
在宅医療連携拠点とは
在宅医療連携拠点は、市町村が介護保険法地域支援事業として運営する在宅医療・介護連携推進事業の中核機能。2015年度から段階的に整備され2018年に全市町村実施となった8つの取組と、地域包括支援センターとの関係、家族介護への意義をやさしく解説。
この記事のポイント
在宅医療連携拠点とは、介護保険法に基づく市町村の在宅医療・介護連携推進事業(地域支援事業)の運営拠点であり、医師会・地域の中核病院・市町村などが運営主体となって医療と介護をつなぐ役割を担う機能をいいます。2015年度から段階的に市町村事業として制度化され、2018年4月までに全国すべての市区町村で実施されるようになりました。8つの取組(資源把握・課題抽出・体制構築・情報共有・相談支援・研修・住民啓発・市町村間連携)を通じて、自宅で最期まで暮らせる地域医療体制を支える基盤となっています。
目次
在宅医療連携拠点の制度的位置づけ
在宅医療連携拠点は、2011〜2013年度に厚生労働省が「在宅医療連携拠点事業」としてモデル事業を実施した後、2014年の介護保険法改正で市町村の地域支援事業(在宅医療・介護連携推進事業)として制度化されました。2015年度から段階的に各市町村で実施が始まり、2018年4月にはすべての市区町村で実施が義務化されています。
制度の目的は、医療と介護の両方を必要とする高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるよう、医療機関と介護事業所の連携を市町村単位で組織化することにあります。運営主体は市町村ですが、実務は地区医師会・在宅療養支援診療所・中核病院・地域包括支援センターなどに委託されるケースが多く、各地域の医療資源に応じて柔軟に設計されています。
「拠点」と「事業」の使い分け
「在宅医療連携拠点」という用語は、文脈によって次の2つの意味で使われます。混同しやすいため整理しておきます。
- 狭義の拠点:実際に連携コーディネーターが常駐し、相談支援・多職種研修・情報共有ツール運用を行う物理的な拠点(医師会事務局・在宅療養支援診療所など)
- 広義の事業機能:市町村が地域支援事業として運営する「在宅医療・介護連携推進事業」全体の総称。8つの取組を市町村単位で進める仕組み
厚生労働省の2025年3月発行「在宅医療に必要な連携を担う拠点の整備・運用に関するガイドブック」では、医療計画上の「拠点」と介護保険法上の「事業」を明確に区別しつつ、両者が一体的に機能することの重要性が示されています。
在宅医療・介護連携推進事業の8つの取組
在宅医療連携拠点が担う事業内容は、厚生労働省の事業実施要綱で次の8つの取組(事業項目ア〜ク)として整理されています。すべての市町村が実施する必須事業です。
| 項目 | 取組内容 | 主な活動例 |
|---|---|---|
| ア | 地域の医療・介護資源の把握 | 在宅医療を提供する診療所・訪問看護ステーション・介護事業所のマッピング、資源マップ作成 |
| イ | 在宅医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討 | 多職種会議の開催、地域課題分析、対応策の協議 |
| ウ | 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制構築推進 | 入退院時連携ルール策定、退院支援パス整備 |
| エ | 医療・介護関係者の情報共有支援 | 連携シート・ICT情報共有システム導入、共通フォーマット整備 |
| オ | 在宅医療・介護連携に関する相談支援 | 連携コーディネーターによる窓口設置、ケアマネからの相談対応 |
| カ | 医療・介護関係者の研修 | 多職種研修会、ACP研修、認知症研修の企画運営 |
| キ | 地域住民への普及啓発 | 在宅医療市民講座、リーフレット作成、看取りに関する啓発 |
| ク | 関係市区町村の連携 | 二次医療圏単位での広域連携、隣接市町村との情報共有 |
連携コーディネーターの配置
多くの市町村では、拠点に在宅医療・介護連携コーディネーター(看護師・社会福祉士・ケアマネジャー等の有資格者)を1〜2名配置し、医療職と介護職の橋渡しを担っています。コーディネーターは事業項目オ(相談支援)の中核を担い、ケアマネジャーや退院支援看護師からの「どの在宅医に依頼すればよいか」「24時間体制の訪問看護はどこにあるか」といった具体的相談に応じます。
入退院支援から看取りまでの連携プロセス
在宅医療連携拠点が実際に動く典型的な流れを、入院から在宅看取りまでの場面で整理します。各場面で拠点が果たす機能を意識すると、家族介護者として何を頼れるかが見えてきます。
ステップ1:入院時の情報共有
急性期病院に入院した時点で、病院の入退院支援看護師が拠点の連携シートを使ってケアマネジャーへ入院連絡を行います。介護保険サービス利用者の場合、入院初日から退院後の在宅復帰を見据えた多職種連携がスタートします。
ステップ2:退院前カンファレンス
退院が見えてきた段階で、病院・在宅医・訪問看護師・ケアマネジャー・本人家族による退院前カンファレンスを開催します。拠点が整備した共通フォーマット(連携シート)を使うことで、医療情報と介護情報の重複や抜けを防ぎます。
ステップ3:在宅療養開始
退院後は、在宅医(訪問診療)と訪問看護ステーションが主治医意見書・訪問看護指示書をもとに在宅療養を支援します。緊急時の連絡先(24時間連絡体制)は拠点が事前に整備したルールに沿って明示されます。
ステップ4:急変時の救急搬送調整
急変時には、本人と家族の意向(ACP:人生会議の合意事項)を踏まえて、救急搬送するか在宅で看取るかを判断します。拠点では救急隊・在宅医・訪問看護師の間で救急搬送ルール・看取りプロトコルを事前に共有しておくことで、不必要な救急搬送を減らします。
ステップ5:在宅看取り
本人と家族が在宅看取りを希望した場合、在宅医・訪問看護師・ケアマネジャーが連携してターミナルケアを提供します。死亡確認は在宅医が行い、訪問看護ステーションは在宅看取り加算(ターミナルケア加算)を算定して看取りを支えます。
家族介護者・介護専門職が知っておくべきポイント
1. 地域包括支援センターと拠点は車の両輪
地域包括支援センターが介護中心の総合相談窓口であるのに対し、在宅医療連携拠点は医療と介護の橋渡しに特化した機能を持ちます。家族が医療面で困ったとき(在宅医探し、医療処置の継続、退院後の不安など)は、まず地域包括支援センターに相談し、必要に応じて拠点のコーディネーターにつないでもらう流れが基本です。
2. ACP(人生会議)を早めに始める
拠点が普及啓発する重要テーマの一つが人生会議(ACP)です。元気なうちから本人の意向を家族・主治医と共有しておくことで、いざという時の判断(救急搬送・人工呼吸器装着・在宅看取り)がスムーズになります。拠点が地域住民向けに開催する人生会議ワークショップに参加するのも一つの方法です。
3. ケアマネジャーは医療連携の鍵
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、拠点が整備した連携シートを実際に運用する立場にあります。医療系サービス(訪問看護・訪問リハビリ・訪問診療)の利用が必要になったときは、ケアマネジャーに「拠点のコーディネーターに相談してほしい」と依頼することで、地域の医療資源とつながりやすくなります。
4. 介護専門職向け研修への参加
拠点は事業項目カ(研修)として、多職種研修・看取り研修・認知症対応研修などを定期的に開催しています。介護職員にとっては無料で受講できる質の高い研修機会であり、医療職との人脈構築の場としても価値があります。所属事業所を通じて研修案内を確認するとよいでしょう。
よくある質問
Q1. 在宅医療連携拠点はどこにありますか?
市町村ごとに設置されており、運営委託先は地区医師会・在宅療養支援診療所・地域包括支援センター内・行政直営など地域によって異なります。お住まいの市町村の高齢福祉課・介護保険課に「在宅医療・介護連携推進事業の窓口」を問い合わせると案内してもらえます。連携コーディネーターの連絡先は、市町村の公式サイトや地域包括支援センター経由で確認できます。
Q2. 拠点には誰でも相談できますか?
原則として医療・介護の専門職向けの相談窓口として運営されていますが、市町村によっては住民・家族からの相談も受け付けています。一般市民の場合はまず地域包括支援センターに相談し、必要に応じて拠点コーディネーターにつないでもらう流れが標準です。住民向けの相談会や市民講座を開催している拠点も多くあります。
Q3. 在宅医療連携拠点と在宅療養支援診療所の違いは?
在宅療養支援診療所は個別の医療機関として24時間体制で訪問診療を提供する診療所の届出区分です。一方、在宅医療連携拠点は地域全体の医療・介護連携を組織化する機能を指します。在宅療養支援診療所が拠点の運営委託先となるケースもあり、両者は重なる場合もあります。
Q4. 介護家族にとってどんなメリットがありますか?
拠点が整備した連携ルールにより、入退院時の情報伝達がスムーズになり、家族が病院と在宅医・ケアマネに同じ説明を繰り返す負担が減ります。また、地域に24時間体制の訪問診療・訪問看護があるかどうかを拠点が把握しているため、緊急時の対応先が見えやすくなります。看取りや認知症に関する家族向け講座を開催する拠点もあります。
Q5. 拠点の整備状況は地域差がありますか?
2018年に全市町村実施となりましたが、連携コーディネーターの配置数や情報共有ICTの整備状況には大きな地域差があります。都市部では複数の医師会や中核病院が連携して厚みのある運営をしている一方、人口の少ない自治体では広域連携(事業項目ク)で隣接市町村と共同運営するケースもあります。詳細は厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業に係るプラットフォーム」で各自治体の取組状況を確認できます。
参考資料
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まとめ
在宅医療連携拠点は、市町村が運営する在宅医療・介護連携推進事業の中核として、医療と介護をつなぐ地域基盤を担う存在です。2018年に全市町村実施となり、8つの取組を通じて入退院支援・情報共有・多職種研修・住民啓発を体系的に進めています。家族介護者にとっては、地域包括支援センター経由で間接的に支えられる仕組みですが、その存在を知っておくだけで、いざという時の動きや専門職への相談の質が大きく変わります。介護専門職にとっても、拠点が提供する研修・連携ルール・コーディネーターは日常業務の質を高める重要な資源です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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