質問
生活支援体制整備事業の実施主体は誰ですか?
市町村が実施主体です。ただし、生活支援体制整備事業を含む包括的支援事業(社会保障充実分)は、地域包括支援センター以外のNPO法人や社会福祉協議会などに委託することも認められています。
第1層と第2層の違いは何ですか?
第1層は市町村区域全体を対象とし、主に資源開発を中心とした体制づくりを担います。第2層は日常生活圏域(中学校区域等)を対象とし、第1層の方針のもとでより具体的な活動を展開します。
生活支援コーディネーターに資格は必要ですか?
特定の国家資格は要件とされていません。地域の実情に応じて、社会福祉協議会の職員や地域包括支援センターの職員、住民活動の経験者など多様な人材が担っています。充て職による任用は望ましくないとされ、地域でコーディネート機能を適切に担える人が選ばれます。
総合事業との関係はどうなっていますか?
どちらも地域支援事業の一部です。総合事業が生活支援サービスを「提供する」仕組みであるのに対し、生活支援体制整備事業はそのサービスや担い手を地域で「生み出す・つなぐ」体制づくりを担う関係にあります。
生活支援体制整備事業の参考資料
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生活支援体制整備事業のまとめ
まとめ
生活支援体制整備事業は、介護保険法に基づく地域支援事業の一つで、生活支援コーディネーター(SC)の配置と協議体の設置によって、高齢者の生活支援・介護予防を担う地域資源を発掘・育成する仕組みです。市町村が主体となり、住民・NPO・企業など多様な主体が連携する「支え合いの体制づくり」を進めます。介護サービスだけでは支えきれない暮らしの困りごとを地域全体で支える、地域包括ケアシステムの土台となる事業といえます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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